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第二話 前編

 ドアノブに触れると、ひんやりと冷たい。


 開きかけのドアを、近藤秋也は奥に開け放った。


 オフィスの中には誰もいなかった。個人用の部屋なのか、デスクは一つしかない。


 パソコンのモニターと顕微鏡、試験管、そして内容の分からない書類の山が積まれている。まさに研究者のデスクだ。


 ひじ掛けのついた椅子はローラーがついている。座ったまま、この空間を行ったり来たりと忙しく使っているのだろう。


 「姉さん? 母さんから、着替えと弁当持っていけって……」


 後ろ手にドアを閉めた秋也の放った声が、人気のないオフィスに響いた。持っていた紙袋をデスクに置き、彼は部屋の奥の給湯室に向かう。


 電気は点いていたが、そこにも誰もいなかった。だが空気は暖かく、ついさっきまで誰かがお湯でも沸かしていたのだと思った。


 オフィスに戻る。さっきまでは気がつかなかったが、パソコンのモニターの陰にコーヒーが置かれており、湯気が立ち上っている。


 白いカップのふちは唇の形に濡れていたが、中身はなみなみと言っていいほど入ったままだ。


 「どこ行ってるんだよ」


 デスク上にある、スタンド付きの小さな鏡に、秋也の不機嫌そうな顔が映っている。


 自分では何とも思わないが、彼の顔は完璧に整っていた。すっと伸びた鼻筋も、ぱっちりとした二重瞼も、あごのラインに至るまで、恋愛映画の主役俳優を飾ってもおかしくないくらいの美形だった。


 ふと、パソコンのモニターが気になった。何かの作業を途中でやりっぱなしになったのか、何かの研究データと思われる文章が映っている。


 『――そう、地球に訪れた最後の異星人である、ルクス。彼の勝利がなければ、今日までの500年間において、人類は絶滅していた可能性もある。この地球上のあらゆる武力や科学技術をもってしても、かの脅威を取り除くことは限りなく不可能に近い』


 マウスを握ると、秋也はどんどん文章を送っていった。


 綺麗な眉の間にしわが寄る。


 数十秒眺めていたところで、椅子に深く座り込んだ。目には眠そうな色が浮かんでいる。


 「なにこれ……姉さん、SF映画の脚本でも書いてるの?」


 つまらなそうに独り言ちると、椅子を回転させてオフィスの中を見回す。だが特に面白いものがあるわけでもなく、視線は自然とパソコンのモニターに戻ってきていた。


 マウスを持ってファイル一覧に画面を戻すと、意味もなくファイルのアイコンをカチカチとクリックしていく。秋也には見たこともない単語のファイルが並んでいた。


 「ルクス……ブルーム……リーディック……フォルティア……ダメだ、全然わかんない」


 ため息をつきながら、カチカチと指遊びをするようにクリックしていく。力加減を間違え、たまたま、ひとつのファイルをダブルクリックしてしまった。


 ファイルが開く。そのタイトルは【メルバ】とあった。


 映し出された文章を読み進めようとしたとき、背後でドアが勢いよく開けられた。




◇◇◇




 ふと顔を上げると、教室の入り口でこちらを手招きする女子が目に入った。

 

 かなり楽しそうにこちらを見やり、にやついている。秀樹はのろのろと椅子から立ち上がると、訝しげに首を傾けながら彼女のほうに歩いて行った。

 

 「相楽、なに?」

 

 ショートカットだが、やや色が抜けたような髪色で、完全な黒というより茶髪に見える。快活に笑いながら手招きする彼女の印象は、少し軽そうである。

 

 「誰だと思う?」

 

 「いやクイズとかいいから。誰なんだ――」

 

 相楽が身を引いたところで、秀樹の息が詰まった。彼女の後ろから現れたのは、少し恥ずかしそうにうつむく牧原の姿だった。

 

 秀樹のほうも目を白黒させて牧原を見やる。それが何秒だったのかはわからないが、背中に通学かばんが叩きつけられて我に返った。

 

 「はい、邪魔者はいませんので、仲良く行ってらっしゃーい」

 

 相楽が半ば蹴りだすように秀樹を教室から追い出した。彼女の一声が余計に周囲の視線を集めたのは必然だった。

 

 相楽から受け取った(というか押し付けられた)自分の荷物を持つと、なんとなく秀樹は牧原を後ろに連れて歩き出す。廊下を進み、昇降口から出るまでかなりの視線を集めたが、それは牧原の容姿を考えれば当たり前のことだ。

 

 少し靴を履くのを待ってあげた以外は、秀樹は牧原を振り返らなかった。校門から出たところで、ようやく足並みをそろえた。

 

 「ごめん、何か、最近避けてて」

 

 「あ、ううん。話しにくいよね。あんなことが起こった後だと」

 

 耳にかかる黒髪を牧原は指で後ろにかきあげた。そのおかげで、秀樹のほうに顔の半分がよく見える。

 

 あんなこと。


 それはつまり、銀行強盗に遭遇したこと。その犯人が怪獣に変身して暴れまわったこと。


 二つもの大事件が起こり、そして、後者の方が明らかに衝撃的だ。

 

 あの日。猫の怪獣が倒された後、間もなく黒い戦闘服に身を包んだ人物が数人現れ、怪獣に変身していた犯人を回収していった。

 

 その動きに対し、警察は特に邪魔しなかったと思う。何か政治上の調整でも働いているのだろうか、スムーズに事は行われた。

 

 「悪いと思ってるよ」

 

 電車の踏切まで来たところで、秀樹はぽつりとつぶやいた。

 

 「何か話さなきゃいけないなと。でも、理解してもらえるかなあって」

 

 「なんでも聞くよ。自分の中で、とにかく納得したい気持ちがすごく強いから」

 

 踏切を通り過ぎたところで、カンカンカンという警報とともに遮断機が下り始めた。

 

 ふと気づくと、どこかの車がけたたましくクラクションを鳴らしている。不思議に思って振り返った二人は同時に振り返った。

 

 「あれ、ちょっとやばいね」

 

 秀樹がつぶやいた通り。


 踏切を渡るのに失敗した車が一台、下りてきた遮断機を目の前にして止まっている。


 危険な線路の上で立ち往生しているその車は、前進もバックもする気配がない。

 

 目を凝らすと、車を運転しているのは茶髪の若い男性、というか少年ともいえるほどの年齢の人物だった。


 下りてきた遮断機を前に無理に渡ろうとして、失敗したのは明らか。その事実に、自業自得であるのにも関わらず、必死の形相で回りを見回している。

 

 やはり、というべきか、初心者マークがボンネットに貼られていた。突然の事態にパニックになっている運転手の青年を、助手席に座る彼女らしき若い女性が怒鳴りたて、さらにパニックを助長している。

 

 「ああいうとき、どうすればいいんだっけ?」

 

 「ドライバーが、遮断機の竿を押しのけながら車を出せばいいだけだと思うけど……」

 

 遮断機が下りてから既に数十秒が経っていた。間もなく、はるか向こうの線路のカーブから、グレーの電車の姿が現れた。

 

 一般的に知られていることだが、もし遮断機が下りて車が踏切内に閉じ込められてしまっても、遮断機を押して出ることができる。だが、当の新米ドライバーはパニックが勝ってしまい、そんな知識を呼びおこす余裕はなかった。

 

 「おい、取り残されてるぞ!」

 

 野次馬たちが騒ぎ始め、踏切の外にいる後続車がクラクションを連続で鳴らした。


 それでもドライバーはただただアタフタするばかりで、車を動かすことができない。

 

 「まったくもう!」


 中年の女性が一人進み出て、急いで非常停止ボタンを押した。耳をつんざくような不快な警報音が響き渡る。

 

 ボタンを押したことで、電車の運転手が気づいたのだろう、電車が減速し始めた。ブレーキが軋む音を響かせながら着実にスピードを緩めるが、『特急』と表示された車体は元々のスピードが速く、なかなか停止に至ることはない。

 

 あと数秒で、車に電車が接触する。


 黄色ナンバーの軽自動車である。電車と衝突して無事で済まないだろう。

 

 「まずいよ、藤沢く……」

 

 牧原は傍らの秀樹を振り返った。しかし、既に彼の姿はなく、彼がいた場所に通学かばんが落ちているだけ。

 

 空高くから、踏切内に一つの影が落ちてくる。

 

 銀色の戦闘スーツに身を包んだ人物。フルフェイスのヘルメットの中では、左目の辺りに緑色の光が灯っている。

 

 彼は軽自動車のバックライトのあたりに両手を添えた。そして踏切の外に向けて一気に突き放した。

 

 ガコン、という重厚な音を立てて、軽自動車は踏切の外に出た。押しのけられたことで根元から折れた遮断機の竿が、外側に勢いよく開く。

 

 「あんた! 危ない!」

 

 非常停止ボタンを押した女性が叫んだその瞬間、特急電車が銀色の人物の体に重なった。

 

 だがどんな衝撃も、衝突音も生じなかった。電車は何にもぶつからなかったように前進していく。ようやくブレーキが効いたのか、踏切から数十メートル進んだところで、ややつんのめるように停車した。

 

 踏切にかなりの野次馬が集まり始めた。非常停止ボタンによる警報はかなり注目を集めるようで、軽自動車は無事だったのにも関わらず、まるで大事故が起こったかのように人々は色めきだっていた。

 

 「ごめん。ちょっと外してた」

 

 事故の現場を呆然と見ていた牧原の横から、落ち着いた声が聞こえてくる。振り向くと、秀樹が地面からかばんを拾い上げるところだった。

 

 「……今の、藤沢くんなんでしょ?」

 

 やや盗み見るように秀樹の横顔をうかがう。そんな牧原にチラリと一瞥をくれた秀樹は、ふうと小さくため息をつき、歩き始めた。

 

 牧原は彼を追う。その表情に、少しも嫌そうな雰囲気はない。ぞんざいに扱っていると言い切ってもいい秀樹の対応に対して、穏やかな眼差しで彼の跡を歩いていく。

 

 しばらく歩くと、やがて例の公園にたどり着いた。


 先日の事件で破壊されたジャングルジムはまだ直っていないようで、無残な姿にひしゃげたままである。さすがに児童たちが危なくないように柵とテープで周囲を囲まれていたが。


 「待ってて」

 

 公園に入るや否や、秀樹は牧原にそう告げた。ベンチに座って牧原が夕暮れを眺めていると、間もなく、近くの自販機で買ったであろう缶ジュースを秀樹は二本持ってきた。

 

 「炭酸と、そうじゃないやつ。どっちがいい?」

 

 「えっ、いいの?」

 

 「これくらい。いろいろ迷惑かけてるし」

 

 どの迷惑のことを言っているのか、具体的な説明を聞きたいのをぐっとこらえ、牧原は炭酸の赤い缶を選んだ。


 秀樹はチラッと牧原の選んだ方を見た後、残りの缶を握って彼女の隣に座る。

 

 ほとんど二人同時にプルタブを起こした。プシュッという小気味いい音が公園に響き渡る。牧原は缶に口をつけると、ゴクゴクと喉を鳴らしながら景気よくジュースを飲んでいった。

 

 やや日が陰ってきたが、公園にはまだ何人かの子供たちが駆け回っていた。秀樹も牧原も、しばらく無邪気な子供たちをただただ眺め、普段の日常から少し解き放たれたような気分になる。

 

 「さっきの質問だけど」

 

 「うん」

 

 「今から話すことは、いろいろ複雑なんだ。答えてもいいんだけど、絶対秘密にするって約束できる? 本当に、親にも友達にも話さないって」

 

 秀樹は牧原に念押ししたが、彼女の瞳が綺麗すぎて逆に圧倒されそうになった。しかし気合で何とか持ち直し、牧原の目を正面から見つめた。

 

 「……わかった。約束するよ」

 

 「ありがとう。質問の答えだけど、君の言う通りで合ってるよ。あの銀色のアーマーを着けて何やかんややってたのが、オレ。もちろん、紫色の化け物を倒したのもね」

 

 秀樹の語り口は慎重だった。言葉は砕けているが、その声のトーンは、金庫から金塊を一つずつ取り出すかのような空気すらある。

 

 「なんであんな……えっと、不思議な力が出せるの?」

 

 「まあ、生まれつき、かな」

 

 「生まれつきって……超能力みたいなもの?」

 

 「そうとらえてくれてもいいよ」

 

 「ああやって、いろんな人を助けて回るのが、藤沢くんのお仕事なの? ほら、体を使ったアルバイトをやってるって」

 

 「いや、人様が困っているところに首を突っ込むことで小遣いをもらうほど、狡いやつじゃないよ、オレ。あれはまあ、気づいたら手を出しちゃってるっていうか。どっちかというとお金が絡むのは後者の方。あの紫色の怪物を倒すと、ちょっと危険手当みたいなのが入る感じかな」

 

 「あの怪物は何なの? どうして藤沢くんはあんなのと戦っているの?」

 

 その問いに、秀樹の答えはすぐに出てくることはなかった。


 牧原が隣を見やると、空き缶を口に押し当てたまま、秀樹は夕焼け雲をにらんでいた。何かを夢想するかのように。

 

 ボールを追いかけている子供たちの嬌声が聞こえてくる。


 そのまま何も答えずに今日は終わりかと牧原が思った頃、秀樹は缶ジュースを一気飲みして、彼女の方を振り向いた。

 

 「どうやって話そうか、浮かんできたよ。昔話は好き?」

 

 「え?」




 ◇◇◇


 


 地球から遠く、遠く離れた星に、フォルティアという種族が住んでいた。


 銀色の美しい体を持ち、生まれつき備わった強靭な四肢と、様々な特殊能力を発揮し、宇宙の長い歴史の中でも特に栄華を極めていた。

 

 彼らには高い知能と、もともとの強い体があるため、他の星からの侵略があったときでも決して負けることはなかった。


 むしろ余裕をもって対応し、侵略者に平和を説いて新たな交易の場を広げることにも邁進していた。

 

 そんな完璧な彼らの中にも、長い歴史の中では特に秀でた者が生まれ出る。しかも同じ時代に2人も。

 

 1人はブルームといった。


 彼は非常に強い戦士でありながらも類まれな才能を持つ学者であり、侵略者たちとの戦いで幾多の武勲を挙げながらも、人生の大半を新たな技術の開発に努めてフォルティアの社会を発展させた。

 

 もう1人はルクスといった。


 彼も同じく戦士でありながらも最高の学者であり、特に注目を集めたのが、無から有を生み出す錬金術の能力を開花させていたことだった。


 ブルーム以上にフォルティア社会の発展に寄与したが、彼の方は仲間たちとの交流をより好み、多数の勇猛果敢な戦士たちを育て上げた。

 

 幾千年に一人とも思われる天才である彼らは奇遇にも同じ時代に生まれ、互いに高めあった。

フォルティアは寿命が長い種族であるためその歴史も長いが、偶然同じ時代に生まれたことに彼らは感謝し、互いに唯一無二の親友として親交を深めた。

 

 あるとき、ブルームは一つの疑念に行き着いた。


 もしかしたら、技術の発展には終わりが来てしまうのではないだろうかと。いくら自分の閃きを持ってしても、これ以上新たな発見の喜びは訪れないのではないかと。

 

 親友のルクスはブルームを諭した。


 技術の発展に終わりがあったとしても、それはそれ。そこまで行き着いた自分たちを誇りに思うべきだと。


 だがブルームの情熱はとどまることを知らず、危険な方向に進むのも長くはかからなかった。

 

 そこで彼は、ついに禁断の箱を開けてしまった。


 生命の創造である。

 

 より強く、より賢く、より美しい存在であってほしい。自分の子孫を作るように、ブルームは新たな命を密かに作り始めた。彼が持ちうる技術のすべてを使って。

 

 やがて研究の成果は訪れる。


 それはリーディックと名付けられた。

 

 最初の数体のリーディックは弱かった。フォルティアの住む星の過酷な自然環境に耐えられず、1体を除いて全滅してしまった。

 

 無事に生き残った1体にレドウィンと名付け、ブルームは新たなリーディックたちの創造に勤しんだ。


 やがて後続に生まれたものたちも成長し、特に最初の1体であるレドウィンは、フォルティア最強の戦士の一人であるブルームよりも強い力を秘めるまでになった。

 

 悲劇はそこで起こった。


 ルクスが訪ねてきたのである。

 

 ルクスは親友を非難した。生命の創造に手を付けて、幸せな結末に終わった歴史などないと。


 だがブルームは忠言を押しのけ、あろうことか、ルクスに対して大勢のリーディックたちをけしかけて襲わせたのだ。

 

 ルクスは重傷を負ったものの、何とか仲間の戦士たちのもとに逃げ帰ることができた。

彼の傷を見て戦士たちは自制することが到底できず、精鋭部隊を結成してリーディック討伐に向かった。

 

 傷が癒えない体を押して、なんとかルクスも戦士たちの跡を追った。


 しかし、そこで見たのは悲惨な光景だった。

 

 ルクスが鍛え上げた戦士たちはほとんどが息絶えていた。リーディックたちの猛攻が予想外に強く、リーディックは倒したものの、宇宙で無敵と言われる種族であるフォルティアの精鋭たちもやられてしまったのだ。

 

 戦いの場にブルームの姿はなかった。


 さらに、最初の1体のリーディックである、例のレドウィンの姿もなかった。


 わずかな手がかりから、ルクスはブルームとレドウィンが地球という星に向かったことを突き止めた。そこはかつてルクスがブルームと訪れた星であり、あまり文明レベルが高くないため、潜伏するのにちょうどいいと考えたのだろう。

 

 フォルティアの議会を説き伏せ、ルクスは単身で母星を飛び立った。


 どれだけ時間がかかろうとも、必ずブルームを連れ帰り、償わせてみせると。

 

 長く孤独な旅の末、ルクスは地球に到着した。


 既にブルームは潜伏した後だったが、フォルティアとリーディックの痕跡は地球では明らかに奇異であり、ルクスの懸命な調査の末、やがてブルームを見つけ出した。

 

 かつての親友を説き伏せることができるとは、ルクスも甘く考えてはいなかった。拳を交えることは避けられないだろうと。

 

 だが、ブルームの覚悟はルクスの想像を超えていた。


 レドウィンにさらなる強化を施したブルームは、タッグでルクスに戦いを挑んできたのだ。

フォルティアの星でルクスに対し繰り出したような、致命傷を避けて退却を望むような戦いではなく、完全に殺す気で来ていた。

 

 ルクスは単身で来ていたため、今度こそ頼れるのは自分しかいなかった。


 万事休すかと思ったところ、地球の人々はルクスに対し協力してくれた。ブルームとレドウィンの猛攻から身をかくまってくれたのだ。


 ルクスが地球での滞在中に彼らと自然に行った交流が、いつの間にか見知らぬ土地での仲間を作ることにつながっていた。

 

 ブルームに対し撹乱する動きをとることに成功したルクスは、彼と一対一で戦う機会を得た。

そしてフォルティアという種族の力の源である、二つのコアの内の片方を破壊し、彼を退散させた。

 

 ルクスはすぐにレドウィンへの攻撃に移った。ブルームが態勢を立て直す前に行動する必要があったのだ。


 地球の人々の多くが見守る中、ルクスは自身のコアを片方失いながらも、海沿いの荒野でレドウィンを完全に破壊した。




 ◇◇◇


 


 「……え? それでブルームはどうなったの?」

 

 かなり話し込んでいたからか、既にあたりは真っ暗になっていた。


 ベンチの上にも電灯があるおかげで、牧原は秀樹の表情を読み取ることができた。

 

 秀樹はなんだか嬉しそうな顔をしていた。


 女性に好意を持たれて歓喜する思春期の少年――ではない。自分の得意分野の話に興味を持たれて純粋に喜ぶ、いわゆるオタクのような。

 

 「けっこう食いついてくれるんだね。なんか、意外」

 

 「だって面白かったもの! 映画みたいな話だったし」

 

 牧原は本当に楽しそうだった。


 超がつくほどの美少女で、周囲にもてはやされている女子高生は、SFなんか好きじゃないだろう……そう思っていた秀樹の偏見が崩れ去った。

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