Mission-23 ”潜伏”事項ヲ確認セヨ
〜 ダンッ! ダンッ! ダンッダンッ! バックッォンッ!〜
「ゴホッゴホッ! ハァ・・・ハァ・・・一体どこなんだ・・・ここは・・・?」
N:複数の埃を被った箱・・・複数の空の籠・・・梁や棚の至る所に張り巡らされた蜘蛛の巣・・・。
およそ六畳程の「廃倉庫」という言葉が相応しい場所に、ボスは”床下収納”らしき木製のハッチから顔を覗かせていたのであった。
「おいっ! まだかよっ!?」
「静かにしろッ! ラフィル! 追っ手がここに潜んでいるかもしれないんだぞ!?」
N:そう言うとボスは、ゆっくりと床下から這い出ると”SAA”を構えつつ周辺のチェックを始めた。
壁に違和感はないかを手探りし・・・
足元や天井にはトラップが仕掛けられてないかと周囲を見回し・・・
最後にハッチの向かい側にあった倉庫の出口を扉の隙間から銃口を覗かせつつ、確認し扉を閉めたに・・・。
『・・・よし、オルガ、みんなを出してやってくれ』
『りょ〜かい、ボスゥ』
N:「コール」による念話で、音漏れ心配ナシの指示をオルセットに出すと、ハッチがゆっくりと開き、彼女の半身がヒョッコリ出てくる・・・。
『ハァ〜キツかったよぉ〜ボスゥ〜』
「まぁ・・・あれだけ窮屈な地下通路じゃあな・・・。
あぁ・・・後ぉ・・・オルガ、今はもう「コール」を使わなくていいぞ」
「本当ッ!?」
「し〜ッ! (人差し指を口の前に・・・)
大声はやめろ・・・」
「う・・・うんっ・・・」
「おいっ! いつまであのクソニンゲンと話しているつもりなんだよ!? クソネコ・・・がぁッ!」
「う・・・ウニャアァァァッ!?
(下から湧き出て来たバックパックに押し出される)」
N:床下からラスト1個の¨カップ麺¨が見つかった時の嬉しさは形容しがたい程だが・・・
その代わり、4つのバックパックに、親子三人、二人のハイエルフとダークエルフが○者の皆さんの家の床下から突如として、ポンポンと出てきたときは・・・○者の皆さんは、どう思うであろうか?
(あっ、状態としては、エルフの二人は、ハイエルフをお姫様抱っこをした状態で出てくる事前提で・・・)
イヤ・・・まず、ありえねぇからな・・・。
オレん家には、床下収納があったけど・・・。ていうか”○者の皆さん”ってどんな奴らだよ!?
「姉ちゃん…しっかりしてくれ! 姉ちゃん…!
(リフィルを近場の壁にもたれ掛けさせ、片側の肩を揺すりながら…)」
「まだ起きないのか・・・」
「るせぇ! テメェは黙ってろ!」
「・・・ハァ、ヤレヤレだな・・・」
「・・・それよりも、テメェ」
「なんだ?」
「なんで、すぐにオレらを穴から出そうとしなかったんだよ?」
「・・・あのなぁ・・・ラフィル、今の状況を考えれば、なんとなくでも判るんじゃあないか?」
「分かってたまるかよ!? 人間の考えなんて!」
「(左手で目を覆い隠しつつ)どんだけ筋金入りなんだか・・・
あのなぁ・・・一応、確認ってことでもう一度言っておくが・・・今のオレらは”御尋ね者”。隠れなくっちゃあいけない身なんだよ・・・そこは解るよな?」
「・・・逃げんじゃあなくて、あいつらの武器を奪っちまえばよかったのに・・・・(ブツブツと無視して言っている)」
「・・・・・でだ、今は、そこの”ソンス親子”も加わって、守んなくっちゃあいけない”護衛対象”が一気に増えたんだ。
そんな状況で他に何か、誰かがいないか確認しに行ってみろ・・・
お前たち”2人”ならまだしも、”5人”なんて、オレとオルガの2人で守り切れるとは言い切れないだろ・・・!」
「ハァッ!? オレがいつからテメェに”守られる立場”になったって・・・グッ!?」
「(ラフィルに軽いチョップを噛ました後)
・・・もういい。とにかく、一旦、ほとぼりが冷めるまでしばらくはここに隠れるぞ・・・」
「どれぐらいここにいるの? ボスゥ?」
「(”ハッチ”から見て、部屋の右側の壁にもたれかかるよう座り込み)
そうだな・・・っと、とりあえず・・・リフィルの目が覚めるぐらいまで・・・だな」
「おいっ! じゃあ母さんはどうなんだよッ!?」
「・・・焦んな」
N:そう言うとボスは、まるで葉巻を吸いながらリラックスしている”カウボーイ”のように”SAA”を取り出す・・・。
すると、ハンマーの近くにあるシリンダーの近くにある弾を出し入れする”蓋”を開け、ハンマーをハーフコックさせる。
そして、バレルの真下にあるエジェクターシュラウドの先端下に出たロッドと繋がる”出っ張り”を引いてはシリンダーを回し・・・引いては回し・・・と、一発ずつ、カラ薬莢を排莢し始めた。
「何の道、この家の探索やここから警備兵がウジャウジャいる中を目的地まで辿り着くには、リフィルの”聴覚”は絶対に必要になる・・・」
「姉ちゃんを”物”みたいに言いやがって・・・ッ! やっぱりテメェは・・・ッ!」
「じゃあ・・・聞くが・・・
(弾を親子に見えないよう”右手”に作り出し、弾を込めてはシリンダーを回し・・・込めては回し・・・と、1発ずつ弾を込め始める)
”力”以外で、目的地にたどり着く方法・・・ラフィルは何か考えがあるのか?」
「だっ・・・だからッ!」
「それとも・・・お前が”代わり”をやってくれるのかとでも言うのか・・・?」
「・・・・・」
「・・・どうなんだ?」
「(不貞腐れるように顔を背けつつ)
・・・姉ちゃん程・・・良くねェよ・・・」
「そうか・・・。
(4発の弾をシリンダーに込めた後、弾の挿入口の蓋を絞め、弾が込められていない穴とハンマーが重なるようにシリンダーを回す。そして、少しハンマーを引いた後ゆっくりと戻してハーフコックを解除する)
まぁ・・・とにかく、さっきは荷物を一手に引き受けてくれてありがとな、ラフィル」
「・・・・・・・・・フンッ。
(チラッとボスを一瞥した後)」
「・・・フッ、やれやれ・・・まぁ・・・今は休んでくれ・・・」
「あのぅ・・・」
「んっ?」
N:おずおずとした声の方向にボスが顔を上げると反対側の壁の方で、足を崩したような座り方でオドオドとこちらを見る、2児の母、”ソンス”の姿があった。
「さっきから何を喋っていたんですか・・・?」
「・・・分からなかったんですか?」
「はい・・・旦那・・様の屋敷でしか、亜人の方々は見かけませんでしたし・・・喋った事も・・・なかったもので・・・」
「(旦那様に、屋敷ねぇ・・・)
・・・そうですか。
でも、恥じる事じゃあないですよソンスさん。
むしろ、興味を持とうとする姿勢はいい事です」
「えっ・・・」
「”知識”は人生の財産ですからね。
努力すればするほど一生貯まっていくモノですから、その知ろうとする姿勢はホント、イイモノですよ」
「そ・・・そうですかね・・・?」
「そうですよ。
(軽く柏手をうつようにした後・・・)
さて・・・それはそうと・・・って、何してんだよ・・・オルセ・・・イヤッ、オルガ・・・?」
「ボスゥ~何とかしてよ~」
「キャハハ~みみ~みみ~!」
「ねぇ~”みゃ~”・・・って鳴かないの~?」
N:ボスの見た視線の先・・・ソンスの右側に、頭に乗っかり耳をグリグリと弄られ・・・尻尾を何度もビヨンビヨンと引っ張っりながらど~しょ~もない質問を投げかけられる・・・
そんな子供たちによって、”プチ・アスレチック”と化されてしまった憐れ? なオルセットの姿があった・・・。
彼女には申し訳ないかもしれないが・・・非~常にッ! 微笑ましい光景であり、子供達の笑顔がなんとも言えない癒しに・・・
「ちょ・・・ちょっと! ジート! エティ! やめなさい!」
「え~やだ~ヒマだし~(尻尾の方の男の子)」
「おなか空いているし~(耳の方の女の子)」
強かやなぁ!? 異世界の子供はッ!
「ウンッ!(軽く咳払い) え~っと、ソンスさん?」
「は・・・はい?」
「とりあえず・・・お腹・・・空いていませんか?」
「は・・・はい・・・粗末なものしか・・・食べさせてもらえなかったもので・・・少々・・・」
「・・・んんゥ・・・(同情したような籠った声)
・・・ソンスさん、これから見る事を他言無用にしてくれるなら、何か食べさせてあげますよ。
・・・そちらのお子さん達と一緒にね」
「ほ・・・本当ですか!?」
「ええ。ただ・・・本当に他言無用ですからね?」
「は・・・はい・・・」
「自由になった後、オレらの事もですよ・・・?」
「えっ? ・・・ええ・・・」
「ホントに本当・・・」
「ボ〜スゥ〜!」
「さっさとやってやれよッ!
(急にボスの方へと振り向いて)」
「ッ!? 大声出すなってッ! 念には念をでだよ・・・んじゃあ・・・」
N:そう言うと、ボスは再び軽く柏手を打つ。
すると、ボスの両掌が”黄色”に輝きだし、その両手を左右に広げたかと思えば・・・
次の瞬間ッ! 一瞬の眩い光の後、右手からは10個程の”缶詰”、左手からはランドセル程の大きさがある”ダンボール”1つが、一斉にボロボロと出てきたのだッ!
「サプライ完了・・・ッと!
・・・んっ?」
「い・・・今のは・・・一体・・・?
(ポカンと呆けながら)」
「まぁ・・・オレの魔法ですよ。
(一つ缶を手に取り、慣れた手つきで開けながら)
召喚魔法・・・と言えばですかねぇ・・・っと、はい」
「えっ・・・!? 召喚魔法!?」
「オルガ、スプーンはあるか?」
「・・・あの・・」
「・・・今、この状態のボクに言う〜? ボスが取ってよ・・・」
「・・・ちょっと・・・」
「・・・だよな〜。さて、どこだったっけ・・・?」
「そんなすごい魔法・・・いや、”手”で頂きますので・・・これ以上のお気遣いは・・・」
「”手”ェ? 何インド人みたいな事を言っているんですか?
(ラフィルの側にあったバックパックを漁りながら)」
「インドジン・・・?」
「いや、気にしないでください・・・。
それよりも、素手で食べる事は、別に宗教的な事とかじゃあないんですよね?」
「えっ? あっ、はい・・・いつもの事で・・・」
「なら、遠慮せずに使ってください。
大したものじゃあないし、こう言ってはなんですが・・・こんな掃き溜めのような到底清潔とは言えない、街の中で”素手”で食べて、後で”体調を崩した物”が”オレの出した物”だった・・・なんて、寝覚めが悪いですしね・・・よし、ほいっと」
「ありがとう・・・ございます・・・」
「あっ、先に言っときますけど・・・”毒”の心配はないですよ。
(残りの人数分を開けながら)
もし入れているとしたら、今さっきのこの場で、あたかも宮廷料理人のような所作であなた方に見せながら仕上げていたでしょうからね」
「・・・クス」
N:そう言った後、ボスは次々と缶を開け子供達やオルセット達に配っていった・・・。
途中、親子たちに”エール”はないのかと難色を示され、ボスが配る”水”に不信感を抱いたり、子供達が初めて食す異世界の味の虜になってしまうあまり、缶の奪い合いをしそうになってしまったが・・・
親子達は、ボスによって齎された様々な驚きに満ちた食事によって、久方ぶりに心行くまで身も心も満たされたようであった・・・。
因みに、補足をしておくと、一般庶民に食器が流通し始めたのは”18世紀”頃。
戦争や凶作、疫病などの厄災のオンパレードであった”中世盛期”頃は、
”明日には食べられないかもしれない・・・”
・・・という事で、毎日を悩まされ、食事のマナーどうこうよりも、「明日を生きるためにッ!」・・・と必死に”腹を満たす事”が優先されたため、金属食器が流行った貴族以外の庶民は、基本”手づかみ”で食事を行なっていたそうだ・・・。
異世界とは言えど、この事を知っていたボスは”絶対に”食器を使わせる魂胆だったわけである。
・・・まぁ、最初の村でどのような扱いだったか分からない”食材”で作られた”シチュー”を食べていたボスも・・・今更、気にし出してどうなんだかとは思うが・・・。
・・・今更ながら言われると・・・
あん時は”異世界”、”初めての村”って事で浮かれていた事が分かるな・・・
よくもまぁ・・・1週間近くも、腹を下さなかったな〜と思うわ・・・。
「ボスゥ!」
「ッ!?」
「大丈夫? また確認してたの?」
「あぁ・・・すまない、オルセット・・・」
N:食事を含め、およそ20分後・・・慌ただしい逃走劇を体験した一行は、その疲れからか、自然とボスとオルセット以外を残し、他は徐々に”仮眠”を取り始めていたのであった・・・。
「・・・(ムスッとなる)
それよりもボスゥ! もう”トリメシ”は出してくれないの?」
「またか? オルガ・・・?」
「ち・・・違うよッ! ジート君とエティちゃんが
欲しいって言うから・・・」
「二人とも寝ているのにか?」
「ウニャッァ!?(振り返り、子供達を見て)
だ・・・だからぁ!」
「オルガ、もうちょっと頭を使え・・・」
「違うって! 二人が寝る前に・・・」
「悪いが、もう魔力切れだ。
まぁ・・・ホントかどうかはどっちにせよ・・・次にリクエストするなら、明日にしてくれ・・・。
(膝にかけていた”ファイアシート”を体の方へと手繰り寄せながら)」
「ボ~スゥッ!(悲愴な声で)」
~ ガタンッ! ~
「ッ!? ×3」
N:微笑ましいあしらいを終え、少し仮眠に就こうとしていたボスは、突如として扉の外から響いた音に・・・
~ ギィィィィィィィィィッ~ ~
「おい・・・ウソだろ・・・?」
「ぼ・・・ボスゥ・・・扉が勝手に・・・ッ!?」
N:・・・・・・・・音に・ィ・・ィ・・・ィ!?
「・・・お次はなんだ?」
N:ッ! ンッンン! 扉の外から響いた音以前に、自動ドア得ないハズの木製の重厚な”開き戸”が、独りでに開いた事に起きた一同は、その不可解な現象に驚愕していたッ!
・・・見りゃ分かる。
開けた奴が”見当たらない”事もな・・・。
「お・・・おいッ! 誰かいるんだろッ!?
(扉に向かって、怒鳴る)」
〜 シ〜ン 〜
「・・だ・・・黙っていねェで、返事しやがれ!」
〜 シ〜ン 〜
「チッ、なんなんだよッ!?」
「・・・ラフィル、もしかして・・・怖いのか?」
「ハァッ!?
べ・・・別に、こ・・・怖くねェ〜し!」
「怖いんだね〜?」
「ハァ!?
テメェも怖がっていただろッ!? クソネコ!」
「ん〜? なんか・・・飽きた?」
「何がッ!? ×2」
N:・・・とまぁ、漫才のようなやりとりをする一方、独りでに開いたドアはまるでボス達を誘うかの如く、ゆっくりと・・・キィキィと軋む音を出しながら揺れ始めていた・・・。
「・・・んで? ドアさんよぉ・・・その音は放置のあまり寂しがって、出してんのか?」
「・・・ボスゥ・・・どうするの?」
「無論、調べるしかないだろ・・・。(チラッとラフィルを見て)
ラフィルもどうだ?」
「・・・だったら、オレに”剣”を寄越せよ・・・」
「・・・わかった。それじゃあ、お姉ちゃんの傍で震えながら守ってな・・・。
(SAAを取り出しながら)」
N:そう言ったボスは、ワナワナと震え出すラフィルを余所に再び一発の弾を作り出すと、再び”SAA”をハーフコックにし、蓋を開いて空だった穴に弾を込めた。
そうして蓋を閉じた後はハンマーを限界まで引き、扉へと照準を合わせながら、ゆっくりと歩を進めて行くのであった・・・。
「ボス・・・気になっていたんだけど・・・”魔力切れ”なのになんで、弾を出せるの?」
「・・・後で話す。
とりあえず、今はこの銃の弾だけは”無限”に出せるって事だけ覚えとけ・・・
(扉の前で振り返らずに止まり)」
「へェ〜”ムゲン”かぁ〜」
N:唐突で恐縮だが、彼女は”無限”という言葉を理解していないッ!
「なっ!? おいッ!・・・クソニンゲンめ・・・ッ!」
N:一方のラフィルは、ボスが言った後は彼の背中を掴もうとしたのか、数歩進んだがすぐに止まってしまう・・・。
そして何を思ったのか、姉の方を一瞥した後に頻りにブツブツと”剣があれば・・・”と、何を恨みがましくと言うので精一杯であった・・・。
彼の勇気は・・・いや、言うのはやめておこう。
さて・・・我らがボスの視点に戻るとしよう。
彼は部屋から見て”手前奥”へと開いた、開き戸に対し、まずはその表側を調べた・・・。
紐類の有無は・・・?
何でとび・・・ら? を叩いたのか?
感知できないが、魔法で開けたのか?
”護衛対象”の事があるので、あまり奥に進まず代わりにその”扉の周囲”は入念にチェックした。
陳列棚、階段下、タルの中身に底、後ろ・・・少し離れて現代で言う”レジ”らしきカウンターの中も隅々まで調べた・・・。
だが・・・おかしい。何も音を出したり、扉を開けたりするようなそれらしい仕掛けなどが見つからない・・・?
『ボスゥ、聞こえる?』
『どうした、オルガ? 何かあったのか?
(外に姿が見えないよう、カウンター内に身を隠してから)』
『ねぇ・・・ドアの”後ろ”って調べた・・・?』
『後ろ? ・・・どこのだ?』
『ボク達がいるところの扉。ちゃんと調べた?』
『・・・あぁ、調べた。だが、何もなかったぞ?』
『・・・おかしいなぁ・・・?
なんか・・・イヤな予感がしたんだけど・・・』
『・・・?
・・・わかった。もう一度調べたら、一旦戻る』
『他の部屋は調べなくていいの?』
『武器が十分じゃあない以上、無闇にオルガ達の側を離れられないからな。それに・・・』
『それに?』
『チョッピリ喉が乾いたしな・・・』
『・・・プッ』
『・・・何が可笑しい?』
『ゴメン・・・じゃあ、ボクはさっきボスがご飯の時に飲んでいた”水”を用意しとくね』
『あぁ・・・頼む』
「・・・まぁ・・・最もらしい・・・よな?」
N:上手くない”ウソ”を言った彼女に、いとも簡単に”ウソ”を見抜かれるとは・・!
・・・るせぇ。
N:だが、無暗に探索しない慎重さには賞賛を送ろう!
・・・フン、いいから実況やってろ・・・。
N:ではでは・・・話は進んで、ボスは彼女に指摘された”扉の裏”を再び入念に調べ始めた・・・。
しかし、そこにあったのは積もる”埃”と、千切れて風に揺れる”蜘蛛の巣”だけであった・・・。
¨オルセットの勘違いか・・・¨
そんなことを思いつつ、一通り辺りを調べ終えたボスは音が響かないようにゆっくりと扉を締め、オルセット達の元へと戻るのであった・・・。
「ただいま・・・っと」
「どうだった、ボスゥ?」
「おい・・・倒せたんだよな?」
「・・・残念だが、存在しない奴に鉛玉はブチ込めねぇよ・・・」
「なっ!? おい・・・クソニンゲン・・・
それは”倒せなかった”・・・って事だよな?
お前・・・姉ちゃんがいんのに分かっているんだよな!?」
「・・・しょうがないだろ?
異常はなかったんだし、それに、もし潜伏していたとしても戦力が”2人”しかいない以上、なんども言うが無闇な探索や索敵はできない・・・」
「屁理屈言ってんじゃあねェよッ!
大体、オレが戦えねェって決めつけんじゃあねぇッ!
オレだって”剣”があれば戦えるんだよッ!」
「・・・そう言って、
”この家に剣はないのかッ!?”
・・・って、言いたそうな目をしているが、生憎、棒切れ一本も見あたんなかったぞ。
寂れたボロボロの店と言っていい」
「ッ!?」
「それに・・・
お前はいつも、姉ちゃん、姉ちゃん・・・って言っているが・・・本当にお前が思った通りの事をリフィルが思っていると思うのか?」
「て・・テメェに・・・エルフの気持ちが・・・」
「・・・アッ! ボスゥ!
リルちゃん気が付いたみたいだよ!」
「ホントかッ!?」
N:それを聞いた一行は、リフィルの元へ囲むように移動する・・・。
彼女は食事を含めた、待つ時間が長かったためか、ラフィルがバックパックに入っていた枕と毛布を引っ張り出して寝かせていたのだ。
『(目を左手で擦りながら起き上がり・・・)
んん・・・ここは・・・?』
「リルちゃん!」
「姉ちゃん! 大丈夫か!?」
「リフィル、無事か!?」
『兄さん・・・?
ラフィルに・・・オルちゃん?』
「意識は・・・(彼女の前で手を左右に振って)
ちゃんとあるよな・・・」
『はい・・・ご迷惑をお掛けしてすみません・・・ところで・・・兄さん・・・』
「んっ? なんだ?」
『この部屋に、私たち以外に後”4人”・・・誰かいるのを感じるのですが・・・』
「4人ッ!?」
N:即座にボスは背後を向き、”親子達”の数を確認しようとすると・・・
〜 チャキ 〜
「・・・動くな」
N:ボスの眼前に入ってきたのは、剣でもなく、斧でもなく、弓でもない・・・突きつけられた大きな穴を持つ鉄の棒・・・紛れもないボスが扱っていた「フリントロック・ピストル」であった・・・。
「ッ!? ボスゥ!
(即座に取り押さえようとする)」
「動くな! 動くと、コイツの命はないぞ・・・」
「フゥゥゥゥゥ〜(怒りの籠った声)」
『だ・・・誰? 誰なの・・・?』
「落ちつけ、リ・・・」
「余計な事を喋るな・・・武器を捨てろ」
「武器? ハッ、どこにあるんだ?」
「トボけるな! その右手に持っている武器だ!」
「これか? これはぁ、短いただの”鉄の棒”なんだが?
(右手を振りながら)」
「フザけるなッ! いい加減にしないと、お前の頭に”穴”を開けてやるぞ!」
「(・・・”風穴”だろ・・・締まらねぇ脅し文句だな・・・)
分かった、分かった・・・落ち着け・・・。
今置くからな・・・」
N:これ以上相手の気に触れないよう、ボスは相手の指示通り¨SAA¨を床に置き、両手を頭の後ろに当てて跪いた。
・・・が、”どのように”置けとは、言われていなかったため、ボスはゆっくりと地面に銃を置きつつ、横目に男を観察する・・・。
目深にかかったフード付きの青黒い”ローブ”。
左腕を伸ばしに突きつける「フリピス」。
表情はフードによりうっすらとイラつき、
歯ぎしりをしているかのような”口元”しか見えない・・・。
これだけじゃあ、どこぞの名探偵でも”誰か”を特定するのは至難の業であるだろうが・・・彼・・・ボスは、違っていた。
こいつの”ローブ”に・・・この”声”・・・
どっかで会ったような気がすんな・・・?
「さて・・・オレの要求を聞いて貰おうか?」
・・・一発、鎌をかけてみるか・・・。
「(両手を上げつつ、不敵に笑いながら)
フッ、要求? ”取引”の間違えなんじゃあないのか?」
「・・・何を言ってる?」
「そのまんまの意味だが?」
「チッ、口答えすると・・・」
「それよりも・・・
”セーフティ”が掛かっているぞ、新米?」
「セーフ・・・?」
「セーフティ、”安全装置”の事だ。
そんなハンマーの状態で”確認”もせず、撃てると思っているとは・・・
もし、お前が”商人”だったら、そんな腕でも・・・大した”大商人”になれるもんなんだな・・・」
「クッ・・・」
「チョロイもんだな~商人って。
ゴミが黄金に見えるって言ってるようなもんだからな~」
「・・・お前に・・・”商人”としての、何が分かるって言うんだッ!?」」
~ グッ! ・・・・・シ~ン ~
「えっ!? なんで・・・撃てない・・・ッ!?
(何度も引き金に力を加えながら)」
「オラァッ!」
N:フードマンは、訳が分からなくなっていた。
顎に平手打ち以上の衝撃を受けたかと思えば、首に腕をかけられた瞬間に投げ飛ばされ、最後に、武器を持つ腕を”両足に挟まれた”と感じた時には、既に相手が自分にあの強力な武器を向けていたのだから・・・。
「・・・お前自身じゃあねぇんだから、解るワケねぇよ・・・。
ただ・・・今度は、オレが”お前のセリフ”を言う番ってのは、お互い理解できるよな?
(方眉を上げつつ、ほくそ笑みながら)」
「クソッ!」
N:・・・だが、どうも彼は諦めが悪いようだ。
どの瞬間に一瞥したのか、後ろから取り押さえようとしたオルセットをすり抜け、ソンス親子の方に投げられていたと思われる”フリピス”目掛けて飛び込み、今度はしっかりとハンマーを引ききった後、母親の頭に突きつけた。
「動くなッ!」
「おいおい・・・”オレの番”だって、さっき言ったばっかなのに・・・」
N:そう言いつつも、ボスは何を思ったのか余裕な態度を崩すことなく、向けていた銃口を下げ、再び両手を上げながらフードマンへと、ゆっくりと歩を進めて行く。
「く・・・来るなッ!
撃つぞ・・・ホントに撃つぞ!」
「あぁ・・・やってみろ。
だが・・・今度はちゃんと、”セーフティ”の確認は、したのか?」
「くっ・・・バカにするんじゃあねェッ!
(何度か、ソンスとボスを交互に見た後)」
~キンッ!~
N:ボスッ! 危ない!
~・・・・・シ~ン~
N:・・・なんて、私が言うガラではない。
真面目に言えば、フードマンが近づく標的に向け直した銃から出たのは、けたたましい”銃声”ではなく、僅かに迸った ”火花”と、虚しく広がる”静寂”だけであった・・・。
「なっ!? なんで・・・?」
「だから、どっちにしろ・・・”新米”なんだよ・・・フンッ!」
「ゴハッ!?」
N:再び、訳が分からない状態となったフードマンは、ハンマーと引き金を何度もガチャガチャと動かすロボットと化してしてしまう・・・。
そんな哀れな行為に呆れる様子もなく、ボスはほぼ零距離までに近づくと、彼に強烈な”右膝蹴り”を噛まし、地に伏せさせそのまま部屋の中央へと転がしたのであった・・・。
「な・・・なんで・・・?」
「オレの銃、よく似ていると思わないか?
(”回収した銃”と"胸ポケットから取り出した銃”を両手に持ち、手首を振りながら)」
「ッ!? すり替えたのか・・・?」
「ご名答、よく分かったな~。
ちょうどよく、ここに来る途中に弾切れになった奴があったんだよっ・・・とッ」
「ぐっ!(ボスに膝を腹に押し付けられる)」
「さて・・・命の保証をするために、取引しようじゃあないか? なぁ・・・」
N:そう言いつつ、ボスはここまでの過程で激しく動いていたハズなのに、奇跡的にフードマンの素顔を隠し続けた”フード”にチョッピリ奇妙な敬意を持ちつつも、彼の素顔を隠すフードを払いのけた・・・。
すると・・・露わになったのは、ブロンドヘアで、イケメン・・・
要約すれば、「爽やかな青年」が、眉間に皺を寄せつつも、少し怯えているという、複雑な表情が彼の視界に映っていたのだ・・・。
「”ダース”さんよぉ?」
読んでくださり、ありがとうございますッ!
※2018年7月9日、脱字の修正を行いました。 (ラフィルの一部のセリフ、Nのナレーション)
他にも間違っている箇所があった場合は、報告よろしくお願いします。