第9話「2つの超機神」
「タイ=ヨーノ=トー……?」
「そうです。……その昔、この世界の国が今の形になった原因。それが超機神です」
それから女王様は、超機神について、色んなことを教えてくれた。
この世界の国というのは、元々、もっと小さな国に分かれていた。
ある時、いつの時代かも分からないほど古い遺跡から、巨大な機神が発掘された。
発掘されたその超機神は全部で7体。そのうち5体は中も外もボロボロで、ただの鉄の塊みたいな感じだったらしい。
動く2体のうち1つは、オーサカ国の“塔の超機神”タイ=ヨーノ=トー。
もう1つは、ハンナリィ帝国にある“城の超機神”アウスワカ=ジョー。
それで、7体の超機神を、神様が降りてきた時の器として、それを守るために集まった人たちが、次第に国を作っていったんだって。
動かない5体は場所が近かったから、アウスワカ=ジョーの家来みたいに見立てられて、それぞれに小さな国が生まれた。
そのときはハンナリィ王国と呼ばれていた国は、周りの小さな国を取り込んで、巨大な“ハンナリィ帝国”になった、っていうことだった。
「それで今度は、最後に残ったオーサカ国を……?」
「いいえ。帝国が完成したのはもう200年以上も前の話で、今回のことがあるまでは、普通に国どうしの付き合いもあったのです。それが今になってなぜ……」
そう言って女王様は顔を下に向けてしまった。
「ママ……」
【で、その2つの超機神は、システムとしてはちゃんと動かせるんやけど、なぜかいうこと聞いてくれへんねん。で、遺跡を調べた結果、超機神は、ワイみたいな魔法生物と、若い異世界人が同時に乗って、はじめて動くことが分かったんや】
「え、じゃあ超機神は元々、ぼくたちの世界で作られたものってこと? でも魔法生物なんていないよ……」
【それが分からへんねん。ヒデヨシの世界からと行き来が出来るようになって、そっちの科学者なんかもよーさん調べに来たんやけどな】
まあ、そうだよね。
ぼくたちの世界で、そんなに大きなロボットが作られたなんて、アニメとか特撮なんかでしか見たことない。
アニメのロボットが実際の大きさで作られたりしたけど、それだって動いたりしないただの人形だ。
「それで、分からないまま、超機神はそっとしておこうということになったのです」
「どうして?」
【戦争になるからや】
かーくんの言葉に、ぼくはビクッとした。
【人間ゆーのは、強い力を持つと使いたくなんねん。そんで他の国もそれに対抗出来る力を持とうとする。いい悪いは知らん。でもそういうもんや】
「……案外、超機神もそういう経緯で作られたのかもしれません」
「そんなの!」
それまでじっと聞いていたハルカスが叫んだ。目には涙がたまっている。
「どーして仲良く出来ないのよ! そんなの……おかしいじゃん」
「……そうね」
【せやな……】
その話を聞きながら、ぼくの世界も同じだなって思った。
昔の戦争のことはよく分からないけど、ぼくが住んでる時代だって、世界のどこかでは戦争をしてる。
【……とはいえ、今はそれを話してる場合やない。問題なのは、ノブシゲが今、超機神の操縦者として確保されてしまっとるゆーことや】
「……つまり帝国は、城の機神を起こそうとしている、ということです」
「そんな……」
「だから、ぼくが塔の機神を動かして、対抗するっていう……」
「そういうことです。……もちろん、これはただのお願いです。元々この世界の人間ではないヒデヨシに、この世界の争いに関わって欲しいわけでもありません。ですが、他に方法が……」
「うん、やるよ」
女王様の言葉に、ぼくはすぐに答えていた。
「ぼくは、ノブシゲ兄ちゃんと一緒に、元の世界に帰るんだ。それに、ぼくを助けてくれたハルカスやかーくんのために、出来ることがあるならなんでもするよ!」
「ヒデヨシ……!」
【ごめんやで、ヒデヨシ。……よし、ほな明日、準備が出来たらいこか!】
「うん! 私、仙人様にお知らせしてくる!」
「よーし、じゃあ明日は朝から出発しよう! ……って、どこにあるの?」
【ここから少し離れた湖のど真ん中にある小島やで】
湖!
そんな場合じゃないのは分かってるんだけど、ぼくはちょっとだけワクワクしてきてしまった。
次の日。
ぼくとかーくん、ハルカス、仙人様の4人は、塔の超機神に向かって出発した。