表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1人の方言話者より  作者: 言根(ことね)
13/20

「もん」

 標準語の「もん!」はきっと、駄々を捏ねる子どもの声で再生されますよね。


「ぼく、わるくないもん!」


これの元になった表現は「〜だもの。」でしょうか?



 私の方言では、大人が普通に「もん」を使います。


「田舎もん」などで登場する「者」や、「そんなもん」(そういうもの)で登場する「もの(物)」のことではありません。


きっと、標準語話者には駄々を捏ねているかのように聞こえ得る文脈で、そうでない「もん」があるのです。



 「今週の日曜って空いとる?」

(今週の日曜日は空いている?)


「ごめん!私、日曜バイトやもん(?)」

(ごめん!私、日曜日はバイトなんだよね。)


「毎週?」


「ほぼ毎週。」


「そっかー。そしたら金曜の夜か土曜やね。」

(そうなのか。それなら金曜の夜か土曜だね。)



文字起こしすると「!」でも「?」でも「。」でも、どうにも音が合いません。


ただ少なくとも上記の例では


「バイトがあるんだもん!日曜日の予定は空けられないんだもん!私のせいじゃないもん!仕方がないんだもん!!!」


といったニュアンスはないのです。


バイトなんだよねと訳したように、「実はそうなんだ」というようなニュアンスでしょうか。


私のバイトの予定を把握していなくても、それは当然のことだけど、予定が空けられないことは分かってくれるでしょう?


といった具合で、駄々を捏ねているのとは違います。



 これまたイントネーションは変わるのですが、待ち合わせに1人が遅刻してきた場面で



「ごめん!寝坊した!!」


「大丈夫よ。連日、バイト頑張りよったもんね。寝れた?」

(大丈夫よ。連日、バイトを頑張っていたんだから、寝坊することもあるよね。眠れた?)


「マジ寝てた。ほんとごめん。」

(本当にぐっすりと寝ていた。本当にごめん。)


「良いよ。寝れてよかった。」


「ありがとう。」



という会話の中の「〜もんね。」は. 、決して幼い言い回しを敢えて使い、相手を子ども扱いしてみせるような煽りではありません。


知っているよ。納得しているよ。同意するよ。


そんな優しいニュアンスです。



本当は訳した通り「から」と言ってしまいたいのですが、どうやら私の言う原因理由の助詞「から」はこれまた独特な働きを持っていそうで、説明に使うことができません。



 さらには


「なんしよーと?!ねぇ、箒でチャンバラはマジで窓割れるよ!1年のとき、誰か割っとったろーもん。辞めんしゃい!」


(何をしているの?!ねぇ、箒でチャンバラは本当に窓が割れるよ?私たちが1年生の時に誰かが窓を割ったという過去があるでしょうよ。辞めておきなさい。)


という、委員長タイプ女子の台詞の方言版でも使えます。


委員長タイプ女子と敢えて書いたのは、同級生に使う言い回しかと言われると、発する人の性格を選ぶという経験的なイメージがあるからです。


それこそ、同級生に「〜しなさい。」を使うかどうかはきっと分かれますよね。


私の中に、掃除時間に


「ちょっと男子〜!!ちゃんと掃除して!」


と言うキャラクターがステレオタイプとしてあるのですが、これって今でも通じますか?


「割っとったろーもん。」

(割っていたでしょうよ。)


は、相手も同級生の誰かが窓を割ったことがあることを知っていると思っての発言です。


このように、あなたも知っているでしょう?というニュアンスを含む「もん」もあります。



 良いと思って聞く


「良くない?」



正直良くないと思って聞く


「良くない?」


はイントネーションが違いますよね。あの類です。



 もちろん、駄々を捏ねての「もん」は私の方言話者の子どもも使いますよ。


ただイントネーションに注目していただきたかったのです。



壮年期の方々や、そのさらに年長者として歳を重ねて生きてこられた方々の言葉が、駄々のようなニュアンスを含むと誤解されることなく、その尊厳が守られてほしいと思いました。



 1人の方言話者より


「もん」はイントネーションによって、そのニュアンスを変えます。


これらの表現は方言であると認識しておりますが、合っているでしょうか?


標準語の「もん」は駄々を捏ねるときの専用語であるようなイメージさえ、私の個人的な感覚に過ぎません。



この連載エッセイの中で、私はたびたび書き言葉として「〜ですもの。」を使用してきましたが、「〜もん。」をルーツに持つ私が乗せたかったニュアンスは届いていたのでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ