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45.聖地⑥

「私が勇者パーティに……?」


「貴女以上の適任はいない。私はそう思っています」


 ライナはきっぱりと断言した。

 まっすぐな瞳で正面からマーリンを見据えて、真剣な表情で詰め寄る。その勢いにやや気圧されながら、マーリンは困ったように眉尻を下げた。


「私はタダの復讐者です。勇者パーティなどという名誉あるものに参加できるような立場ではありません」


「本当にそうでしょうか、それは貴女がそう思いたいだけなのではないですか?」


「それは……」


「貴女がどのような意志で魔族と戦っていたのか、それは多くの人達は知らないことです。しかし、貴女に救われて、守られてきた者は大勢います。貴女はご自分がそう思っている以上に多くの人から感謝されているのですよ?」


「…………」


 口を開いて反論をしかけて、やっぱりやめた。マーリンはライナのまっすぐな瞳から目を逸らして、睫毛を伏せた。

 ライナはそんなマーリンを痛ましそうに見やり、語調を緩めて言い含めるように言葉をかける。


「おそらくですが、メアリー・カーティスが魔族と取引をして貴女を追放したのは、ロクサルト王国を陰から乗っ取る謀りごとであったのではないかと、私は思っています。勇者パーティに参加して最終的に魔王を討伐することは、貴女の復讐の一つの決着点になるのではないでしょうか?」


「…………」


「マリアンヌ……」


 顔をうつむけてしまったマーリンをいたわり、フュルフールが背後から肩を抱く。

 マーリンは復讐の道を選び、故郷や家族と決別をした。魔族に乗っ取られたとはいえ、実の妹を雷で打ち抜いた。

 マーリンにとって魔族との戦いは名誉あるものであってはならない。目的や見返りを求めてはならない。安らかな終わりなど求めてはならない。必要以上にそう言い聞かせてきた。


(私は復讐の果てに倒れて、血と泥にまみれて死んでいかなければならない。それが魔女になることを選んだ私の末路……)


「マーリン様」


 暗雲とした考えに陥りかけるマーリンへと、幼い司祭は柔らかな笑みを向ける。


「貴女が思っているほど、誰も貴女を汚れた存在とは思っていません。罪を犯したとは思っていません。不幸になるべきだとは思っていません。間違っているとは思っていません。だから……もう一度だけ、ご自分の身の振り方について考えてみてはどうでしょうか?」


「そう、ですね……」


 マーリンはようやく口を開き、ぽつりと返した。


「考えてみます。考えて、それからきちんと答えを出します」


 それだけ答えて、マーリンはフュルフールを引き連れて教皇府を後にした。


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