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38.ギルド②

「断っておいてください」


 一瞬の迷いもなく、マーリンは断言した。


「いいんですか? きっと褒美もたくさんもらえると思うんですけど……」


 あまりにもつれない態度のマーリンに、受付嬢は上目遣いで尋ねた。

 マーリンは傭兵ギルドから報酬を受け取っているが、その金額が彼女の働きに釣り合っているとは受付嬢も思ってはいなかった。


 マーリンが傭兵ギルドに登録してから半年がたつが、その活躍ぶりはまさしく獅子奮迅。飛ぶ鳥どころか、ドラゴンさえ撃ち落とすような勢いであった。


 卓越した魔法使いであるマーリンは、それこそ魔族の一軍をたった一人で潰せるほどの戦力を有している。

 にもかかわらず、受け取っている報酬は他の傭兵達と変わらないものである。

 どこかの国に仕官するか、ギルドを通さずに王族や貴族から直接依頼を受ければ、間違いなく城が立つほどの金銀を稼ぐことが出来るはず。

 ギルドの職員としてはそんなことを考えるべきではないのだが、顔見知りの受付嬢としてはマーリンが正当に評価されていない気がして、申し訳なく思っていた。


「いいんですよ、報酬なんておまけのようなものですから」


 マーリンは肩をすくめて、言い捨てる。

 貴族社会で生きてきて、そこから追放されたマーリンにとって、貴族や王族と関わることはできるだけ避けたいことであった。


「そうですか……マーリンさんがそうおっしゃるなら構いませんけど」


 受付嬢は明らかに納得がいかないという表情をしていたが、相手の事情に深入りをするのは傭兵にとって御法度である。

 それ以上は追究することなく、マーリンの意思を尊重する。


「次の仕事は何かありますか? もちろん、魔族関連で」


「そうですね……砦や要塞の警備兵の募集、要人の護衛、盗賊になった魔族の敗残兵の討伐。色々とありますけど……あれ?」


「どうかしましたか?」


「ええっと……すいません、マーリンさんに指名依頼が入っているのを見逃していました」


「指名依頼? 魔族がらみですか?」


 この半年で、魔女マーリンの名前は大陸北方に知れ渡っており、『魔族の天敵』などと呼ばれるようになっている。

 指名される依頼といえば、たいていは魔族の討伐などなのだが……


「いえ、護衛依頼といいますか……とある人物へ面会するだけという依頼ですね」


「面会……ひょっとして、貴族や王族ですか?」


 いっこうに権力者と会おうとしないマーリンに業を煮やし、指名依頼という形で自分を呼び出そうとしているのかもしれない。

 そんなふうに予想したマーリンであったが、依頼者は彼女の知った人物であった。


「いえ、聖地ユートピアの大司祭であるライナ・ライト様です」


いつも応援ありがとうございます!

本作とは別に『賢者から怪盗に転職しました』を投稿しています。こちらもよろしくお願いします!

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