表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Other two wolrd  作者: 若月 幸仁
物質サイド
5/14

魔法適正検査結果

正一と律子は頑固一徹というラーメンのチェーン店にいた。

 店の中には美味しそうな匂いが充満し、席は満席でその殆どが美味しそうに麺をすすっていた。

 綺麗に掃除され、白を貴重としてクリーンな配色になっている店は明るい印象を受けさせる。

 恐らくマニュアル通りなのだろう。

 チェーン店が生き残るための徹底したマニュアルだ。

 カウンター席に座りながら店を見渡して、正一はそんな事を考える。

 先程注文したメニューはまだ来ない。

 暇つぶしに隣で家から持参した漫画を読んでいる律子を横目で見、正一はメニューが来るのを待った。

 ちなみに、律子が味噌ラーメン、正一が塩ラーメンだ。

「ああ、読み終わっちゃった」

 律子が、読んでいた漫画を投げ出して、退屈そうにあくびをした。

 すると、そのタイミングを見計らったかのように、注文した品が来た。

 頭にタオルを巻き、頑固一徹のロゴが入ったエプロンを着た女性店員が二杯のラーメンを盆に乗せて運んできた。

「塩ラーメンのお客様は?」

 女性店員が笑顔で聞く。

「ああ、はい僕です」

 正一は手を上げながら答えた。

 塩ラーメンが目の前に置かれ、律子のほうに味噌ラーメンが置かれる。

 割り箸を取り、割る。

 そして、透き通ったスープに箸を入れ、中に入った麺をつかみ、すする。

 美味かった。

 久しぶりの味だ。

 律子も夢中になってラーメンと格闘している。

「どうだ、律子、美味いか?」

 見れば分かるのに、正一はそんな質問をした。

 まあ、これは社交辞令みたいなものだろう。

「うん、美味しいよ。お兄ちゃん」

「そっか、良かった」

 十数分後、スープだけが残った器をその場に残し、二人は立ち上がった。

 そして、レジに向かい、支払いを済ませる。

 先程の店員が、元気に「またお越し下さいませー!」と、マニュアル通りの挨拶を済ませていた。

 そして、二人は店を後にする。

 

 家に着いたのはそれから十分ほど後だった。

「さて、これからどうする?律子、俺は今日は家に居るけど?」

「じゃあ、私も家に居る」

「そうか、じゃあ、一緒にゲームでもしよっか」

「うん」

 いつも通りのことだった。だが、これがこの二人にとってかけがえのない日常だ。

 一緒にゲームをして、一緒にラーメンを食べて、誰にでも出来ることだが、この二人にしか出来ない特別なのだ。

 そこで、二人はテレビのスイッチを入れ、少し古いゲーム機を出した。

 最新の機種などは、普通に考えて二人には買えない。

 これは正一の友達から譲ってもらったものだった。

 ソフトは正拳という格闘ゲーム、例え古くても、楽しむのには十分だ。

 律子は結構強い、正一も手加減はしない。

 本気の勝負だ。

 せわしなく動く手、画面、ゲームのキャラクター達。

 そして、正一の技が決まった。

 正一の勝ちだ。

 律子が悔しそうに画面を見つめる。

 そんな中、不意に正一の携帯電話が鳴った。

 マスクライダーバルトのオープニングだ。(勝手に律子に設定を変更され、そのままになっている。)  どうやらメールのようだった。

「誰からだろ、ちょっと待ってろ律子」

「うん」

 正一は、携帯を手に取り、開いた。

 そして、画面を見る。そこには、検査結果通知と表示してあった。

「?」

 検査結果とは、一体なんだろう?

 考えた所で、やっと思い当たった。

 魔法科学の属性の適正だ。

 少し胸を高鳴らせながら、正一はメールを開いた。

 通知には、こう書いてあった。

 適正、太陽魔法、月光魔法、以上。

 何とも淡白な通知に苦笑いしながら、正一はその結果を噛み締めた。

 二つの魔法科学の属性が自分に適正があった。

 その事実を。


 日曜日を普段と変わらない生活リズムで過ごし、月曜日を迎える正一、朝ごはんを自分で作り、律子の分も用意する。

 律子はまだ眠っているが、そろそろ自分で起きてくるだろう。

 時間は七時、起きる時間としては少し遅いが、それでも学校には十分間に合う時間帯だ。

「おはよー」

 案の定、律子は目を擦りながら居間に歩いてきた。

「顔洗ったら飯食べろよ?」

「ふぁーい」

 間の抜けた返事をする寝起き感マックスの妹に苦笑いしながら、正一は自分の食器を片付けていた。

 律子が学校の準備を済ませると、二人は同時に家を出た。

 晴れた日の朝だった。

 七月の陽気、雲ひとつない空、そして、蝉が鳴いている。

「あれ、いつの間に蝉が出たんだっけ?」

「昨日からだよ多分」

 夏を感じ、感慨に耽りながら呟いた正一に律子はすぐさま答えた。

 多分、というのは、おそらく律子も自信がないからだろう。

 ともあれ、蝉の声を聞きながら、二人は小学校に向かった。

 律子の通う小学校は、大通りを抜けた先にある。

 二人が歩く大通りは、家から出てすぐのところにあり、交通の便があり、自営業の店が立ち並んでいる。大型スーパーなどの台頭により、腐りかけた自営業が多いというのに、この大通りは頑張っている。たゆまぬ経営努力と活気にあふれた売り込み、それがこの大通りに活気を生み出している。

 魚屋を通り過ぎ、肉屋を通り過ぎ、八百屋を通り過ぎて、大通りを抜ける。

 どの店もまだ本格的な販売時間にはなっていないので、客は来ていない。

 それとは対照的に、あらゆる人がこの大通りを通っていた。

 何度か顔を会わせた人、(といっても、知り合いではない)とすれ違う。

 そして、大通りを抜けた。

 するとすぐに、学校が見えた。

 この学校には西の入り口と東の入り口があって、今律子が入っていこうとしているのは西の入り口だ。すでに何人かの生徒が登校口から入っていこうとしている。

 割と新しいモダンな感じがする学校で、アーティスティックな印象を受ける。

 形容し難い形状のモニュメントや、変な模様の刻まれた壁など、何でも有名なアーティストが手がけたらしいが、正一にはよく分からない。

 ともあれ、正一は何度かこの光景を見ているのでもう慣れていた。

「じゃあ、律子、帰りは一人で大丈夫だよな?」

 うん、と頷き、昇降口に向かう律子を見送り、正一はその場を後にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ