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魔の本性

 ───七反島ななたんしまを襲った嵐は過ぎ去り、警察は異例の早さでやってきた。裏では福富グループが動いており、本土からもヘリに乗った警察たちが続々とやってきて、ホテル内は勿論、ホテルが建っている小島にも警察は大勢やってきて調べ上げた。

 事件は二つ。一つは青木愛人と羅刹波旬によるテロ事件。主犯格と思われる青木は死亡し、羅刹は気絶していたところを警察に逮捕され幕を閉じた。

 もう一つは福富愛夢と二郎による殺人事件。もっとも報道ではアイム・ハミルトンとジロー・ハミルトンとして報道された。彼らの母親の旧姓である。二人とも死亡したため動機は不明とされ、マスコミはそれ以上、追求はしなかった。そして……。


 「うわぁ……ひでぇなこれ……なに?ヒグマとでも戦ったのか?」


 ホテルから少し離れた場所。海岸沿いの森では大勢の警官と鑑識官たちが捜査をしていた。


 「すいませーん!関係者を連れてきました!通してくださーい!!」


 警官の一人が大きな声をあげて、奥へと案内する。事件が起きた場所は私有地。この島の習わしの一つとして、神事を司る神主が、死者を弔うために立ち会いを行う。

 本来は漁業が盛んであったこの島で、身元不明の遺体を神主が弔うものだった。故にこのようなことは異例。此度は死者の多い事件であり当代神主は高齢であるため、丁度派遣で来ていた神職者が代理でやってきたのだ。


 「すいませんねぇ、関係のない本土の方に来てもらって。変わった風習でしょう?」


 警官は申し訳無さそうにその神職者に話しかける。


 「いいえ、古代日本では神社、寺で戸籍管理をしていました。今回のように万が一、島民に死者が出た場合を考えて、神職者である我々がこうして出向くのは当然です。こちらこそ申し訳ありません。本土ではこうして事件現場に警察関係者以外が入るなどありえませんからね。」


 彼の言葉に警官は「まぁそうですね……」と苦笑いを浮かべる。


 「それで……こちらなんですけど……どうですかね?神宮寺さん。」


 神宮寺鬼龍。彼はこの島に偶然やってきた、神道政策委員会の一級神職者。突然の仕事ではあるが、これも責務と考えた。

 目の前にはバラバラ死体が散らばっていた。壮絶なものだった。周辺の樹木はいくつか倒れていて、右腕は樹木に突き刺さっている。左足は高い木の枝に引っかかっていて、上半身と下半身は引きちぎれているにも関わらず、臓腑を辺りに散らして這い回ったのか、そこらじゅうに散らばっていた。ハエが集っていて、悪臭もする。被害者は壮絶な表情を浮かべて、絶命していた。


 「彼は……この島の人ではありませんね。」

 「あはは……やはりそうですよね。入れ墨が入ってますし、いわゆるヤクザでしょうかね。今、本部と照会中です。指紋はとれますし。」


 指定暴力団は暴対法により構成員の指紋を警察に届け出ることが義務付けられている。そして指紋は警察庁のデータベースに登録され、いつでも確認をすることができる。これにより犯罪を犯した場合すぐに足がつくことになるのだが、此度は身元確認に使用できた。


 「すいませーん!ガイシャの照会でました!」


 遠くから鑑識官の声がした。採取した指紋がデータベースと一致したのだ。


 「あ、ちょっと行ってきます。えっと神宮寺さん、申し訳ないんですけどこちらの書類にサインしてください。あとで受け取るので!」


 警官は確認のため鑑識官の元へと駆け出す。それを神宮寺は笑顔を浮かべて見送った。

 神宮寺は死体を見下ろす。凄惨な死体だった。そして、見知った顔だった。だが顔にも声にも出さない。出せないのだ。だが……。


 「極道きわみ……。」


 思わず呟く。

 死体は流星極道ながれぼしきわみだった。神宮寺の弟分。普段からやめろと言っているのに、六道会を抜けた自分を兄貴と呼んで慕っていた。

 全身全霊で戦ったのだろう。壮絶な戦いの跡からそれはわかる。木々が倒れたあとは流星の認証武装コーデットアームズであるメタトロンとサンダルフォンの仕業だと、すぐにわかった。例え腕を引きちぎられても、足を引きちぎられても戦い抜いたのだろう。


 これは、藤原理段の仕業だ。


 神宮寺は確信した。忌まわしき血族、穢れた血族。藤原家の魔。

 拳を握りしめる。その規格外の握力により血が滲み出した。それでも神宮寺は、自戒するかのように、ギリギリと握り拳を作るのだった───。


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