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第68話 いざ出陣!

 WoZのギルドハウスを見下ろす丘に赤色の軍装(ぐんそう)騎兵(きへい)たちが集まっていた。

 三オンの部曲(ぶきょく)小覇王(しょうはおう)】の一団だ。

 ()()(しょく)の三国のうち、呉に所属する部曲で、規模としては中堅だが、三オン内での大規模対人戦である合戦(かっせん)においては、目立つ功績を立てることが多く、それなりに名前が知られている存在だ。


「──イヤな時間を設定してきたなぁ、まったく」


 真紅の甲冑を(まと)った美少女が苛立(いらだ)たしさを隠そうとせずに呟いた。

 (かぶと)を脇に抱えて、長い黒髪を風になびかせている。

 【小覇王】の部曲長、名前は()(りん)

 三オンでは珍しい、女性プレイヤーが多く所属している部曲のリーダーとしても有名である。

 三大VRMMO融合事件後、動揺する部曲員たちをまとめ上げ、とりあえず本拠地を確保しようと、あの家に目をつけた。一応、事前の偵察で、家の規模の割には出入りするプレイヤーが少ないとのことだった。


「揃ったのは半分くらい?」


 その問いかけに、隣に馬を立たせている女性兵士が応じる。


「ええ、あと何人かは後からでも入ってくるかもしれないけど、期待しない方がいいと思う」


 ログインできないプレイヤーたちのキャラクターは、部曲の輜重(しちょう)NPC──補給部隊についてきているが、モンスターや他のプレイヤーの攻撃を警戒して、完全に放置することはできないので、護衛用の兵士を残しておく必要もある。

 今回、T.S.Oの世界に飛ばされた三オンのプレイヤーたちについては、他の二つのゲームと同様、レベルや所属を問わず、全員がゲーム内に出現している。ただ、幸いだったのが、数ヶ月前に運営会社によってキャラクターデータベースの最適化処理が行われ、一定期間以上活動していなかった部曲やキャラクターのデータがゲームから切り離されていたことだった。そのため、今、T.S.O.内で活動している三オンプレイヤーたちのログイン率は高くなっている。

 それでも、誰もログインしていない状態で放置されている部曲もいくつかは存在したりしていた。そういう場合は、近くで活動していた部曲が【捕虜(ほりょ)システム】を使用して保護することで、放置されたままモンスターたちに倒されるという最悪の事態回避に努めていた。それにもともと、三オンのプレイヤーたちは国や部曲といった組織での繋がりを重視する雰囲気があった。それが、今回功を奏した形だ。

 覇鈴も、そういったいくつかの放置部曲を保護している。


「ただ、さすがにこの状態を続けるのは厳しいっすよ」


 さっき、補給部隊や捕虜の後衛部隊を護衛している女兵士の一人から言われたばかりだった。

 それでなくても、部曲【小覇王】には女性プレイヤーが多い。間違っても、個人情報の流出につながる事態になってはいけない。

 そんな中、三オンプレイヤーのコミュニティ経由で流れてきた解決策の一つが、T.S.O.プレイヤーのギルドハウス奪取だった。


「あそこのプレイヤーたちにはちょっと悪いけどね」


 隣に立つ女性兵士の呟きに、覇鈴が吐き捨てた。


「そもそも、今回の件だってT.S.O.プレイヤーのせいなんだからさ。それに、アイツら王都(おうと)……だっけ? とにかく、安全地帯があるんだから、ウチらが気にする必要ないわ」


 そう言いつつも、内心では無益な殺生(せっしょう)をするつもりはなかった。本心を言えば、無抵抗で降伏してくれれば、その後の便宜(べんぎ)も最大限配慮するつもりだったし、いざ、戦闘になったとしても最悪の手段は避けるつもりだった。

 先日の、三オンプレイヤーキャラクターによるT.S.O.プレイヤーキャラクターの殺害事件、その影響で流出した一人の高校生の情報がネット上に拡散され、一部の人々の餌食(えじき)になっている状況を見た。自分の仲間たちはもちろん、敵とはいえ、自分たちの手で、新たな被害者を増やすことはしたくなかった。

 これは覇鈴だけではなく、他の三オンプレイヤーのほとんどに共通する意識でもあった。

 実際に起きた殺害事件が、逆に抑止力となっていたのだ。

 手先でウィンドウを表示させて時間を確認する。

 攻城戦開始まで十分を切った。


「アンタたち、準備はイイかい? アイツら……敵は、まだこちらの戦い方や攻城戦のノウハウを知らないはずだからね、とにかく速攻で落とすよ!」


 覇鈴が気勢(きせい)を上げると、背後に揃った兵士たちも声を揃えて応じた。

 五人編成のパーティが十編成、余った二人が覇鈴の直衛(ちょくえい)につく。以上、合計五十三名が、今回の攻城戦への参加メンバーだ。


騎兵隊(きへいたい)が五部隊、弓兵隊(きゅうへいたい)が三部隊、妖術師隊(ようじゅつしたい)が二部隊。全員、準備オッケーよ」

 その報告に頷いてから、覇鈴は高々と槍を掲げた。


「よーし! 最初は騎兵隊で、相手の門へ突撃、先手必勝で流れを取る! 敵が姿を見せたら、遠距離部隊も攻撃開始だ、指揮はそれぞれの部隊長に任せる! 騎兵隊は全員私に続け! 相手は少数、一点集中でいくよっ!」


 味方の返事を待たずに、部曲旗を掲げた副官NPC一人を引き連れて馬で駆け出す覇鈴。


 ──こうして、WoZのギルドハウスを巡る攻城戦が開始された。


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