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この兄をどうにかしてください!!  作者: 杮かきこ
第3章  『この祭りをどうにかしてください!!』
58/69

第15幕  8

1日目が終了した。

フィークス家の豪華な晩餐に満足し、マシュドの屋敷に戻ったアーラたちに、昼間ペルが「先視」で視た内容が伝えられた。



「大変なことって……」

 アーラはクーゼにそう訪ねた。

「そこまではわからん。だがペルは確かにそう言った。が、お兄ちゃんたちが頑張る。

 そしてシエルくんたちが活躍すると言っていた」

 アーラがペルを見ると、ペルはクアやアンジェ、ミューズ、ロウと一緒に楽しそうに遊んでいた。

「ここでなんですが、明日、祭り見物は残念ながら取りやめて、協会の「補佐役」はもちろん、我々もその探索に出ることにしました。おそらくは『カタフ』の残党によるものだと考えられるため、一番狙われてくるのは…やはり我々。特にアーラたちだと考えられますので」

 ケリーエの提案に、あまり皆の反応は良くない。

 せっかくの祭りなのに――という残念な思いが取り巻いている。

 仕方のないことなのだが――クーゼやケリーエはつい苦笑してしまう。

「俺たちより、一番残念なのはシエルさんたちだよな。

 せっかく『リュケイオン』から来てくれたのにさぁ」

 ヴノが申し訳なさそうに、シエルたちを見つめた。

「いいえ。僕らは少しでもお手伝いが出来れば。それにほっとかれても、とても祭りなんて楽しめません」

「本当にいい人だよなぁ、シエルさん。惚れそうだよ……」

 アーラが熱っぽい視線をシエルに向けた。男の子とは言え、アーラの美しさにシエルの顔がみるみる赤く染まる。

 その直後、アーラとシエルに突き刺さりそうな視線の応酬があった。

「な、な、な、なにっ!??」

 シエルは完全にビビっている。

「な…本当にいい人だろう?」

「アーラ。お前完全に、シエルさんで遊んだだろう?」

 ジンにツッコミを入れられ、アーラが「そんなことないさ」としれっと答えるところは、母親のリカーナにそっくりだった。

「アーラがそんな性格になったの、絶対お前のせいだと思うけどな、ジン」

 ヴノとしては何気ないツッコミだったのだが――。

 今度はジンに対して――特にアーラの兄たちからの視線が突き刺さる。

「…貴様…俺になんの恨みがあるんだ?」

 ジンはこの状況をどうしてくれると、ヴノに詰め寄る。

「いや…ごめん。ホント、ごめん……」

 ヴノはひたすらジンに謝っていた。

「ジンさん、うちの馬鹿兄が本当に申し訳ありません」

 カエナが降って湧いたように突然現れては、ジンに丁寧に謝った。

「あ…いや…」

「ところでジンさんは…誰かお付き合いされている特定の方はいらっしゃるのですか?」

 有無も言わせぬ威圧感で、瞳はとびきりキラキラで。カエナの勢いに、ジンが1歩2歩後退する。

「カエナ止めとけ、そいつはホモだっ!!」

 一体どんな止め方なんだ。

 ヴノの発した一言に、ジンはヴノが落ちる寸前まで、本気で首を絞めていた。

 アーラとクレイが慌てて止めに入らなければ、本当に危なかったかもしれない。

 ヴノへの同情もあったが、大勢は笑いを堪えるか、頭を抱えるか。

おかげでアーラの兄たちをやり過ごすことは出来たのだが――。

「なんだぁ。せっかく綺麗な人なのにぃ。で、相手は誰なの?」

 ぜぇ、ぜぇと苦しそうな呼吸を繰り返す兄には構わず、カエナはそんな質問をした。

「それはアーラだよ」

 答えたのは嬉しそうなクレイだった。

「クレーイっ!!」

 アーラが叫んだ。



 アーラたちはそのままマシュドの屋敷に泊まり、明日の「大変なこと」に備えることにした。



 久しぶりにアーラは兄たちとの団欒の時間を過ごした。

 ここ2ヶ月はこんな時間をもてなかった。エペが加わってからは初めてだろう。

 クーゼの招きで、ジンとミゲ。クレイとエペがこの場にいた。

 ヴノは妹のカエナから目が離せないと別室で、カリディアとカメリアも一緒に、何か大騒ぎをしているかもしれない。



「でもこんな時間、本当に久しぶり……」 

「エペは全然家に帰っていないんだろ?皆寂しそうにしていたよ」

「そう?今はここでやりたいことがあるから……」

 パイクとエペがなんかいい雰囲気で話をしている。

 時々クレイが気になるのか、バルコニーにいる2人の姿を横目で追っていた。

「気になるなら、お前も参加してくれば?」

「遠慮しておく」

 ジンに言われて、クレイは不機嫌そうに答えた。

「エペさんは、小さい頃からパイク兄さんに気があったんだ」

「アーくんっ!?今何か言ったぁぁっ!!?」

 地獄耳かっ!?バルコニーからあまりの剣幕でやって来たエペに、アーラは思わずソファから立ち上がってしまった。

「そ、そうなんだ……」

「ち…違うからっ!!本当に違うからっ!!」

 こんなに取り乱すエペは初めてだった。

 クレイが驚いている中、エペはクレイの隣に座り、テーブルにあったクレイの飲みかけのワインを一気に飲み干していた。

「あ…それ」

「なに?」

「クレイの、飲みかけ……」

 エペはグラスを一瞬見つめたあと、今度は顔の赤いクレイの顔を見た。

「……別にいいかっ」

「エペ…酔ってる?」

 思わず脱力したクレイに、エペはにこにこ笑っていた。

「せっかくエペさん戻ってきたのにねぇ…」

 アーラたちはクレイに同情した。



 逆にクーゼたちはエペの素の姿に、目を見張ってしまった。

 あれだけ生真面目を絵に描いたようなエルピスの姿からは、とても想像が出来なかったのだ。

「まぁ…いい兆候かな」

 クーゼはそう言ってため息をついた。



「これで明日の組み分けが決まりましたね」

「そうだな」

 ケリーエがクーゼに声をかけ、クーゼも小さく頷いていた。

「明日の…って」

 クレイがクーゼに訪ねた。

「ああ。明日の見回りの組み分け。

 俺たち3人は独自に行う。お前たちはお前たちでベストと思われるメンバーで臨んでくれ…ということだ。それが一番だろ?」

 クーゼにそう言われ、微笑まれてしまうと、アーラたちは何とも言いにくい。

「じゃ、そうしましょ」

 エペは1人――どこか陽気そうだ。

 それがいつものエペと本当に違うので、それを知る者は面白い――というよりどこか怖かった。

「もうエペは寝かせたほうがいいだろうな……」

 パイクが呆れたように言った。

「じゃぁ…クレイよろしく。エペさんを部屋まで連れてってあげて」

「はっ!?どうして??」

 アーラがしれっとお願いする。

 クレイは絶叫したい気持ちをぐっと抑えて、アーラに訊いた。

「いやなの?」

 何故かそう言われ、エペの顔が眼前に迫る。

「……いやじゃないです…ご案内いたします」

 どうして敬語?というクレイに、「よし」とエペは頷き、「おやすみー!!また明日―!!」という陽気な妖気?を残し、エペは困惑気味のクレイを連れて部屋を出ていった。

 


 パタンと扉が締まる。

「あれで良かったの、パイク兄さん……」

 アーラはパイクに訪ねた。

「俺とバルコニーにいたときから、あいつ、時々クレイの視線を気にするような仕草をとってた。もう…俺に気はないだろうな」

 どこか寂しそうなパイクの肩を、ぽんとクーゼが叩いた。

「じゃぁ、今日はお前の2重失恋記念日だな」

「うるせぇっ!!」

 嬉しそうな長兄に、パイクが絶叫した。

「ああ、気にしないで、うち、いつもこんなんだから」

 ケリーエがあっけらかんとジンとミゲに言った。

 一体ニキティス本家って――?2人の頭に、そんな疑問が浮かんでは消えた。



 


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