第10話「城の超機神あらわる」
【この辺りなんやけどなぁ】
女王様から馬車を借りて半日。
僕らは塔の超機神のある湖、カラスマ湖にやってきていた。
ここに来るまでの道は、びっくりするくらい平和だった。
おかげでぼくたちは、ゆっくりと景色を眺めながら、たのしくおしゃべりをして過ごした。
カラスマ湖はドーナツ型の湖で、真ん中には小島がぽっかりと浮かんでる。
塔の超機神はその小島に半分埋もれるみたいにして建っていた。
かーくんが言うには、あの小島には湖の下にある通路から行けるみたいなんだけど、その入り口が中々見つからないらしい。
ていうか、半分埋まっててこんなにでっかいの?
「んー……あ、ここじゃない?」
「ん、おお、ここじゃここじゃ、よう見つけたのぅ」
一緒に探してくれてたハルカスと仙人様が、ゴツゴツした岩場で、そこだけ変にノッペリした平たいところを見つけた。
それをみたかーくんがぴょこぴょこと跳ねる。
【どれどれ……おお、せやせや、ここが入り口や! ヒデヨシ、ワイの身体のスペア、持ってきてるな?】
「うん、バッグにしまってあるよ」
「……ほう、ここから入るのか」
「!」
不意に声がした方を見ると、そこには帝国兵がいた。
「な、なんでここに!?」
「ふん。魔法生物の生体反応を検索するくらい、我々にはたやすいことだ」
【くっ……】
「さて、我々を連れていってもらおうか。“塔の超機神”にな」
帝国兵はそう言って、手を大きく上にあげた。
急に周りの森の木がざわざわと、強い風に吹かれたみたいに揺れはじめる。
木に止まってた鳥たちがバサバサと飛んでいき、バキバキバキッと木が折れる音が聞こえてきた。
そして、森の向こう側には、とんでもなく大きな機神の姿が見えた。
――なんか、時代劇のお城みたいだ。
「なにあれ!」
ハルカスが叫ぶ。
「あれは……」
そう言って仙人様が口をあんぐりと開けている。
そして、かーくんがぼそっとつぶやいた。
【……城の超機神】
「あ、あれが……」
思ってたよりもずっとでっかい。
本物のお城に手足が生えてるみたいだ。屋根の瓦が、侍の鎧みたいについている。
ぼくは一瞬、
「かっこいい……」
と言ってしまった。
【見とれてる場合とちゃう! アレに乗ってるのはノブシゲやで!】
「そうだ! ノブシゲ兄ちゃん!」
「……ノブシゲ殿は、我々に協力してくれている。ヒデヨシ、大人しくこちらにこい」
「ヒデヨシ!」
「……行かない」
「何?」
「行かない! いきなり襲ってきて、兄ちゃんに嘘ついて戦わせるような国、信じられるわけない!」
【ヒデヨシ……よぉし、よく言った!】
「帝国の。お前さんがこのタイミングで姿を現したということは、ヒデヨシが超機神に乗る前に捕まえて、洗脳してから自分達の兵士に仕立て上げようとしとるんじゃろ。じゃが、残念だったな」
仙人様が、ぼくの前に出て言った。
小さいしもうおばあちゃんなのに、その姿はすごく大きくて、かっこよかった。
「ヒデヨシはオーサカ国の大事な客人じゃ! 貴様らなぞに渡すものか!!」
「貴様……」
【ヒデヨシ! ワイと一緒にその壁の前に立つんや!】
「う、うん!」
かーくんを肩に乗せ、ぼくは壁の前に立った。
「これでいい?」
【上等や。そんで、その真ん中へんにあるくぼみ、そこにワイをはめ込むんや】
「待てっ! 勝手なことは許さん!」
「人の国で勝手してるのはお前さんらの方じゃ! 急ぐんじゃ、そこから塔の超機神まではすぐじゃ!」
「はいっ!」
壁のくぼみにかーくんをはめ込む。するとかーくんはスゥっと壁に消え、次の瞬間、壁が青白く光り出した。
「それ、その光に入るんじゃ! ハルカスも!」
「わかった! 仙人様も!」
「行かせぬ! ……なんだ、動けん!!」
ぼくの後ろで帝国兵が騒いでる。
「いいざまじゃ。いい気になって無駄にしゃべってる間に、ワシが呪縛の呪文をかけておいたんじゃよ」
「すっごい、仙人様!」
「とはいえかかってる時間は少ないぞ! 早く中へ入るんじゃ!」
「わかった!」
動けない帝国兵を置いて、ぼくらは光の中に飛び込んだ。
「うわ……」
中はまるで、高速道路のトンネルみたいだった。
天井が薄く光ってる。
ぼくたちが入ってきた光の扉は、もうすっかり消えていた。
【よっしゃ、みんな来たな。いくでっ!】
いつの間にかぼくの肩に乗っていたかーくんが叫ぶ。
それを合図に、ぼくたちはトンネルの中を走り出した。





