第17話 底
アヤさんが土魔法で作った2mほどの高さの台から俺たちは飛び降りた。
どうやら湖の中の孤島のような場所に落とされたらしい。直径10メートルほどの地面の周りを深緑色の液体が取り囲んでいる。嫌な感じの泡も湧いていて、見るからに毒がありそうな雰囲気だ。
「カタカタカタカタ」
不意に乾いた音が聞こえてくる。音のする方を見やると体長2mを超える巨大なカニがいた。苔が生えた銀色の甲羅が鈍く光っている。鎧カニ――レベルは俺たちと同じ26だ。
「こいつは手強いぞ!」
俺が叫ぶと同時に鎧カニが横向きに突進してきた。疾い。
俺はカウンター気味に『天魔のハルバード』を突き立てる。
ガキン! と金属音が響く。これまですべての敵を一撃で屠ってきた『天魔のハルバード』をもってしても貫けない。表面が軽くえぐれているだけだ。だが、エンチャントされた雷属性は有効なようで、カニは一瞬硬直する。
カニの正面に位置していたアヤさんがその隙を見逃さずに、縦に回転してから全体重を乗せた爪攻撃を放つ――【破転爪】アイアンボアと戦っている時にアヤさんが覚えたスキルだ。
一撃のダメージは連撃系の【乱撃爪】よりも大きい。致命傷とまではいかないがかなりのダメージが入ったようだ。
アヤさんは【破転爪】に火属性を付与していた。もしかしたら火属性が有効なのかもしれない。そう思った俺は間髪入れずに【ファイヤーランス】を放った。
だが、思ったほどのダメージは入らない。その時、視界の隅に新手の鎧カニが現れた。こちらに向かって毒沼のなかを横向きに進んでいる。こいつに手間取りすぎると危険な状況になってしまう。
鎧カニは方向転換するとアヤさんに向かって、横向きに突進していく。こちらに背を向けている鎧カニに【雷束撃】を放つと、雷ビームの直撃を受けてカニは硬直した。そこをアヤさんがふたたび回転しながら【破転爪】を放つ。だが、硬い甲羅に阻まれて逆に弾き返されてしまう。火属性や雷属性の攻撃自体は通っているようだが、物理攻撃はほとんど通っていない。
「アヤさん、奴の弱点は正面だ!」
「ニャ(だな)」
ふたたび【雷束撃】を放ちカニを硬直させる。その隙にアヤさんが敵の正面に廻り込むが、敵は自分の弱点を知っているようで、方向転換を試みようとする。
「させるか!」
俺は【雷束撃】を二連続で放った。そこにアヤさんが雷属性を付与した【破転爪】を放つ。
カニの片目が切り落とされ、体液が滴り落ちている。硬直しているカニに対してアヤさんは雷属性をエンチャントしたまま、左右からの高速猫パンチ【乱撃爪】を連発した。
アヤさんの8連撃を受けてカニはついに力尽き、俺のレベルが27に上がった。
レベルが上ってマックスになったMPをふんだんに使って俺は土魔法で厚めの壁を作る。新手の鎧カニは壁を乗り越えようとして失敗し、方向転換した。狙い通りだ。
俺は壁の切れ目で待ち構えて、こちらに正面を向けた状態で横走してきたカニに【五月雨突き】を放つ。槍で覚えたスキルだがハルバードでも使用可能だ。
十分な手応えがあったがカニは5連撃に耐えきった。間髪入れずにふたたび【五月雨突き】を放つとようやく鎧カニは力尽き、アヤさんのレベルも27に上がった。
ドロップアイテムは『カニカマ』だった。スーパーで売っているカニカマは魚のすり身にカニエキスを加えたものらしいが、これはたぶん純粋なカニカマなのだろう。
ちょっとつまんで食べてみたが、普通に蟹の味がした。アヤさんも食べたがっているようなので、手で引き裂いて少量を渡す。毒入りの可能性があるのでいきなり全部食べるのは危険だと思ったのだが、アヤさんはちょっと不満そうだ。
それにしても敵が一気に強くなっている。かなり下の階まで落とされたのだろう。
****** 【付録:額のレベル表示】 ******
レベル27
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実際には線がもっと太くて破線(— —)の空白が短い感じです。




