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未来は見果てぬ旅路の先  作者: 彩守るせろ
第三節 流転の開放/折翼の少女
125/189

【 Transaction 】


<ヘイル夫妻がリョウ・ミナセへ宛てた手紙より 抜粋>



【疾患「ヴォーネッタ・ベルパス病」について】

現時点までに明らかになっている事項について述べる。

・ヴォーネッタ・ベルパス病は、若年の「青」以上の魔術師に突然発症する、呪いの一種である。病名は、古語における「(とざ)された眠り」「虚ろ」を示すヴォーネス/バルパスに由来する。

・主症状は病名の通り「覚めない眠り」である。いかなる刺激によっても反応を返さない。すべての患者が、魔術により生命を保っている状況。

・発症に男女差はなし。全員15歳以上25歳以下の、将来を嘱望される魔術師あるいは騎士など、魔術を生業とする人間である。

・現在までの患者10名に、何らかの前駆症状が確認された例はない。発症当日に突然意識を失い、眠ったまま目を覚まさなくなるという経過を全例がたどっている。

・詳細は新規事項に記載するが、本疾患の原因は「呪術による呪い」である。

・ただし通常と同様の解呪は理論的にほぼ不可能。呪核(呪いの発動に際し、呪術により対象へ埋め込む「呪いの核」)の存在同定にも特殊魔術が必要であり、詳細な存在箇所同定にはさらに膨大な魔力が必要となるため。

・これを代替しうる治療法、もしくは通常の解呪を可能にする方法については未だ発見できず。現時点では対症的に魔術による全身状態維持を行うよりほかに方法がない。

・発症から約1ヵ月の経過で、7枚花まで病状の進行が見られる。過去の事例より8枚花への進展は、患者の死を意味する可能性が極めて高い。


【新規事項】

・本疾患の原因となる術式が、禁呪「ランスバルテの狂華術式」であることを特定。

同定術式「テル・ラジュニの光析術式」より、ヴォーネッタ・ベルパス病の確定診断および病期診断が可能になった。病期は、術式より現れる花弁になぞらえ1枚花-8枚花。

・最初期の患者3名、発症より4週間超が経過している症例の全身状態の悪化傾向あり。

花弁は6枚花~7枚花まで増加。いずれの例においても魔力量の持続的な減少、生体反応の低下、滋養強壮の術式に対する反応性の鈍化がみられている。

・前回から今回までの新規発症者は確定で2名。2名ともに「テル・ラジュニの光析術式」より確定。

患者はアルセルタ・フリップ(17歳女性/宮廷魔術師団所属)およびポールス・サルヴェイ(24歳男性/宮廷騎士団所属)。いずれも前駆症状なし、前日まで普段通り己の任務に当たっていた。

アルセルタ・フリップは発症当日、無断欠勤を訝った同僚の自宅訪問より発覚。ポールス・サルヴェイは同位階の騎士たちとの昼休憩中、突然その場に倒れ一切の反応がなくなった。




 おまえに無茶を振ってることは重々承知してる。紙面上の情報じゃわからないことのほうが、特におまえに関しては多いだろう。

 だからこそ改めて、現時点の俺たちから頼む。

 ここに嵐を起こしに来い、リョウ。

 


今晩もしくは明日、もう1話更新予定です。

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