第11話「塔の超機神、起動!」
「ここじゃ。このはしごから上に出られる」
トンネルを5分くらい走ると、上から少しだけ光がさす場所に出た。
そこは突き当たりになっていて、壁にははしごがかかっている。
「でも、どうやって? 天井はふさがってるよ?」
【ワイが開けられる。ヒデヨシ、ワイを天井に連れてってんか】
「わかった!」
そう答えてはしごを登る。10段くらい登った時、かーくんが言った。
【よし、この辺でええ。ちょっと眩しいから目ぇつむっててな】
「うん」
【よっしゃ、いくでっ】
目をつむるぼくの肩で、かーくんがあったかくなった。
だんだん熱が上がっていって、ぼくが「熱い!」っていう直前、目をつむってても分かるくらい眩しい光が出た。
でも、それはすぐにおさまって、でも上から光がさしているのがわかった。
【目、開けてええで】
「ん……う、まぶしい」
【あはは、目が暗いとこになれてたからやな。よし、ほなみんな登ってきて。地上に出たらもう目の前やで】
「よし、いこう!」
はしごをのぼって地上に出る。ハルカスも仙人様も出てきて、座り込んでため息をついた。
「つっかれたぁ……」
「はぁ、はぁ、ぜぇ、ぜぇ……」
「仙人様、大丈夫?」
ハルカスが心配になって仙人様に声をかけてる。大丈夫かな、すごい肩動かして息してるけど……。
「だ、大丈夫じゃよ……。それよりも、早く塔の超機神を動かさねば……!」
【せや、あいつらにはドローンがある! すぐに追いつかれてまうで!】
「ヒデヨシ! 急いで!」
「う、うん、わかった!」
そう言いながら辺りを見回すと、遠くの方にドローンがいくつか浮いてるのがわかった。その向こうには城の超機神が、まだぼんやりとだけど見えてる。
ぼくは改めて、塔の超機神を見上げた。
――でっかい。
人が大きく腕を広げているような形。
なんか飛行機が地面に突き刺さった、みたいにも見える。
全体は白くて、横に赤い雷みたいな線が入ってて、頭の部分は金色だ。
お腹には大きな顔みたいなのが付いてる。
「これが塔の超機神、タイ・ヨーノ・トーじゃ。過去のどの文明にも作られた記録がない。しかも、これまで動かせたものは、今の世界にはいない」
「え、じゃあこれ、動くかどうかわかんないの?」
「……いや」
仙人様は、ゆっくりと首を横に振った。
「これは、動く。……はず」
「はず!?」
「いや、動く! ヒデヨシ、この入り口から中に入ってみるのじゃ!」
「う、うん」
ぼくは恐る恐る、その機神に近づき、ぽっかりと空いた穴に入った。
肩に乗せたかーくんがキョロン、と大きな目を動かしている。
――シュン。
「うあっ、閉まった!? っていうかぼく浮いてるぅ!?」
穴が消えたとたん、ふわっと体が浮いた感じがした。少し経つと、お尻にふんわりしたものが当たる。
「ん、これ……イスかな?」
やがて目の前がふわっと明るくなって、外の景色が見えた。
――んだけど。
「たっけぇ!」
いつの間にか、ぼくは塔の上の方にいたみたいだ。
【……よっしゃ、いくで】
「かーくん!?」
【ワイの身体を出して、ワイと合体させるんや! 早く!】
「う、うん!」
ぼくはバッグにしまっていた、かーくんの身体を取り出した。それをかーくんに近づけると、磁石がくっつくみたいに、吸い付くように合体した。
赤い、ドーナツみたいだな、とぼくは思った。
【ヒデヨシ、いくで。ワイの全力で、この超機神を生き返らせてみせる!】
「え、え!?」
かーくんがこの、タイ・ヨーノ・トーを生き返らせる!?
びっくりしてると、かーくんがぼくに言った。
【来たで、帝国や! はよ命令してんか!】
「えっ、もう来ちゃったの!?」
――えーい、もう、悩んでてもしょうがない!
「行くよかーくん! タイ・ヨーノ・トー起動!」
【了解! おっしゃ、いくでええええっ!!】
かーくんがバッグの中から飛び出した。そのままぼくの後ろの方に回り、どこかに消える。
少しすると、塔の下の方からズウウウン、と地響きみたいな音が聞こえてきた。
カーニィが動いた時より、もっと低くて重たい感じの音。
【いのちの輝き、フル稼働。エネルギー30パーセントからいくでっ!」
操縦席がぐらり、とゆれる。
ぼくにはすぐにわかった。
塔が立ち上がったんだ。
翼みたいなのから腕が出てくるのが分かる。地面に埋もれていた脚が伸びて、立ち上がろうとしてる。
「……動いた」
すっげぇ。
とんでもないパワーが、中をかけめぐってるのが分かる。
ふと、足元を見てみると、びっくりして口がぽかんと開いたままの、仙人様とハルカスの姿が見えた。
【仙人様ー! 動いたよー!】
「おお、おおお……!」
「ヒデヨシー!」
【ハルカス! 危ないから、仙人様と一緒に隠れてて!】
――よおし。
いっちょ、やりますか!!





