プロローグ
「なろう」サイトに初めて投稿する(短編除く)連載作品になります。
不慣れで拙いところもあると思いますが、生温かい目で見守ってくださると嬉しいです。
空の色が褪せはじめる。
初夏特有のぬるい風が徐々に冷める午後、放課後を迎えたとある高等学校。その屋上にて、一人の少年が瞼を閉じて昇降口の壁に凭れかけていた。
男にしてはやや長い黒髪が、強く吹いた風になぶられる。髪の毛が頬を擽っても、少年は微動すらしない。
余計な雑念を払い、気迫すら感じる集中力を高めているのだ。
ふわり、髪が浮くように揺れる。風ではない。それは少年の内に秘められる〝力〟が体外に漏れ出たから。
少年の脳裏に、屋上ではない風景が浮かぶ。
家庭科準備室と刻まれた板が取り付けられた一室で、三人の学生がいた。
黒髪の少年が、ホワイトボードの前で演説し、簡易型の地図を貼り付ける。
人工的な茶髪の少年は緊張気味だが好奇心を抑えきれない顔で聞き入る。
反して、薄茶色の長髪の少女はぼんやりとしていた。
そんな物思いに耽る彼女に、黒髪の少年が一枚の紙片を差し出す。
『――というわけで、今夜八時、この竹林の前に集合だよ』
『えっ? あ、はい』
話をよく聞いていなかった少女は、流されるまま受け取った。
ホワイトボードに書かれた命題は『肝試し』。場所もしっかり記されているおかげで、そこにいなくても行き先が判明。
「本当に世話の焼ける……」
屋上にいる少年は意識を現実に戻し、嘆息。
――「もし廃部しなかったら、あいつらのこと見ててくれないか?」
脳裏に響くのは、高校から巣立った先輩。両手を合わせて頼み込む姿まで浮かび、少年は明後日へ向ける目を閉じて、後頭部を壁にくっつける。
「〝彼女〟がいるんだ。仕方ないが、やってやるさ」
この場にいない人物に向けて、少年は疲れ気味に独り言つ。
「オカルト研究部、先輩のように暴走しないといいのに」