ラブレター?
「正一、どうしたんだよ?体育館に行ってから姿が見えないから心配したんだぞ?」
教室に戻り、鞄を拾い上げた正一に真が話しかけていた。
「うん、ごめん、色々あってさ」
正一は曖昧な言葉で返す。
「まあ、いいや一緒に帰ろうぜ」
「うん、そうだね」
「そういえばさ、体育館が半壊してたけど、あれって何だったんだ?」
「ああ、それはその・・・」
正一は自分の過失で体育館を壊してしまったとは言えなかった。
笑って誤魔化す。
「あのさ、真、魔法の実技練習、どうだった?」
「どうって、今は規模の小さい魔法しか使えなかったからまだ何とも言えないな、お前もそんな感じだろ?」
「う、うん」
違った。正一は、大きすぎる威力の魔法を使っていた。明らかに暴走していたのだ。
それでも、そんな事は相談できない。
別にプライドがどうこうの話ではない自分で認めてしまうのが怖かったのだ。
あの太陽魔法から感じたのは、全てを破壊する圧倒的な力。
制御できない破壊の力が彼の力すらも奪い、意識を全て侵食し、やがては全てを呑み込んでいく。
正一だけは違った、真の感覚とは全く違った。
「何か元気ないな、正一」
「いやなんでもないよ、真」
心配そうに正一の顔を覗き込み、尋ねる真に正一はやはり曖昧な返事をする。
「ま、帰ろうぜ?」
「うん、そうだね、行こうか」
二人は夕暮れの光が指す教室を後にした。
廊下を通り過ぎ、昇降口まで行った正一と真はロッカーを開けて靴を取り出そうとした。
昇降口には、何人かの生徒達が雑談をしながら昇降口を出て行っている。
賑やかとまではいかないが、がやがやとした喧騒がその場を支配していた。
そんな中、正一は自分のロッカーから何か紙のようなものが落ちるのに気付いた。
「何だ?それ・・・」
真が正一の懐を覗き込み、その紙を見つめた。
便箋だ。白い便箋。
「ま、まさか、正一!」
真が大声を上げる、そして、もう一度叫んだ。
「ラブレター!?」
真の大声にその場に居た生徒達がビクッと身体を震わせ、真の方を見た。
「いや、まさか」
そう言って、正一は便箋を空けてみた。
そこには・・・。