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全てを失った逆行転生者と没落令嬢のやりなおし!~復讐者と守銭奴の偽装婚約~  作者: ホワイトモカ二号
取り戻さなくてはならない日々
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神の代行者

 「早く逃げろ司ッ!そこから離れるんだッッ!!交番か警察署に向けて逃げろ!!」


 それでも一縷の望みを賭けて俺は叫んだ。近くにまだ司がいることを信じて。スマホをただ貸しているだけだと信じて。

 イリヤはそんな俺の切羽詰まった様子を見てケラケラと嘲笑った。


 「何がおかしい……!」

 「いやぁ、だって必死すぎて……♡ばぁか♡とっくに襲わせてるに決まってんだろ♡どれだけ……ぷぷ……受けるぅ♡」


 見世物のように、滑稽な俺の姿を見て、イリヤは嘲笑った。だが相手している暇など無い。


 「司に指一本でも触れてみろ!俺はお前を……!」

 『ほぉー?どうするって?』

 「どんな手段を使ってでも追い詰める……!ロシアンマフィアなんて関係ない!お前を俺は」

 『ロシアンマフィアね、なるほどそういうこと。安心しな坊主。司ちゃんには指一本触れさせねぇよ。』

 「…………え?」


 ───電話越しに、蒼月天理が間抜けな声を呟く。男は失笑した。どうやら、本当に知らなかったようだ。知らずして、近寄ってきた"虫"ならば、まぁ多少は勘弁してやるか……と思い笑う。


 「#$%&#&~~~ッッ!!?」


 解読できないうめき声。聞くに堪えない言葉だった。


 「あぁー?っせぇなぁ白人?こちとら未来の義理の孫に話しかけとんねん。邪魔すんな。」


 男は老人であった。齢八十は過ぎているだろうか。しかしその姿は枯れ木のようではまるでなく、腕一本で、屈強なロシア人を片手で持ち上げていた。


 「うちの司ちゃんに手ぇ出そうとして、"これだけで"済むと思うなよ♪」


 鈍い音。顎の骨が砕かれたのだ。ロシア人の男は声無き悲鳴をあげる。


 「大声出すなよぉ?司ちゃんにこんな血なまぐさいの見せたくないだろぉ?おっと……司ちゃんの恋人クンとの通話忘れてた。」


 地面でもがき苦しむロシア人の男を足蹴にし、老人はスマホの通話に戻る。


 『司ちゃん……?あなた知り合いなんですか!?司は無事なんですか!?』

 「おぅ無事だよ。たりめぇよぉ~神宮寺のアホがいねぇから儂が代わりに司ちゃんの警備してっからなぁ?」

 『神宮寺さんの代わり……?』


 その言葉にピンと来たのか、通話先で蒼月天理の声が少し弾んでいるのがわかった。


 「安心しろ恋人クン。何があろうとも、いかなる脅威が迫ろうとも、儂がいる限りは心配無用。呵呵カカ、爺としては隠居させて欲しいがなぁ?死ぬ前に曾孫の姿くらいは拝みたいわい。そうさ儂の名は───」


 落とした拳銃を拾おうとするロシア人の手を老人は踏みつける。グシャリと音がした。骨が折れた音である。声にならない悲鳴があがる。


 「柳生丿貫やぎゅうへちかん。神道政策連合よりこの度は司ちゃんの護衛の任を承った!」


 老人の名は柳生丿貫やぎゅうへちかん。その実力は計り知れず。数多の外敵を退け殲滅してきた猛者。マフィアとの抗争にも参加した超武闘派。神道政策連合に所属する……特級神職者である。


 ───特級神職者。神職者の冠位は四段階に分けられる。三級、二級、一級、特級である。蒼月天理と交友のあった神宮寺鬼龍は一級神職者に該当する。

 そして今、電話越しに話している相手は、立場上は神宮寺を教え指導する立場にある……神職者の頂点である。


 神道政策連合とは、この国における強い影響力を持つ組織である。その歴史は古く、神宮寺鬼龍が所属する以前から、その力は健在。決して神宮寺のワンマン組織ではないのだ。

 当然のことながら、その強い影響力は"裏"にも通じるものがあり、暴力の力をもってして外敵を祓う部隊も存在する。

 神道政策連合の戦力は、神宮寺が欠けたところで未だ健在なのだ。


 「柳生やぎゅう……丿貫へちかん……?ハハ……そりゃそうか。」


 俺はスマホ越しに聞かされた言葉に酷く安堵していた。確かに神道政策連合なら司を全力で守ってくれる。


 「……ふーん、神道政策連合って紅龍会フォンロンウェイをボコボコにした組織だっけ?面白いのと付き合いがあるんだね、お前。」


 面白くなさそうにイリヤは俺の様子を眺めていた。神道政策連合の介入は予想外だったのか、目論見が外れたということだ。


 「でもさ?他の二人はどうカナぁ?愛華ちゃんと枕美ちゃんだっけ?そう都合よくこわーい組織が守ってくれるのカナ?」


 確かにその通りだ。言われて初めて気がついた。二人の背後関係には何もない。だがその点について俺は何一つ心配していなかった。


 「そうか、あの二人にも狙いをつけたのか……だったら確認したらどうだ?自慢のマフィアが、どんな末路を迎えたか。」

 「は……?何を言って……。」


 慌てた様子で構成員の一人がスマホをイリヤに渡す。俺に対して怪訝に視線を送りながらイリヤはスマホを受け取り通話先に話しかける。ロシア語で何を話しているか分からない。だがみるみるうちにイリヤの表情は不機嫌なものとなり、怒鳴り散らす。

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