Mission-27 ”潜・・zZzザZZzz・・・”
大変お待たせしましたッ!
週刊連載を目指すと書きつつ、この体たらく・・・いや、すみません・・・。
本当、仕事が始まって「帰ってから執筆」というのが大変になったもんで・・・(泣)
ただ、その分「さらっと流す」つもりだった今話ですが、かなり密度を込めて書けたと思いますッ!
なので、今話でどんな感情を抱いたせよ、最終的には
「スゲーッ爽やかな気分だぜェ〜
新しいパ◯ツをはいたばかりの正月元旦の朝のよーによォ~〜〜〜〜〜〜〜ッ」
・・・的な気分に導いてきたいと思うのでよろしくお願いしますッ!
(Haapy ENDは偉大ッ! ですからねッ!)
〜ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザッ!〜
「クソッ、クソッ、クソッ、クソォッ!」
N: 腐敗と悲しみに沈み込み・・・静まり返る”城塞都市マケット”のとある一本道を、時折すれ違った誰もが”場違いだ”と思ってしまう程に、ひた走る一人の男の姿があった・・・。
”場違い”なのは、何も”この街の空気に蝕まれていない”からだけではない。
走り去る風と共になびく、一目で麻ではないだろうと判る深緑色の”上着”に、身体に無駄なくフィットしたこげ茶色の”洋袴”・・・そして、それらの服と共に、これまた全くお目にした事がないであろう、黄土色がベースの”履物”を履いた若者が目にも止まらぬスピードで駆け抜けて行く・・・。
”墓場”にも等しい空気が渦巻くこの街の中では、嫌でも目立つだろう・・・みっともなく依れ出した”シャツ”も含めて・・・。
・・・・・・
(途端に、「ハッ! ハッ! ハッ!・・・」と、忙しかった呼吸が小さく細かい物になり、目元に影ができる)
N:・・・失敬な! 「N」である”私”の実況は最後まで聞くものだッ!
ウォホン! しかし、ただみっともなく服が依れてワケではない。
例えるなら・・・そう! "慌てん坊のサンタクロース"的なだらしなさではない。
"理不尽な遅延を待ち合わせる彼女のため、必死に巻き返そうとひた走る彼氏"や、もっと端的に言えば・・・そう! "絶体絶命のピンチに颯爽と駆けつけるヒーロー"とも言え、"絶望的な後悔に抗おうとしている"と言えるだろう・・・そんな服の乱れ方なのだ。
そして、どれも急いで着替えられたようにどの服もシワが多く、特に男の上半身・・・”シャツ”と”ジャケット”には、より多くのシワと何かに濡れたような跡があったのだ・・・。
まるで、自身の無念を晴らしてくれと言わんばかりに、涙した者に縋りつかれたように・・・。
・・・野暮なネタバレしてんじゃあねェよ・・・。
N:しかし・・・
・・・もカカシもあるか・・・ッ!
黙っていても、”行動で語れる”事はあるだろ・・・ッ!?
N:・・・「N」は了解した。これ以上の前置きは語らない。
だがしかし・・・もう直ぐ目的地に到着する。
変わった事はないのだろうな?
・・・連れ去られた”姫”と追いかけた”騎士”の二人を助け出す・・・。
邪魔する奴は、全員ブチのめす・・・。
以前、問題ナシだ。
N:・・・了解した。では、いつも通りに行こうか。
商会から領主館まで走って、この世界の住人の体感的には”20分以内”であったが、ボスの場合は”5分も掛からず”に辿り着いたと言えば、彼の速さと急ぎ様が分かるであろうか?
そして、領主館に辿り着き、まず目にしたのは中央から拉げ、門柱から豪快に吹き飛ばされた”両開きの鉄製門”と、粉々に砕けた”木製の閂”であった・・・。
それだけじゃあない・・・”玉座に足を組み、踏ん反り返るように座る王冠を被った男”・・・がモチーフらしき石像や、”金貨の山の上で玉座に踏ん反り返っている”・・・ように剪定されたであろう「トピアリー」など、持ち主のガメつさ、アコギさがビンビンに伝わってくる悪趣味なオブジェが陳列する珍妙な庭園を横切りつつ、”どんだけ玉座が好きなんだよ・・・”と、呆れ気味にタメ息を吐くしかなかった・・・。
さらに、領主館の正面玄関へと向かう中、彼が次々に目にしたのは、顔面、頰、鳩尾、腹・・・いずれにせよ、人体の急所に近い場所にほぼ的確に拳・・・または足跡が、皮膚や青銅の鎧の上にクッキリ残った状態で伸びている、散り散りとなった数十人の兵士達であった・・・。
「随分と派手にやったもんだな・・・」そんな風にボスは、(セコく見えそうだが・・・)ここに至るまでに消費した魔力を回復させるため、散り散りとなった兵士達の武器を次々と「バンディット」を用いて消費した魔力を補給しつつ、”バカ”の戦闘の荒々しさに呆れながらも、”戦闘力”だけは素直に心の中で賞賛していたのであった・・・。
この光景を見た後だからか、こんなに暴れた後なら多少は問題無いか・・・とでも考えたのか、玄関の扉前で左半身をそっと左扉に預けた後、ジャケットの胸ポケットから”SAA”を取り出し、残弾を確認する。
そして、腰に下げていた「ウェストポーチ」から”SAAの弾”を一発、取り出しシリンダーの空いた穴に、ローティングゲートを通して入れ、フルリロードさせるとゲートの蓋を閉じ、フルコックに切り替える・・・。
んっ? いつから「ウェストポーチ」なんて、持ってたんだって? これは失敬・・・このポーチは、前の豚との戦闘後、豚と豚が引き連れていた部隊の取りこぼしていた武器を「バンディット」のスキルを用いて回収した魔力で、新たに「アウトドアセール」で出した物だ。
彼が以前から持っていたバックパックと比べると、収納量は圧倒的に少ないが、戦闘で機敏に動く際に邪魔になりにくい。
そのため、今回敵の本拠地に乗り込むに当たって、複数装填できるリボルバーなら”チマチマと弾を創造する”よりも、”まとめて出しておく”方がまだリロードが早いと思った彼が”SAAの弾”の”弾薬ポーチの代用品”兼、”簡易バック”として彼がチョイスした物だ。
それはともかく・・・ボスは深呼吸の後、左手で寄りかかる扉を少しずつ開けながら、大きくなっていく扉の隙間に銃口を向け、いつでも敵に撃てるよう警戒しつつ、ジョジョに領主館の中へ己の体を滑り込ませて行くのであった・・・。
そして、彼は領主館の内装を見て思うのだった・・・。
「・・・さすがに思い違いであって欲しいが・・・
庭園と言い、この初代バイオな内装と言い・・・悪趣味過ぎるだろ・・・」
N:入ってすぐ目に止まる大きな階段・・・階段の踊り場に設けられた巨大な絵画・・・薄暗く陰気なこの雰囲気・・・それはボスが生前(?)、よくプレイしていたホラーゲームの金字塔、”バイオ◯ザード”シリーズの第1作目で、ゲーム開始直後に訪れる洋館のエントランスとよく似た物であったのだ・・・。
・・・まぁ、そんな感想と、若干の嫌な予感を抱きつつも、各部屋の探索を開始しようとしたボスが、ふと階段踊り場の絵画を見上げてみると、カルカから聞いた今回の騒動の主犯共と思われる尊大そうな雰囲気が漂う3人が、仲良く並んで描かれている事に気づくのであった・・・。
その中で特に彼は”赤の貴族っぽい服”を着た厳格かつ狡猾そうな目つきをした男が、実に高慢な微笑を浮かべていた事に強い印象を受けたらしく、銃を持った腕を・・・ッ!?
ちょ・・・ちょとッ!? チョットォッ! チョットォォッ!
・・・・・悪い・・・弾の無駄だったな・・・。
N:・・・(ドォダゲェ、殺意ガァ、湧イデイッスカッ!?)
さ・・・錯覚だ・・・一瞬・・・殺人鬼の如き・・・冷徹な眼をしたのはァ・・・錯覚ゥ・・・ウォッホンッ! ・・・よしッ。
深呼吸の意味はなんだったんだろうか・・・? と言う程の”ゲリラ豪雨”の如き怒気を何とか堪えたボスはまず、一階の部屋と言う部屋を虱潰しに探す事に決めたようだ。
社交室、夕食室、家事室、風呂場・・・続く2階は、朝食室、家族用リビング、書斎、化粧室・・・などなど、全ての部屋の名前を出していたらキリがない程、実に多彩な部屋が点在し、異世界好き(?)そうなボスなら新たな部屋を訪れる度に、彼の口角が僅かばかり上がりそうな物だが・・・全くの逆だ。訪れる度、ジョジョに鬼気迫る表情になってく・・・!
だが、ほとんどの部屋は、イカレた忠誠心(?)を持った”騎士様”が、愛しい”姫様”を救い出そうと必死に捜索していたのか・・・いくつかの扉が過剰に破壊されていたり、部屋内が滅茶苦茶にされ、壁に罅が入る程の拳の後が無数に存在あったりと、悲鳴どころかこの領主間の持ち主が見た瞬間、卒倒しそうな勢いで荒らされていた・・・。
しかし、そんな”捜索済み”そうな部屋でも彼は、一々タメ息を漏らすの惜しむかの如く、細心の注意を払いつつ、できる限り手早くかつ丁寧に・・・荒らされた残骸の下や怪しい部分がないかを、注意深く捜索する。
ところがどっこい・・・”キッチン”で木箱に隠されるように見つけた「奇妙な溝」以外、特に彼らに繋がるような手がかりは全くと言って見つからず・・・少し休憩も兼ね焦る気持ちを鎮めようとしたのか、2階の壁に寄り掛かり、片手で”SAA”の用心金に中指を掛け、クルクルと回す「ガンプレイ」で気を紛らわせようとしていたが、一向に彼の苛立ちは収まる気配がない・・・。
『ボスゥ・・・』
『・・・どうした、オルガ?』
N:そんな最中、唐突にオルセットからの「コール」が入り、無意識に深く眉間に寄せられていた”シワ”が少し緩まるのを感じながら、ボスは首の右側面側の頸動脈に人差し指と中指を当て、応答するのであった。
『今・・・少し・・・いいかな?』
『・・・いいぞ。だが、できれば手短にな・・・』
『グスッ・・・ゴメンね・・・ボスゥ・・・ゴメン・・・ッ
(すすり泣きつつ)』
『・・・ハァ・・・泣・く・なッ! (少し柔らかい声で)
いいか? オレが商会にいなかった時に起きた事は、既に終わった事なんだ・・・。
今更どうこう言おうが、どうしようもない・・・』
『でも・・・でもォ・・・』
『だァ・かァ・らァ! 泣くなッ!
それともなんだ? ”臆病”から”泣き虫”オルセットにでも、レベルアップするつもりか?』
『そ・・・そんな事ないよッ!
ぼ・・・ボクはもう・・・臆病じゃあないんだッ! 泣き虫でもないッ! (強気な口調で言う)』
『・・・(少し口角が上がり)その意気だ。
オルガはもう、<戦う意味>は持ったんだろ?』
『・・・うんッ。 ボスを守るためッ!』
『・・・だけじゃあないだろ?』
『あっ・・・そっか・・・えぇ・・っとぉぉ・・・”力ある者は”・・・』
『・・・”力なき者達のために力を振るう”。
”力を持ったから偉いんじゃあない”・・・。持ちたくても持てない・・・あるいは振るえない人達のために、先陣を切って”生き抜いて行く”・・・』
『それが”戦う”って事・・・?』
『そうだ。剣や銃を振り回す事だけが”戦い”じゃあない。
生きて行く”人生”こそ、誰にでもある真の”戦場”であり、”大切に思う者や信念”を”守り通そうとする行為”こそが、”戦い”だ。・・・ちゃんと覚えてんじゃあねェかよ』
『うん・・・言葉ァ・・・だけね・・・』
『(オルガが、チロッと舌を出しているのを想像しつつ、再び口角が上がり)
・・・ゆっくりで良い、理解していくのはな・・・。
臭い持論かもしれないが、正しいこと・・・”間違った正義”じゃあ無い事保証するぜ』
『うん・・・だからこそ・・・だよね・・・?』
『そうだ・・・だからこそ・・・オレらが”異世界からの力を扱っている”からこそ・・・責任をキッチリつけなくっちゃあいけない・・・。
商館の一件から・・・もう、この街とは完全に無関係じゃあなくなったからな・・・』
『うん・・・』
『・・・弱気になんな、オルガ。
オレらは絶対にやり遂げる。だから・・・商会に残っているカルカと、ダースを含めた4人をこんどこそ、しっかり守ってやれよ・・・』
『・・・でも、ボスゥ・・・』
『合図するまで待て。
したら・・・思いっきりオレらを助けてくれ。
あのバカを殴り飛ばすような勢いでな?』
『・・・うんッ。
・・・ねェ・・・ボスゥ・・・?』
『・・・どうしたぁ、オルガ? まだ何かあるのか?
(優しくも、チョッピリ急ぐような声で)』
『・・・ボクは・・・強くなれたよね?』
『・・・うん? 何言ってんだ、オルガ?
まぁ・・・心と臆病さに関してはまだまだかもしれないが、素の身体能力はオレより充~分ッ! オルガの方が強いって』
『・・・そうなんだね・・・。
じゃあ・・・なんで・・・ボクを一緒に連れてってくれなかったの・・・?』
『・・・それは・・・』
『最初にも言ったけど・・・ボクはボスを守りたいんだよ・・・。
ボスと一緒に戦いたいんだよ・・・? ボクはね・・・もう一人ぼっちになるのは嫌だよ・・・! ねぇ、やっぱり・・・ボクは弱いの・・・? 弱いから・・・ボスと一緒に付いて行っちゃあだめなのかなぁ・・・?
(「弱い」辺りから、再びすすり泣き始める)』
『・・・ (低く・・・重く唸る)』
『ねぇ・・・ボスゥッ!?』
『オレは・・・』
『・・・?』
『・・・オレは・・・
オレ以外に関わってきた大切な人達や仲間を”失う事”が・・・死ぬよりも怖いから・・・』
『ボスゥ・・・?』
『・・・だから改めて言わせてくれ。
オルガ・・・お前は弱くない・・・お前は絶対に強くなれる。オレと一緒に旅をしていけば・・・いつかはどんな奴にも負けない・・・”力”と”心の強さ”を手に入れられる・・・
だから・・・オレがピンチになったら、”心強い味方”のお前が、颯爽と助けに来てくれるか?』
『・・・うんッ、了解ッ! ボスゥ!』
『・・・頼んだぞ、オルガ・・・。期待してる・・・』
N:そう通信を終了させる頃には、ボスは最初の時と比べ、幾分か晴れやかな気分になったのを感じながら、残る2階の数部屋の捜索へと・・・これだけの騒ぎがあったのに未だ誰もにも遭遇していない事を不審に思いつつも、気を引き締めなおして捜索を再開するのであった・・・っと。
(カチッ、プツン・・・)これで良しっ・・・。
突然だが、〇者の諸君は、(大幅加筆サレツツモ)ここまでの会話を聞いてどう思ったのであろうか?
ボスの正義への意欲に”称賛に価するッ!”・・・と拍手を送る者もいれば、捻くれて”聖人君子ぶってんじゃあねぇよ!”・・・と思う、〇者な君もいるだろう・・・。
・・・えっ? 「N」の語りが長いしウザイだって・・・? ・・・「N」は〇者の諸君の質問やクレームは一切受け付けないぞ~。
さて、本題に戻ろうか・・・。
私がボスへの垂れ流しをストップしてまで諸君に話を振ろうとしたのは・・・独白だ。
独白・・・そう、「独り言」である。故に、読み飛ばしても構わない。
この物語の真相の一端を知りたくなければな・・・?
まず、言っておかなくてはならないのは、ボスには圧倒的に欠如している感情がある・・・それは「死への恐れ」だ。
大抵のラノベ主人公達や諸君が余程、頭のネジがブっ飛んでいない限り、「争い事」に巻き込まれた時に感じるのは、「死にたくない」・・・という感情のハズである。
どんなに悲惨な人生を送ろうとも、「死」とはある種の絶対的な「恐怖」のハズだ。
命ある者である限り、誰しもが”自分”を守ろうと生き抜く事にとことん意地汚いハズだ。
そして・・・2度目に獲得できた人生なのだ。誰もがもう一度「やり直せる」チャンスをみすみす手放すような思いは、まずないだろう・・・。
だが、思い出せば・・・初の敗戦兵との遭遇・・・死の淵を彷徨ったマグズリーとの死闘・・・圧倒的に格上のハズの盗賊団・・・その他諸々と、今回の3・・・いや、悪徳領主達・・・。
これらの戦闘で、死にそうな目にあっても彼は「死にたくない」・・・そう思ったか、それに酷似した”弱音”を吐いたりした事が、一度たりとてあったであろうか・・・?
そして、相手を「殺害する恐れ」も、抱いた事があったであろうか・・・?
何にせよ、彼がそんな中で真っ先に抱いてきた想いは、
「仲間や関わってきた人達は無事か・・・?」・・・
「仲間や関わってきた人達にヒデェ事しやがってェッ!」・・・
「仲間や関わってきた人達の痛み・・・お前らも”同じ分”だけ味合わせてやるッ!」
・・・という事が大半であり、その中にほぼ”自分は”という感情や思いは、ないに等しいのだ・・・。
・・・お分かり頂けただろうか? 彼の「自身の死を恐れない”異常さ”」が・・・。
彼が過去にどんな体験し、心引き裂かれるような思いを得て、常に自身の命を無下にしても構わないと思うようになったかは・・・異世界初日の痛みと共に闇の中・・・
それでも・・・彼がその”痛み”と、処刑場で頭の中に響いた重厚かつ独特な・・・渋い声の”男の声”と関係がある事を知るのは、随分先の話になるだろう・・・。
さて・・・そうこうしている内に、我らがボスは最後の部屋である「執務室」を捜索するみたいだ・・・彼の物語に戻るとしようか・・・。
「・・・ッ!? (引き金を引き絞りそうになるが、なんとか堪えながら)」
N:(カチッ、ブゥゥ~ンッ)・・・まぁ、驚くのは無理もない・・・。
ボスが部屋へと体を滑り込ませ、この部屋でも同じようにクリアリングしようと、銃口を向けながら開けた扉の裏側・・・左側方面に視線を向けた時、壁際の棚に飾られていた青白く輝く「水晶ドクロ」が一瞬、彼と目を合わせた瞬間、その眼が一瞬”赤く”輝いたように見えたのだった・・・。
「・・・驚かせんなよ・・・」
N:そう言っても油断はせず、ボスはドクロに銃口を向けながらゆっくりと近づき、ドクロに異常がないか確認する・・・。
”魔道具か?”・・・一瞬、嫌な考えが過るが、「スキャン 」には何も反応がなく、(指紋なんて警戒しなくてもいいのに・・・)どれだけ調べようにも、その見る角度を変える度に変わりゆく、怪しくも艶めかしい輝きを放つ以外は何の変哲もない、ただの装飾品にしか見えなかった・・・。
「・・・気のせいか・・・」
N:エルフ姉弟の事が最優先だと思ったのか、ボスは「悪趣味だが、高そうな置物だな・・・」とだけ思った後、この部屋の一番奥に鎮座するゴシック調の執務机をなるべく音を立てないように注意しつつ、漁リ出した・・・。
どうやら、後々カルカが領主になるためなのか、あの悪徳領主共の悪事を暴露できそうな証拠となる書類を探しているのだろうか・・・?
すると、彼は執務机のもっとも横に長い引き出しを調べてた際に、引き出しの"底"が妙にグラつく事に違和感を抱いた・・・。
気になった彼が引き出しの奥に手を突っ込み、一番端から指先に力を入れて底を押す・・・すると、まるでアヒルの口のように引き出しの底が開き、"二重底"である事が露見したのだ!
露見した二重底に仕舞われていたのは、帳簿らしき丸められていた複数の”羊皮紙の束”と、日記らしい”手帳”っぽい小さな本・・・見つけ出した彼は、早速と言わんばかりに軽く目を通し出すのであった・・・。
「・・・クソだな・・・この街やあの村などの村々から、”税”として巻き上げた金のほとんどが、王都方面に向かっているな・・・しかも一緒に入っていた前領主の帳簿と比べると圧倒的に高い・・・コレ、絶対賄賂に使ってんだろ・・・? (一旦、羊皮紙を置き、日記を開く)
・・・あいつら・・・傭兵崩れだったのか・・・。
・・・が、そんなことよりもコイツら・・・役人代行みたいに各村々に税を徴収しては、コイツらに収めていたのか・・・半額以上を横領された事があったとか愚痴りやがってんが、口封じに各村々をクソ盗賊団共に潰させるよう、指示していたお前が言えた事じゃあねェッてのッ! (声を押し殺しつつ怒鳴る)
しかし・・・こいつらの目的は一体何なんだ・・・? カルカが言っていたように、帝国に亡命しようにも、村とかをチマチマ潰しても目立っ た武功 とかになんねぇだろうし・・・蔑むにしては、やたらあの”エルフ姉弟”固執していたみたいだし・・・
・・・ん?」
N: 顎に右手を当てる”典型的な考えるポーズ”をしつつも考えに耽っていたボスだが、とあるページに差し掛かかり、その一文を読むと片手で”パタン”と日記を閉じ、何故かニヤリとほくそ笑む・・・?
書類と日記をポーチへと突っ込んだ後、部屋に掛けてあった”シカの剥製”の”角”の右片方に手を掛け、徐に下へと引いた・・・。
すると、剥製が掛けてあった”壁”が内開きに開き、如何にもな”地下へと降りる階段”が現れたのであった・・・。
「日記に”ヒント”を書いてあるとかって・・・不用心過ぎんだろ・・・。
まぁ・・・フツーは侵入だとか、盗み見られるだとか考えないんだろうけど・・・”自惚れたお貴族様”には、間違いないだろうな・・・」
N: まぁ・・・なんともバ〇オで、ゲームな展開だが、地下に下りる石造りの階段には当然”蛍光灯”や”松明”のような洒落た照明があるわけでもなく、只々、降りる者を恐怖と闇に飲み込まんとばかりに下へ下へと続いているのだった・・・。
しかし、そんな闇に臆する様子もなく、ボスはすぐさま回復させた魔力を用いて「アウトドアセール」でLED式の小型”ビームライト”を創り出し、逆手に持ったライトの左手首の上に、銃を持つ右手首を乗せる・・・例えるなら、影絵で”蝶や鳥”を作り出す手つきに近い「ハリエス・テクニック」という技術で暗闇に銃口とライトの光を向け、ゆっくり・・・ゆっくりと下りてゆくのであった・・・。
そして、階段の終わりが見えた時・・・左方面にあった入り口から広がっていた地下の光景とは・・・?
「ッ!? ウゥ・・・想像以上に酷い匂いと、光景だな・・・」
N: それもそのハズ・・・ボスがビームライトで照らした空間の先には、数々の夥しい雰囲気と、"饐えたもんだ"なんて、揉めて騒ぎ立てるのが億劫になる程の悪臭をプンプンと巻き散らす、数々の<拷問具>が所狭しと並べられていたのだから・・・。
そう・・・地下に広がっていたのは、相当サディスティックなイカレ野郎が、”我が家”も同然に使っていたかのような「拷問室」だったのだッ!
「それにしてもヒドイな・・・二人は無事か?」
N:それは「N」に尋ねるべき事ではないだろう?
だが、尺稼ぎのためにこの部屋のその酷さを代弁するのなら、石造りに囲まれた部屋全体を彩るのは、鮮血と、こびり付き何度も上塗りが繰り返されたかのような、ドス黒く変色した血液だ。
そして、時々、数多の骨の破片と変色した肌色らしき色のゼリー(?)のようなものが、壁や床にアクセン・・・(ウェロォロロロロォェェェェェェェ・・・)
吐くなアアアァァァァァァ〜ッ!?
ナレーターが吐く作品なんて初めて聞いたぞォ、オォイッ!?
ここまでのシリアスさを返せよ!
N:は・・・張り詰めた空気を緩ませるには丁度・・・
良くねェ〜よッ! ◯者達とか言う奴らに謝罪しとけッ! 土下座しろッ! 土下座ッ!
N:し・・・失礼した・・・(昼間のチェリーパイが・・・ッ!)。
・・・ハァ・・・オーケー・・・オーケー・・・SAIKAIしよう・・・再開SIYOU・・・。
(スゥゥゥ~)突然の実況事故で申し訳なかったが、実況を再開しよう。
・・・とは言ったがもうこの部屋で、描写できそうな物は数十年物と言えそうな程の熟成された悪臭を、常時撒き散らし続ける悪趣味過ぎる拷問具達だけだ・・・。
斧のような鋭い刃がついた巨大な”振り子”・・・。
辱めに使う・・・のか? と言わんばかりの”三角木馬”や、”晒し台”・・・。
そして極めつけは、今にも”血が欲しい”と言わんばかりの恐ろしい形相が上部に彫り込まれた鉄の処女・・・通称「アイアンメイデン」が、部屋の左右奥の中央に1つずつ大きく口を開けた状態で鎮座しているのが、数ある拷問具達の中でもこの部屋のシンボルと言えそうな特徴の一つだろう・・・。
それ以外は・・・ッ!? あった・・・あってしまった・・・ッ!
・・・何があった?
N:・・・覚悟して・・・部屋の一番奥・・・中央の壁を照らして見て欲しい・・・。
中央の壁・・・? ッ!?
「リフィルッ! (彼女の元へ駆け寄る)
おいっ! しっかりしろ! リフィル! リフィルッ!
(立ち膝の状態で、抱えながら)」
「・・・」
「クソッ、今すぐ「メディケア」で・・・」
N:違ッ・・・がァァァァウッ!
人命救助大事は、正しいけど・・・けどッ! 見る場所が違ッがァァァァウッ!
何を言ってんだよッ!?
目的の一つは達成できたんだから、とっとと彼女を治療して、早くあの”バカ”も見つけ出して・・・!
N:治療の必要はない。「スキャン」の必要もない・・・彼女は無傷だ。
大体、壁を見ろと言ったのに、何故床から壁へとスライドするように、ライトを照らすんですかッ! 尺を無駄にしたいんですかッ!?
人命救助が尺の無駄だとッ!? テメェ・・・!
N:・・・じゃあ・・・言わせてもらいます。
ボスさん・・・ここでのアナタの<本来の目的>はもう、失敗しています。
・・・失敗? ハハッ、な・・・何を言って・・・ッ!?
(乾いた笑いの後、ライトと共に視線を正面の壁に向けて)
「オイ・・・・・・・・・・・マジ・・かよ・・・・ッ!」
N:ボスが視線を向けた先にあったモノを見た瞬間・・・膝から下の力が急に抜けてしまい、両膝で立ち尽くす事しかできなくなってしまったのだ・・・。
今までとことん気を張り詰め、一時も銃を握りしめる力を緩めなかった彼が、思わず取り落としてしまいそうになる程・・・
知らぬ間に目から汗が吹き出し、ジョジョに心の奥底から泣き叫んでしまいたくなる程・・・
目の前の事実が、現実でないことを懇願してしまいそうになる程・・・
彼にとっては、認めがたい「現実」が壁に掛けられている”十字架”に磔られていた・・・。
~ウィィ~ン、ピピピピピ!~
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〈スキャン結果〉
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名前:アムル・ホープティア
年齢:277歳 (人間換算で"27歳"後期)
性別:女性
職業:・第6代ホープティア王朝 元王女
・6代目世界樹の巫女
(エルフ族/エンシェントエルフ種)
属性:木、風、光
<レベル:77>
HP:0/2754(VIT:+287) ー Death ー
(外傷:顔面殴打、頭蓋骨粉砕、
重度の魔力による火傷及び、筋繊維を断裂させる
程の巨大な切創を複数確認。
胸骨に6本以上の骨折、両足の粉砕骨折も確認。
梅毒を中心に、その他複数の性病による感染症も検出。
死因:胸部貫通、及び心臓を抜き取られた事による
失血死が決定的になった模様です)
MP:0/1,0000,0000
DE:100
<家族構成>
夫 レイル・ホープティア (享年325歳)
(元犠精騎士団 団長)
娘 リフィル・ホープティア (142歳)
(元ホープティア王朝 次期王女兼、
元次代世界樹の巫女)
息子 ラフィル・ホープティア (142歳)
(元犠精騎士団 超新星)
【↑本人が死亡しているため、レベル制限なく開示しています↑】
-------------------------------------
< アムル・ホープティア ー Death ー >
・・・エンシェントエルフ? ・・・王女? 世界樹ノ巫女・・・?
ハハハ・・・冗談だよな・・・? 何かの冗談だ・・・ッ! 冗談だよな・・・ッ!?
Death・・・って・・・Death・・・ってよォォォォォォッ!?
N:・・・現実逃避したいだろう、絶対に認めたくないだろう・・・。
だがしかし、幾ら錯乱しようとも、泣き崩れそうになろうとも、何度も”こめかみ”に震える指を乗せ「スキャン」を繰り返そうとも・・・ボス・・・これは<変えられない”現実”>なのである・・・。
「・・・アアァ・・・アアアアァ・・・・アアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
N:・・・彼は・・・ボスは・・・飲み込まれてゆく・・・。
渦巻く憎悪に・・・自己嫌悪に・・・約束を果たせなかった後悔に・・・
たった一人だけでは、筆舌に尽くし難い程の膨大な”悪感情”という”闇”に飲まれてゆく・・・。
だが突然、部屋の中に複数の”火の玉”が飛び交って部屋の壁にぶつかり、一瞬にして拷問室に明かりが灯される。
普通なら何があったもんだッ!? ・・・と、周囲の状況確認をするものだが・・・生憎、絶望感に苛まれていた彼の心に余裕がなかった・・・。
ゆっくりと部屋の入り口に近づく・・・気怠げで間の空いた拍手と共に、嘲笑い・・・唾を吐きかけられるような言葉を掛ける”謎の人物”の言葉に”目”ならぬ”耳”が離せない状態であったのだから・・・。
「美しい物だろう・・・?
その”野蛮人の骸”が、私に未来永劫の富と名声を与えてくれるのだからねぇ・・・。
しかし・・・そんな屑に涙する罪人・・・実に滑稽なもんだ・・・」
〜 パァァァァンッン!!! カスッ!〜
N:嘲笑う男が初めて聞いた”耳を引き裂く”ような音は、彼の頰に”一筋の赤い線”を描き、彼の真後ろ近くの石壁を僅かに欠けさせていた・・・。
”一瞬だけ口角が引きつった”・・・それがリフィルをより強く抱き抱えながら、振り向きもせずに「SAA」を発砲した後にボスが見た、”赤い貴族っぽい服”を着た男の表情だった・・・。
「・・・今のハ、警告ダ。それ以上・・・この人達をッ! 侮辱してみろッ!
二発目ハ”激痛”・・・三発目ハ、確実にテメェの眉間をブチ抜いてやるッ!」
N:鬼か死神か・・・”燃え盛る灼熱の炎”と形容できそうな無限に近い憤怒を、その身からグツグツと湧き上がるのを感じながら・・・ボスは彼女を・・・彼女達の”死”の首謀者であろう男を、再びフルコックしたSAAのトリガーに掛かる震える”人差し指”に、力が入るのを必死に堪えながら・・・睨み殺さんばかりの憎悪を込めた目付きで見つめていた・・・。
しかし・・・男は動揺するどころか、ボスの怒りなんぞ露知らず・・・と言わんばかりに、懐から出したハンカチで、頰の赤い線を軽く拭った後・・・クツクツと再び嘲笑を繰り返す・・・。
「笑わせる・・・。人・・・だと? 何を言っている?
それは”物”だ。お前の抱えているのも含めて、全て私の栄華の道を築き上げる”礎”に過ぎない・・・。
物である、人間以前の出来損ないを踏み台に使って、何が悪い?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・プッツンッ!
※2018年9月11日、ボスとオルセットの掛け合いに、一部加筆しました。
(二人とも、言うのをためらっていたみたいですよ?)
※2018年9月14日、今話のステータスで出ていた”外傷”の一部である「裂傷」を、
「切創」(刃物などの鋭利なものによる傷)に変更しました。
(ボキャブラリー不足ですみませんでした・・・)