Contact-29 ”処刑人”ヲ退ケヨ (後編)
大変お待たせしましたッ!
予定以上に、難産かつ大幅に書き込む事態になり、本当に申し訳ありません・・・。
まぁ、その代わりにこの章のほんの”前菜前”ですが、臨場感と密度ある戦闘が描けたと思います。
後、この回から初めて読んでくれた〇・・・読者の皆様や、ご愛読頂いている人たちに改めて<「」>類の説明をしておきますね。(唐突に書き方を変えた件があるので・・・。)
<「」>
通常会話文。
<『』>
「コール」スキル発動最中の、声を発していない会話。
<()>
主に情景やキャラクターの行動。
<「()」、『()』>
こちらも、主に情景やキャラクターの行動。
たまに、キャラクターの心の声が書かれてたりします。
<例>「(ビシッと姿勢を正して)ありがとうございます!」(行動)
「(なんでオレが・・・)ありがとうございます!」(心の声)
<~ ~>
物音。
漫画で言えば「ドッカァァァァンッ!」や、「ドドドドドド」、「メメタァ」などの、「擬音」になります。
<N:>
この物語の「ナレーター」である、「Mr,N」のナレーション、実況、会話文、心の声、愚痴・・・etc・・・。
改めて見てみると意外とありますよね・・・。(汗)
それはともかく、これが(完全に)適応されているのが「Mission-21」からと、書籍化した際の修正後の文は”上記の記号類”が適応されるので、ご了承ください。
(また、一章の拙さに関しては、本当にぐうの音も出ない程申し訳ないとしか言えません・・・。)
それでは、長くなってしまいましたが・・・後編をお楽しみください・・・。
~ ブゥゥオォォォンッ! ~
「タフネスッ!」
〜ガシッ ダッ! ガァィィィンッ!〜
「ッ!? 何ッ!? 俺様の一撃を弾いただとッ!?」
「メディケアッ!」
~ ホワワワ~ワァ~ン ガシッ ダッ! ガキャァァァァンッ!
ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ!~
・・・ッぶねェ〜〜〜〜ッ! あの村の一件の後、「オルセットとの信頼度が”50%”」だかなんだかでゲットしていたこの「ダッチ」ってスキル・・・「回避中の3秒間は、無敵の魔力障壁が発生する」・・・なんて、眉唾モノだと思ったが・・・マジだったとは・・・ッ!
N:・・・逆に聞くが、もし発動しなかった時はどうしていたのだ?
・・・んな事聞くなよッ! 想像するだけで寒気がするじゃあねェかよッ!
ラフィルがブッた斬られそうだったんだぞッ!? 呑気に考えてる暇があるかッ!
N:・・・さて、意外に無謀なボス君に、これ以上のツッコミは野暮そうなので、現状を整理しよう・・・。
上記のほぼ擬音のアクションパートでは、敵である”ヴァイオ”の”上段の構えからの振り下ろし”による一撃がボスから少し離れた位置に投げ捨てられた”ラフィル”に襲いかかり、今度は満身創痍な彼が真っ二つなボンレスハムになってしまうッ!
・・・しかしッ! そんな状況に、素早くリフィルを素早く「横抱き」で抱え”タフネス”によって、彼から立ち上る身体強化の”青いオーラ”を纏った上での”地面への一蹴り”でラフィルの身を素早く庇い、「ダッチ」による魔力障壁が攻撃を弾く事に驚きつつも、その隙に「メディケア」でラフィルを応急処置ッ!
リフィルを「ファイアーマンズキャリー」、ラフィルを「開いた左脇」に素早く抱え、奴の弾かれてから再び戻って来た”振り下ろし”を走って避け・・・現在は、部屋の中をグルグルと走り回って、奴から逃走中なのであるッ!
・・・因みに、彼女を背負った際、彼女の控えめだが確かで柔らかな”2つの小山”に彼は役得を覚えずには・・・
「オラオラどうした〜ァァァァッ!? さっきの剣を弾いたのはマグレなのかァァァ〜ッ!? 本当は強いんならァァァ〜、無様に逃げずゥゥゥゥ〜俺様と遊ぼうぜェェェェッ〜〜!
(大剣をブンブンと振り回し床や壁、拷問具などを破壊しながら、逃げるボスを追いかけてくる)」
クソッ! テメェらァッ! 無様に逃げ回ってるみたいに言うんじゃあネェッ!
こ・れ・はッ! オルセットが来るまでの時間稼ぎだからなッ!? これはッ!
・・てかッ! コイツッ、戦闘狂の類もあんのかよッ!?
益々厄介だなァ! オイッ!?
後ッ! オレが”スケベ”みたいにいってんじゃあねぇよ! こんな非常事態に”役得で鼻の下を伸ばしさずにはいられなかった”・・・とかっていう気だったんだろッ!? 最後には"ミンナニ ナイショダヨ"とかって、言う気だったろッ!? 不謹慎にも程があるわッ! オレはなぁッ! そ~ゆ~のはッ、紳士な対応やお付き合いをした上でッ! ・・・って、そうじゃないッ! そうだよ! それよりも、オルセットッ!
『ハッハッハッ、オルガァ!
(リフィルの両脚を右腕で固定しつつ、右手で頸動脈を押さえながら)』
『ボスゥッ!? どうしたのッ!? 急に繋がらなくなってッ!』
『すまないッ! だけど今・・・』
~ ブゥゥオォォォンッ! ダッ! ガキャァァァァンッ!~
(ダッシュ中、サイドステップで奴の袈裟斬りを躱す)
『ボスゥッ!? 何が起こってるのッ!?』
『今ッ敵と交戦中だッ! スマンが、詳しく話している余力がないッ!』
『どこにいるのッ!? ボスゥッ!』
『だから、それを話す余力がないんだッ! 重要なことだけ話すッ!』
~ ブゥゥオォォォンッ! ガキャァァァァンッ!~
(ダッシュ中に一瞬身を低くし、奴の”横薙ぎ”を躱す)
『グッ、ハッハッハッ(一瞬体勢を崩し、転びかけるが持ち直す)、
いいか! オルガ! まず、商会に隠れている子供達とダースを、この街の外まで避難させるんだ!』
『どうしてボスゥッ!? 今、大変なんだよねッ!?』
『ここの”親玉”を怒らせちまったんだ・・・ッ! この後何を仕出かすか分かったもんじゃあねェ!
それに、あの子供達に何かあったら二人の母親に顔向けできないだろッ!』
『でも・・・でもボスゥ・・・ボクは・・・ボクはァ・・・ッ!
(再び啜り泣きだしそうになりながら)』
~ ブゥゥオォォォンッ! ダッ! ガキャァァァァンッ!
タッ! バキャアァァァ! ズドォォンッ!~
(奴の袈裟斬りを躱すと同時に、近場の壁で三角飛びからの”飛び回し蹴り”
を奴の頭に放ち、転倒させる事に成功する)
『とォッ、ハッハッハッハッ!
(着地時にバランスを崩しそうになりつつも、再び走りだす)
安心しろオルガッ! 後”数十分”ならオレだけでも持ちこたえられるッ!
だから、カルカを頼りに先に子供達を脱出させろッ! その後、全力でオレを助けに来いッ!』
『・・・ボスゥ・・・』
『オルガッ! 頼むッ! お前は”泣き虫”でも”臆病”でもないんだろッ!?
なら、オレに証明してみせろよ! オレを信じて証明して見せろ!』
『・・・分かったァ・・・死んじゃやだよ・・・ボスゥ・・・!』
『あぁッ! こんなとこで”死んでる場合じゃあねェ”からなッ!』
(「コール」を終了させつつ)・・・つっても、結構ギリギリなんだよな・・・!
「タフネス」を使ってるつ〜のに・・・ッ、思った以上に二人分の重さを抱えて走んのがキツい・・・ッ!
つっか、ラフィル重ッ!? 改めて思うが、見た目"細マッチョ"なのにどんな筋密度してやがんだよッ!?
「ハァァァァッ! (仰向け状態から飛び起きながら)
今の”蹴り”ッ! 良かったぜェェェ〜! けどよォ〜さっきから、パンパン使ってた魔道具ゥゥゥ〜・・・使わないのォォォ〜?
もしかして魔力切れなのォォォ〜? あの威勢の良さは、嘘ッパチだったってとこかァァァァ〜!?」
腹・立・つ・ワァ〜ッ! 魔力はまだあんだよッ!
回復手段に乏しいから、そうポンポン、”ガンクリ”や”バレクリ”に使えねェんだよッ!
・・・しかし疲れてきた・・・もう一回”三角飛び蹴り”を喰らわそうにも、今度は動きを読まれそうだし・・・”ダメージを与えつつ、多大な隙を作れそうなモノ”は何か・・・・・んっ!? あれならッ!
N:なんとまぁ、忙しいボスであるが、この血みどろ拷問室を”5周”程マラソンし終えた所で、彼はあることに気づく。
それは、起き上がった後も彼の後を執拗に大剣を振り回していた奴が、あまりに夢中になっていたのか・・・複数の拷問具を粉砕する傍ら、部屋の左右両脇に壁に埋め込まれる形で設置されていた「鉄の処女」に大剣が何度かヒットしていたらしく、この部屋の入り口から見て左の鉄の処女が、衝撃で前に迫り出していたのだ!
そして、壁に埋め込まれていたのなら、当〜然ッ! 埋めこむための”窪み”もあるワケで、ボスはそれを部屋を周回する内に発見し、急いで体を滑り込ませ急拵えの”安全地帯”としたのだッ!
「ハァハァハァ・・・次にアイツが何してきそうか・・・ハァハァハァ・・・・何となく予想できるが、頼むから・・・無駄に喋っててくれよ・・・!」
~ ガアィィィンッ! ガアィィィンッ! ガアィィィンッ! ガアィィィンッ! ~
「ッ!? うる・・・せェェェェェェェッ!?」
「そらそらそらそらァァ〜ッ! 逃げたつもりかァァァ〜ッ!? 隠れたつもりかァァァァ〜ッ!?
こんな程度で負けを認めて、死ぬつもりじゃあないよなァァァァァァァァァッ〜〜〜〜!?」
N:肯定は私も断固しないが・・・そりゃうるさいですわ、ボスさん・・・。
”除夜の鐘の内部で、鐘を突かれる振動音”に比べればまだマシとは言えど、”1m”にも満たない隙間の中で、密接するように大剣で叩かれ続ける”鉄の処女”があれば、嫌でも耳を塞ぎたくなるだろう・・。
ただ・・・奴は悪趣味の一言に尽きる・・・。
彼の身長は”182cm”程あるのだが、奴はその”頭一つ分を軽く越すデカさ”と"筋肉量"を持つ上に、恐らくその巨体は「タフネス」状態の彼とほぼ同格か、それ以上のパワーを有しているハズであるにも関わらず、大剣で叩き続けているのだ・・・。
押し込めば、すぐに彼を”圧殺”できるのにも関わらず・・・だ。
完全に遊んでやがるのが非常に腹立たしいッ!
しかし、何も彼はただ”休んだり”、”騒音を聞き続ける”ために態々この隙間に潜りこんだワケじゃあないッ!
(二人をそっと降ろしつつ、鉄の処女に”両足”を、反対の壁に”両手”を当てて)
よっと! 落ち着けェ・・・ラフィルを助けた直後は”服の下に金属製の鎧”を仕込んでいるとかの可能性を考えて、二の舞を回避していたワケだが・・・「スピンブロウ」は、”手で殴りつけた相手を螺旋の如く吹っ飛ばす”・・・ってイメージをしたからできたオレの魔法技・・・魔技だッ!
(両掌両足に力を込め、「鉄の処女」を押し出し始めながら・・・)
なら・・・”手”を”足”に変えてイメージをすれば・・・ッ! 足にだって・・・できなくないハズ・・・ッ!
お
「ウオォォォォォォォォォォォォォォッ!」
N:奴が遊びながらも、大剣による連打で少しずつ・・・確実にボス達を追い詰める中、それに抗うよう気合の一声を叫びつつ、押し返しながら足に魔力が行き渡るようにイメージをするッ! すると・・・ッ!?
~ ドドドドドドドドッ! ~
N:ジョジョに・・・徐々にだが、彼の両足に”竜巻”が帯び始め、今にもはち切れんばかりの”風魔法によるエネルギー”が蓄積されていくッ!
そして・・・竜巻がつま先から”膝丈”までに成長した所で・・・ッ!
「”スクリュー・・・ストライク”ゥゥゥゥッ!」
~ ドドドドドドドドッ! ヒュウゥゥゥゥゥゴウィィィィンッ! ~
「ドロォォォォォプッ!?」
~ ズガィィィィンッ! ~
N:これは痛快ッ! いやッ愉快ッ!
ボスによって繰り出された”竜巻を帯びし、螺旋のドロップキック”ッ! 新たなる魔技「スクリューストライク」によって、派手に押し倒された「鉄の処女」により、奴が押し潰されるまでの一連のワンシーンは、是非、カメラのシャッター音付きで必ず3回はリプレイするように見たい代物だッ!
・・・鉄の処女の下から血がドックドク出てるけど・・・そう、明るく言ってるって事はァ・・・倒しきれてないん・・・だよな・・・?
N:当たり前であるッ!
敵の最後はその魂の骨の髄までに伝わるよう、行ってきた行為が哀れかつ惨めに見えるよう、その最期までを語るのが私のポリシーなのだからッ! 当然であろうッ!
・・・できれば、不死身な野郎がいない 状況だろうと聞きたくなかったぜ・・・。
って、そうだ! 「メディケア」で応急処置したんだから・・・ッ!
N:そう思うな否やボスは、二人を先程と同じように担ぎ上げ、真っすぐ今いる反対側・・・入口から見て部屋の中央よりも少し右側まで二人を運んでいき、一旦そっとふたりを寝かせるとラフィルを両肩を掴み揺すり起こし始めたのである。
・・・恐らく、このままだとキツいと思った彼が、馬が合わない事を重々承知で、この場で奴と交戦できる戦力として、”ラフィル”を起こそうと思ったのであろう・・・。
「おいッ! ラフィル起きろッ! 起きろってばッ!」
「・・・」
「おいッ! お前の姉ちゃんが何かあってもいいのかッ!?」
「・・・」
「クッソ・・・(リフィルを一瞥してから)
リフィルに無理強い出来ないしな・・・仕方ない・・・。
とりあえず、野郎が起き上がってくる前にSAAのリロードをしとこう・・・」
N:そう言うとボスは、ポケットに突っ込んでいたSAAを引っ張り出し、ローティングゲートのフタを開いて、シリンダーの各穴をゲートの穴に合わせながら、エジェクターロッドを操作し、一発ずつ弾頭がなくなった”空薬莢”を押し出して排莢してゆく・・・。
二人の意識が戻る事を気にかけつつ、時折、奴を警戒しながら”6発分全て”の排莢を終わらせると、新たな弾を”ウェストポーチ”から引っ張り出そうとした・・・・・・その時ッ!
~ ブオンッ! ~
「ウオッ!?
(急に腹這いに伏せる)」
~ ドゥゥンガラシャャャャーンッ! ~
「さっっきのは、チョイとビックリしたよォォォ~。
だけど・・・今までの俺様の攻撃と比べりゃあァァ~随分地味な攻撃だったなァァァァ~ッ!?」
・・・シャレになんねェなぁ・・・おいッ!
なんとなく・・・あの野郎の”足先から首近く”まであるデカさの”大剣”をブンブン振り回すから、分かったつもりでいたが・・・「鉄の処女」ブン投げてくる・・・って、うわ~反対側のヤツにブチ当たって、パッカリ開いちまってるよ・・・扉も若干拉げちまってるし・・・絶ッ対ェェ、入りたくないな・・・アレには・・・・。
「・・・オイッ、ボケっとしてないでェ~俺様の攻撃に・・・
少ィとは、反応しやがれよォォォォォッ!?」
「ッ!? ちょッ! 唐突に突っ込んでくるんじゃあねェよ!?」
N:デジャヴュってるハズにも関わらず・・・余りにも非常識な奴の”怪力”に思わず”呆けて”しまったボスは、奴の突進に数秒遅れて反応するという、確認などの”慎重さ”を重んじるボスにとって痛恨のミスを犯してしまう・・・ッ!
慌てて二人を抱えて再び逃げ出そうとするが、彼は妙な倦怠感に思わず転びそうになってしまう・・・。
それもそのハズ、先程までの”マラソン”後、彼から立ち上っていた”青いオーラ”はいつの間にか四散しており・・・逃走の生命線であった”タフネス”は既に効果が尽きていたのだ・・・。
彼は何度かこのような体験をしていたのだが、何も「厄介事の後の”安心感”から起きる”疲労”」程度でしか思っていなかったのだが・・・実は違う。
彼が用いる「身体強化系のスキル」は効果時間を過ぎると一瞬、強い倦怠感と共に数秒間の”クールタイム”に入ってしまうのだ・・・。
しかも、「1日の間で短いインターバルで使用すると、少しずつであるが”この二つがより長く顕著に感じられてくる”」と言う隠れたデメリットを課せられている今・・・彼の体は鉄の”1.5倍近い”比重を持つ・・・それこそよく聞く”鉛のように重い体”になっているのだ・・・。
”鉛弾”で攻撃するのが定石な銃使いにとっては、”皮肉”にも聞こえそうな状況だが・・・。
一瞬、彼の脳裏に・・・”押し寄せる暴走機関車に無残に轢き殺される”そんなイメージが鮮明に過ぎりそうになるが、彼は心の中で必死に頭を振る・・・ッ!
「死んでる場合じゃあねェ!」・・・そうオルセットに言い切ったのだ。
あのクマ公の時みたいにもう、オルセットやまだ見ぬ仲間達にもう”心配を掛けさせる”だなんてさせるかッ! 死んだら仲間にした責任なんて取れないんだよッ!
走馬灯の如く流れる否定的な思い達を払いのけるかのように・・・彼は雄叫びを上げつつ、苦し紛れに”バックパック”内の”証拠品”以外を床にブチ撒けたのだ!
「こっちに来んなァァァァァッ!」
~カンッ、カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラッ!~
数多の金属音と共に、実に<120発前後の”SAAの弾”>が突撃してくる奴に目掛けてブチ撒けられるッ!
しかし、奴は”何”をブチ撒けられたかも”理解せず”に、”トチ狂ったカス罪人の悪足掻き”程度にしか思わず、そのまま突っ込むのであった!
~カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラッ! ガッ!~
ここで突然だが、◯者の諸君は「ケースレス弾」という物をご存知だろうか?
この弾は文字通り、「薬莢のない」弾薬で、これは発射薬の入れ物となる薬莢が”燃えてなくなる”素材を用いて、”空薬莢によるリスク”や、弾薬の製造コスト、総重量が重くなる弾の重量軽減を狙った物なのだが・・・重要なのはそこではない。”何故”これが開発されたかが重要なのである。
発射された後の”空薬莢”は、高圧、高温の発射ガスによって膨張する形で変形しているため、次弾を発射する際は発射装置の傍にある”薬室”から速やかに”排莢”しなくてはならない。
しかし、排出したから次弾を撃てて安心・・・ではなく、この排出した「空薬莢」こそが現代でも兵士達にとっての”悩みの種”の一つなのだ。
排莢した瞬間の空薬莢は、発射ガスによって「火傷する程に熱く」なっており、服から露出した”肌”や最悪”目”に当たろう物なら・・・まぁ、予想は付く悲惨な事態だろう。
だが、今一番ここで言いたい事としては、「地面へと落ちた空薬莢」なのである・・・。
ギャグ漫画を好きでない方には申し訳ないが、この空薬莢を別の物に例えるとするなら「道端に落ちている”バナナの皮”」なのである・・・。
そして、栄えあるこの”ボケの象徴”に、勇気ある踏み込みをしたのなら・・・それに対する”栄光のツッコミ”が与えられるのは当然の事・・・。
これが戦場なら、”銃弾や流れ弾”によるツッコミで漏れなく貴方を「”死後の世界”永久ツアー」にご招待する物なのだが・・・未発射とは言えど、同じ形状である”SAAの弾”を踏んだ奴の行く末は・・・!
~カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラッ! ズデェ〜ンッ!~
N:見事なスライディングッ! イヤ・・・頭からスッ転ビングッ!
滑った距離は極僅かであったが、ボスに突っ込む手前で何とか足を取られて止まるのであったッ!
危ねェ・・・ッ! あん時はもっと情けない声で叫んで、より突っ込ませやすくするべきだったんだが・・・思わず”負けたくない”・・・って、思いが勝っちまったぜ・・・。思いっきり叫んじゃった・・・。
まぁ・・・結果オーライか。(散らばった”SAAの弾”を掻き集めながら)早く弾を拾って・・・ッ!?
〜 カラカラカラカラカラカラカラカラ・・・ムクリ 〜
おいおいおいおいおいおいおいおいッ!? まだ1分も経ってないだろッ!?
「クハァァァァァ〜(首をコキコキ鳴らしつつ、立ち上がりながら)
おい、カス罪人・・・この俺様を3回も驚かせた事だけは褒めてやる・・・
だがなァ・・・チマチマチマチマチマチマチマッと!
(大剣を両手で握りしめ、大きく振りかぶりながら)
俺様に小賢しい手で盾突いて・・・俺様の処刑の邪魔してんじゃあァァァァァァねェェよッ!」
天高く掲げられ、激しい風きり音と共に振り下ろされる中・・・ボスは必死に考えていた・・・。
避けるか・・・!? 込められた”1発”を撃つか・・・ッ!? 一か八か銃で受け止めるか・・・ッ!?
常人では”絶望”しか考えられないであろうこの数秒を、ボスは一切の逃亡や敗北も考えずに、”奴に立ち向かう”事だけを最期の時まで考えていたのだ・・・ッ! 仲間を守るそのためだけにッ!
「・・・・・ボォォォォォォスゥゥゥゥゥゥゥッ!」
〜 ブゥゥオォォォンッ! ピタッ 〜
(ボスの顔面に当たる直前で、振り下ろされた大剣が止まる)
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・オルガ・・・か?
(振り下ろされる大剣を前に一瞬、顔面蒼白になるが、響いた声を聞いて幾何か安堵しながら)」
「・・・おいおい、誰だァァァ〜?
せっかくの楽しみを興醒めさせる奴はァァァァァッ!?」
〜 ガンッ! ガンガンッ! ガンガンガンッ! 〜
「(構えを解きつつ、入り口に体を向けながら)
クハハハハハハァァッ! 壊そうっていうのかッ!?
その帝国製の鉄格子をッ? 傑作なもんだなァ!
その最高級品に幾らつぎ込んだか分かった時にはァ・・・」
「(入り口の扉と奴の位置を、一瞥した直後に)
オルガッ! そのままブチ当てろッ! (即座に伏せるッ!)」
「んァァァッ?」
「ニャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
〜 ドガウィィィィンッ! ガウィィンッ!〜
「ゴウシィッ!?」
~ ズデェ〜ンッ! ~
N:最後まで諦めない”信念”か・・・はたまた、彼女を信じて時間を稼ぎ続けた”努力の報い”か・・・。
絶体絶命のピンチを文字通り「鉄格子ごとブッ飛ばした」のは、ボスからの頼みを果し遂げ、「後ろ蹴り」によって鉄格子を蹴り飛ばし、残心したまま入口に凛と佇む・・・。
今度こそ本当の意味で”オルセット”が彼の窮地を救ったのだ!
「ボスゥゥゥゥッ~! ボォォォスゥゥゥゥゥゥゥッ~!
(泣きじゃくりまくりながら、起き上がり掛けのボスに飛びつく)」
N:・・・まぁ・・・当分、彼女の”カッコ良さ”は”泣き虫”の陰に隠れがちになりそうなのは、ご愛敬だが・・・。
「(飛びつかれて、尻もちを突きつつ・・・)っとッ!
イテテ・・・痛テェよ・・・オルガ・・・(優しい声色で)」
「だって・・・だってェェェェェ~ッ! ボスがァァァァァァァ~ッ!
(泣き度合いがヒートアップ・・・ッ!)」
「だぁ~ヨシヨシ・・・(頭や、ネコ耳の後ろを撫でながら)
ホント、ありがとな・・・オルガ」
「・・・エへへ・・・くすぐったいよぉ~ボスゥ~。
(撫でられつつ、泣きがジョジョに収まる最中に)」
「・・・やれやれ、いつからこんな甘えんぼで大きな”ニャンコ”が、仲間にいたんだろうな? (優しくも、からかうような口調で)」
「・・・ブゥ~、ボ~スゥ~! ボクは”ニャンコ”なんてモノじゃあないよっ! 臆病でも泣き虫でもない、ユ~カンなプラット族の”オルセット”だよッ!」
「(・・・理解してないのかぁ・・・まぁ、後で教えればいいか・・・)
スマン、スマン。それよりも・・・ッ!? オルガッ! 後ろだッ!」
〜 ブゥゥオォォォンッ! ダッ! ガウィィィンッ! 〜
N:この”リア充”共めがッ!
・・・とそんな幻聴が聞こえなくもない渾身の一撃を、先程の鉄格子の一撃など歯牙にもかけるかッ! ・・・と言わんばかりに重なる二人へと振り下ろすッ!
しかし、そんな嫉妬と邪念に塗れた(?)一撃は、またも未遂に終わる・・・。
何故なら、未だボスへと募らせる”甘酸っぱい思い”が何なのかを全く理解できず、漠然と「好きッ!」の思いだけで進展させずに突っ走らせているオルセットによる音速級の「旋風脚」によって、”蹴り弾かれ”てしまったのだからッ!
「・・・ボスを傷付けるなら、ボ・・・ボクが許さないぞッ!」
「ハァァァァァ~?
畜生風情が、人間様である俺様に楯突くとは何事だァァァ~?
俺様の一撃を”紛れ”で躱せたからって、チョ~シに乗んなよォォォ~?
しかも、ビビってんのかァ!? なら・・・今すぐにでも嬲り殺して、その”震え”を止めてやろうか? クハハハハハァァァッ!」
『(・・・剣を蹴り弾かれた時点で、力量を見極めろよ・・・アホが・・・)
オルガ、まだ”殺人”に苦手意識があるんなら、無理すんな。
今は、此奴をどうにかして、退けてからの撤退が優先だ』
「イヤだッ! もうボスがいなくなるのはイヤなんだ!
もう、”一人ぼっち”になるのはイヤなんだッ!」
『(ここに来るまで・・・オレに対して、何かと必死だったよな・・・)
気持ちは分かった。感謝しきれないぐらいにだ・・・。
だからこそ、今から「コール」に切り替えてオルガに頼みたい事がある・・・』
「あっ! 『ご・・・ゴメン! ボスゥ! つ・・・つい熱くなっちゃって・・・』」
『気にすんな。スキルなしでもオレのCQCをほぼ完璧に覚えたみたいに、分かってくれたなら良い・・・。
それよりも、さっきオルガに押し倒されたおかげで、チョイと思いついた事があるんだ』
『思いついた事?』
『そうだ』
「おいっ! さっきから喚いたり黙ったり・・・テメェら一体なんなんだよッ!? 叩き切ってもいいのかァァァァァッ!?
(再び大剣を振りかぶりつつ)」
『(まだ舐めてんのかよ・・・
それとも、多少オレらにビビり始めたか・・・?)
オルガ、指示は随時「コール」でする。とりあえず、オレは二人をこの部屋の入口付近まで運ぶから、奴の注意を引き付けてくれ。
後・・・見てわかる通り、アイツは”不死身”だ』
『フジミ・・・?』
『”オルガの爪で突き刺しても死なない”奴だ。
少し気絶した後に起き上がってくる・・・。
処刑場で、オレが撃ったのを覚えてるだろ?』
『あっ! ボクにナイフを投げつけてきた奴ッ!?』
『そうだ。
とにかく、”簡単に倒せない奴”だから、多少派手に攻撃しても大丈夫だ。
準備が終わるまで、思いっきり引き付けてくれ。・・・そろそろ行くぞ?』
『うんッ、了解ィ! ボスゥ!』
「い・つ・ま・で・・・
黙り腐っている気だァァァァァァッ!? アァァァァァァァッ!?」
N: その一声と共に、大剣は振り下ろされ二人は弾かれたように走り出すッ!
ボスはエルフ姉弟を抱え”拷問室の入口外”へ・・・ッ!
オルセットは、彼を追いかけるようとする奴の行く手を阻むように、爪を伸ばしつつ顔面へ・・・ッ!
背後からのむさくるしい悲鳴が部屋中に響いた後、ボスは入口へと転がり込む事ができた。
傷は彼の努力やオルセットのおかげで無傷であったが、過呼吸に迫るほどの疲労困憊さに体を蝕まれつつあった・・・。
無理もない・・・。なにせ、20分近くも、合わせて100kg近い二人を抱えたまま、「タフネス」を用い、人外じみた「逃亡マラソン」を休憩なしに続けたのだから・・・。
時折、剣が弾かれたり空ぶったような金属音をバックに、二人を並べて壁にもたれ掛けさせた彼は、何やら考えあぐねていたようだが、溜息を一つした後、右手を黄色く光らせる・・・。
すると、一つの「ダンボール箱」が出現し、その中からおもむろに”2Lの天然水が入ったペットボトル”を取り出すと、思いっきり中身を飲み始める・・・!?
何をやってんだ・・・と思っていれば、残り半分になった時に急に飲むのをやめ、以前ダースから購入していたナイフでペットボトルの空部分を切り落とすと、残りの中身を”ラフィル”目掛けてブッ掛けた・・・ァッ!?
「(咳込んだ後、軽くブルブルと首を振って水を払いながら)
ゲホッ、ゲホッ!? ・・・プハァ! 何しやがるッ!?」
「それはこっちのセリフだ・・・。(片膝を立てた状態で)
勝手に敵地に特攻して何やってんだよ、ラ・フィ・ル~? (軽く怒気が籠った声で)」
「うるせェ! 姉ちゃんが攫われたんだぞ! 助ける以外に何しろって・・・
(右肩にもたれ掛かる感覚を察知して)・・・姉ちゃん?」
「・・・文句なら後で幾らでも聞いてやる。ついでに説教もだ。
だから、今はここで、お前の姉ちゃんを守っとけ。シスコン騎士様よっ。
(「だから~」の所から少しニヤつきつつ、からかうような口調で)」
「ッ!? おいッ! なんでクソ人間がそれを知ってんだ!?」
「それも後だ。
とりあえず、そこに置いてある箱の中の水でも飲みながら待ってろ・・・
(立ち上がりつつ、振り返って再び部屋の中へと向かう)」
「おいっ! オイッ! 待てよ! クソ人間ッ!」
N:起こした後に、自分の事で何かしら暴走しださないか・・・そんな一抹の不安を残しつつもボスはオルセットが待つ戦場へと再び足を踏み入れる・・・。
時間稼ぎを頼まれた彼女は、爪で弾くのに相当手を焼いたのか・・・いつのまにか自身が蹴り飛ばし大きく拉げた”鉄格子”を時に棍棒のように振り回し、時に盾のようにして大剣の一撃を凌ぐなど、奴との一進一退の攻防戦を繰り返していたのであった・・・。
この光景に思わず彼は「成長してるな・・・」と、ちょっとした感動を抑えきれずにいた・・・。
あの臆病で”戦闘”という行為にとことん躊躇し震えていた彼女が、この街に来る前の数々の出来事や彼との一週間の訓練の末に、自分では全く歯が立たないような相手の攻撃を捌き切っているのだ。
こんな状況と、彼女の「ボスを守りたい」という彼女のシンプルな好意に、不謹慎さと、己の”人間”としての現状の弱さによる多大な申し訳なさを感じつつも、その小さな喜びを噛み締めていた・・・。
そして・・・同時に、「必ずオルセット達と共に”生きて”脱出する」事を決意する・・・ッ!
『オルガ、ラフィルを目覚めさせる事ができた。
苦しいかもしれないが、もう少しオレの方の準備が整うまで時間稼ぎを頼むッ!』
『ニャッ! (大剣を鉄格子で弾いた際の掛け声)
そう!? やったねボスゥ! ボクは大丈夫だよ!』
『無理すんな。
ヤバくなったら、すぐに連絡しろ。オレが変わるからな。』
『ニャヴッ! (大剣を鉄格子で防いだ際の声)
ダイジョウブだから! ホラ、ボスゥ、早くッ!』
『・・・ホントにすまないッ!』
N: そう思念を送った後、ボスは走り出すッ! あの拉げた「鉄の処女」目掛けて・・・。
しかし、その光景を横目に捉えていた奴は、2度、3度、してやられた事でようやく彼の行動を危険視し始めたのか、オルセットが奴の攻撃を受け止め、僅かによろけた隙を狙って大振りの横薙ぎによって彼女を弾き飛ばし、部屋の隅へと追いやった・・・ッ!
「ボスが危ないッ!」弾き飛ばされた勢いを踏ん張り、ようやくその慣性が止まった際にボスの元へと大剣を振り上げながら迫る奴を見た瞬間ッ、噴き上がるような”怒り”を彼女は感じていた。
そしてその感情と共に、既に彼女は動き出していた・・・。鉄格子を軽く放り投げると、放物線状に落ちる鉄格子目掛けて走り、タイミングを合わせて「中段回し蹴り」を鉄格子に噛まして、今度は奴の”頭”にクリーンヒットさせたのであるッ!
〜 ザッザッザッザッザッ、ブンッ! ガウィィィンッ!
ビュゥゥンッ! ガウィィィンッ! 〜
「キミの相手はボクだよッ! ボスには手を出すなッ!
(多少ドスの入った声で叫ぶ)」
「ツゥァァァ・・クゥゥゥゥゥッ! (左手で直撃した後頭部を摩りながら振り返る。同時に片方の鼻の穴から鼻血が流れる)
畜生風情がッ! 人間様が楯突いてんじゃあァァァァねェェよッ!」
「ち・・・チクショウなボクの攻撃を受けてるクセして
・・・ボ、ボスに勝てると思ってるのッ!?」
「グッ・・・クヌゥゥゥヌゥンヌゥゥゥゥゥッ!」
「(よしッ! ボスから引き離せるかもッ!)どうしたのッ!? 来なよッ!
この”臆病なオルガ”以上にッ、キミは臆病だったりするのかいッ!?
ボク以上の”コシヌケ”なのかいッ!? キミはッ!」
「・・・ヌゥゥゥゥゥッ! チョ〜シに乗るなァァァァァッ! ド畜生がァ!
誰が・・・畜生風情より”臆病”だとォォォォッ!?
”腰抜け”だとォォォォォッ!?」
N:”暴力に飢えた豚”にも、曲げられない矜持があった事に驚き物だが、やはり豚は豚なようだ・・・。
腕力以上に知能指数が低そうな真の”ド畜生”は、先程まで幾何かあった近衛騎士らしい見事な太刀筋は何処へやら・・・怒りのまま、矢鱈滅多らに大剣を振り回しながらオルセットへと突進して行くッ!
しかし、彼女は迫り来る剣の嵐が訪れてもその場を離れず・・・ボクシングでの回避技術であるスウェイやダッキング、サイドステップや不意なジャンプからの体を捻って空中回避・・・ッ! などを駆使し、常にギリギリを狙った所で避けて行くのであった・・・ッ!
「先程のカス罪人に続いて、この畜生風情がッ! どこまでも舐め腐りやがって!」・・・と、”当たりそうで当たらない事”に”もう少し! もう少し!”と業を煮やし、剣の振りの速さを徐々に上げて行く事ばかりに、夢中になったが故に奴は気づかない・・・ッ!
彼女が回避する度に、少しずつ部屋の中央に誘導されている事に・・・ッ!
避けている最中・・・ずっと首筋に人差し指と中指を当て続けていた事に・・・ッ!
〜 ブクゥゥオォォォンッ! ダッ! 〜
「ニャャャアッ!」
〜 バッキャアァァァッ! ガランッ! 〜
「ウワァァァァッゴォォッ!?」
業を煮やした奴、渾身の”横薙ぎ”をジャンプして躱し、それと同時にオルセットは奴の”下顎”目掛けて強烈な「蹴り上げ」を食らわしたのだッ! ここで唐突な余談だが、ボクシングで”アッパーカット”が何故、有効打になるかと言うと、的確に人体の急所の一つである「顎」を打ち抜いているからなのであるッ!
その一撃は人体の構造上、強烈なダメージと共に”大きく脳を揺らす”ため「脳震盪」を起こしやすく、意識を一瞬で刈り取られたりするが故に、ワンパンチの”K.O勝ち”が成立したりするのである!
そのため、異世界人だろうが人間としての体の構造が変わらない奴も、彼女の蹴り上げによって、「脳震盪」を起こしていたッ! 意識は朦朧とし・・・目の焦点が定まらず・・・自身が何に怒りを燃やしていたのかを忘れそうになる程の一撃・・・。
しかし、そんな朦朧としたボヤけた視界の中に、”何か大きな灰色の物の前に佇む人影”を捉えた瞬間、煮えたぎらんばかりの怒りが再び奴の体の中を巡る・・・ッ!
大きく被りを振り・・・握りしめていた大剣を振り上げ・・・・・・・振り上げ・・・?
「け・・・剣はッ!? 俺様の剣は!?」
「・・・残念ながら、お前の”オモチャ”は回収させて貰ったぜ・・・」
「ッ!? クソ罪人がァァァァァァッ! ウッ!?」
朦朧とした視界がやっと戻ったかと思えば、次に見えたのは目を焼き潰さんばかりの”強烈な光”・・・。
奴は両腕で覆い隠して見えないが、視線の先には”大口を開けた鉄の処女”をバックに、大剣の柄を逆手に握りしめ、刃を引きずるような形で佇む”オルセット”と、”利き手に銃、目線と同じ高さにもう片方の手で逆手にライトを握り照らす”「モッドフィールド FBIホールド」というテクニックを用いて拷問室まで降りる階段で使用していた、「LED式の小型”ビームライト”」を奴の”目”に向かって照らす”ボス”であったのだッ!
一見、意味のないような行為に見えそうだが、現代ではフラッシュライトによる”目潰し”は、護身用アイテムや一部の軍や特殊部隊にも重用されているテクニックの一つなのだ。
ボスが使用しているのは、彼の世界では有名な”シェルファイア”製の軍用にも使えるモデルで、人間の目を眩惑させるには十分過ぎる”500lm”もの光を闇や敵に向けて照射する事ができるのであるッ! その威力は前述の奴の反応を見れば一目瞭然であろうッ!
「本当は、テメェを挑発して、こっちに突っ込むのを利用し・・・後ろの鉄の処女にブチ込もうと思っていたんだが・・・
テメェの”大剣”が邪魔臭くてしょうがなかったんだよ・・・ブチ込める間合いへと来る前に、大剣のリーチを生かして、”離れた”位置から振って、オレを”薄切りのスライス”にでもしたら・・・って懸念してたんだが・・・”脳震盪”で取り落としてくれるとはな・・・良い誤算だったよ・・・」
「クッ・・・ソガァァァァ!」
「けど、そんな心配も考え過ぎだったか! 武器はオジャン、既にテメェの弱点はオレに捉えられてる・・・テメェに残された道は、オレの真後ろにある”鉄の処女”へと逆にオレをブチ込む、”勝者の道”か・・・無様にこの場から逃げ出す”敗者の道”の二択だけだ。
・・・まさか敵前逃亡なんて考えないよな? 栄えある王国近衛騎士団、団長以前さんよぉッ!? あぁ! 出来損ない団長さんの方がいいかァ〜ッ!?」
「プッ・・・クスクス・・・
ボスゥ・・・何か分かんないけど・・・変な名前だねぇ!
(空いた手で軽く拳を握り、その手で口を隠しながら)」
「お・・・俺様の強さを・・・馬鹿にするなァァァァァァァァァァァァッ!
このッ、ド畜生のクソ罪人共がァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!
(右拳を振り被りながら、ボスへと突進しようと構える)」
「本当のド畜生を履き違えてんじゃあねェよ・・・。
(呆れつつ、照準を合わせる)・・・これでチェックメイトだ・・・」
〜 パァァァァンッン!!! スカッ、キンッ! 〜
「クッハァハァハハハハハハッ! 挑発と啖呵を切ってそれかァァァァッ〜!?
魔道具の一撃を外すのかァァァァ〜!? 俺様に躱されるのかァァァァァ〜!?
傑作だなァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ〜!?」
「クソッ・・・最後の一発だったのに・・・!」
「ボ・・・ボスゥ・・・どうするのッ!?」
「クッハァハハハハハハッ! 万策尽きたみたいだなぁ!?
敗者の道を歩むのはァァァァ・・・やっぱりテメェら・・・
クソ罪人共なんだよォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!
(勢いよく走って突っ込む)」
「・・・そうだな・・・クソ罪人だな・・・(俯きつつ)」
N: (カチッ! プツン・・・)
エッ!? ウソッ! 万策尽きた!?
「異界の傭兵団」の最終回ィィィィィィィッ!?
ウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソッ!?
「・・・テメェがなッ!」
〜 ジャラジャラジャラ・・・ガタンッ!
ザッザッザッザッザッ、ダダッ! ズザァァァァッ! 〜
「トワァァァァァ!? トトトトッ!? (鉄の処女に突っ込む寸前になる)
なんだァァァァ!? 唐突に左右に避けやがってッ! ・・・アレかァ?
俺様がコイツに突っ込みそうになった瞬間、その両扉を閉めて俺様を押し込もうという魂胆かァァァァァ!? すみませんねェェェェ〜無駄にしちゃってェェェェ〜ッ!」
「最後の挨拶・・・ご丁寧にどうも・・・」
〜 ズウゥゥゥオンッ! 〜
「あぁぁぁぁ? 最後ォォォォ・・・? (何気に後ろを振り向く)
ッ!? グボハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」
〜 ドグサッシャアァァァァァァァンンンッ!
ガガッ! ガンッ! ・・・ガシャンッ!〜
「ハァハァハァハァ・・・計算尽くにやってやったぜ・・・ッ!
ど〜だッ!コンチクショォォォォォォォォォォォォ〜ッ!」
N:異界の傭兵団は・・・最終回に泣く泣く・・・ならなかったァァァァァァッ!
(カチッ! ブゥゥ~ンッ)なんと喜ばしい事であろうかッ! 泥臭くはあるが、紛れもなくボス達が掴み取った勝利である! 勝利なのであるッ!
・・・いや失礼、落ち着こう。流石に、ここまで来て”一万七千字”近くなって、ウンザリしているであろう◯者向けに、”箇条書き”ではあるが熱くこの間に起きた事を語ろう!
1、ライトで牽制しつつ、挑発して奴が逃亡しないようにボスが誘導。
オルセットは素で便乗。
2、決めゼリフと共に発砲ッ! ”本当の目標”に当て、外したと錯覚させる。
3、敵の武器がなくなり、勝利を確信した奴が特攻。天井近くの”目標”を支える鎖が千切れ始める。
4、ワザと負けて動揺したように見せかけ、揺るぎない確信にさせる。
5、特攻後、奴が喋っている間に彼の本当の狙いであった、倒れた「鉄の処女」が元から配置してあった真上に存在していた”、振り子”を支える鎖が千切れるッ!
6、振り向いた瞬間、その鋭い斧のような鋒が、まだ”ライトの目潰し”が消えてなかった奴の土手っ腹へとダイビングッ!
7、奴を「鉄の処女」へと押し込み、最後にその両扉の後ろで待機していた二人が、ほぼ同時に「後ろ蹴り」を扉に放ち、扉を閉めて勝利ッ!
・・・といった具合である。
また”体言止め”っぽい話し方だなァ! おいッ!?
「・・・ボスゥ! アレ!」
「んッ・・・どうしたオルガ?
(彼女が指差す先を見て)・・・ラフィル?」
疲労困憊(特にボスが)な二人があの”暴力に飢えた豚”を仕留めたであろう「鉄の処女」の扉へともたれ掛かり、勝利の後のささやかな余韻に浸ろうとした時・・・オルセットは、少し足を引きづりながらも悠然と部屋の中奥にある”十字架”目掛けて歩く”ラフィル”を目撃するのであった・・・。
大事なハズの”姉”を残し、十字架に架かる”母親だった・・・物”を見上げる彼は、一体何を思っているのだろうか・・・?
〜 ガタッ、ガッ、ガッガッ! 〜
「おいっ! ラフィル! 何してるんだよッ!」
「黙ってろッ! クソ人間ッ!
コイツッ! をッ! ハズさッ! なきゃ! 行けないん・・・だよッ!
(バキャアッ! っと、頑丈に壁に固定されていた十字架が取れ、地面に置かれる)
・・・ここに置いてったら・・・姉ちゃんが・・・悲しむから・・・」
「・・・ハァ・・・本当は、すぐにでも脱出したいんだがなァ・・・
分かった、何か手伝おうか? ラフィル?」
「ボクも手伝うよ〜! (右手を挙手しながら)」
「黙ってろって言ってんだろうがァ! クソ共がァ!
これはオレと姉ちゃんの問題なんだよ!
呑気に休んでる、クズな人間とォッ! そんなのに従ってるクソな獣人が出しゃばってんじゃあネェよッ! これ以上関わんじゃあねェよッ! 疫病神共がッ!」
「・・・あぁぁ・・・ラフィル・・・そんなつもりじゃあ・・・
(ゆっくりと彼の元へと歩み寄ろうとする)」
「うるせぇ! 近寄んなッ! 今度は”姉ちゃん”かァッ!?
”助けるのが遅れた・・・すまない”って言って、また見殺しにするのかァ!?
そして最後には、”利用価値がない”って言って、ダークエルフのオレを殺すんだろォッ!? ふざけんじゃあねェよ! 消えろッ! 今すぐ消えろよッ! クソ人間共がッ!」
N:その怒りは・・・此処に辿りつくまでに、ラフィルが見せた理不尽な悪態ではなく・・・
ボス達に向けた・・・イヤ、正碓にはラフィルが「人間」を心底”憎む”ようになった・・・その片鱗が垣間見える・・・ボスらが”約束を果たせなかった”事への、正当な<責任への追求>であったのだ・・・。
先程の死闘を乗り越えてきた流石のボスも、この追求をのらりくらりと、追求されずに逃れられるような”策”を持つ事はなかった・・・。
彼らは、このラフィルの叫びに・・・只々、沈黙で返事を返すしかなかったのだ・・・。
「・・・ラルくん、いや・・・ラフィルくん・・・ボクたちは・・・ッ!?」
〜ガンッ! ガガガンッ! ガガガガガンッ!〜
「ウソだろ・・・ッ!?
(閉じた「鉄の処女」向けて振り向き、思わず後ずさる・・・・・)」
〜ガンッ! ガガガンッ! ガガガンッ! 〜
「クソ罪人共ガアァァァァァァァァアァァァァァァァァァァアアァァァァァァァァッ!」
「おいマジかよ・・・ッ! 化け物過ぎんだろッ! オイッ!?」
N:なんという異世界の恐ろしさであろうか・・・。
「鉄の処女」は構造上、背中は勿論、扉の内側にも上半身を中心に”鋭利な棘”が無数に突出しており、中に入れられ扉を閉められれば、その棘に串刺しになり絶命は避けられないはずなのだ・・・ッ!
なのにッ! その上奴は扉が閉じられた瞬間、奴の土手っ腹には”振り子”が砕けた大きな欠片を腹に残しているというのに、まだ生存し、扉から叩き出ようとしているのだッ!?
幸いにも、これだけ叩かれているのに奴がまだ出れていないのは、扉の前でまだ休んでいた”オルセット”が、「タフネス」を発動させ、必死になって扉を押さえ込んでいるからなのだが・・・
「タフネス」が切れた瞬間・・・彼女が抑え続けられるかどうかは、誰にも分からない・・・ッ!
「ボスゥ・・・ッ! ラルくんを手伝うなら早くしてェ〜ッ!
いつまで抑えられるか・・・ッ、ボクにも分からないからッ!」
「開けろッ! 開けろッ! クソ罪人共ッ!
今すぐ貴様らをバラバラにしてやるゥゥゥッ!」
「ヤベヤベヤベヤベヤベヤベヤベヤベェッ!
ラフィルッ! 今すぐ脱出するぞッ! すまないが、お前の母親の遺体は後回しだ!」
「ハァ!? ふざけんなッ!
ここまで来て姉ちゃんを悲しませるような事ができるかッ!」
「バカ言うな!
このままモタついてッ、お前を失う事が、よりリフィルを悲しませるだろッ!」
「疫病神が指図してんじゃあねェよッ!
もう、絶ッ対にッ! テメェの言う事なんて聞かないからなッ!」
〜ガガガガガガガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!〜
「開けろッ! クソ罪人共ォォォォォォォォッ!」
「ボスゥ・・・早くぅッ!
もう・・・1分もしない・・・内に・・・「タフネス」が切れそう・・・ッ!」
「あぁ・・・クッソ・・・ッ! どけッ! そこをどけッ!」
「どわッ!? おいッ! やめろッ!?」
N:ボスは煮え切らない決断を吹っ切るかのように、一声叫ぶと十字架から、エルフ兄弟の母親である亡骸を取り外すのに四苦八苦するラフィルを押しのけ、十字架と亡骸の状態をチェックした・・・。
十字架は頑丈な木材から作られているようで、遺体を固定している”留め具”は十字架による磔ではポピュラーな”釘”で両手両足を打ち付けられている物ではなく、太く粗めの”麻縄”によって、固く結びつけられているようであったのである。
これを見たボスはコレ幸いにと、持っていたナイフで素早く両手両足を固定する麻縄を切り、遺体を床に下ろすと・・・ッ!? エッ!? 何故か十字架をヨロヨロと持ち上げ、オルセットの元へと持って行くッ!?
「オルガ・・・タイミング良く・・・避けろッ!」
「ボスゥッ!? それで何する気なのッ!?」
〜 ガガガンッ! ガガガンッ! ガシャキンッ!
ダッ! ガシャン! ガガガンッ! ミシィィッ!〜
N:なるほどッ! この部屋に配置されていた「鉄の処女」達は、使用者の事を配慮(?)していたのか、扉の開閉に使用していたと思われる「両扉合わせて”Uの字”型の大きな取手」が付いていたのだ。
そこに、ボスはヨロケつつもなんとかジャンプし、その取っ手の”手を掛ける内側”に巨大な十字架をブッ刺して「閂」代わりにしたのだッ!
確かにこれなら僅かばかりであるが、逃亡するための時間は稼げるだろう!
「クソ罪人共ォォォォガァァァァッ! コイツをどけやがれェェェェェェッ!」
「よしッ! 上手く行った! これで少しは時間を稼げる!」
「ハァァァァ〜疲れたよォ〜ボスゥ・・・・!
(女の子座りになって、獣耳も垂れつつ、全体的に凹みながら)」
「すまないが・・・泣き言は後だ。オルガ。
今すぐにでも脱出しないとッ! ラフィルッ! そっちの準備は終わったかッ!?」
「・・・・・
(母親の遺体を背負いつつ、ボスを心底恨むような目付きにで睨んでいる)」
「ハハハァ・・・関係修復は前途多難だな・・・(ボソッ)
オルガ、すまないが入り口に置いてきた”リフィル”を背負ってくれ・・・。
正直・・・立ってるだけでも結構キツイからな・・・ッ」
「うん、分かったよボスゥ・・・
(ヨロヨロと立ち上がり、入り口まで駆け足で行く)」
「本当にすまないなァ〜ッ!
(鉄の処女近くに転がっていた”大剣”を一瞥した後、拾い上げ)
よし・・・ッ! これで回収できるものは回収したな・・・脱出するぞッ!」
N: そうしてボス達は、ボスを先頭に恐ろしき拷問室から駆けて脱出して行くのであった・・・ッ!
決して諸手を挙げて喜ぶ事は出来ない・・・悲しき勝利に心を痛めながら・・・。
<豆知識>
ルーメン(lm)は、光の"量(光束)"を表す単位。
ワット(W)は、"消費電力"を表す。
参考程度にだが、40Wの白熱電球が発する"lm"は、<約500lm>以上。
"六畳"程の部屋を満遍なく照らすとしたら、(光の広がる角度を考えない場合)約6個程の40W電球が必要と、書けばお分かりいただけるだろうか?
※2018年10月2日、「Mr.N」のナレーションを中心に、細かい所を含めた大幅な修正しました。
(申し訳ありませんでした・・・<(_ _)> キレイニミセルノムズカシイ・・・)
※2018年10月10日、2章現在のボスのMP総量に誤りがあったため、修正しました。
再開が一年振りだったのもあり、ド忘れしていました・・・スミマセン。
(オルセットとリフィルそれぞれの"MP総量の十分の一"分が、"バディバンズ"のスキルによってボスのMP総量に加算されています)=「170/330」(誤)→「1290/1430」(正)




