三田、再び
ぱっちりとした二重の瞳。お世辞にもたくましいとは言えず、寧ろ逆に華奢な身体。運動はできるのに白さを保っている肌。地毛にしては明るめの髪。
俺には男を主張する要素が昔から少なかった。
可愛い、可愛いと周りは口を揃えて言う。それはいつまで経っても変わらなくて、俺はそれが嫌だった。
大きくなったら、と未来に願をかけた所で思ったようにたくましくなる訳でもなく、高校まで進んでしまった。
何を思ったか男子高に進んだは良いものの、男だらけの空間では逆に自分の華奢さが目立ってしまう。
進路を安直な考えで決めた過去の自分を呪いたくなった。
そしてただの都市伝説だろうと思っていた男子高の同性恋愛。それは決して嘘ではなく、生徒の中で限りなく女に近い俺は多くのタチ側のターゲットになっていた。死にたい。
俺はノンケであることを主張するべく、告白というものをしてきた奴全員をフっている。さっきの三田のように、強い拳を添えて。
男なら拳で語れ…っていうのはただの建前で、ただの苛立ちを具現化したものとも言える。
「俺、そんなに男受けいい顔してる?」
「さぁ?まぁ、可愛いのは否定しないけど」
「健太も結構酷だよね…」
「俺は事実を言っただけだよ」
岸部健太。もう小学生からの付き合いになる。
長いこと俺の傍にいたせいか、俺の苦労をわかってくれる数少ない理解者だ。
「何のためにあんな断り方してると思ってんだよあいつら…」
「そういえば、春川柚希のツンデレは攻略し甲斐があるとかいう噂聞いたなー」
「なにそれ!?」
誰だそんな噂流した奴。俺が直々にぶっ飛ばしてやりたい。
頭を抱える俺に小さく笑って、よしよし、と健太は俺の頭を撫でた。
「大丈夫。柚希がかっこいいこと、俺知ってるから」
「健太ぁ…!」
ホントこいつはイケメンだ。俺が女だったら惚れてる。あくまでも、女だったら。
ありがと、と口にしようとした瞬間、教室に俺の名前が大きく響いた。
しかもその声は、ついさっき聞いたばかりだったような。
「春川っ!」
「…三田、結斗?」
ついさっき殴ってフったはずの相手は、小さく息を弾ませてまっすぐ俺を見ていた。