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第四話 後編

 そして、ルミナに暴力を振るおうとしていた男二人もまとめて持ち上げ、彼らは気持ちいいくらい派手に吹き飛んでいった。


 「うわっ!」


 ルミナの顔のすぐ上を突風がかすめる。少しゴロゴロと転がり、彼女の顔や甚平は土や雑草の色がこびりついた。


 一瞬、彼女の死が頭によぎったが、墜落の余波はそれで終わった。


 立ち上がって周囲を見回すと、竜巻が局所的に襲ったかのような被害が見受けられた。林の大部分が形を変え、木々は墜落地から逃げるように外側に反り返っている。


 クレーターができている。その中心地に、ルミナはそろそろと近づいて行った。


 なにか人影が見えたかと思ったが、落ちてきた物体は人間の形からは少しかけ離れていた。


 というのも、もとは五体満足であったであろうその四肢は傷つき、何か所か欠けている。綺麗に残っているのは頭部と胸だけだ。


 「宇宙人……?」


 抱いた感想を口に出す。思わず出た自分の言葉に少し驚くが、それ以外の表現が見つからない。


 まるで竜のような顔をした宇宙人だった。もともとは非常に美しい姿をしていたのだろう、全身が銀色の滑らかな表皮に覆われている。


 ルミナはさらに近づいた。その顔の作り、そして、ルミナに向ける静かな視線もよく分かった。


 「あの、大丈夫?」


 とにかく声をかけた。


 いきなり落ちてきた宇宙人に対し、心配せずにはいられなかった。なにしろ――向こうは意図的ではなかったかもしれないが――自分の窮地を救ってくれた恩人である。


 うっすらとだが、竜のような口が動くのが分かった。


 「いや……大丈夫、ではない。はっきり言わせてもらうと、もう少しで死ぬ」


 その声は穏やかではあったが、どこかに後悔が混じっているように感じられた。


 ルミナは宇宙人のそばに駆け寄り、跪いてその胸にそっと触れた。


 「あの、名前は何ていうの?」


 「私は……ブルーム」


 「ブルーム。私はルミナ。ねえ、何かできることはない?」

 

 その宇宙人、ブルームは、少し驚いたように目を見開いた。


 「驚いた……な。いきなり会った……異星人に……そんな言葉を」


 「やっぱり宇宙人だったんだ。もちろん、私ができることをするよ。だって、もうダメかもと思ってたところを助けてくれたんだもん」


 ルミナは微笑んだ。


 目の前で、体の大部分を損壊している相手だ。もう看取ることしか、やれることは残されていないだろうと思った。


 おそらく、遺言か何かを聞き取ってほしいのだろう。そう思って、ルミナは片耳をブルームの口元に近づけた。


 「私の力を……きみにあげよう。そして肉体を同化させてほしい」


 「えっ?」


 思っていたのとは違う願いに、ルミナは思わず身を引いた。


 「同化って、何? まさか、エイリアンみたいな感じで私の身体の中から食べちゃうわけ?」


 「いや、そうではない。私は精神体として、ここの……」


 ブルームは目線を動かして、自らの胸を示した。


 そこには、楕円形の半球が中央に埋め込まれていた。半球の中には、銀色の小さな光が瞬いて見える。


 「胸に収まっている【コア】に入る。ルミナ……きみの身体にコアを移したら、きみ自身の意思でコアを起動し……超人的な力が使えるようになる」


 「えっ、なにそれすごい」


 「そうなったら……力の主導権はきみにある。私はきみに、精神体として話しかけるだけだ」


 「それで、ブルームが助かるってわけ?」


 ルミナは再び体を戻し、銀色の宇宙人の胸に右手で触れた。


 「助かるといえば……助かる。体は失うが、コアとして意思は残る。そのあとで、きみに話したいことが……」


 「いいよ」


 ルミナはうなずいた。


 その目には、まるで10代そこそこの少女とは思えない強い意思が感じられた。射貫くような真っすぐな視線に、迷いは微塵もない。


 ますますブルームは驚き、初めて会ったこの純粋な地球人の娘に興味を抱いた。


 「はやく。やらないと、あなたが死んじゃうんでしょ? 難しい話は、あとでいいよ」


 「……わかった」


 ブルームの身体全体が光り始めた。


 だが、目を覆いたくなるような眩しさはない。まるで感覚全体に優しく訴えかけるような、柔らかな光だった。


 ――感謝する、ルミナ。


 クレーターの中心にあった宇宙人の身体が、全て銀色の光の塊に変化する。そしてルミナの右手を伝って、彼女の身体全体に流れ込んできた。


 林の中を銀色の光が満たす。木々の影が消え、さらにその先の影もかき消していく。


 ふいに、光がやんだ。


 ルミナの右手の甲に、透明なエネルギーの塊が付着していた。それはブルームの胸にあったものと同じ楕円形の半球。


 「これで、助かったの?」


 彼女は尋ねた。


 自分の中に、何か別のものが生まれたように感じた。それは異物というより、何か温かな存在。まるで守護霊のような。


 『ああ。お前の中にいる』


 ブルームの声が、頭の中で響いた。


 ルミナは泥がついた顔をぬぐい、にこっと笑う。


 その右目には、淡い、青色の光が灯っていた。


 「よろしくね、ブルーム」


 


 ◇◇◇


 


 話し終わった相楽は、マントを羽織ったまま、ふうとため息をつく。

 

 右手だけはマントの外に出していた。そのため、空中に投影されたブルームのビジョンは維持されている。


 ゆっくりとコンクリートの地面に腰を下ろす彼女。その姿をまじまじと見ながら、秀樹は怒るべきか、驚くべきか決めかねていた。


 今の話の中で一番衝撃を受けたのは、この相楽ルミナという少女の人間性だった。


 ためらいもなく、ブルームと同化することを選んだという。しかも自分のためではなく、見ず知らずの宇宙人を助けるために。


 そんな慈悲深いことができる人であるとは、普段の彼女の軽そうな雰囲気を見ている秀樹には想像もつかなかった。

 

 「数か月前、私はブルームと会った。ナンパ男たちにやられちゃいそうになった時に、彼の存在が助けてくれたことには変わらない。彼のためなら、私は何でもすると決めた」

 

 運動場から、どこかの部活がランニングで出す掛け声が聞こえてくる。その声が、今聞いたばかりの相楽の話のせいで、逆におとぎ話のように聞こえた。

 

 『ルミナには全てを話した。フォルティアのこと、ルクスのこと、レドウィンのこと。彼女は時間をかけて何度も話を聞き、理解してくれた』

 

 ブルームの低い声が相楽の説明を引き継いだ。


 秀樹は仇敵の説明を聞きながら、眉間のしわを取ることができない。どんなに状況が変わろうとも、母の命を奪ったのはこの宇宙人であることは変わりがない。


 今秀樹が拳を振り上げずに話を聞いていられるのは、相楽がこの話に噛んでいるという事実に、意外性を感じていたからだ。何か、秀樹が知らない状況が起きているに違いない。


 『メルバのことは、近藤秋也から聞いたか?』

 

 「……まあ。大体は」

 

 『どこまで?』

 

 ブルームはかなり突っ込んで聞いてきた。

 

 イライラして立ち去ろうとも考えたが、相楽が手を合わせて謝るようなポーズをしているので、何とか怒りを抑えて回答する。

 

 先日秋也から聞いた、メルバとの出会いについて全て話した。

 

 『そうか。近藤秋也の言っていた通り、私は彼の姉を撃ち、そして彼は復讐のためにメルバと同化した。あんな結末になるとは、本当に悪いことをしたと思ってる』

 

 「よくそんなことを言えたな……この病原菌が!」

 

 ブルームの反省の言葉が、秀樹の神経を逆なでした。

 

 一気に彼の【両目】に光が灯り、全身から緑色のオーラが漏れる。能力を解放したことによる余波は、足元のコンクリートにひびを入れた。

 

 「今まで散々! 散々多くの命を奪ってきておいて、よくも抜け抜けと言えるな! お前がリーディック生み出し、そして地球にやってきたせいで、死ななくていい人が大勢亡くなったんだぞ! 悪いことをしただって? もはやお前の行為はお前の存在そのものだ! お前自身が罪の塊なんだぞ!」

 

 まるで台風のように彼の身体をエネルギーの渦が巻く。突風が起こり、砂や草の破片が上空に吹き飛ばされた。

 

 それから秀樹は罵詈雑言を、透明な宇宙人のビジョンに向かって浴びせた。思いつく限りの悪口を述べ、できる限りの語彙でなじった。

 

 「……はあ、もう」

 

 ガス抜きするようにグルグル歩き回ったのち、秀樹は相楽の隣に座り込んだ。

 

 「分かった。もう気が済んだ。話を聞くよ」

 

 「いいの?」

 

 相楽が隣から尋ねた。秀樹が目線だけ向けると、彼女は非常に申し訳なさそうな顔をしていた。

 

 「言いたかっただけなんだ。先日、相楽とブルームが、秋也からオレを助けてくれたことは覚えている。行動でお前たちは示してくれたよな。だから……聞くよ」

 

 秀樹はボソボソとしゃべった。

 

 既に能力は解除し、両目は普段の色に戻っている。能力の反動で、特に戦ってはいないが疲れを感じた。

 

 秋也が秀樹の本気を引き出そうと、赤い鎧を身に着けて襲ってきたあの日。ブルームが彼らの間に割って入った。つまり、ブルームと同化した相楽が。

 

 衝撃波だけを放ち、秋也を秀樹から引きはがすと、秋也を引き付けて逃げてくれた。その事実は、秀樹の胸の中にずっしりと残っていた。

 

 『ありがとう……藤沢秀樹。では、話そう』

 

 ブルームが話したことは、次の通りだった。

 



 秋也が能力に覚醒した日、メルバと出会ったことで、ブルームは自分がこのままリーディックの生産に携わっていていいのか疑問に思ったらしい。

 

 そもそも彼がリーディックを再び生み出そうとしていたのは、単なる未練、そして寂しさ。自分の家族とも言えるリーディックはレドウィンを最後に消滅したため、また自分の家族を作りたいという思いで、組織の庇護のもと、リーディック研究を続けていた。

 

 だが、どれだけ時間をかけようとも、故郷の星で生み出したようなリーディックを再び誕生させるのは容易ではなかった。人間を改造して、リーディックのように変身させることはできても、無から強力な生命体を生み出すことだけはできなかったのだ。

 

 おそらく、惑星としての環境が違うのと、圧倒的に科学の発達が足りていないことが考えられた。そのため、土台となる技術の発展に努めたが、なかなか遅々として進まなかった。

 

 その中で、ルクスを追ってメルバが地球に現れたという情報をつかみ、攻撃される前に倒そうと、メルバの足取りをつかみ始めた。日本人の近藤春香がメルバに接触していることが分かり……そのあとは秋也の話の通りだった。

 



 『メルバから言われたことが、私の行動を変えた。組織のボスと会い、何とか話し合いでリーディックの生産を止めさせられないか試したが、それが返ってまずかった』


 


 ブルームの提案は一蹴された。それだけでなく、ボスから多数の刺客を送り込まれる。

 

 フォルティアの二大戦士の一人であるブルームには、たかが改造人間のリーディックたちでは到底かなわず、全て返り討ちにした。彼がかつて生み出したオリジナルのリーディックよりも、はるかに弱かったのだ。

 

 だが、それだけで攻撃は終わらなかった。

 



 『ボスが直々に暗殺に来た。彼もリーディックの改造手術を受けていた。そして私は……敗北してしまった』

 

 「負けたって? 改造人間くらいでは、お前に敵わないんじゃないの?」

 

 『ボスの受けた改造は特製だった……彼の改造手術のベースとなった生物は、まさかと思ったが、あのレドウィンだった』

 

 「なっ……」

 

 


 どこから持ってきたのか、ブルームが残した記録から独自に計画が進められ、彼に知られないうちに研究が一つの完成を迎えていたらしい。

 

 つまり、改造人間として究極のものを作り出すこと。かつて最強のリーディックとして力を誇っていたレドウィンの能力とパワーをコピーしたものができていた。

 

 それを知らず、しかも不意をつかれたブルームは、ボスとの戦いで身体のほとんどを欠損するダメージを負った。命からがら逃げたが、途中で力尽きて墜落。

 

 そこを相楽に救われたらしい。


 

 

 『ルミナと同化したのち、彼女に力の使い方を教えながらも、私たちは独自に調査を進めた。もう相手を侮っている場合ではない。十分な準備をし、こちらから不意をつくつもりでいかないと、ボスには勝てない』

 

 「それで、何か成果は?」

 

 『幸いにも、レドウィンをベースにした手術を受けるにはそれ相応の素質がいると分かった。精神力と身体能力、そして身体の構造そのもの。それにコストも高すぎる。つまり、レドウィン型のリーディックを大量生産することはできないことがわかった』

 

 「それは……ラッキーだったな」

 

 『ああ。だが他にも、いろいろと興味深いことが分かった。組織にいた時代に培った情報網や探索スキルで。ボス以外のことも、いろいろとな』

 

 ブルームはチラリと秀樹の目を見た。

 

 秀樹の心臓が、ビクンと飛び跳ねるのが分かった。意識しないようにと努力したが、背中からは勝手に冷や汗が垂れてくる。

 

 『あとは飛びながら話すぞ』

 

 「飛ぶって? いや、オレはそんな能力……」

 

 秀樹がモゴモゴ反論する間に、相楽が立ち上がって、尻についた砂を払っていた。

 

 マントを深くかぶり、頭を隠す。そしてフードの奥の暗闇から、秀樹にふふっと笑いかけた。

 

 「もう、隠さなくていいよ――【ルクス】と同化してるんでしょ?」

 

 彼女の言葉に、秀樹の目が大きく開かれる。

 

 「行こっ。藤沢ライトが、今頃ボスに戦いを挑んでいる頃だけど、ボスはめちゃくちゃ手ごわい。レドウィンの能力を持っているだけじゃなくて、策を張り巡らしているかも」

 

 相楽の右手の甲に半球の【コア】が浮かび上がり、身体全体が青いオーラに包まれた。

 

 そして宙に浮く。ふわふわと地上2メートルほどを漂いながら、秀樹を見下ろしてくる。

 

 「行かないの? この戦いに負けられないのは、藤沢も一緒でしょ?」

 

 相楽の問いを、秀樹は咀嚼する余裕がなかった。

 

 今言い当てられた事実。それは長年秀樹が守ってきた、どんな秘密よりも重い。

 

 簡単に認めるわけにもいかない。これは自分だけの問題ではないからだ。

 

 悶々としていると、秀樹の左手が緑色に光った。

 

 『秀樹。もう隠しても無駄なようだ』

 

 声が聞こえ、同時に、彼の目の前にビジョンが現れる。

 

 竜のような顔をした異星人、フォルティアの姿。だが僅かにブルームとは違い、体の各部がより大きく盛り上がっている。

 

 「ルクス……いいの?」

 

 『うむ。宿敵が頭を下げているのだ。渦中に飛び込んでみる価値はあるだろう』

 

 ルクスのビジョンは、同じく相楽によって投影されているブルームのビジョンを見つめていた。

 

 二人のフォルティアの間に、不思議な雰囲気が流れる。殺し合いの歴史を繰り返したとは思えないほど、どこか親密で穏やかなものが。

 

 「……あんたがそう言うんなら」

 

 観念したようにため息をつき、秀樹は左手を持ち上げた。

 

 手の甲に楕円形の半球、コアが現れる。そして彼の身体全体が緑色のオーラに包まれた。

 

 相楽が上空へ飛び立つ。


 誰かに見られる危険を冒したくないため、念のため秀樹は懐からアーマー装置を取り出して起動した。

 

 全身が銀色のスーツに包まれると同時に、彼は空中に飛翔した。そして黒マントがはためく相楽の後を追った。


 


 ◇◇◇


 


 また一つ、黒い菱形の石が粉々に砕け散る。

 

 銀色のフォルティアの姿。藤沢ライトが地面に着地すると同時に、最後のリーディックが変身解除に追い込まれた。

 

 落ちてきた変身者の身体を、ライトは優しくキャッチする。白目をむいて痙攣する男を、静かに床に横たえた。

 

 「行くぞ」

 

 背後に従う数人の部下たちに向かって彼は言う。

 

 隊員たちの来ている戦闘スーツは、色は黒ではあったが、基本的に藤沢秀樹が着るものと同じ形をしていた。というより、色違いを秀樹が来ていることになる。

 

 秀樹と違うのは、各々が銃器を携帯していること。


 多少のパワーアシストによってスーツ着用時は人間より強い力が出せるのは確かだ。だがフォルティアの力を持つ秀樹とは違って、彼らがリーディックと戦う際には決め手が欠ける。


 そのため、ちょっと未来的な形をした突撃銃を装備しているのだ。火力を補うために。


 「マップによると、この先は社長室だ」


 フォルティアに変身した姿のまま、ライトはどんどん廊下を進んでいく。両隣に部屋がいくつかあるが、目もくれない。


 やがて、豪華な装飾をした扉の前に行き着いた。


 ライトが目配せすると、すぐに2名の部下が扉の両側に着く。


 彼らが扉をそっと押した瞬間に、それをライトが蹴り飛ばすようにして部屋に飛び込んだ。


 社長室は広かった。余裕を見せるためなのか、応接用のソファーとデスクの塊の間に、周囲数メートルは何もない。


 そのさらに奥、眼下に広がる摩天楼を広々と見渡せるように、巨大なガラス張りの壁が一面に広がっている。そのわずか手前に、社長のデスクがあった。


 デスクの向こう、椅子に誰かが座っている。背もたれが大きすぎて頭の一部しか見えないが、男性であることは確かだ。


 ライトは率先してデスクの前まで進んだ。そして声を張り上げる。


 「組織のボス、エグモント・フィッシャーだな」


 彼の声が天井や壁に反響した。物が置かれていないためか、よほど響く部屋らしい。


 椅子がゆっくりと回転した。


 「え……」


 ライトは驚愕した。椅子に座っていたのは、探していたドイツ人男性ではない。


 日本人。それも、まだ10代半ばくらいに見える。


 特筆することを挙げるなら、美形だった。この容姿であれば、アイドルグループのトップ、いや、映画俳優として活躍できるだろう。


 「きみは?」


 ライトは自然と変身を解いていた。もとの西欧人男性の姿に戻り、椅子に座る青年に話しかける。


 すると、青年の両目が紫色に光った。


 ライトの反応は素早かった。紫色が視野に入った瞬間、即座にフォルティアの姿に変身して身構えた。


 だが、部下たちの反応は遅れた。


 青年の両目が光った瞬間、その背中から触手のようなビームが複数本発射され、ライトの背後にいた隊員たちの身体を貫通した。


 「くっ!」


 何とか、一人攻撃を避けていた部下が一人、銃を構えて発砲した。


 銃口から飛び出したのは白いレーザー。それは椅子に座る青年に照準が絞られていた。


 だが既に、青年の姿はなかった。


 ライトだけは、超高速で飛んでくる攻撃を上に跳んでかわしていた。普通の人間では視認できないスピードの攻撃だった。


 「がっ……」


 銃を放ったばかりの隊員の首に、光るオレンジ色の線ができる。


 一瞬後、その隊員の首は床に落ち、体も倒れた。首の断面は、超高温の鎌で焼き切ったかのように焦げていた。


 隊員が倒れた背後には、深紅の長剣を握って肩に刃を乗せている、先ほどの青年の姿があった。


 「お前……何者だ」


 ライトは拳を握って構えた。


 どう見ても目当ての人物ではなかったが、かなりの強敵であることは確かだ。


 青年の目は、今度は両目が赤く光っている。毒々しい、まるで血のような赤に。


 そして長剣の切っ先をライトに向けた。


 「ぼくの名前、秀樹から聞いてなかった?」

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