第4話「もっとかーくん!?」
女王様と話したあと、ぼくとかーくんは女王様のお客として、お城の部屋を使わせてもらえることになった。今、ぼくたちはその部屋で作戦会議をしているところ。
……なんだけど。
ノブシゲ兄ちゃんのことを調べてもらう代わりに、ぼくはカーニィに乗って国を守ることになってしまった。
やりたくない、わけじゃないんだけど。
でも、ぼくはまだ子どもだし、動かせただけだし、なんならそれだってかーくんのおかげだし。
【さて、これからどないしよ】
「……ほんと、どうしよう。ていうか、かーくんがいれば、ぼくじゃなくても動かせるんじゃないの?」
【……それは難しいやろな】
「え、なんで?」
【あのカーニィを起動する時、パイロット登録ってのをしてんねん。それを解除しないと、他の人間には使えないんや】
「じゃあ解除してよ」
【仕方がわからん】
「えぇ……」
【しゃーない、あの時は必死やったからな。まさかこんなことになるとはなぁ……】
すまなそうに言うかーくん。
いや、かーくんは悪くないんだけど。
【ついでにもう一つ問題があってな】
「なに?」
【今のままでは、機神は全力をだせへんねん】
「どうして?」
【ワイが“一人しかおらん”からや】
どういう意味だろう?
かーくんがいっぱいいないとダメなのかな?
「他のかーくんみたいな生き物が必要ってこと?」
【ちゃう。ワイ自身がもっと必要やねん】
「……よく分かんないよ?」
【あー、えーとな】
「私が説明しましょう!」
いきなりドアが開く。びっくりして見ると、そこにはハルカス姫が腰に手をあてて立っていた。
……ぎょうぎ悪くない?この子お姫様だよね?
「細かいこたぁいいのよ!」
「あ、はい」
【街であった時とずいぶん雰囲気がちゃうな……あ、失礼しました、ハルカス姫】
「ハルカスでいいよ! あと、せめてお外では“おしとやかモード”にしなさいってママが言ってた!」
【こっちが本性なんかい】
「あ、あはは……」
ハルカス姫って実はすごい元気な子だったんだ。
ちょっと乱暴な感じもするけど、でもすごく優しいんだってことは分かった。
だって、見ず知らずの、この世界にとっては異世界人のぼくを“困ってそうだから”ってだけで助けてくれたんだもんね。
……それに、かわいいし。
「てことで、ヒデヨシの疑問に答えるわね」
ハルカスはそう言って、ぼくが座ってるベッドのとなりにちょこんと腰かけた。
その時、ベッドについた手が触れて、ぼくはちょっとドキッとした。
そんなぼくを見るかーくんの目がなんとなくニヤニヤしてる気がするけど、きっと気のせい。気のせい。
「このかーくん……カガヤキ族は、元々人間が作った魔法生物なの。ヒデヨシたちの世界でいうと、こ、こんぴゅーた? ってやつに近いのかな」
【あー、そういう感じでええで。ちゃんと感情もあるし自分で考えることも出来るけどな】
「あと、ヒデヨシも知っての通り、機神を動かすエンジンにもなるの」
【せや。意外とすごいやろ】
「ほへぇ……」
ぼくはすっかり感心してしまった。
かーくんってすごいんだなぁ。
【あがめよ】
「調子乗らない。……で、このかーくんと同じ、カガヤキ族っていうのは、本体を別のところに置いてるのよ」
「え、どういうこと?」
【つまり、今ヒデヨシと一緒におるワイは、言ってみれば頭の部分だけなんや。本体は別のところに預かってもろてんねん】
「へぇ……。あ、だからさっき、もっと必要って言ったのか!」
【話が早くて助かるわ。せやねん、機神をフルに動かすためには、ワイの全身が必要なんや】
「そこで、ママからの伝言です!」
ハルカスはぼくに、人差し指を立てて、ニッコリしながら言った。
「ん?」
「“明日、ヒデヨシはハルカスと共に、かがやきくんの本体を取りに行きなさい”とのことでーす!」
「ええっ、お姫様でしょハルカス! 危なくないの!?」
「うん、ちょっと遠いけど、街の中だし。大人の人たちはみんな、対策会議とかで忙しいし。それに、道案内いないと迷っちゃうでしょ?」
【いや、道ならワイが】
「いーの! それとも何、私が一緒じゃいやなの!?」
う、プゥってしてる。お姫様に失礼かもしれないけど、ちっちゃい子みたいでかわいいな。
でも、ぼくもハルカスと一緒に行きたい。結構不安だけど、ハルカスと話してると楽しい気持ちになれるんだ。
「うん、一緒にいこう!」
「やった! ねえねえ、機神に乗せてよ!」
「おっけー! かーくん、いいかな?」
【もちろんええよ。ほないこか】
――――
「おー! すごーい! はやーい! ゆれるううう!」
ハルカスがすごいはしゃいでる。わかるわかる、これちょっと楽しいんだよね。
ちょっと酔いそうだけど。
楽しんでるところ悪いけど、ぼくはちょっと気になってることを聞いてみた。
「ねえ、かーくんの本体ってどこにあるの? 街の中にあるっていうのは聞いたけど……」
「んー? えっとねえ、街の外れに、魔法生物研究所っていうのがあるんだけど、そこに保管されてるの。それで、街の人たちから“仙人さま”って呼ばれてるおばあちゃんが管理してくれてるんだよ!」
「仙人?」
【まー、そんな風に見える普通のばーさんや。緊張せんでええで】
「うん、わかった」
仙人さまかー、どんな人なんだろう。
――この時のぼくは、そんなことをのんびり考えてたんだ。
それがまさか、あんなことになるなんて。