友達になって
三田は少しだけ気まずそうな表情を見せた後、意を決したような瞳をして俺に近付いてきた。
「あの、春川…」
「何?」
「さっきのこと、少し話したいんだ…時間、ない?」
おずおずと問われる。どうしたもんかと考えていると、とん、と健太が俺の肩を叩いた。
「いいんじゃない?話くらい聞いてあげれば?」
「お前、仮にも親友だろ。心配じゃないの?」
「三田はそんな奴じゃないよ」
ね、と三田本人に笑いかける健太。三田は少し驚いていたみたいだけど、やがてぶんぶんと首を縦に振った。
…まぁいざとなったら逃げればいいよな、なんて。
「…わかった、いいよ」
「あ、ありがと。じゃ、少し春川借りるね」
「ん。いってらっしゃい」
俺は貸し出し可能物か。
そんなことを思う俺を知ってか知らずか、にこにこと微笑む健太に見送られて俺は三田の後について教室を出た。
*
「…で、話って?」
切り出したのは俺の方。
人気の少ない中庭に連れて来られ、俺は正直何の話なのか見当もつかなかった。
付き合って欲しいっていう件なら一瞥して帰ればいい。けど三田の表情は少しばかり神妙だ。
「えっと…さっきのこと、で」
「うん」
「その…ごめん」
「……ん?」
「だから、ごめん。後で冷静に考えてみたら、急にあんなこと言われたら普通引くよなって」
俯き加減のまま、三田は呟くように言った。
この言葉は少し予想外で、俺は何も言わず黙り込む。
「っでも、さっき言ったことは嘘じゃないんだ!俺は本当に春川が好きで…うん」
うん、じゃねぇ。何を1人で納得してんだこいつ。
しかしこの雰囲気でそんなことを言えるはずもなく、俺はただ三田の顔を見つめるしかできなかった。
「…1つ、頼みがあるんだ」
「頼み?」
「うん」
反復するように答えると、三田はしっかりと俺の瞳を見た。
真剣な視線に、ちょっとした緊張感を覚える。威圧されたような感覚。
次に三田の口が開いた時、俺の身体は少しだけ強張った。
「頼む!俺と、友達になってくださいっ!」
「………は?」
強張ったはずの身体からはすぐに力が抜け、俺は告白された時と全く同じリアクションをとってしまう。
なんなんだ、この男は。