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天を掴む手と地を探る手  作者: 結城 哲二
番外編
457/457

10

 こうして、次男レイウッドとフェルミナとの婚約はなされた。レイウッドが学生ということやエルフレッドの状態等を考えて、実際にライジングサンへと渡るのは、二十歳を目安にすることで話もついた。


「エル兄様・・・」


「フェルミナ様。このような姿で申し訳ありません。レイウッドとのことはリュシカより聞きました。心より歓迎と感謝を申し上げます」


 フェルミナから漢方を届ける際に挨拶がしたいと申し出があり、エルフレッドは客間へと向かった。


 彼女からは身体に触るならば、ベッドの上からでも構わないと言われていたが、女王陛下となった彼女を迎えるのに流石にそれは申し訳無いと断った形である。


「あまり御無理はなさらないで下さい。そのように痩せられてしまっては動くのも辛いことでしょう」


「いえ、最近はフェルミナ様の領地から頂いている漢方のお陰で、杖をついてではありますが歩くことが出来るようになりました。未だ魔力の存在は感じられませんが、感謝しています」


 そう言って微笑むエルフレッドは全盛期に比べれば、二周りは小さくなっているようだった。伝わってくる感情は穏やかながら、未来というものを一切感じられない、正しく諦めているものである。


「そう・・・ですか。私もレイウッド様の婚約者として出来る限りの協力をさせて頂きますからーー希望を捨てないで」


「・・・ありがとうございます。フェルミナ様」


 短い挨拶となった。咳込むエルフレッドは申し訳無さそうに謝罪して、杖を突きながら部屋を出ていた。


 連れそうリュシカが抱く愛情と希望に対して、エルフレッドが感じている穏やかな悟りは、恐らく相反する感情だと言える。


 もし、レイウッドがそうなった時、私は彼女のように彼を支えることが出来るのだろうか?とフェルミナは思う。


「リュシカお姉様はずっとこんな気持ちでエル兄様の側に居たのですね」


 彼女と同じように支えることが出来るか、と問われれば解らないと言える。だからこそ、なるべく死地から遠ざけ、穏やかに過ごせるような環境作りが必要だとフェルミナは考えた。


 多くの人々がパートナーの不幸に立ち会わなくても良くなるような領地作りーーそれが、自分に課せられた使命であるとこの日、彼女は決意するのだった。





 その後、エルフレッドの容態は僅かながらに回復し続け、一時は剣を握れる程になった。しかし、それは英雄エルフレッドが、剣を握らなくてはならなくなることを暗に示しているようだった。


 平和になった世の中、変わらぬ結末ーー彼の最後の戦いは誰の為に行われたのだろうか・・・。

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