Mission-30 ”突破口”ヲ見ツケ出セ
大変お待たせしました!
今回はやや難産気味でした・・・えぇ・・・とあるシスコン騎士様の心情はどんなものかと、考えるのに難航していましたからね・・・(汗)
一応、「いつになったら終わるんだよ!?」的に思ってる方に書いておくと、今年中(2018年内)にはこの「商業都市編」は終わるように善処します・・・。
そして、恐らく皆さんがお望みであろう”銃撃戦も加えた戦闘シーン”は、今話も含めた”3話”後に展開して行きますので、どうかごゆるりとお待ちくださいませ・・・。<(_ _)>
N:前回の逃走劇からしばしの時が経ち・・・星明りも刺さない曇り空の真夜中・・・場所は人がひしめいていたであろう「城塞都市マケット」とは打って変わり・・・そこから少しばかり離れた郊外に位置する森の中・・・。
おおよそ初めに”エルフ兄弟”の二人が彷徨っていたであろう”領主館の裏手”に広がる森の何処かに存在する、”壊れかけた小屋”の中から物語は再開してゆく・・・。
「・・・
(寝袋が敷かれた、粗末なベッドの上で何度も寝返りを繰り返す・・・)」
「・・・
(椅子に座りながら頭を抱えつつ、寝返りを繰り返す”姉”を只々 見つめる・・・)」
「・・・
(小屋の玄関扉に寄りかかって両膝を左腕で抱えつつ、二人を見つめながら、時折・・・部屋の中央の机の下にある”床の切れ目”が入った部分を、警戒するかのように手に持つ斧を、握りしめながら何度も一瞥する)」
「・・・
(机の上に置かれたいくつかの缶メシや銃などを、椅子に座りながら興味深そうにしげしげと見つめるも・・・チラチラと、ベッドの二人が気にしている・・・)」
「・・・
(壁に膝を抱き抱える体操座りのような形でもたれ掛かり・・・何故か傷や絆創膏だらけの体でたまに疼く痛みに顔をしかめながら・・・時折、自身の掌の両面と共に”爪”を見たりもしつつ、ベッドの傍にいる二人を見つめ続ける・・・)」
「・・・
(ベッドの反対側の隅に設置された”ロケットストーブ”の傍で、床に敷かれたエアマットレスの上でお互い寄り添うように、静かに寝息を立てる小さな”二人”・・・)」
「・・・
(立派ながらもパイプの中から緩やかな火柱を立てる”ロケットストーブ”の火を絶やさないよう・・・火柱に睨みを利かせ、消えそうになったら椅子のすぐ傍にある薪の小山から一本ずつ焼べては、ベットの二人を気にかけ・・・焼べては、気にかけ・・・と負い目のある後悔した表情を浮かべながら繰り返す・・・)」
N:このような”エンドレスお通夜”に近い・・・気まず~い雰囲気が、領主館の”キッチン”にあった”地下通路への隠し扉”からここへと脱出した後・・・コレが真夜中近くまで続いているのだ・・・。
しかし・・・こんな状況では何も始まらないと思ったのか、玄関扉の前で番をしていた”カルカ”が底なし沼に沈みそうな勢いで沈黙する”ラフィル”に向けて顔を上げる・・・。
「あの・・・何度目か分からないけど・・・本当に気の毒だと思うよ・・・。
ボスさんの事を許しがたいのは、分からなくはないと思うけど・・・そろそろみんなで・・・」
「・・・黙りやがれよ・・・クソ人間・・・!(ボソッと言う)
今すぐにでもブチ殺されたいのかアァッ!? オイっ!
(語尾辺りでカルカの方に鬼のような形相を浮かべながら、叫ぶ)」
「ヒィッ!? (思わず斧を抱き締めつつ、見がすくんでしまう)」
「ラルくんッ! やめなよッ! もう何回同じ事をやってるのッ!?」
「黙りやがれよッ! クソネコがァ! テメェもブチ殺されたいのかアァッ!?」
「もうやめてよッ! みんなラルくんを怖がってる! リルちゃんとラルくんのために何かしたくてもッ、ラルくんが暴ばれるから何もできないんだよッ!
(立ち上がって、ゆっくりと頭を抱える彼に近づきながら・・・)
ねぇ・・・お願い! 話を聞いてよ! まずは、みんなでトリメシとかを食べようよ!」
「黙りやがれって言ってんのが分からねェのかッ!
このッ、クソネコォォォォッ!」
~ バッキャアァァァッ! バンッ!~
「ニャアホッ! ニャァホッ、ニャァホッ!
(腹を殴り飛ばされ、寄りかかっていた壁まで叩きつけられた後、背中伝いに崩れ落ちながら)
ハァ・・・ハァ・・・ラルくんッ!」
『やめろ・・・オルガッ
(飛びかかりそうだった彼女を宥める)』
「ボスゥ・・・(腹を抑えながらシュンとした表情で見つめる)でもッ!」
『気持ちは痛い程分かるが・・・今は堪えろ・・・。周りに被害が及ぶ・・・。
それに・・・』
「・・・それに?」
『例え・・・アイツに勝てたとしても・・・人間じゃあないオルガが相手なら、意味がない・・・。
今後もアイツは一切口を聞こうともしないし・・・オレ達の言う事を聞きやしないだろう・・・』
「じゃあどうしろっていうのッ!? ボスゥ!?」
『耐えてくれ・・・オルガ・・・ホントに、本ッ当に、済まない・・・後少しなんだ・・・。
(哀愁帯びた表情を浮かべるがその顔を彼女に向けず、頸動脈を抑える指をトントンッと、オルガに印象付けるように)』
『・・・なるべく早く・・・ね? ボスゥ・・・。
ボクも楽じゃあないから・・・』
N:逃げ終わった後・・・何度も荒れ狂う暴風雨の如く、自身に襲い掛かろうとした時・・・
何度もこの小屋の皆がエルフ姉弟に謝罪し、一心不乱に励まそうと努力しても、その都度暴れる度に・・・
彼・・・いや、アイツからその身を呈して、傷だらけになろうとも・・・自身が回復魔法が使えなくなっても・・・ボス達の残り魔力を気に掛け、回復魔法を断り続けながら・・・オルセットは皆を庇い続けていたのだ・・・。
無論ボスは、その光景に手出しをせず、微塵にも”慈悲ある思い”を抱かなかった・・・なんて事は一切なかった・・・。寧ろ逆である。
彼は、彼女が傷付き初めていた時から、手出しできない”己の弱さ”を含め・・・その静かに吹き溢れてゆく”怒りの鉾先”収めようとは、一度どころか、微塵にさえ思わなかった・・・。
自身が約束を果たせなかった事を棚に上げるつもりはない・・・。
だが、アイツの"暴言"までは目を瞑れても、仲間に手を出したのなら・・・仲間"候補"であろうと、断固として鉄拳制裁を辞さない覚悟がボスにはあった・・・ッ!
しかし、非常に不本意であるが・・・まだ出来ない事に彼は非常に歯痒く思っていた・・・。
今、鉄拳制裁でこの場を収められたとしても・・・その先の問題である"不死身のヴァイオ"を<どう攻略するか>という事が解決しきれていないのだ。
倒しても倒しても・・・何度でも復活する理不尽な悪の”人間要塞”・・・。
鉄拳制裁前に、この要塞を陥落させる手立てを導き出さなければ・・・”城塞都市マケット”を救うなんてちゃんちゃら可笑しい話となり、結局この小屋の中にいるもの達の未来は、<お先真っ暗な茨道>を歩むしかないのだ・・・。
故に改めて考える・・・
あの拷問室で見た「ヴァイオ」のスキル構成の謎に・・・ッ!
(足元で燃える、箱状のロケットストーブの燃焼口を見つめながら・・・)
もう一度だ・・・もう一度考え直そう・・・。オレが「スキャン」を通して測れるのは・・・「Strength(力)」、「Perception(知覚)」、「Vitality(生命力)」、「Agility(敏捷性)」、「|Intelligence(知力)」、「Luke(運)」、「Magic(魔法)」・・・そして【パッシブスキル】の八つの項目・・・。
この内・・・”基礎能力”で奴が優れていたのは一位に「Str」、二位に「Vit」、三位に「Agi」・・・。
この他に目立ったスキルは、「Str」に当てはまる剣士らしい<剣術 Lev.10>と、RPGとかのゲーム的に考えて、上位・・・もしくは派生スキルっぽい<大剣術 Lev.2>・・・。
「Vit」に当てはまっている、スーパーアーマー効果のある・・・ある意味あの粗暴さの象徴している「豪傑」ってスキルに、ラフィルも持っている「不屈」と、瀕死になる度にパワーアップする「超回復」・・・と、コレぐらいしか無い。
あの不死性に直結するような「自己再生」ッ! ・・・とか、「不死鳥」ッ! ・・・とかの”分かりやすい名前のスキル”があれば確証と対策をすぐに考えられたんだがな・・・。
しかし・・・10にも満たないスキル数なのに、なんであんな「不死身の体」を持っていやがんだよ・・・ッ!?
アァァッ、クソッタレッ! 何度考えてみても、オレよりもチートな野郎じゃあないかよッ!
・・・こんな事になんのを見越してるなら、なんで”大量の微々たる効果なスキル”ばっかを支援物資として落としたんだよ! えぇッ!? 少なくとも”強力で超人になれるようなスキル”の方がマシだったかもなァッ!? 神さんよォッ!?
・・・ハァ・・・思いの中で叫んでも、虚しいだけだなぁ・・・。
いや・・・待てよ・・・ありえない話かもしれないが・・・少ないからこそなのか?
もし、このステータス表記が、”ゲーム的な要素”が強いと考えるなら・・・この少なさであの不死身さを成り立たせるなら・・・「かけ算」・・・そう! RPGなんかでたまにある、”スキルのかけ算”とも言えるシステム・・・「スキルコンボ」的な要素があったとするなら・・・ッ!?
思い出せ・・・あの時に見たスキル詳細を思いだせ・・・ッ!
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・「超回復」
「強靭」が進化した事による上位スキルです。
疲労によるHP減少の抑制効果だけでなく、”常時HP自然回復”が
行われるようになり、瀕死になる度に「strength」がアップ
していくという破格の効果を持ち合わせています。
・「不屈」
数々の死線を越える事で獲得できる上位特殊スキルです。
生命活動が”停止”してしまうような致命傷を受けたとしても、
”HP 1”の状態で踏み止まる事ができます。
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”常時HP自然回復”・・・ッ! いや・・・まさかな・・・。
仮に、「不屈」の効果で、残り1HPになっても<0になる瞬間に回復>して、そこから化物級の回復スピードで自然回復してる・・・とかなら辻褄が合いそうだが・・・。
それならどんなクソゲーだよッ!? って言いたくなるが・・・否定しきれない現実がある・・・。
そう・・・あの拷問室での戦いで、オルセットが奴の顔を引き裂く程に”深く”引っ掻いていたハズなのに、ラフィルに水をブッ掛けた後に見た時の奴の傷が、まるで”ビデオの巻き戻し”が如く、みるみる治ってゆくのを見ちまったからな・・・。
どんな攻撃を受けようと、「不屈」で何度も一命を取り留め・・・
起き上がるまでの”微妙な間”が<自然回復している最中>だと仮定すれば・・・
立派な不死身の<お貴族近衛騎士様(笑)>の完成だ。
やったねッ! 疑似無限1UP成功だよッ!
・・・てェ、冗談じゃあねェよ・・・ッ! 笑えるかッ!
思わず現実逃避しちまったけど、マジでふッざけんなよッ!
仮に現状の装備で倒せないとして、”リフィルの魔力”を元手に近代火器類を出そうにも、無理がありすぎるッ!
奴の「回復スピード」に対抗するなら、「1以上になる前に倒す」場合は”サブマシンガン”や”アサルトライフル”、オーバーキルになるだろうが、”ヘビーマシンガン”とかの連射力のある、”手数で勝負する銃器”を出そうにも、出した銃の”必要魔力コスト”が高ければ高い程、弾代もバカにならなくなるし、「一撃で回復できない程に粉砕する」とかなら、”ロケットランチャー”とかの爆発物を使おうにも、弾代以前に、爆風やその破片とかで・・・マケットの街への二次被害で”カルカ”に迷惑を掛けちまう・・・ッ!
しかも、オレには他のラノベなんかでは定番な、「スキルを奪う」物や「スキル効果を抹消する」なんて、<能力潰し>ができる、チートスキルなんて持ってねェ~しッ!
どんだけ”八方塞がり”にすれば気が済むんだよッ! コンチクショウッ!
いや・・・待て・・・「能力潰し」・・・「スキル抹消」・・・抹消・・・別に言えば”封印”とも・・・ッ! そうだよッ! 封印ッ!
確か・・・一部の作品だと、「奴隷の首輪」とかの隷属系のアイテムは、着けた行動制限する効果の他に、「スキルが使えなくなる」とかの効果もあったよなッ!?
この世界でもあれば・・・って、アァァァァッ・・・ッ!
それ以前に・・・オレエルフ姉弟のを外した際に、”焚き火”で燃やしちまってたんだった・・・ッ!
クッ・・・ソッ、思わぬ痛恨のミスだよ・・・ッ!
・・・いやいやいやいやいやいや・・・諦めんな・・・諦めんなオレ・・・!
フゥ・・・一発、ダメ元で聞いてみるか・・・ッ!
N:長っがいッ、ボスの思いの中の独白を聞いてお疲れだと思うが・・・どうかもう少しお付きあいをお願いしたい・・・。
独白後、何かしらの決意をした彼は、無言のまま”カルカ”の元へと音を立てないように歩いて行くと、そっぽを向いたまま彼女の肩へとそっと手を掛けた・・・。
「ッ!? ちょ・・・」
「シィ~(口元に指を立てながら)
『急にすまない・・・だけど、オレらが”声を出したら”どうなったかは何度も経験してるだろ?』」
『・・・分かってるよ、ボスさん・・・。
けど・・・中々、慣れないな・・・コレは・・・』
『慣れなくちゃ、またあの”シスコンエルフ”が喚き立てるからな。
・・・ホント、すまないと思うが・・・』
『・・・ホント勘弁して欲しいモノだな・・・。
それで? 私に何か用があるのか? (ボスに顔を向けつつ)』
『あぁ、そうだった! 実はな、「奴隷の首輪」とか・・・相手を”隷属させる魔道具”を持ってないか? アンタは、何度もあの領主館に忍び込んだだろ? 情報を入手するついでに何かしらくすねてんじゃあないかと思ってな』
『・・・あのダークエルフに嵌めるのか? (ラフィルに視線を向けつつ)』
『・・・そうでもして黙らせたいのは山々だが・・・生憎、オレは奴隷ってモンが大ッ嫌いでな?
さすがにそう、逆戻りさせるような事はしたくないんだよ・・・。
・・・ていうか、そもそも着けるターゲットが違う』
『じゃあ・・・誰に着けるんだ? (小首を傾けながら)』
『無論、あのクソ領主もとい・・・貴族の風上にも置けない、お貴族モドキ共にな? それで・・・持っているのか?』
『・・・ああ、持っている。”首輪”をな。
奴隷にされていく民達が減ればと思って、侵入する度に盗み出しては処分を試みていたからな・・・無駄だったが・・・(「無駄~」辺りで、自嘲気味な声がボスの脳内に流れる)』
『・・・けど、救えた民はいたんだろ?』
『・・・(浮かない表情で俯く)』
『・・・いたんなら、誇れよ。オマエの努力は無駄じゃあなかった。
オマエが頑張っていたから、オレに会えたし、オレが力を貸そうと思えたんだ』
『・・・ボスさん・・・』
『ただ・・・「奴隷の首輪」を持ってきてもらう前に一つ、聞きたいことがある』
『・・・なんだ?』
『・・・あんなゲス共だが・・・オマエの兄貴達なんだろ?
いいのか? オレらが手に掛けちまっても・・・?』
『・・・冒険者ギルドでも話しただろ? 私は”妾の子”であると・・・。
それも、目立たず下品な・・・平民の下女が母親で・・・唯一、私をずっと愛してくれて・・・』
『いい・・・それ以上言うな・・・種族や身分の違いくらいで、”殺す殺さない”を決める”選民思想”のイカレ野郎共も、オレは大嫌いだからな・・・』
『・・・すまない、ありがとう・・・』
N:そう思いを伝えたカルカは、ボスには見えなかったが口元に微笑みを浮かべながら、机の下にある切れ込みを少し持ち上げ、地下通路へと消えて行ったのである・・・。
数分後、少々汚れや埃に塗れた彼女が、先程の切れ込みから”一つの茶色い袋”と共に這い出てくるのであった・・・。
『そん中に首輪が入っているのか?
(這い出てきたカルカの服に着いた、汚れ等を軽く払いながら)』
『ああ、そうだ。
だが・・・これで奴らの行動は阻害できても、あの”不死身のヴァイオ”を殺せるわけじゃあ無いんだぞ?』
『スキルの効果を封じれないのか?』
『無論そうだ。
・・・というか、そんな物があったら魔道具の分野において、歴史的な快挙の一つになってると思うぞ?』
『マジかよ・・・意外な事実・・・イヤ、パラレルワールドみたいに考えれば”ない場合”があっても当然か・・・?』
『パラレル・・・なんだ?』
『いや・・・こっちの話。
それよりも、随分と溜め込んでいるみたいだな?』
『当たり前だ。先程「処分しようと試みている」と言ったばかりではないか。
「奴隷の首輪」は元は革製の首輪とは言えど、魔法で強化された物だ。
少なくとも”上位階級”の魔力込められた武器や魔法でないと破壊できないのだぞ?』
『・・・なぁ、その・・・”上位階”・・・とかってなんだ?
魔法の”強さ”的な物なのか?』
『そんな事も知らなかったのか?』
『生憎、ここらへんの出身じゃあないもんなんで・・・
良ければ教えてくれないか?』
『ふ~ん・・・まぁ、いいだろう。ボスさんの考えは概ね当たっている。
「位階」は発動させる<魔法の難度>の事を示している。無論、難度が高いほどそれに比例して発動する魔法も強力な効果を発揮するモノが多くあるという事だ。
魔法の中で最も基本的な”火属性魔法”で例えるなら・・・
最も難度が低く、魔力消費も低い「ファラ」は”最下位”級、「ファラマ」は”下位階”級、「ファライヤ」は”中位階”級、「ファラード」は”上位階”級・・・そして、最も難度が高く、達人の領域とも言われている「ファルタラード」は”最上位階”級だ。
一般的には、この”最下位”から”最上位階”の5段階で、魔法の強さを言い表している』
『なるほど・・・。
じゃあ、それ以上・・・例えば「英雄級」とか「夢幻級」とか・・・「伝説級」とかの、さらに上があったりするのか?』
『あったとしても、それは”お伽噺”や”神話”の領域だろうな。
まず見ることはないだろう』
『(・・・とりあえず、”メラ○ーマがメ○”的な事は、まずありえないのか・・・。よ~し・・・なら、もし奴らが雇われの魔法使いが居たとしても、あまり不意打ちとか・・・有効な戦力と考えなくてもいいかもな。まぁ・・・警戒は怠らない方がいいんだろうが・・・)
態々教えてくれてありがとうな、カルカ』
『礼には及ばないよ。それよりも・・・(袋の中から一つの首輪を取り出しながら)
コレをどうするのだ?』
『おっ、ありがとうな・・・(片手で受け取りながら)
チョイとオレに考えがあるんだ・・・「スキルプログレッサー」、起動』
N:ボスは玄関に近い壁の傍にもたれ掛かりつつ、そう言うと彼の頭の中には、SF風のシステムメッセージのようなウィンドウが浮かび上がり、次のような内容が書かれているのであった・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<プログレスメニュー>
☆こんにちは、ボスさん。
進化させたいスキルを一つ「柱」として選択し、そのスキル
に注ぐ”3つのスキル”を選択してください。
進化時には、「MP100」分のあなたの魔力も必要になります。
Main =「」
↑
Sub =1「」2「」3「」
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よし・・・まずは、コイツに干渉するために、リフィルには申し訳ないが・・・彼女のスキルを中心に使って、新しいスキルを創り出そう・・・。
「スキャン」で見た限りのこのスキルの例を元にすれば・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Main=「魔工術 Lev.5」
↑
Sub= 1「木材加工 Lev.2」
2「解体 Lev.5」
3「房中術 Lev.1」
ーIs this OK?ー
~ YES / NO ~
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「魔工術」を中心に、「工作」関連のスキルと恐らく・・・奴隷時代にムリヤリ培わされた可能性のある「房中術」も加えとこう。
作成した後、スキルが消えれば彼女の”心のケア”になると信じて・・・。
さて・・・「YES」を選択して・・・頼むから出来てくれよ・・・ッ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・・・・・・・・・・~作成中~・・・・・・・・・・・
<作成成功!>
新スキル、「クラッカー」を獲得しました!
「クラッカー」
この世界で初めて作成に成功した「Intelligence」スキルです。
<魔工術>を中心に「工作」関連のスキルを注ぎ込んだ事により、
「中位階級」までの魔力を注ぎ込まれた「魔道具」の理に
侵入し、理を書き換える事が出来ます。
また、魔道具内の残存魔力を媒介にこのスキルは発動するため
スキル使用時に必要な魔力はありません。
ただし、書き換え時に元にあった理はすべて消去され、
一度に書き換えられる新たな理は「3つ」までとなります。
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よっしゃあッ! 「クラッカー」なんて、不名誉すぎるスキル名だが・・・肝心なのは<使い方>だ。
ナイフを”ステーキ”に向ければ「調理器具」に・・・人や動物に向ければ「凶器」なるようにだ・・・。コイツを貰った「クソい首輪」に向けて・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<クラッカーメニュー>
~対象~ → 「クソい首輪」
<効果>
~~~~~~~~~<デフォルト>~~~~~~~~~~~
・装着した相手の”行動制限”及び”行動阻害”。
・隷属時に注いだ魔力によって決められる、命令の強制執行。
(最下位=1つ、下位階=2つ、中位階=5つ・・・と、
最高10個まで、命令を入力可能なようです)
・抵抗時、「魔力」及び「物理」、のどちらかによる処罰。
・「上位階」以下の魔法及び、それに相当する物理攻撃の無効化。
~~~~~~~~~<入力命令>~~~~~~~~~~~~
・「バーン教」を信仰する。
ーDo you want crackers?ー
~ YES / NO ~
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ヘェ、この首輪が作られた時からあった”デフォルト”なのか?
他の異世界でも詳細にこ~ゆ~クソい首輪を調べたら出たりするモンなのかねェ・・・?
・・・てか、「バーン教」て・・・無理矢理にでも信者を増やしたいのか? 教国って?
まぁ・・・マトモそうじゃあ無いのは、今は置いといて・・・早速、書き換えてみるか・・・。
・・・おっ、YESってやったら、一瞬で表示が消えたと同時に”キーボード”っぽいのが浮かんできたな・・・よ~し・・・ッ!
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<クラッカーメニュー>
~対象~ → 「クソい首輪」
<効果>
~~~~~~~~~<入力命令>~~~~~~~~~~~~
1、装着した相手は”ボスを攻撃できない”。
2、ボスの”回れ”という言葉を聞いた時、”その場で3回転
してワンッ!”・・・と行動後、「コール」を用いて鳴く。
3、装着者が「解除」と言うと、この首輪が外れる。
~~~~~~~~~~~~~~~<命令入力回数:残り0>
ーIs this OK?ー
~ YES / NO ~
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YESにしてっとッ・・・ブッツケ本番でも良いんだが、ここで試しておくか・・・。
書き換えした後の物も、再び書き換えられるか試してみたいからな・・・。
『カルカ、しばらく放置してすまない。・・・ちょっとコイツを着けてくれないか?』
『エッ!? な・・・なんですかッ!? ボスさん・・・私を奴隷なんかにして何するつも・・・』
『い~から着けてくれって!
(言い終わる前に、首輪のバックルを留める)』
『そ・・・そんな・・・!
私は・・・私は領主になると心の底から誓っていたのにどうして・・・ッ!?』
『そ~さぁ~カルカ・・・お前はもう領主になれない・・・。
オレの忠実なる下僕だ~。民を救うだなんてクソな事を・・・
(若干棒読みだが、悪ノリした感じに言っている)』
『・・・見損なったぞ! ボスッ! ・・・って、アレ? 体が・・・動かない・・・?』
おっ? 罵倒でも、「攻撃」とみなされるのか?
てっきり”持ってた斧を振ったら、”確実に外れる”みたいな感じで効果が発動すると思っていたんだが・・・コレは意外と強力な効果だな・・・。
『よし・・・”回れ”』
『え・・・いや・・・ちょっとッ! ・・・ワン・・・ッ!
(一言ずつ呟く度に、座ったままの状態で一回転していき・・・
最後の”ワンッ!”の部分では、一旦斧を床に置いた後に両手を頬の
下辺りに持ってくる・・・所謂「猫のポーズ」をしながら言う)』
Woopsッ、不覚にも可愛いと思ってしまった・・・。
いや、反則やろ・・・「3回回って~」とは言ったけど、思ってもなかったそのポーズに、”言っちゃった”・・・って言わんばかりに”赤面”してんのッ!
胸のなさを補う余りの破壊力だな! オイッ!?
・・・いや、それよりも・・・ちゃんと、”指定したスキルも使用した上”で命令がキチンと行使されてるのはスゴイもんだ・・・!
『フッ・・・もう、オレの従順な犬だな~。
イヤに思うなら「解除」~とか言って~自力で外してみたらどうだ~?
(再び、若干棒読みだが、悪ノリした感じに言っている)』
『ボスさん・・・貴方は一体何がしたいんですか・・・ッ!
そんな”解除”だなんて言っても、これは簡単に外せないものなんですよ!?
どうしてくれるんですかッ!?』
〜パチィンッ! トサッ〜
『・・・エッ!?
(急に外れた首輪を見つめて、呆然とする)』
よっしゃあぁぁぁぁぁぁッ! もう・・・コレ、「ヘブンズ・○アー」だよッ!
書き込める命令が少なかったりするとかの”劣化版”だけど、完全な「ヘブンズ・○アー」だよッ!
オレッ、「スタ○ド能力」をゲットしちゃったよッ! 露伴先生すんませんッ!
イケるッ! 後は、アイツらを気絶させる何なりして、黙らせた後に、この「クラッカー」を使った「クソい首輪」を嵌め込めば・・・罪滅ぼし・・・以前に、エルフ姉弟の二人が望めばだが・・・あの二人が因縁にケリを付ける事ができる・・・ッ!
『驚かして悪いな、カルカ。
実は、以前に手に入れた”奇妙なスキル”の効果を試した事がなかったもんで、アンタに黙ってそのスキルをこの首輪に使わせてもらった。
事後承諾した後で使うんじゃあ、奴らに使う意味がなかったから説明せずに付けたんだ。ホント、済まないな・・・』
『心臓に悪いぞ・・・ボス・・・。
しかし、これはスゴイな・・・! これなら、最初にボスさんが言っていた”スキルの封印”もできるんじゃあないか?』
『あぁ、確信に近いと思っている。
だが、事を起こす前に・・・アイツをなんとかしないとな・・・』
N:そう言うボスが見つめる先には、未だに姉の心配にしか頭にないかのように頭を抱えつつ、只々彼女を見つめている”シスコンエルフ”が居るのであった・・・。
彼の視線に、彼女も同じように視線を向けるが・・・先程のスキルの効果を見て、「城塞都市マケット救済」の 見通しが立ち、晴れたハズの表情は僅かにだが、再び陰ってしまう・・・。
『ねぇ・・・ボスさん、この後、あのダークエルフ君に話しかけるなら気をつけて・・・。何か・・・嫌な予感がする・・・』
『・・・アンタの10年間、逃げ回りつつも奮闘してきた人生と比べれば、屁でもねぇよ・・・。大丈夫、最低限”死なない”ようにだけは善処するよ・・・』
『・・・気をつけて・・・』
『(立ち上がり、ラフィルに近づきながら、カルカに向けて軽く手を振りつつ)
フッ・・・了解・・・』
N: ある意味、その後ろ姿は”死地に赴く”ような哀愁さが漂っていたが、それを見送るカルカは、今までに見たことのない僅かばかりの”勇ましさ”を感じていたのであった・・・。
そして・・・ボスは意を決してラフィルへと”土下座”するのであった・・・ッ!
「本当に済まないッ! ラフィルッ! 幾ら謝っても足りないだろうが・・・聞いて欲しい事がある!」
「・・・」
「これをやれば、お前達の気は晴れるかもしれない・・・。
ただ・・・人としては誇れなくなるかもしれないし、一生後ろ指を指されるような人生になるかもしれない・・・それ以前に・・・ラフィル、お前はオレを殺したくて仕方がないんだろう・・・?」
「・・・」
「けど・・・それでもオレは、”死んで詫びる”のだけはゴメンだ・・・。
だから、その代案として・・・二人に”奴らへの復讐”ができる”力”を提供したいと思う・・・。
それで”復讐を果たす事”で何とか、オレ以外に向ける怒りを鎮めてくれないかッ!?」
「・・・ざけんなよ・・・」
「・・・?」
「クソふざけてんじゃあねェよ! このクソ人間がァッ!
(右手のみでボスを襟首を掴み、持ち上げる)」
「ガアァァァァッ!? クッ・・・アァァァァァァ!
(掴んだ手を振り解こうともがくが、ガッチリと掴まれ振りほどけない)」
「ボスゥ! (一蹴りで、ラフィルへと飛び掛かろうと身構える)」
『グッ・・・来るなッ! オルガ!』
「でもッ!」
『今は・・・グウッ、大丈夫だ・・・!
また・・・指示した時に・・・頼むッ!』
「ボスゥ・・・(不安げな声で、涙ぐんでくる)」
「へぇ・・・感心するじゃあねぇか・・・飼い慣らしたクソネコじゃあなくて、テメェだけがボコボコになろうなんてな・・・クソ人間?」
「フッ・・・そりゃあどうも・・・グッ!?
(「グッ!?」の部分で、襟首を掴む力が更に強まる)」
「ヘラヘラしてんじゃあァァァねぇよッ! クソネコの扱いで一瞬、気が緩んじまったが・・・やっぱりクソ人間なんだな・・・? なぁ? オレらの母さんが死のうがどうでもいいんだよな? 埋葬もしないで、そこの窓の下で変な布に包んで放置してんだよな?
どうでもいいから、そんな態度で今更”謝りに来る”なんて言えるんだよな・・・ッ!?」
「どうでもいいなら・・・グウゥゥ・・・お前の姉ちゃんを助けに行くハズも・・・グウゥッ!?」
「テメェーの気紛れなんて、聞きたくもねェェんだよッ! ・・・ど〜せ最後は、オレも姉ちゃんも痛めつけつつ、バカにしてっ! 笑い転げやがってッ! 動かなくもなれば”ゴブリンのエサ”にでもする気なんだろッ!? おいっ! ハッキリ言えよ! クソ人間ッ! (両手で掴み、持ち上げたまま激しく揺さぶりながら)
幾らテメェが謝り倒そうが、力を与えようが、結局母さんは戻ってこないんだよオォォォォッ!
なぁ・・・だから言えよ! オレらをバカにしてるってハッキリ言えよ! オレにテメェを迷いなくブッ殺させてくれよッ! なァァッ!? おいッ!
(「なぁ・・・」の所から涙ぐむような声になりながら)」
「ゲホッ、ゲホ・・・すまないが・・・無理な相談だ・・・」
「アァァッ!?」
「お前達にあった時・・・お前が望んでいる答えは端っから、考えたこともねェよ・・・寧ろな・・・」
「・・・むしろ?」
「そんだけ・・・悲惨な思いを・・・オレを心の奥底から信用できなくなっちまう程に・・・人間を・・・憎む様になっちまったお前や・・・とことん虐げられてきたお前の姉ちゃんを・・・どう労ってやれたら・・・どうやったら仲良く・・・仲間になってくれるかをずっと考えていたからな・・・。
(襟首を持ち上げられ、首が締まる状況ながらも、一言一句を絞り出すように話す)」
「・・・ッ!?
(目が見開く程の驚愕的な表情を浮かべ、若干両手が震え始める)」
「だからよ・・・ゲホッ、何とか”復讐”で手打ちにしてくれないか・・・?
オルガにも頼んで・・・お前達が復讐を果たすまでの間・・・しっかりとサポートもする・・・。それでなんとかならねェ・・・かな・・・?」
「ボスゥ! なんでこんなヤ・・・」
『今は黙っててくれ、オルガッ! (叫び声が響く)』
「ッ!?(一瞬、両耳を塞ぐ)
・・・ホント危なくなったら・・・意地でも入るからね・・・ボスゥ・・・」
「・・・一瞬黙ってすまない・・・。だが・・・今まで話したことがオレがお前達にできる精一杯の誠意ある責任のとり方・・・ケジメの付け方なんだ・・・。
本当に・・・これ以上はどうすることもできない・・・だから・・・」
「・・・黙れよ。 (俯きつつワナワナとしながら・・・)」
「・・・?」
「黙れ、黙れ、黙れェ、黙れェェ、黙れェェェ、黙れェェェェェェェェェェェェッ!」
「ウェッ!? うわオォォォォォォォォ!?」
~ ブオンッ! バキャッシャ~ンッ! ズシン!~
N:自身の渾身の誠意を伝えたかと思っていたボスは、現在・・・小屋の窓側近くの壁を突き破り・・・宙へと数メートル先に投げ出され、小屋の近くにあった小さな広場へと背中を打ち付けられたのであった・・・!
「絶対に伝わる・・・ッ!」 そう信じて望んだボスの覚悟ある”捨て身の謝罪”は・・・心なき人間達によって6年以上に渡り、散りに塵積もり出来てしまった、ラフィルの人間に対する怨嗟を打ち砕くことはできなかったのだ・・・。
それ程・・・いや、それだけ彼の中で渦巻く”人間への憎しみ”は、ボスの中の「価値観の物差し」では到底計り切れない程に膨張し、「優しさ」などの暖かさでは溶かしきれないぐらいに・・・強固かつ強大な氷塊になってしまっているのだろう・・・。
彼の中で感じられた”一筋の光”のような「ボスへの恩義」も、信じられなくなる程に・・・。
そして彼は、その”憎しみ”こそ「自身の真の答え」だと証明せんと、ブチ抜かれた壁のそばに立て掛けてあった「ヴァイオの大剣」を何を思ったのか・・・震える手付き少し躊躇った後、恐らく、元の持ち主が手にこびり付いた返り血によって赤く・・・ドス黒く変色したであろう幾重にも包帯のような布の巻かれた柄しっかりと握り締め・・・”片手”で肩に担ぎつつ、ブチ抜いた穴の前から投げ飛ばしたボスに向け、こう叫んだ・・・!
「やっぱり・・・テメェは、死んで詫びやがれよッ! クソ人間ッ!」
ところで余談なんですが・・・
「Mr.N」氏の”CV”は、当初は”大川透”さんがいいなぁ・・・と、思っていたのですが・・・
ジョジョに”フリーダム”に喋るようになってきたので、「杉田智和」氏の方がしっくりしてきたと思うオレは、変ですかねェ・・・?
※2018年10月18日、カルカの魔法の説明している部分で”ダブり”があった部分と、一部のボスの口調、その他の「()ルビ」のミスなどを修正しました。
「ファライヤ」は”最上位階”級(誤) → 「ファルタラード」は”最上位階”級(正)