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マホトパーティ戦 1

「なんもねぇな……」


 ――思い違いか?


 ただの洞窟の一本道をパーティメンバー四人で歩きながら、マホトはそう感じていた。


 暗い中、パーティ中央のドドンダが片手に持っているランプの明かりを頼りに進んでいく。

 すんのは人差し指を立てて詠唱している。その手に円形の蒼い光を放っている。

 通路自体がせまくて一人ないし、二人ぐらいでしか並べない作りになっている。

 荒い壁とか見ていると、そこらのコウモリ洞窟と変わらないぐらいだ。


 マホトは壁に触れて、確かめるように手を滑らせて歩いていく。


「ホント、なんもねぇ」


「だから、言っただ」


 そこでモフンの言葉は止まった。


 目の前に広間のようなものが開けたと思った直後。

 赤い槍が洞窟の天井辺りから半円を描くように飛んでくるのが見えた。

 それが目の前で無数に分散して、一気に襲い掛かってきた。


 マホトが一番先頭。

 とっさに左腕をあげて、ガードしようとするが。

 ががががという音を立てて、二本、三本と腕に突き刺さり、その顔面を貫き、胴体をぎたぎたにしていく。

 槍が当たるたびにマホトの身体が上下して、不自然なぐらいに綺麗な穴が開く。

 スローモーションで後ろに向かって倒れていく。


 隣のモフンは必死の形相で右、左と小刻みに剣を動かして、無数に拡散する槍を弾いていくが、一本の槍が肩に突き刺さり、二歩、三歩と後退していく。

 ドドンダはでっかい甲羅の盾を掲げていて、その盾に槍が突き立つ。

 無数に分散する残りの槍の攻撃を防ぎ切った。

 さらにその盾の後方には、氷中魔術師のすんのが隠れていた。


 一斉に矢が飛んできて、モフンが問答無用でその矢を受けながら叫ぶ。


「くそっ!」


 白い光を放つ矢の数々が一斉にモフンに当たる。

 顔面は剣で守るが胴体や太もも、さらには足先にまで矢が突き刺さってしまった。

 弓力はそれほど高くないが、矢の質と数がモフンに決定的なダメージを与えているようだった。


 伝崎が高速ステップでモフンを置き去りにすると、思い切りセシルズナイフで甲羅の盾を叩く。

 上から一刀両断するみたいに。

 ガシン、という音を立てると、甲羅が真っ二つに割れて、ドドンダの顔が姿を現す。


 ドドンダは何かに気づいた様子で、伝崎の顔をじろりと見つめる。


「おまえはぁ」


 伝崎は、楽しそうににぃーと笑った。

 勝ったと確信をにじませていたが。


 後ろから声が聞こえた。


「おかしいだろっ!」


 なぜか、ただの洞窟の中央で誰かが怒っていた。

 伝崎は振り返ってはいけないのに、はたと振り返る。


 無傷のマホトが怒っていた。


「おかしいだろっ!」


 死んだはずのマホトが抗議していた。

 伝崎はななめ後ろにバックステップを踏んで。

 スケルトン部隊の中に身をうずめて、何も持ってない方の腕を振るって。


「おかしいのはお前だろ!」


 伝崎は反射的に反論していた。


 あまりにも奇妙な光景に。

 冒険者にツッコミを入れるという禁忌を犯してしまった。


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