親友と新友
翌日。
「春川!一緒に食べていい?」
「おー。いい?健太」
「…いいけど」
さも当然のように教室へ来た三田に、健太は驚いたみたいだった。
じっと不思議そうに三田を見る健太。三田は小さく首を傾げ、何?と尋ねた。
「いや…何、付き合うことにしたの?柚希」
「違うよ。友達」
「…友達?」
訳がわからないと言わんばかりの声色で健太が反復した。
「春川に俺の我が儘きいてもらったんだ。俺と友達になってくれって」
三田がそう言うと、ふーん、と健太は頷いた。
その視線は三田から俺に移ってきて、じっと俺を見る。
「…なに?」
「いや、別に。えっと、俺は岸部健太ね。よろしく」
「三田結斗!よろしくな」
「……?」
健太の反応を変に思いつつ、俺は昼ご飯のパンの袋を開けた。
今まで話したことがなかったから知らなかったけど、三田は結構気さくな奴で、それなりに評判もいいらしい。
話してて面白いなぁと思うことも割と多く、でも思ってたより温厚な性格みたいだ。
「そういえば三田、サッカーやってんだって?」
「あぁ、うん。運動するのが好きなんだ、俺」
「柚希、1年の三田っていったらサッカー部のホープだよ」
「え、そうなの?」
「それは周りが勝手に言ってるだけで…!岸部、変なこと言うなよ!」
三田は照れたように頬を赤く染めながら少しだけ声を荒げる。
褒められるのが苦手なタイプなのか。
パンにかじりつきながらそんなことを考えると、健太がまた口を開いた。
「柚希、今度サッカー部の練習見に行こうか。三田が参加してる時に」
「んー…でも午後の部活って校外の生徒が来てるじゃん。しかも女子ばっか」
黄色い声なんて聞こえるはずがないうちの学校で、唯一耳にする時間は午後の部活だ。
野球、バスケ、サッカー。
そういった運動部には必ずと言っていい程に女子が歓声を上げている。
「三田くーん、とか可愛い女子に呼ばれてんじゃねぇのー?」
「まぁまぁ、それも面白そうじゃない?」
俺のからかいに苦笑いだった三田の代わりに、健太が答える。
行こうよ、と続いた言葉に俺は了承した。
「そのうち気が向いたらな」
「え、ホントに来るの?」
「行くよ。何、見られて困ることでもしてんの?」
違うけど…と歯切れの悪い答え方をする三田。
意味がわからなくて健太を見ても、どうやら健太はわかっているようでくすくすと小さく笑うだけだ。
「大変だな、三田。めげずに頑張れよ」
「…他人事だと思ってるだろ」
「だって他人事だし。ね」
ね、と言われても、俺には何の同意を求められたのかがわからない。
とりあえず、三田と健太は仲良くやれそうだと頭の隅でぼんやり思った。