Side-? 亡者達ノ集イ−1
お待たせしましたッ!
N:ボス一行が眠りに就こうとしていた
およそ一時間前の、午前”1時”頃・・・
あの”領主館”のとある一室では、まだ・・・
ボンヤリと明かりが灯る部屋があった・・・。
「・・・ハァ〜
・・・やはり・・・足りぬな・・・」
N:机の数枚の羊皮紙を睨みつつ、時折左手に
散らばった複数の金貨をジャリジャリと
弄びながら、そうタメ息を吐いたこの男は、
あの<モノクル男>である。
・・・こんな真夜中に、隣から”女性の喘ぐ声”が
響き渡る中、夜遅くまで仕事をしているとは
ご苦労なモノである・・・。
「・・・王都から支援があれど・・・この街の
”発展”どころか・・・もう”維持”でさえも・・・
そろそろ・・・限界に近づいてきているな・・」
「あぁぁぁんっ! イイ、イイですわ!
アリ様ぁぁぁぁぁ〜
(壁に遮られた音で聞こえてくる)」
「ベェ〜ベェベェベェベェベェベェッ!
ホレッ! ホレッ! ホレッ! ホォ〜レッ!
鳴けェ〜! 喚けェ〜! もォォォォットォッ!
欲しいんだろォ〜!?
(壁に遮られた音で聞こえてくる)」
「・・・そろそろ潮時・・・か・・・」
N:・・・こんな大迷惑なバックミュージック
なのに、呑気にパイプを吸い始めるとは・・・
図太いのか・・・日常茶飯事なのか・・・
しばらくして・・・消え入るような声と共に、
真夜中の演奏会が終わった頃、うっかり蒸すの
を忘れたのか、彼が”ベント”タイプのパイプに
再び「クリッカー」で火を点けた時、部屋の奥に
あった扉が開いた。
「ベェベェベェ〜アニィ〜。 起きてるゥ〜?」
「・・・いくら兄弟と言えど・・・”執務室”に
入る前は、3回ノックをしろと毎回、
言ってるだろ・・・アリウスト・・・」
「ベェベェ〜ゴメンネ〜アニィ〜でも〜
ボクチンの”エンジェル達”が〜壊れてね〜」
「・・・ハァ〜またか・・・
今月、何回目だと思っているんだ・・・?」
「う〜ん? 18回ィ〜? どの子も〜
いいんだけど〜すぐ〜壊れちゃうからね〜」
「・・・いくら奴隷だとしても早すぎるぞ・・・
況してや・・・一週間後に・・・」
〜コンコンコンッ〜
「・・・失礼します」
「・・・入れ」
N:そう言った後に入ってきたのは、
あの青い服を身に纏った”偉丈夫の男”だった。
男は入った瞬間、部屋の左側にかけてあった
”鹿の剥製”を一瞥した後、
ブタ・・・もとい”アリウスト”と呼ばれた
寝巻きを着た男に並ぶように部屋の中央に立ち、
あの”お辞儀の後に、右手を胸の前に持ってくる”
・・・という、敬礼らしき事をした。
「・・・また、
お遊びをしていたのか? ・・・ヴァイオ?
(右手の人差し指と中指で、自分の頬を
ポンポンと軽く叩きながら)」
「ッ!? ・・・これは失礼したしました・・・
(言った後、起き上がりながら後ろを向き、
頬にベッタリと付いていた”血”を手で拭き取って
静かに”舐め取る”・・・)
何分・・・早急に報告しなければならない事が
出来たもので・・・」
「どんな用だ?」
「まず一つ目に、
遅れてしまった今日の”逮捕人数”を報告します。
・・・16人です」
「反逆者と異教徒の人数は?」
「・・・12人程かと・・・」
「・・・女の数は?」
「・・・4人です。・・・失礼ですが、
兄上・・・また”アリ”が?」
「あぁ・・・”教国”へと売る人数を確保しないと
ならないと言うのに・・・全く・・・」
「ベェベェ〜ゴメンネ〜、
”ヴァリ”ニィ〜”モバ”ニィ〜」
「・・・気にするな。 お前の”加護”のおかげで
貴重な情報を聞き出せた事があるんだ。
これぐらいの配慮は”領主”として・・・いや、
”長男”として当然の事だ・・・」
「ベェベェベェ〜
(恥ずかしそうに”頭”と”でべそ”を掻きながら)
そんな事〜ないよアニィ〜。
ボクチンの加護なんて、”アニィ〜の加護”に
比べたら・・・ゴブリンとオーガ並みに〜ィ
違うからね〜」
「あぁ・・・あの時に活かせていれば。
・・・の話だがな・・・」
「・・・あの時ですか・・・?」
「・・・バラバラだった我々人類を、突如として
現れた”勇者”が纏め上げ・・・命を賭して、
魔王軍の侵攻を食い止めた「ウォーダリア防衛戦」
から数百年後・・・」
「・・・どの部族が一番、勇者の助けとなったか?
・・・というくだらない理由で、今度は
人類同士が誇りと領土をかけて、争い続けて
いたのが30年程前まで・・・」
「だども〜それを見かねたぁ〜勇者がぁ〜
<手柄は平等にィ〜>
・・・という遺言を残してェ〜
南の”王国”ゥ〜、西の”教国”ゥ〜、
東の”帝国”ゥ〜・・・という風にィ〜
3国に領土を分け合ってェ〜・・・中央はぁ〜
絶対の不可侵とぉ〜平等な領地としてェ〜
”ウォルダル平原”って言う〜名で分かち合いィ〜
平和が訪れたァ〜のがァ〜10年ぐらい前
だよね〜アニィ〜?
(でべそをボリボリ掻きながら・・・)」
「・・・よく言えたな・・・”アリ”・・・」
「ベェベェベェ〜
(再び、恥ずかしそうに
”頭”と”でべそ”を掻きながら・・・)」
「・・・とは言っても・・・
各国の”小競り合い”や”紛争”は、
各所で続いていますけどね・・・」
「そう・・・続いている・・・
我が”デシィード家”も・・・数々の戦争に
参加してな。 なのに・・・
(俯き、身震いをし始める・・・)」
「アニィ〜?」
「兄上・・・?」
〜 ダンッ! 〜
(机が”猛烈”に叩かれる)
「あの愚王がッ! クソ親父がッ!
評価もせず、望みもしない事をする
ばかりにッ・・・!」
「お・・・落ち着いて下さい! 兄上ッ!
もうあの愚王も父上もいないのですよ!
あなた様が”領主”なのですよ!
それに・・・こんな真夜中に騒いでは・・・」
「・・・騒ぐ? 騒がずにいられるかッ!
もう少しであの”エルフ”を土産に、帝国へと
”亡命”するとは言え、私は”男爵”でしかなかった
という”汚名”を持ったまま行くのだぞッ!?
それがどれ程の”屈辱”かッ!? この街の
<警備隊長>を務めるお前が、<領主>としての
私の苦しみが分かるというのかッ!?」
「(一瞬、下唇を噛む)・・・いえ・・・。
武芸しか能のない私には・・・あまり・・・
分かり兼ねない事ですが・・・さすがに・・・
今・・・こんな事を言うのは・・・
申し訳ないですが・・・
騒ぐのは・・・賊の心配が・・・」
「そ〜だよぉ〜アニィ〜
今、騒いじゃあ〜うるさいって〜」
「(両拳と頭を机に付け、
ワナワナ身震いをしながら・・・)
・・・これも全て・・・あの・・・あの
”民のため”・・・”民のため”・・・とッ・・・
抜かしていた・・・ッ!
〜 ダァォンッ! 〜
(机が両手で、より”強烈”に叩かれる)
「あんぅぅのッ!
能無しクソ親父の性でェェェェェェェェッ!」
〜 ダァォンッッ! 〜
(机ではない”何か”が叩かれる音)
〜 カッカッカッ、バァォンッ! 〜
「誰だッ!?」
N:・・・と、青い服の”ヴァイオ”と呼ばれた男は、
扉をブチ破るような勢いで扉を開け、右手へと
伸びていた、闇に飲まれているような”廊下”に
向けて叫んだ。
だが、こんな深夜に誰もいるハズがない。
「・・・チュウ・・・」
「?」
〜 チュウ、チュウ、チジュゥアッ!? 〜
「・・・ネズミか・・・」
N:・・・イヤ、
”ネズミか・・・”なんて言わないで欲しい・・。
<4回、鳴いただけで”投げナイフ”>
・・・なんて、短気すぎである・・・。
「・・・賊か?」
「いえ・・・ネズミです。
処理はしておきました・・・」
「そうか・・・
(衣服を直しつつ、座り直した後・・・)
ふぅ・・・まぁ、これで”正当な理由”で
帝国への献上金に回す事ができるな・・・」
「(一瞬、唇の両端が少し上がった後・・・)
でしたら兄上・・・今回も、見つけ次第、
”不始末”を犯した使用人は私の判断に任せて
貰ってもよろしいでしょうか?」
「・・・まぁ、お前の玩具にするなり、
適当な罪状を付け足して、民衆の”娯楽”に
するなり・・・好きにしろ・・・
後、一週間でこの街は・・・
(新たに”タバコ”を詰め直したパイプに、
”クリッカー”で火を付け、煙を吐いた後に)
なくなるも同然だからな・・・」
「有り難き幸せ・・・」
「・・・ねェ〜アニィ〜達〜、そろそろぉ〜
ボクチン”寝て”い〜いィ〜?」
「・・・あぁ・・・おやすみ・・・”アリ”」
「おやすみ、”アリ”・・・」
「おやすみなんだな〜、
”ヴァリ”ニィ〜”モバ”ニィ〜」
N:そう言うと、ブ・・・”ブリウスト”は、
眠そうに”目”と”でべそ”を擦りながら、
執務室から出て行った・・・。
「・・・ヴァイオ、お前は寝なくていいのか?」
「いえ・・・兄上こそは?」
「私はまだだ・・・。今夜も、まだ・・・
立案できていない、次に搾り上げる”税”について
考えなくてはならないからな」
「・・・左様でございますか。
でしたらもう一つ・・・ご報告する事が・・・」
「(思いっきりパイプを吸い、煙を吐いた後)
・・・もう一つ?」
「ええ・・・あの”双子”とか言われていた、
”白”と”黒”の”野蛮人”達の事です・・・」
「それがどうした? もう”森”に朽ちたのか?」
「いえ・・・それが・・・非常に・・・
申し上げにくいのですが・・・消息が・・・
不明になりました。・・・生きたまま・・・」
「(一瞬、パイプの吸口を強く噛む)
生きたまま・・・だと?」
「えぇ・・・最初は・・・”黒”の方で・・・
次に・・・”白”が・・・昨日から・・・今日へと
・・・変わる・・・丁度に・・・」
〜 ダァバキャァッンッ!
ジャリジャリジャリジャリジャリジャリ〜
(机が更に”激烈”に叩かれ、罅が入り、
何枚もの金貨が宙を舞った後に落ちる・・・)
「あの首輪は・・・”教国”から・・・
”対価の一つ”として貰い受けた・・・
”ハイエルフでも解けない”・・・禁呪に値する
<隷属>の呪詛をかけた・・・
特別製のッ、<奴隷の首輪>だぞッ!?
あの”三匹”に付けたられていたと言うのに・・
何故、<二匹>も解けるッ!?」
「それが・・・私には分かり兼ねません・・・
ただいま・・・捜索中で・・・」
「即刻、打ち切れッ!」
「ッ!? しかし・・・あのエルフを通じて・・・
という事は・・・兄上は決して良しとしない
のでは・・・?」
「その逆だッ! あのエルフ共を探す事に
人員を割きッ、警備が手薄な内に・・・
あのエルフ共に協力しようとする”反逆者”が
街に侵入したらどうするんだッ!?」
「ですが・・・ありえません・・・
先に・・・野蛮人共を捕まえた方が・・・」
「黙れッ! 撒かれた”種”は掘り返されない限り、
”麦”のように”芽”を出し”根”を張り、無数の実を
付けるように・・・”種”が撒かれた後では
遅いのだッ! どんな”実”であろうと・・・
全て刈り取らなければ、意味がないのだッ!」
「ですが・・・」
「警備を増強しろッ! 怪しい動きを見せた者、
法に反した者・・・チョッピリでも乱闘沙汰を
を起こした者は、全てひっ捕らえろ!
これは”領主命令”だッ! 良いなッ!?」
「仰せのままに・・・
(あの”お辞儀”をするが、口が見えない時に
再び”下唇”を長めに噛んでいた・・・)」
「同時に”あの”準備も進めておけッ!
遅くとも”3日以内”、早くて”明日”にでも
帝国へと、亡命すると同時に行うぞッ!」
「ッ!? 兄上・・・無茶ですよ・・・
一週間程前に・・・”アリウスト”の”私兵”が
何者かに”壊滅”されたばかりで、人員が・・・」
「黙れッ! 黙れッ! 反逆者が迫ってきたら、
我々は終わりなのだぞ・・・!?
解っているのかッ・・・!?
(ドスの効いた声と鬼気迫った表情で言う)」
「お・・・仰せのままに・・・。
(あの”お辞儀”をするが、口が見えない時に
再び”下唇”を、今度は血が出るぐらいに
噛んでいた・・・)」
「分かったなら行け・・・」
「・・・はい・・・
お休みなさい・・・兄上・・・」
「・・・・・・・・・・お休み・・・
(明らかにイラついた声で)」
N:そして・・・
”ヴァイオ”は執務室から出て行く・・・。
一方・・・長男の”モバリティア”は、吸口が
ダメになってしまったためか、握っていた
パイプを握りつぶすように、一瞬にして
”消し炭”にした後、再び机の引き出しから
パイプを取り出し・・・タバコを入れ、
蒸し始めた・・・。
だが・・・パイプの煙は両手の台に顔を預ける
彼の苛立ちを、鎮めるには
不十分であるようだった・・・。
「・・・全てだ・・・”不安な要素”は全て・・・
排除しなければならない・・・我が・・・
「デシィード家」の繁栄のためにも・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー〜〜〜
いかがでしたでしょうか?
第1章では唐突すぎた「(敵の方の)ボス」で
(?)や、違和感が有りまくりだったと・・・
見直していて思ったので、
今回から”物語の中”で自然に掘り下げていけるよう
精進していきます・・・。(汗)
そして、唐突ですが本作の舞台は
「13世紀」辺りの<フランス>を
モデルにイメージして書いています。
なので、地形的には世界地図にある「フランス」と
あまり大差ないですが・・・地理の内容は
<異世界>という事で、大きく変わっています。
(しかし”技術”や”モノ”は15世紀に
ヨーロッパに出回った「パイプ」など、
一部ごちゃ混ぜになっています・・・
”歴史”なども<史実>に忠実ではなく・・・
そこは”ファンタジー”という事で・・・)
「手抜きかよ・・・」などと思う方には、
申し訳ないです・・・ですが自分はライトノベルを
<全く知らない>、”零”から始めた人間です。
”架空の情景”を言われても、すぐには
思いつけないような人間です・・・。
そう言った<初心者>だったんです・・・。
なので、自分はそう言った<初心者>の気持ちを
忘れる事なく、<初心者>でも楽しめる小説に
しようと過剰な”ルビ”などの配慮を心掛けています。
始めるキッカケ、のめり込めるようなモノに・・・。
(地形も”イメージ”しやすいモノを・・・)
何本、何冊も読んでいるような方には
本当に申し訳ないですが・・・
その事を、理解して頂いて上で今後とも・・・
ご愛読いただければかと、思います・・・。
最後に、もし、自分の小説で
ライトノベルを始めようと思ったり、
ライトノベルの書き方で<小説>を出そうと
思った方に<警告>しておきます。
ライトノベルの書き方は自由です。
ただし、その自由が必ず<本格的な小説>に
通用するなんて、ほぼありえません。
<本格的な小説>を書く際には必ず「参考書」や
「芥川○之介」さんなどの”文法”がキチッとした
作品を何冊も参考にした上で書いてくださいね。
(できればライトノベルの方でも、
実践できると尚更いいですよ・・・)
これはシナリオなどの考案を専攻にする
”専門学校”でも言われる事ですよ・・・。
※2017年3月18,22日、
「激烈に」の部分が「二箇所」あったため、
片方を削除しました。
(消し忘れです。 すみませんでした・・・)
22日は、”ルビ表記”されていない箇所を
修正しました・・・。