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この兄をどうにかしてください!!  作者: 杮かきこ
第3章  『この祭りをどうにかしてください!!』
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第13幕  『ミゲ』

「付き合ってほしいんだ」

 青年の名前はオルドル。ミゲがアカデメイアに入学したその日、ひと目見て好きになったのだと言う。

 エリュシオン十二騎士家のひとつ、『リョダリ』家の次男。

 アカデメイアで学ぶこと3年。歳は18歳。『アトスポロス』でもあり、ランクは『第4級』。家柄も、そして同じ『アトスポロス』という立場からも、相手としてまったく問題ない。

 誠実そうで、真面目そうで。ミゲ自身、自分にはもったいないと思えるぐらいの好青年だ。

 オルドルは自分のことをそこまで名乗っていない。

 オルドルの存在はアカデメイアでも噂に上るほどの優等生。シェーヌが噂していたことを思い出し、ミゲは彼のことを知っていた。そのときは興味なかった――それは本音だが。

「…ごめんなさい。私には好きな人がいるから…」

「知ってる。アーラくんだろ?」

 オルドルはミゲが断ってくることはすでに予想していたのだろう。

 動揺することなく、落ち着いた様子でそう答えた。が、気落ちしている様子もない。

「実は君に伝えたいことがある。

 それはとても卑怯なことではあるが、そのままほってもおけない。

 君のお兄さん…ジンくんと、同じアーラくんを好きだというカメリアという女の子のことなんだが……」

 自分と付き合えと言っておきながら、何でここに兄ジンとカメリアの話がでるのだろう?それも「卑怯」と前置きをしてまで――。

「時々あの2人は密会をしている。君やアーラくんには内緒のようだ。

 何度か見たことがあるよ。…つい最近だと1週間前ぐらいかな?稽古場の裏で会っていた。何か君自身に思い当たることはないかい?」

 オルドルの話は俄かに信じがたかったが、思い当たるということであれば、無い訳ではない。

 何故かアーラと話が合いすぎているとか、アーラが来ることを事前に知っていて用意したのではないか?ということも、確かに1週間前にあった。

 ジンがそれに関わっているというのであれば、上手く辻褄が合う。

「…黙っているということは、「ある」ということだろう?

 君にこういうことを言う僕は卑怯だが、君のお兄さんやカメリアがやっていることの方がもっと卑怯と思う。

 恐らくは君とアーラくんと付き合わせたくないジンくんと、アーラくんが好きなカメリアの利害が一致した……というところじゃないかな?」

「……そうだとしても…兄さんは、私とアーラを付き合わせたくないとは考えてないと思うわ。カメリアも、私と同じようにアーラことを好きだけど、そんなあなたが考えているほど、卑怯ではないもの。むしろとてもいい子だし。

 私が騙されているというのであれば、それは信じた私は悪いから、2人を責めるつもりもない」

「……潔いんだね、君は。アーラくんに嫉妬するし、余計に君が好きになったよ。

 ごめん、僕が悪かった……。でも諦めるつもりはないよ。覚えておいて」

 噂どおりの爽やかな青年だった。笑顔に引き込まれそうな感覚を覚えるが、ミゲの態度は落ち着いていた。

「今、私に関わらない方がいいわよ。聞いてない?」

 ミゲがオルドルに警告をする。カタフに命を狙われていることは伏せているが、彼も『アトスポロス』なら、事情は知っていてもおかしくは無い。

「知っているよ。僕は……君を護りたい。護り通す。この命に代えてもね」

 誠実な上に一途か。本当に自分にはもったいない人だ。

「どうだろう?少しだけでも僕と付き合ってみないか?アーラくんに負けない…いや。それ以上に君を護るし、大事にする。アーラくんは君かカメリアか…決めていないようだからね。それも僕からしたら、優柔不断に見えるけど、彼なりの誠意ではあるんだろう。

 でも、置かれている事情だと、彼も自分の命を護ることで精一杯だろうから。

 君の身は僕が護るよ」

 にわか補佐役か?ミゲは本気で言ってくれているだろうオルドルの言葉が可笑しくなった。そして、ここでミゲは意外な答えをオルドルに伝えた。

「……少し考えさせて。大事なことだから」

「ほ……本当かい?」

「ええ。答えは祭りが終わってからでもいい?」

「あ…あぁ。いいよ、それで」

「じゃ2週間後。ここで時間は今と同じ。そのときに……」

「ありがとう。本当に嬉しいよっ」

 期待していなかったのだろう。オルドルの喜び方は、まるで付き合うことが決まったかのようだった。

「まだ……」

「わかってる。でも、とても嬉しいよ。よく考えて決めてほしい…僕は必ず君を幸せにするよっ」

 これじゃ求婚プロポーズだろう。ミゲは苦笑いを浮かべるしかなかった。

 それでも、真面目すぎるオルドルの誠意が嬉しかったのは――本当だった。



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