プロローグ
昔々ある王国にとてもとても美しいシャーロット姫と、隣国には許婚の王子、そして近くの森には魔女が住んでおりました。
魔女は王子のことが好きでしたが、姫と王子の仲の良さは知っており、毎晩のように泣いておりました。
しかし、ある時魔女は気づいたのです。王子は姫のことを愛している。ならば、姫の体を乗っ取ってしまえばいいと…そうすれば、王子は私のことを愛し続けてくれるのではないかと…
さっそく、魔女は姫の魂を殺し、その肉体に自分の魂を入れる魔術を生み出し実行した。
王女に成り代わったばかりの魔女はまさに幸せの絶頂だった。愛しの王子が私に愛をささやいてくれるのだから…
そんな生活が三か月は続いたある日、魔女は悩んでいた。王子は私のことを愛してくれる。それはいい、だが、王子は一度たりとも魔女の名を呼んではくれなかった。私を呼ぶときはいつも姫、姫、姫だ。私はそんな名ではない。どうしたら、どうしたらいい…
一度、一度だけでいい、私を魔女と呼んでほしい。そんな悩みがさらに一年程続いた。そして、魔女はその苦痛に耐えられなくて自決してしまう。その遺体を見た王子は独り言をつぶやく。君が本当の姫ではないことに気づいていた。しかし、それでも私のために必死に姫を演じてくれていたのだと…そんな名も知れぬあなたのために感謝を…ほんとうにありがとう、と…
そして、それから四百年の時が過ぎる。時代は令和…ある高校の朝…
キーンコーンカーンコーン…
「おーい、坂藤ー…こんなところで何してるんだ。早く教室に行かないと遅刻扱いになるぞ」
「安井君、お、おはよう…」
安井君、いつも私に優しく声をかけてくれる…高校に入って初めてできた友達…友達?友達だよね?いつも彼を見るとドキッとしてしまう私がいる。男同士なのに変だよね…でも、いつもふとしたら彼のことを目で追ってしまう私がいる。なんでなの?
「おい、坂藤…今日のお前なんか変だぞ。体調でも悪いのか?」
「ううん、そ、そんなことないよ…ごめんなさい、ちょっと考え事してて…」
「そうか、ならいいけど…それと、ちょっと今日の放課後、時間取れるか?相談したいことがあるんだけど…」
「ええ、わかったわ…放課後、屋上でいいかしら…私も安井君に相談したいことがあるの」
「ああ、じゃあ放課後に屋上でな」
そして、放課後、学校の屋上にて…
「安井君、もう来てたんだね…それで、相談って…?」
「ああ、実はな…ここ最近変な夢?って言ったらいいのかな…そんなのばっかり見るんだよ」
「夢…?どんなのか聞いてもいいのかな?」
「ぜ、絶対に笑うなよ…それが、その…俺が王子をやってて、どこかのお姫様と結婚するんだけど…そのお姫様が死んじまう悲しい夢…なんだよ」
「…え?」
その話を聞いて、突然涙が出てきてしまう私…
「そのお姫様って、何て名前なの?」
「シャ…シャーロット…?確か、そんな名前だったような…」
「安井君…!私もあなたに相談したいことがあったの…実は私、前世の記憶を持ってて…その時はシャーロットっていうお姫様だったの…それでね、私…ずっと、ずっと、ずっと王子様を探していたの!…安井君、あなたがその王子様なのね!」
「さ、坂藤がシャーロット…姫?ほ、本当なのか…」
「はい、ずっとお会いしたかったです…私の…王子様!」
「姫ー!」
ぎゅっ
こうして、四百年の時を経てようやく結ばれた二人は、この先、さらなる試練を乗り越えてやっと幸せになるのであった。




