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超々高難度のSTG。
稼働から十年近くを経ても、クリアした者がいないという伝説的なゲーム。
その主人公である宇宙戦闘機は、今もまだ根気よくプレイしてくれる者の手で、久方ぶりの最終ステージに到達していた。
ここに来られるプレイヤーだけでも、世界に数える程しか存在しない。
光すら呑み込むブラックホール。
深淵の暗黒世界。
この最終ステージを、どれだけ見ただろうか。そして、この後、どれだけ見られるだろうか。願わくば、全てのプレイヤーが絶望し、飽きてしまう前に、一度だけでもラスボスを――虐殺鬼畜兵器を倒したい。
その点で、プレイヤーと、主人公たるキャラクターの戦闘機はシンクロする。
集中。研ぎ澄まされていく。
星々が遠ざかる。闇が深まる。
一瞬の静寂。
そして、アラート音。
――ラスボスが登場する。
その日、世界に歪みが生じた。
神様のいたずら。プレイヤーである人間が生きているリアルとは異なる、その世界――ゲームの世界。三人のラスボスが、何かを変えてしまった。彼らの想いが――存在意義を満たされない悲しみや憤りが、抑圧されて、凝縮されて、遂に爆発したのだ。
あるいは、奇跡と呼べる現象かも知れない。
ここから始まるものが、混沌であったとしても――。
――ラスボスが登場した。
STGの最終ステージ。
宇宙戦闘機の前に、モンゴル帝国が立ち塞がる。