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44.聖地⑤

「神秘の力……天使の力ですか?」


「はい、アラムエル」


「うむ……『天使の円環』」


 ライナの背後の天使が手をかざすと、光の円環が広がってライナとマーリンを囲い込んだ。虹色に輝く光の粒子が二人の周囲をゆっくりと回転していく。


「これは……」


「邪悪な者の視線を遠ざける呪いです。これを使えば魔族の目に見つかることなく、魔族の懐へと入り込むことができるでしょう」


「ふんっ! 天使の呪いか、我ら上級悪魔にとっては児戯のようなものだな!」


「む……貴様に通用せずとも、魔族に効けば十分だ!」


 馬鹿にするように鼻を鳴らすフュルフールを、アラムエルが不機嫌そうに睨みつける。

 天使と悪魔は別に敵対関係にはないと聞いていたが、こうして険悪な態度をとっているところを見るとやはり良好な関係ではないのかもしれない。


「もちろん、補給の問題もありますので一直線に魔王の城へとはいきません。少数精鋭で魔族に占領された都市に襲撃を仕掛けて敵の指揮系統を破壊し、そこを後詰めの軍隊が制圧する。それを繰り返して防衛ラインを北側まで押し上げることが主たる目的となります」


「なるほど、話は分かりました。しかし……それでも数十、数百の魔族を同時に相手にすることは変わりありません。それを打ち破る少数精鋭とはいったい……」


「一人は私ですね。それと見つかったばかりの『聖剣』の保有者がいます」


「聖剣?」


 マーリンは子供の頃に読んだ英雄譚を頭に浮かべる。

 岩山に刺さった聖なる剣を引き抜いた勇者が、悪いドラゴンをやっつけて囚われのお姫様を救い出すという子供向けの絵本である。


「聖剣、聖槍、聖杯……ユートピアに伝わる三種の神器です。聖杯は私が、聖槍はテンプルナイトの騎士団長が保有者として選ばれていたのですが、聖剣だけは長らく誰にも使うことができずに死蔵されていたのですよ。先日、ようやくその担い手を見つけることができたため、反撃の狼煙を上げることになったというわけです」


「それはそれは……さぞやお強いのでしょうね、そのお方は」


 マーリンは絵本に出てくる王子様のような人物を思い浮かべて、ムッと顔をしかめた。『王子』と言うとついついレイフェルトのことをイメージしてしまう。


「まだまだ粗削りではありますが、かなり強くなりそうでしょう。この旅の途上で実戦経験を積んでいけば、きっとその刃は魔王にだって届くと信じています」


 ライナは自信満々に胸を張った。目の前の大司祭がそこまで言うのであれば、きっとそうなのだろう。

 聖剣を手にした勇者が魔王を討ち果たして世界を救う。そんな英雄譚がこの世界に新たに紡がれることになるだろう。


「お話は分かりました……ところで、どうして私にそんな話をするのでしょうか?」


「はい、ここからが本題なのですが……『雷霆の魔女』マーリン様。どうか魔族討伐部隊、通称『勇者パーティ』に参加してはいただけないでしょうか」


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