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2人の母

「ここは?」

彼女の手を掴んだ瞬間目の前には草原と雲一つない青空の場所にいた。

「はじまりの地・・・貴方のいた世界でいうところの天国かしら」

一瞬悩んだあと彼女はそう言った。

驚いたが何故か納得してしまった。彼女の神々しさからだろうか。

「何故、私を連れてきたの?」

「・・・すまない、我らの娘 ハリューシア」

彼女と繋いでいた手から全ての記憶が伝わった。

陽真七緒はるま なおは本来産まれなかった。いや、産まれれなかった存在だったのだ。本来死産とされるはずだったがこの世界の人間達の召喚魔法の影響で2つの世界の境界線に歪みが生じた。

彼女、ラヴァズールはこの世界の創世の神族にあたるらしく神族でもかなり高位のため境界線の修復にかり出されたらしい。

彼女にしたら簡単な作業。失敗などありえない。

子を孕んでさえいなければ。

彼女自身気付いていなかった。神族が孕むなど創世の頃より数える程しかない。

歪みに近づいた瞬間体から大量のエネルギーが消え、七緒の体に宿った。

世界を挟み私は産まれたのだ。

中身は神族 ハリューシア 体は 陽真七緒として。

「すぐにでもハリューシアを取り戻したかったがそうすれば七緒の体が消えてしまう」

ラヴァズールは悲しげにそう言った。

彼女は失ったエネルギーを取り戻すため眠りにつきつつ異世界に産まれた私を見守っていたのだ。ハリューシアと七緒の母として。

「彼の地で七緒は本来死んでいた、そのため悪しき者に執着されやすかったが幸いにハリューシアの力がそれに嫌悪を示していた」

全て腑に落ちた。

私は男が嫌いだ。いや、正確にはイケメンと呼ばれる部類の人間が。

もちろん全員ではない。私が胡散臭さを感じる人間が何故かたいして綺麗でもない私に全員告白してくる1度や2度ならそんなこともあるかもしれないが。

幼少期から含めると両手でたりない。それだけならまだしも皆、最後には「なぜ俺(僕)のものにならないんだ!」と激高する。

しかも周りを巻き込み私は悪意を向けられていた。

七緒の母親からでさえ「貴方がなにかおかしいのよ」と言われ社会人になってからは連絡すらとっていない。

それらが全て七緒の体の死に惹かれた者達のせいだったのかと。

「私は今誰なの・・・」

「2つは再度この世に移ったことにより完全に融合しました」

ラヴァズールは私を抱きしめた。

「どちらも我らの愛おしい娘」

彼女の瞳にはうっすら涙がにじんでいた。



記憶にある母は泣いている顔や怒っている顔。

父の親戚からいたずらされそうになり未遂だったが相手が本家だった為父が親戚から白い目で見られ仕事も辞め、母と険悪になった。

父はいつの間にかいなくなった。

それからも先生、同級生、近所のお兄さん、通学路ですれ違っただけの人など何度も問題が起こった。最初は同情的な周りもあまりに頻発するうえに加害者全員が周りからは好印象な人ばかりで最後は私の狂言といわれた。

それは母の再婚相手からすらそう言った目でみられ拒絶した日に母から言われた。

私を泣きながら罵る母の肩を恭しく抱きしめなが男はうすら笑いを浮かべていた。

そのとき私の、七緒の、母はもう失ったのだとさとった。

分からない。何故アイツらは私に寄ってくるのか。

何故受け入れられないのか。この嫌悪感の正体はなんなんだ。

愛してほしい人に嫌われるくらいならアイツらを受け入れた方がよほど楽なのに。

それでも私の何かが拒絶してしまう。

そんな苦悩を抱えたままだったが社会人として穏やかな日常をおくるうちに少しだけ癒やされていった。

その日常はあっさり壊れてしまったが。

もう嫌だ。何にも考えたくない・・・・。


「助けて・・・」

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