第6話「帝国の追撃」
帝国が、来た。
街の反対側、森の方から来てるみたい。
【あかんな……前より増えてるし、違う音も聞こえよる】
「みんな、ママが軍隊を出して助けに来てくれるって! それまでがんばろ!」
「ふむ。……お姫さん、ワシと一緒にこの中におれ。ここなら安全じゃて」
え、ぼくは?
【ヒデヨシ、行くで。……大丈夫か?】
「だいじょうぶじゃないよ……」
「ヒデヨシ……」
「ぼく、ただの小学生だもん。……でも」
なんか、話してるうちに落ち着いてきた。うまく説明出来ないけど、かーくんとなら一緒に戦える気がする。
それに、ぼくを助けてくれたハルカスを守らなきゃ。
「いこう、かーくん。中に入ってくるは止めなきゃ」
【ようゆーた。こっちの世界の問題に巻き込んでしもて、ごめんな】
「ううん。ノブシゲ兄ちゃんのこともあるし。……これは、ぼくの戦いでもあるんだ!」
ぼくはそう言って、外に置いたカーニィに向かって駆け出した。
ほんとはこわいよ。
でも、でも。
「ハルカス、仙人様、待ってて!」
「ヒデヨシ! 気をつけて!」
「頼むぞ、ヒデヨシ……」
ぼくは、男だから。
誰かが困ってるなら、助けたいんだ。
――――
【エンシン=エンジン安定!】
「かーくん大丈夫?」
【大丈夫や! 合体したおかげで、目ぇ回すこともない!】
カーニィのモニターには、昨日みた帝国のドローンみたいなやつが数台、あとは機神? が1台映っている。
ぼくがカーニィに乗った直後に到着したみたいだった。
「機神がいる」
【あれは……厄介やな、戦闘用や】
「カーニィは違うの?」
【こっちは作業用やな。パワーはあるけど、武器はついてないしスピードも速くない】
「そっか……」
【心配いらん。こっちにはワイがついとるからな。帝国の機神のエンジンは、ワイらみたいな魔法生物とちゃう。ただの燃料を爆発させて動かしてんねん。ここぞって時のパワーはこっちが上や】
「ほんと?」
【……たぶん】
「たぶんなんだ……」
その時、ドォン! という大きな音がして、カーニィがグラッと揺れた。
「え、なに、なに!?」
【帝国の機神に攻撃されたんや! こっちもいくで、ヒデヨシ!!】
「う、うん!」
かーくんに言われ、カーニィを起動させる。
どうしよう、何か武器は……。
「あれだ!」
ぼくが見つけたのは、伐り倒された一本の木だった。
【よっしゃ、あの木やな】
「うん、でも……」
その木にたどり着くには、帝国兵を横切らないといけない。
当然、攻撃されることになるってことだよね。
【よし、移動はワイがやる。ヒデヨシは反撃するんや!】
「え、どうやって!?」
【両方の壁にレバーがあるやろ。それを使うんや! いくでっ!】
え、え、ちょっと待ってよ!
かーくんは、ぼくがオロオロしてる間に走り出してしまった。
帝国兵たちももちろん、その動きに攻撃を仕掛けてくる。
「うあっ!!」
ぼくは反射的にレバーを握り、でたらめに動かした。
すると、その動きに合わせて、背中についてるカニの脚みたいなトゲトゲした腕が、敵に攻撃をしはじめた。
突然の攻撃に驚いたのか、ドローンに乗った帝国兵が、バランスを崩して次々に落ちていった。
【ええでええで、センスあるやんか!】
「めちゃくちゃに振り回してるだけだよぉっ!!」
それにまだ向こうの機神がいるし!
あいつと戦うのは、今のままじゃダメだ!
【っしゃ、ヒデヨシ、前のデカいレバーを握って、やりたいことを思い描くんや!】
「う、うん!」
いつの間にかカーニィは、倒木のところにたどり着いていた。
ぼくはレバーを握り、思いっきり叫んだ。
「カーニィ、その木であいつを倒せえっ!!」
その時、ぼくは、自分が乗る機神が、こんなスピードで動けるなんて思ってなかった。
ほとんど瞬間移動みたいに倒木にたどり着き、そのままの勢いで木を掴んだ。
ぐるん、と大きく回って木を振り回すと、すぐ近くまで来てた、残りのドローンが一気にふっとんだ。
「どーだっ!!」
【ヒデヨシ、残りは機神だけや!】
「よしこーい!!」
ドローンをやっつけたぼくは、そのままの勢いで敵の機神もぶっ飛ばそうと、飛び跳ねるように近づいた。
あと一歩で届く、というところで、敵のハッチが開くのが見えた。
「ん?」
【なんや? ……ヒデヨシッ!】
「えっ、なに? ……あ、ああっ!?」
敵の機神のハッチから降りてきたのは。
「ノ、ノブシゲ兄ちゃん!?」