第3話「女王陛下のたのみごと」
それからぼくたちは、本来着くはずだった場所、オーサカ国の首都、ナンヴァに辿り着いた。
カーニィのおかげで、2時間くらいで着いちゃった。
到着してすぐ、ぼくたちは異世界管理局の人を探した。かーくんはその間に、こっちの世界の人にも連絡を取っていた。
ぼくたちの行ける異世界には、必ず管理局の人がいるんだ。何か困ったことがあったら、なんでもその人に相談できる。
……でも。
「管理局の人がいない!?」
【うーん……ていうかな、落ち着いて聴いて欲しいんやけど】
「うん?」
【どうやら、帝国が侵略してきてるらしいねんな】
「ええ!?」
【そんで、これまた落ち着いて聴いて欲しいんやけど、……ワイらはどうやら、取り残されてしもたらしい】
「な、なんで!?」
そんなこと、ありえない。だってぼくたちはちゃんと、異世界旅行の許可をもらってからこっちに来たんだから。
【分からん……なんでこんなことになってんねや……】
「何かお困りですか?」
ぼくとかーくんが頭を抱えていると(かーくんは頭しかないんだけど)、声を掛けてきた人がいた。
ぼくと同じ年くらいの可愛い女の子だ。
「あ、えっと……」
急に声を掛けられてあわてていると、かーくんが間に入ってくれた。
【実はワイら、異世界旅行者やねん】
「えっ? でも、管理局の人はもう」
【せやねん。ワイら、転移する場所がズレてもうてな、そのせいか置いてけぼりにされてもうてん】
「ええっ! た、大変じゃないですか!」
【大変なんよ】
「それに、一緒に来たノブシゲ兄ちゃんが帝国に捕まっちゃったんだ」
「えええっ!!」
【……よし、取りあえずえらい人んとこいこか、ヒデヨシ】
そう言ってかーくんがきょろん、とぼくを見つめた。
「えらい人?」
【せや。大丈夫や、ええ人やし】
「でも、今は行っても会えないと思いますよ?」
「え、そうなの?」
「帝国がおそってきたので、対策会議をしているはずです。……ただし」
【なんやのん?】
「もしかしたら会えるかもしれません。……私と一緒に行けば」
え、どういうこと?
「私の名前はハルカス=ダウォーレ。オーサカ国の女王、クイーン・ダウォーレの娘です」
【え?】
「え?」
女王様の娘?
てことは……!!
「お姫様ぁ!?」
そんな偶然ってある!?
――――
ハルカスのおかげで、ぼくとかーくんはすんなり女王様と会うことができた。ハルカスいい子。
そしてぼくたちは、女王様にこれまでのことを全部話した。
予定とちがう場所に出てきたこと。
帝国兵におそわれたこと。
ノブシゲ兄ちゃんがさらわれたこと。
機神カーニィを動かしてここまで来たこと。
管理局の人が、ぼくたちを置いて元の世界に帰ってしまったこと。
すると、女王様はぼくを優しい目で見て、こう言った。
「なるほど、話は分かりました。……大変でしたね、ヒデヨシ」
「女王様……」
【な、ええ人やろ】
うん。女王様ってもっと偉そうなのかと思った。
「管理局の者たちがあなたを置いて帰ってしまったのは、着地点がズレたことが原因のようですね」
【ほんまですか!?】
「ええ。こちらに入っている連絡では、あなたと幸村ノブシゲという旅行者は、こちら側に来ていないことになっています。こんなこと、これまでになかったんですけどね……」
「そんな……」
「管理局の者たちは元の世界に帰りました。そちらではあなた方が、こちらの世界に来ていることになっているはず。であれば、通常なら分かった時点でなんらかの行動を起こすはずですが……」
【帝国の侵略があるから、こっちには来られへんゆーことやな……】
かーくんの言葉に、女王様はうなずいた。
「そういえばヒデヨシ、あなたはここまで、機神を動かしてきた、と聞きました」
「あ……はい、かーくんがエンジンになってくれて……」
「今、この国には機神を動かせる者がおりません。……そこでお願いがあります」
「おねがい……?」
「ええ」
そういうと女王様はゆっくりと立ち上がって、ぼくのところに歩いてきた。
そしてぼくの手を取り、こんなことを言ってきたんだ。
「あなたのお友達については、こちらで責任を持って探します。……その代わりヒデヨシ、あなたには、機神の力で、この国を助けて欲しいのです」
え?
「ええええっ!?」





