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未来は見果てぬ旅路の先  作者: 彩守るせろ
間奏A andante
41/189

 金と銀とに潜んだ光 1

更新の間が空いてしまい、本当にすみません。

第一節最終話の直後の話になります。次話はGW中には投稿できればいいなあ。(願望)



「…さて」


 広場の真ん中にある時計を見上げ時間を窺えば、おおよそ指定された時刻ぴったりをその針は指している。

 電灯などという便利な物のないこの世界で夜の十一時すぎとなれば、さすがに現在椋のいる広場もほとんど真っ暗、誰もいない。街灯がないというわけでもないのだが、中に光の魔術が封じ込められたそれは、あたり一面を照らし出すにはどうにも、強さが絶対的に足りなかった。

 気の弱い、ホラーの苦手な人間ならそれこそ風の音ひとつにもびくびくしそうなそんな薄暗がりの中に現在、椋は一人でいた。ついでに言うと非常に手持ち無沙汰だった。

 酒場にしてみればまだ、もう少しと追加で粘る客もそれなりにいる時間である。そんな時間帯に早退した理由については、カリアに呼ばれたんだと素直に皆に椋は言った。

 椋が「あの」カリアスリュート・アイゼンシュレイム・ラピリシアを自分の上客としていたこと、友人と互いにはっきり言い切れる関係にあったことは既にクラリオンの全員に知られている。ラグメイノ【喰竜】級の襲来時に加えて、オルグヴァル【崩都】級の卵が孵化したあの一連の件のせいだ。

 したがって今更何をどう下手に隠そうとするより、素直に言ってしまった方が皆も、納得してくれるだろうと椋は考えた。

 そしてそんな予想の通り、クラリオンの仲間たちは口を揃えて、そんなことならさっさと行けと椋の背を押した。もう料理作らなくていいから何か少しでも簡単なのでもあの子に作って行ってやれと、妙にニヤニヤ笑いでせっつかれたりもした。

 冒険者などという、基本的に変化球な人種の多い人間が集う場所で働いているからだろうか。クラリオンの従業員もまた、ひと癖ふた癖ある人間ばかりだ。

 だからこそ居心地が良いのだろうともしみじみ、思う。

 そうでなければ今もまだ、あんなことがあったあとでも変わらず椋をあの場に雇い続けることなどまず、しないだろうからだ。


「おー、星がきれい」


 暇な手持無沙汰のままに、ベンチにべろりとだらしなく寄りかかって上空を見やる。

 排気ガスとはほぼ無縁のこの世界では、空を仰げばたくさんの星が、びっくりするくらいに細かいものまで当然のように見える。夜の暗さや月光の明るさも、この世界に放り出されて初めて椋は知った。

 静かにはるか遠くで音もなく瞬きを続ける星を見上げながら、またたきの中一瞬見えた金色の光にふと、真っ直ぐに椋を見上げる同色の瞳を思い返す。怖いくらい整った顔が、ふんわりと笑ってゆるむ瞬間を思い出す。

 いつも一生懸命に、華奢な両手を目いっぱいに広げてたくさんのものを守ろうとする強い背中を思う。よくよく考えればそれが正しいことの証拠など何一つとしてなかった椋の言葉を信じ、自分を守ってくれた女の子のことを、考える。

 話したいことは、伝えたい言葉はそれこそ山のようにあった。ごめん、それに、ありがとう。自分のできる限り誠実に、言い訳じみたことは極力口にしないようにしたいと思った。

 しかし実際カリアに会ったら、まず俺、何からどう言おう。

 夜空を見上げたままぼんやり試行錯誤していると、不意に目の前に自分でない影が差した。


「ん、」


 ひとつ瞬きをして、椋は空を見上げ続けていた首を自身の前方へと戻した。目前の人影へと視線をやれば、何となく見覚えがなくもない、完璧な仕草ですい、とごく自然にその男は椋へと向かって頭を下げる。

 ややあってすらりと頭を上げた彼は、椋を見てにっこりと笑った。


「大変お待たせいたしまして、申し訳ありませんリョウ様。お迎えにあがりました」

「あ、…い、いや、別にそんなに待ってはないですよ。カリアのお迎え、ってことで、いいんですよね?」

「はい」


 相手の丁寧な物腰に、内心の微妙な動揺を隠せない椋にやはりにっこりと相手は笑う。

 カリアが椋へと寄越してくれた迎え、だという目前の青年は、また非常にご大層な美青年だった。きらきらのプラチナブロンドの長髪に深い蒼の瞳、体のつくりからそれぞれのパーツひとつひとつの配置に至るまで、何もかもが計算され尽くしているかのような完璧な、それこそ僻みや妬みなどという感覚すらもう凡人には抱けないようなものすごい非の打ちどころがない美形だった。おそらく彼の容貌を形容するには、イケメンという言葉すらおおよそ生ぬるい。

 カリアの傅役(もりやく)、要するにお目付役であるニースを見たときも思ったことだが、この世界では美形の元には同じく美形が集うのだろうか、と妙にバカなことをついつい椋は思う。別にこの世界だって椋が元いた場所と同じで、道行く誰もかれもが美形ばかりというわけではないのに、だ。

 顔で内面のステータスまで決定されるわけでもないだろうに、なぜカリアの周囲にはこんなに、やたらと美形が集っているのだろうか。

 考えて、ふと非常にどうしようもない結論に唐突に椋は思い至った。


「ああ、おまえのせいか」

「何か?」

「あ、いえ。すみません、何でもありません」


 少し不思議そうな顔をして首をかしげる目の前のお迎えに、苦笑して椋は首を横に振った。

 要するに「ヒロイン」であるカリアの周囲には、外見も内側もしっかりした人間を礼人が揃えたかった、ということなのだろう、これは。ヒロインに少しでも爽快に楽に動いて戦ってもらうためには、周囲にブ男だらけというのも色々と困る、めんどい。いかにも礼人が言いそうなことだ。

 しみじみ変な趣味の持ち主だよおまえは、と、胸中で静かに己の幼馴染に対し椋はごちた。

 だがそんな椋の思考を目の前の彼が寸分の狂いなく受け取ってくれるということがあるわけもなく、よく分からなそうに彼は椋へ向かって首をかしげた。


「そうですか?」

「はい。気にしないでください、本当に何でもないですから」

「かしこまりました。リョウ様」


 伝えたところで、非常にしょうもない上に証拠も出せない事柄だ。もうひとつ苦笑して彼へと応じれば、青年は返しの笑みをふと椋へと浮かべて小さくうなずいた。

 そして続いて彼はパチンと、小さく指を一度鳴らした。かと思えば即座に彼そして椋の目の前まで、お迎え用なのだろう馬車がやってきた。

 見事なまでにぴたりと椋の目の前で止まった馬車の扉を、手慣れた様子で青年が開く。必然的に椋へと向かって開かれることになったドアの中へと、彼は無言で笑って椋を促した。

 丁寧でそつのない身のこなしは、これまたいつぞやのニースと同じく非の打ちどころなく完璧である。

 言われるがままに馬車の中へと誘導され驚くしかないほど座り心地の良い座席に座らされ、さらに椋に相対する形で彼もまた腰を下ろす。明らかに高級そうな座席の感覚や控えめだが非常にきれいな馬車の内装、しかしそんな中にいるのが私服平服もいいところな椋だというちぐはぐさに、何とも居心地の悪いむず痒さを彼は覚えた。

 しかしそんなことを考えても、別に何が変わるわけでもない。

 やれやれと思いつつひとつ椋が息をついたとき、目の前の青年の合図とともに、おもむろに馬車は目的地へと向けて走り出した。


「本日は我が主の誘いに応じていただき、ありがとうございます」


 目の前にいる青年が再び口を開いたのは、馬車が動き出して間もなくのことだった。

 当然のように自分へと使われる敬語にさらなるむず痒さを覚え、奇妙に頬がひきつってしまう自分を椋は感じた。


「なにか?」

「え、ああいや、俺、他人からガチガチの敬語使われたり、こんな風に丁寧な扱いされるのって慣れてなくて」


 だからその、もう少し肩の力抜いて、喋ってくれた方が正直、ありがたいなあ、と。

 頬を掻きつつ正直に伝えた椋の言葉に、若干意表を突かれたような表情を彼は浮かべた。


「しかしリョウ様が、我らが主の大切なお客人であることに変わりはありませんから」

「あー、えーと、…じゃあ、その大切なお客人としてお願いします。もう少しだけでも、砕けた口調でしゃべってもらえませんか」


 何がどう奇妙でぶっ飛んでいようと、結局のところ椋は、ただの一般庶民でしかない平凡な人間である。

 必要以上に丁寧に相手から接されるのには、正直なところ違和感と居心地の悪さしか感じられないのだ。他の誰でもないカリアが寄越してくる人間ならきっと分かってもらえるだろうという考えの上での椋の言葉に、一瞬ぽかんとしたような表情を目前の青年は浮かべた。

 わずかな思考の空白の後、ぷっと小さく彼は、吹き出した。


「主の話には聞いていたが、やはりあなたは随分と奇特な方のようだ」

「はは。よく言われます」


 青年の笑いに返すように、椋もまた肩をすくめて笑う。椋本人からすればけっこうに不本意なのだが、しかしそれもここ二カ月ほどで言われ慣れてしまった科白だ。

 笑顔とともに言葉を返せば、また、にこりと非の打ちどころがない完璧な微笑みを青年は椋へと向けて来た。


「では、どうぞリョウ様も私には一番お気を使わぬ口調でお話し下さい。いつもその口調、というわけではないのでしょう?」

「あー、それはまあ」

「でしたら」


 さらににっこり。ダメ押しのようなその笑顔には、別に何を言われているわけでもないのに妙な威圧感がある。

 そしてそんな威圧感に、たかが一般庶民風情が勝てようはずもない。ダメ元の抵抗は試みてみたものの、やはりそんなあがきは大して長くは続かなかった。

 絶対に譲らない風情で笑顔をこちらへ向け続ける青年に、思わずひとつため息をついてがくりと椋は肩を落とした。


「わかった。……なんでこう美形って奴はどいつもこいつも押しが強いんだ」

「ん?」

「何でもない。カリアの指示でここに来たってことは、俺がこんな風な口調であんたやカリアに喋っても呼び捨てで名前呼んでも、別に怒ったりしない人種ってことでいいの?」


 ダメ押しされた手前である。がらりと言葉を切り替えて椋が訊ねてみれば、また少し驚いたように彼はその目を開いた。

 なぜそこで驚くのかと思いつつ返事を待っていると、割合すぐにまた笑顔に戻った彼は椋へ向かって首肯を見せる。


「そう考えてもらって構わないよ」

「ん。わかった」


 なんとなく、先ほどよりさらに彼の笑顔が楽しげに見えるのはなぜなのだろう。

 彼のとんでもないまでの美青年具合と比べれば、椋の顔など別に眺めたところで面白くもなんともないだろうに。或いはまた、自分常識にのっとったこの世界にとっての珍妙を、無自覚に椋が口にしたのか。

 しかしもう、いい加減に面白がられるのにも慣れてきつつある椋である。少しだけ気を取り直して、もう一度改めて相手の方を椋は見やった。


「わかったついでに、そっちの名前は? 俺だけ名前知られてるのも不公平だしさ」

「ん? ああそうか悪い、まだ名乗ってなかったんだったな」


 一瞬だけ不思議そうな顔をした後、彼は妙に納得したような表情になった。

 やはりにこりと爽やかな笑みを浮かべ、おそらく何の気なしにでもろうたけて響かせられるのだろう声で彼は名乗る。


「俺はロアノイ・ドライツァ。アノイって呼んでくれ」

「……」


 アノイ。

 告げられた名前と彼の外見が、不意に椋の中でぴんと一つの糸として繋がる感覚があった。


「アノイ、ね」


 笑顔で名乗られたその名前を反芻する。しかしアノイという名前は確か、このエクストリー王国においては現在、おいそれとは口にできない高貴の名ではなかっただろうか。

 ついでに言うならその名を持つ男は、ひどいまでに圧倒的なステータスを誇る異常な人間だ。聞かされた当時に妙な名前だと思った、それゆえに何となく頭の片隅に引っ掛かっていた、この創作世界における登場人物のひとりの名だ。

 しかし素直にそれについて問うたところで、目前のアノイが事実を話してくれるかどうかは分からない。というより、話してくれる気が全くしない。椋の記憶が正しくこの感覚もまた正しいならば、その「アノイ」は他人で遊ぶのが好きで、基本的に何をどう考えているのか他人には掴めないところが大いにある人間だったはずだ。

 そもそもアノイが本当に、その「アノイ」であるかどうかの確証も椋にはないのである。こんなことを考えている時点で、違う可能性など非常に、異常なまでに低いと言わざるを得ないのだろうが。

 正直色々な意味で考えづらい「間違い」の可能性も割と必死で考えつつ、その正否を確かめるべく椋は言葉を続けた。


「ちなみにアノイ、年幾つ?」

「年? 確か二十五、だったかな」

「へーぇ」


 間違いの可能性をあっさりと、また一つ潰してみせたアノイを椋は片頬の若干ひきつった笑いとともに眺める。そしてどうも、なんとなく、彼のあまりにけろりとあっさりした態度は、その「事実」を別に隠そうともしていないのではないかと現在の椋には思えた。

 この国で一番有名な「アノイ」という名の人間と言えば、もはや誰に問うまでもない。

 ここエクストリー王国の、現国王であるアノイロクス・フォセラアーヴァ・ドライツ・エクストリー陛下である。


「そういうリョウは? いくつなんだ」

「俺? 二十三」

「なんだ、そんな年なのか。もっと若いと思っていたから意外だな」

「なんか全然褒められてる気がしないけどとりあえず、まあ、ありがとう」

「礼はいらないさ、褒めてないからな」

「…仮にも初対面の人間に、その言い草はひどいと思うぞ、アノイ」


 笑って下らない会話を続けながら、目の前のアノイを見やる。

 アノイロクス・フォセラアーヴァ・ドライツ・エクストリー。

 長ったらしい名前を持つ、生まれついての強大かつ絶対の「光」の力を保持するこの国の若き王は現在、御年二十五歳。まだ若造と誰に侮られてもおかしくない年齢であるにもかかわらず、その政治手腕および自身の保持する絶対的な力より、もはや揺らがぬこの国の頂点としてエクストリー王国を牽引する王様、らしい。

 ちなみになぜ椋が王様の年齢を知っているのかと言えば、この世界に椋が放り出されて一月弱ほど経ったくらいのとき、現国王の生誕祭が盛大に開かれたためだ。

 直近では誰もが間に合わないと絶望した王都の危機を、誰に告げることもなく内密のうちに王都へ一人帰還し魔物を殲滅したことで救った英雄、でも彼はある。今でも彼の放った白光の壮絶さは、椋の目にも強く焼き付いている。

 誰に何を告げることもなくひっそりとこの国に一人で彼が帰ったのは、あの魔物を呼び出した人物へと誅罰を与えていたからだ、などと巷の噂ではまことしやかにささやかれたりもしているらしいが、さてはて。

 カリアの家に着いたときのカリアの反応がある意味楽しみになってきつつ、再度椋はアノイへと口を開いた。


「なあ、アノイ」

「ん?」

「カリア、元気にしてる?」


 彼への考察はひとまず置いて、どうしようもない別れ方をしてからというもの、一度も会うことができなかった少女の名を改めて椋は口にした。

 記憶に確かにあるはずのカリアの存在は、しかしどうしてかはっきりと掴もうとすればするほどに曖昧にぼやけて、滲む。金色にひかる強い瞳も、きらきらと光を跳ね返す銀色の髪も怖いくらいに精緻にどこか硬質的なまでに整った顔立ちも、確かに覚えているのにどこか曖昧なのだ。

 それは彼女へ向けるための、向けたいと思う感情や言葉があまりに現在の椋には多すぎるからなのかもしれない。さらに言えば色々な理由を言い訳として、結局彼女に呼ばれるまで、カリアに会うために自分からは動かなかったからなのかもしれない。

 椋の問いかけに、わずかにアノイはすっとその目を細めた。

 驚くほどに深い蒼の瞳が、椋を見つめてどこか意味深に笑う。


「少なくとも、体調の不良はないな」

「それ、答えになってるようでなってなくないか?」

「否定はしないが。それ以上のことは自分の目で直接見て確かめろ、ということだ」

「なるほど」


 笑みが深まってもやはり楽しげなアノイの表情に、言葉に椋は肩をすくめる。確かにその通りだとも思ったので、それ以上のことを彼に尋ねることはしなかった。

 彼女に体調の不良がないというだけでも、少しはほっとすることができる。椋を守るために一人で魔物と相対した、あの時のカリアが怪我をしていたことや、オルグヴァル【崩都】級の消え失せたあとも呪いによる体調不良がすぐには治らなかったクラリオン周囲の人々のことを考えれば、というだけの話ではあるが。

 けれどきっと今のカリアは、椋には及びもつかないような山のような案件を一人で当然のように抱え込んでいるのだろうとも、思う。そしてそれはきっとカリアだけではなく、今晩ようやく椋の前に姿を現したクレイ、屋敷へ行ってみようとしても、事前に予約を入れた人間しか通せないと突っぱねられたヨルド・アルセラ両人にしても同じことなのだろう。

 自分勝手な思考でしかないことは承知しながら、それでも少しでも元気でいてくれればいい、そう、ずっと会えない間の椋は思っていた。

 たとえもうクラリオンで些細な会話を椋の特別うまくもないお菓子を肴に交わすことができなくても、それでも彼女を友人だと考えることくらいは自由だろうと、思うのだ。


「リョウ」

「ん?」


 そこまで考えたところで、不意に椋を呼んだアノイの声によって彼の思考は遮られた。

 にこりとやはり、どこかこちらの有無を言わせぬ表情で押し強く笑って見せるアノイが、続けてくる。


「まだもう少し、屋敷に着くまでは時間がかかるんでな」

「…うん?」

「だからな。一通りのところは勿論、俺も聞いているんだが」

「はあ」

「どうせならおまえの口からぜひ、我が主とおまえの慣れ染めが聞いてみたいな」


 にっこり。また有無を言わせぬ完璧な美形のきらきらが無駄に眩しすぎる笑みである。

 アノイの楽しげかつどこか妙に下世話めいた言葉はそして表情は、とてもではないが本当に心底からカリアを敬っているとは思えない。まあ王様なら別に貴族を敬ったりする必要ないもんな、むしろ従わせる立場だもんなあなどと考えて、もはや彼が王様であることを疑おうともしなくなっている自分に椋は気づく。

 どうして椋のような一般庶民、であるはずの人間の前に一国の王がいるのかなど多分、考えてはいけない。

 礼人の作った王様は、そういう意味不明にしか思えないような破天荒を当然のように行って見せるからこその「王様」なのだ――。





 ごく普通に椋を迎えに出ようとしたカリアやその周囲が、彼の傍らに当然のように立つアノイの姿に愕然と言葉をなくすまではあと、もう少し。




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