『毛布』『心の鏡』
『毛布』
夜明けまで丸くなり、
布団のなかで寝子のよう。
冬の底冷え手足を責めて、
優しさ恋し朝を待つ。
薄目開けても漆黒の闇。
暁のよう光れとばかり、
燐寸をすりて煙草へと、
灯してみたら影が揺れ。
死霊が一人、死を告げ来たり
目を瞋らせて薄笑い。
嗚呼、我が命これまでか。
灯し火消えて虚ろの煙。
凍えた身体に毛布かぶれば、
毛玉の温みが心に触れた。
『心の鏡』
蜜柑色した、真冬の夕焼け、
紫の雲、棚引いて。
凍える耳に、木枯らしが、
明日も祈れと、タクト振る。
真っ赤な手袋、頼りなく、
掌から、すり抜ける夢。
街ゆく人々、躊躇もなく、
通り過ぎては、虚無に還る。
心に寒い、風が吹き、
つれない声が、聞こえるよ。
破壊の槌音、拒絶の銅鑼。
愛し我が家よ、五月の園よ。
コートを脱いで、鏡を見れば、
心の虹が、確かに見えた。