告白
「あっ、あの…!」
昔から、変なものに好かれることが多かった。
動物にも好かれる。少しばかり変わった人間にも好かれる。
天性なのよ、と幼い頃に母親に言われてしばらくは誇らしく思っていたこともあったけど、今はそうでもない。所詮、変なものは変なものだ。たまに周りの目が冷たくなることだってある(動物ならまだしも、人間は特にな…)。
「何?」
「俺、三田結斗っていいます!その…っ、俺と、付き合ってください!」
「………は?」
ほら、また変なのがきた。
*
がやがやと騒がしい廊下。にも関わらず、三田と名乗った奴の爆弾発言によって視線は全てこちらに向けられている。居心地悪すぎだ。なんだなんだと興味本位の瞳が周りを埋め尽くす。
「………」
「俺のこと、知らないかもしれないけど…実は俺、ずっと前から…っ!」
「なに?マジ告白?さすがモテるな春川!」
野次の1人がそう囃し立てると、周りは更に盛り上がってしまった。
爆弾発言した張本人は変にあわあわしてるし、居心地の悪さは最高潮。
「えっと…三田くん、って言ったっけ?」
「あ、うん!三田結斗!」
人当たりの良さそうな笑顔を浮かべて、三田は自分の名前をもう一度言った。
「三田結斗、ね。とりあえずぶっ飛ばす」
「え…」
三田が何かを言う前に、三田の頬に向けて拳を振るった。急なことで受け身さえも取れなかったらしく、三田は盛大な音を立てて壁にぶつかる。
殴られた頬に手を添えながら、呆然とした目が向けられた。
意味がわからない、そう書いてあるんじゃないかってくらいの顔。
「悪いけど、俺そういう趣味ないから。他あたって」
「ちょっ、春川!待って!」
三田の声を背中で受けつつ、俺はその場から足早に離れた。
俺を避けるように人混みが割れる。また記録更新だな、という小さな声が聞こえた。
何が記録だよ。他人事だと思いやがって。
俺の真剣な悩み事を、笑い話にしやがって。