新しい友達
友達になってって、こいつはいきなり何を言い出すんだ。
「…何言ってんの?意味わかんないんだけど」
「あ、いや、その、俺このまま春川に避けられたりすんの嫌だから…!」
聞いてみれば、随分と身勝手な理由。
三田は焦ったように、ああでもないこうでもないと言葉を探している。
「…ホントはちゃんと場数を踏んで言わなきゃって思ってたんだ。でも、いざ春川と向き合ったらテンパっちゃって…」
殴られた後に言うこと間違えたって気付いた、と呟く。
…こいつ、実はすごくバカなんじゃないか。
「絶対何もしないから!好きだとか言わないし、変な目で見たりもしない!だから、その…」
一度伏せられてすぐに戻った瞳には、不安の色が見えた。
しかもそれはまっすぐ俺に向けられている。
「俺と、友達になってくれませんか…?」
こんなのずるい。まるで泣き落としだ。
こんな状況で断ったら、明らかに俺が酷い奴じゃないか。
誰に見られてる訳でもないはずなのに、俺の心には断ることに関しての罪悪感が積もる。
「…それで、あわよくば俺が自分を好きになってくれたらってこと?」
「っそれは…完全に否定はできない、けど」
「………」
「でも俺、ホントに…!」
はぁ、とため息を吐く。三田が肩を震わせて黙った。
「…いいよ」
「……え?」
「友達になるくらいならいいよって言ってんの」
三田は俺の言葉に呆然としたまま動かない。
眉をひそめると、はっとしたように顔色が変わった。
「え?え?ホントに?ちょっ、これ夢じゃない!?」
「は?三田、まず落ち着け」
俺の言葉も聞かず、三田はぎゅうっと自分の頬をつねる。
よっぽど加減せずにつねったのか、すぐに頬を押さえてうずくまってしまった。
「い、痛い…!」
「そりゃそうだろ!何やってんだよお前!何か怖い!」
俺がそう言うと、三田はゆっくり顔を上げて笑った。
さっきの痛さのせいか、ほんの少しだけ涙目になっている。
「へへ…やばい、超嬉しい」
「……ったく」
そこまで嬉しそうに微笑まれたら、なんか照れるだろ。
そんなことを思いながら、俺は三田に手を差し延べた。三田はその手を掴んで立ち上がる。
近距離で、三田の笑顔を見た。
「ありがと、春川」
「…一応言っとく。俺は絶っ対に男なんか好きにならないからな!」
「ん。大丈夫、頑張るよ」
「違うだろ!」
やっぱり俺は、変な奴に好かれるらしい。