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全てを失った逆行転生者と没落令嬢のやりなおし!~復讐者と守銭奴の偽装婚約~  作者: ホワイトモカ二号
取り戻さなくてはならない日々
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胡散臭い男

 「こんなところで二人して何をしてるんだ?デートかなにか?」


 猛は列から離れ俺たちに声をかけてくる。リュックサックを背負っていて中々の重装備だ。


 「違うよ……というかお前も聞いてただろ、この間のフレンチレストランでの話だ。」

 「あぁ!凄い美味かったな!お土産もたくさんくれたし灰原も凄い喜んでた!!」


 どうやら猛は俺とシロクの話をほとんど聞いていなかったのか、料理の話ばかり無邪気に話している。


 「まぁ……いいや。しかし合点がいったよ。そうか、灰原たちのために並んでるのか?」


 猛は児童保護施設『みんなの家』の世話になっている。当然、その中には女の子もいるわけで、灰原もその一人だ。彼女たちのためにこうして並んであげているのなら納得である。


 「いや違う。師匠に言われて並んでいるんだ。修行の一環だとか。」

 「師匠……?」


 俺の知っている未来では猛は少なくとも高校時代までは独学で格闘技を学んでいたと聞いている。なんでも古寺で見つけた武術書を解読してそれを現代格闘技に落とし込み、そして空手に昇華させたとか……。まぁ一部はこの国が生んだヒーローのドラマ性を持たせるものだと思っている。

 どちらにせよ、猛に"師"というものができるのは高校卒業後のはず。インタビューを聞いた限りではこの時代にそんなものがいるはずないのだが……。


 「猛ッ!貴様、列から離れすぎだ!早く戻ってこい!!」

 「は、はい!すいません師匠!!」


 列から男性の怒鳴り声が聞こえた。猛は背筋を伸ばし、駆け出す。

 猛の師匠……俺は正直どんな人間か気になった。未来で最強の男となる猛が認めた人物。きっと物凄い豪傑に違いない。


 「言ったであろう猛よ、これもまた修行の一つ。武の極地を目指すのであれば心頭滅却し無心で並ぶことこそが……む?汝らは先程、猛が話をしていた……。」

 「ん……?おお、蒼月!悪いな突然話を打ち切って。紹介するよ、この人が俺の師匠……ラングハット・バ・ラディンさんだ!」

 「ナマステ、それがしはこの地に降り立った求道者でござる、南無。」


 ───なんだこいつは。

 ぼさぼさの髪の毛、中途半端に剃られた無精髭。ぼろぼろで色落ちしている衣服。浮浪者のような姿だった。それでいて先程の挨拶の統一性のなさ。名前がラングハット・バ・ラディン……?中東系っぽいように見せかけて適当な名前。

 胡散臭さが服を着たような男だった。


 「その……外国の方なのですか?えっと……ラングハットさん?」

 「いかにも。某は遥か遠く異国より東洋の神秘を求めてやってきた、武道家……ノン、求道者でありまする。」

 「う、うぉぉぉおお!師匠かっこいい!!」


 目を輝かせる猛を見て目眩がした。いいや、人は見かけで判断してはならない。もしかするととても凄い人なのかもしれない。


 「おっと!言わなくても分かるぞ、ご友人。そうだとも、人は私のことをラングハット・バ・ラディン、またの名をロンリーウルフ、孤独なる協奏曲コンチェルト~そよ風とともに~と呼ぶ。そうこれは異名だ。おわかりかな。」


 なんか高いレストランのコース名みたいな異名だな……それにロンリーと孤独が被っている。それに無駄に長い。


 「長いですね……略して呼んでもいいですか?」

 「構わん。よく言われるからな。」

 「それじゃあロリコンさんは何のためにここに並んでいるんです?」

 「異名の方を略すなぁー!!ラングハット!ラングにしろラングに!!」


 外国人なのに随分と流暢な言い回しだ。ロリコンとは和製英語であり、あまり海外では一般的ではない。本当に外国人なのか……?

 俺の中で少しラングに対して疑念が湧いた。


 「すいません、それで一体なんのために……?」

 「オホン、見てのとおり修行のためである。こうして朝早くから無心で並ぶ。これ即ち膳の心であり、明鏡止水盛者必衰の響きありなのだ。」

 「これは物売りの列であってそんな高尚なものじゃないですけど……。」

 「愚か者め。"真実"が見えておらん。これは言うならば仮の姿。やがて時を経て"真実"に気がつく。どうやら君もまた迷いし"子羊"のようだ。どうだ?我が教えに従い楽園エデンへの扉を開こうではないか。」


 なんか宗教の勧誘みたいだな……それに世界観も統一できていない。こういった言い回しで猛を騙したのだろうか。


 「そういえば師匠、トラックの手配は終わりましたよ。あとで買ったものを回収に来るそうです。」

 「ん?トラック?どういうことだ猛?」

 「ああ、並んでいるのはここだけじゃないんだ。こうして並んで購入したものをトラックに搬入して、また並び続けるんだ。いやぁ師匠は凄いよ、俺なんて足が結構つらくてさ。」

 「………………。」


 聞いたことがある。

 テンバイヤーは何もこの国だけで活動しているわけではない。海外からもやってきて商品を買い占めては転売することもあるのだ。そのためか日本語もろくにできないような外国人が無言でキャッシュレス決済を求めるケースが多い。

 支払いの手段としてキャッシュレス決済を使用するのは足がつきにくいからだ。真っ当じゃない汚いお金が行き来したとしても、キャッシュレス決済を提供している企業は善意の第三者として罰されることはない。

 よく資金洗浄などでコンビニでチャージカードを購入してチャージするなんてのは常套手段である。

 要するにこのラングという男。どう見ても個人レベルではなく商社レベルで転売業を行っているのだ。


 「あの、ラングさんは外国人ですよね?在留カードは持ってるんですか?」

 「ワット?ソレガシ、日本語ヨクワカリマセンガ。」

 「知り合いに外交官がいます。彼の話だと外国人滞在者は在留カードの携行義務があると聞きました。」


 もちろん知り合いの話はハッタリである。だが在留カードの話は事実。もしも在留カードを持っていなければ警察に連れて行かれても文句は言えない。


 「待て待て、冗句でござるぞ蒼月様。在留カード?えーっと、どこにやったかな……。」


 ハッタリが通じたのかラングは焦った様子で小汚いカバンをあさり始める。中にはレシートやティッシュなどゴミが散乱していて、その性格を伺える。

 やがて「あった!」とラングはカードのようなものを取り出し、俺に見せつける。


 「ご覧のとおり、某は決して不法滞在者ではないということが明白だ。おわかりかな。」

 「これ……留学生用ですけど……。」


 在留カードには就労目的や留学目的、観光目的などが記載内容から分かる。ラングが見せた在留カードは留学生向けのものだった。

 ラングの姿をまじまじと見つめる。学生……にはまるで見えない。


 「如何にも。言いたいことは分かるぞ。だが学ぶことに年など関係ない。中には定年退職後に大学にて学びを希望するものもいる。某の姿を見て偏見に満ちた感想を抱くのは間違いであるぞ!」

 「いや……まぁそれは良いとして……これ、有効期間すぎてますけど。」


 在留カードには有効期間がある。当然期間が過ぎたら効果はないし、更新手続きをするか本国に帰国しなくてはならない。


 「蒼月くん……と言ったか?君は一体何者だ?」

 「……え?哲学か何かですか……?」

 「人間だ。君は人間だ。そして某も人間である。分かるか、同じ人間なんだ。この星に生まれた地球人。そこに境界なんてものはない。同じ大地を踏みしめる人間同士!この地球ほしを愛する隣人同士!そこに資格なんていうものは必要ない!そうだろう?」


 「出入国管理及び難民認定法、通称『入管法』第一条より本邦に入国し、又は本邦から出国する全ての人の出入国及び本邦に在留する全ての外国人の在留の公正な管理を図るとしています。国家とは治安維持のためにあるものであり、それを無視することは秩序の崩壊を招くことになりますよ。また第七十条では罰則規定も設けられていて……。」


 「あー……ひょっとして将来は外務省官僚でも目指しているのカナ?いやぁ参るねこれは。」


 不法滞在者のラングは冷や汗をかく。明らかに動揺していて、困惑していた。胡散臭い……本当に大丈夫なのだろうか。

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