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天を掴む手と地を探る手  作者: 結城 哲二
第六章 常闇の巨龍 編(下)
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「あん時はマジでビビりましたよ?突然、エキドナと連絡が取れなくなったかと思えばSOS信号飛んでくるし、しかも場所はメルトニアさんの家ーー本当に何が起きたんだって皆で大慌てでしたからね?エルフレッドやジャノバさんにも迷惑掛けたし」


 コーディが呆れたような表情で言えば「だって気になったんだも〜ん。魔力循環の強化って内臓にも作用するのかなって〜」となんでもないことの様に言うのであった。


 彼はそんなメルトニアの様子に半笑いを浮かべながら「気になったって......エキドナがメルトニア姐さんに相談した私が馬鹿だったって言わなければ拉致、監禁ですよ?睡眠薬まで盛ってるし......」と頬を引き攣らせた。


 メルトニアは顎下に人差し指をつけて天を眺めると「う〜ん。まあ、可能性が出て来たら辞められないし〜?それに内臓系はもうしないけどね〜。最近別の可能性を思いついたからさ〜」と微笑んだ。


「新しい......可能性?」


 愕然としながらも怯えたような表情を浮かべたエキドナに「そうそう〜。エルフレッド君とかさ〜身体強化の時、神経の隅々まで魔力を行き渡らせるんだよね〜、もしかしてそれじゃかいなって」とメルトニアは首を傾げた後に瞳を輝かせる。


「コーディ。最悪、手出されても文句言わないから一緒に寝てくれない?あの時みたいな悪寒を感じてるんだけど......」


 あんな目に合うくらいなら、そっちの方が一億倍マシとコーディの後ろに隠れようとしているエキドナに「あれの一億倍マシと言われても全然嬉しくねぇ上に凄く侮辱されてる気がするな」とコーディは顔を顰めた。


「まあいいや〜、一応ギルド主体らしいから〜、ちゃっちゃか行こう〜。エドガー君に何か言われるの面倒だし〜夜はダーリンに会うし〜?」


「......六十の癖に十八捕まえて何がダーリンだっての......」


「ん?何か言った〜?モルモットちゃん〜?」


「イヤー‼何も言ってないです‼何も言ってないからモルモットは勘弁して下さい‼メルトニア姐さん‼」


「ハァ、全くこのメンバーで大丈夫なんだろうかねぇ〜」


 やれやれと肩を竦めるコーディには明らかなる苦労人の相が浮かんでいた。「神経系の魔法薬で伝達止めたら〜、一般的な体になったりして〜」と顎下に人差し指を置いて思考するメルトニアの前で「イヤー‼明らかにヤバイ奴‼ってあれ?それって上手く行ったら死ねるんじゃない?不慮の事故だし......」と真面目に検討し始めたエキドナ。


 それを眺めながら、ああ全くやれやれだぜ......と溜息を吐きながら十字を切るコーディだった。













○●○●













 ギルド、SWDの部隊による小国列島の探索が行われている頃。エルフレッドは週末を利用してフーリ活火山研究所を訪れていた。旧文明時代の神話に出て来る存在との戦いを考えて更なる装備品の強化を考えていたところ、育休を終えて義両親の協力の元、所長職へと復帰を果たしたグレンから連絡が入ったというわけだ。


 相談の結果、倒してきた巨龍の素材を使えばより強化出来るかもしれないとのことで自身が所有している巨龍から剥いだ素材を持って早速転移したところである。


 到着して早々所長室へと向かったエルフレッドは心無しかふっくらとし健康的な顔色になったグレン所長と握手を交わした。


「いやぁ、久しぶりだね!エルフレッド君!君の活躍は聞いているよ!ガルブレイオスを倒した頃から二年ちょっとで七大巨龍討伐まで後一体だなんて、もう生ける伝説みたいなもんだよ!本当に大したものだね!全く!」


 エルフレッドは微笑みながら「本当にお久しぶりです。その節や大剣強化の際は本当にお世話になりました。と言いますか結果だけを見れば後一体ですが、何度生死を彷徨ったことか......生ける伝説なんて恥ずかしい限りです」と頭を掻けば「いやいや、七大巨龍を六体も倒して五体満足なら十分過ぎると思うけどね!そういうところは本当に変わらないね!」と呆れながらも楽しげに笑うのだった。


「それにしても復帰おめでとうございます。育児が一段落ついたと言うことですか?」


「いや、それが全く!だから、割と時短勤務とかは利用させて貰ってるよ!福利厚生は本当に力を入れてる部分でもあるし、所長自ら率先して使ってみせるのが浸透させるのに一番効率が良いだろう?もうフル活用して下に姿を示してるところさ!」


 冗談めかして告げながら肩を竦めるグレンに「上に立つ者として真に素晴らしい姿勢かと......尊敬します」と笑えば「とまあ、ここまでは半分建前でね!鴉鳥族の育児は大変過ぎるから福利厚生でも何でも使わないとやってられないのさ!いやぁ、もう本当に義両親に感謝だよ!全く!」と笑顔ながら溜め息を混じらせるのだった。


「一人っ子な上に従兄弟も特にいないので育児のいの字も解らない自分には検討もつきませんが、世のお母様方は凄いなとは感じておりますよ?」


「ハハハ!そうかい!まっ、手が掛かる頃は特に旦那さんも育児に参加すると良いさ!家は子煩悩だから、そこも助かってるよ!というかうちの子は私似で何にでも興味を示すんだけどね!翼があるから、もう目を離すと飛んでいっちゃうだよ!だから、義両親や旦那が見とかないともう本当に危ない!だから、本当に感謝って感じだね!」


「それは本当に大変ですね。一歳そこそこで空まで飛ぶんですか?」


「流石に高くは飛べないけどね!稀に私が届かないところまで飛んで行ってしまうから、そこからは旦那や義両親の領分さ!親族仲良好で良かった良かった!協力が得られなかったらと思うとゾッとするよ!」


 元の育児の大変さに加えて鳥獣人特有の大変さがあると考えると福利厚生をしっかり使わねば無理というのも頷けた。周りが協力的で良かったという言葉も本心からなのだろう。自身も早ければ再来年には見えてくる話である。不思議に思えども今の問題が一段落したら勉強しておこうと思うエルフレッドだった。


「さてさて、そろそろ本題に入ろうじゃないか!といっても直ぐに強化に入ろうって話じゃないよ!先ずは手に入れた巨龍達の素材をこちらで分析させてもらって使える物を選別!その後に大剣との相性を見ながら強化という流れだね!全部の行程で約一ヶ月!大剣を預かるのは一週間程ってところかな!」


 大体、初夏から夏に掛けてくらいかと算段を立てて「全く問題ありません。何時もありがとうございます」とエルフレッドが頭を下げるとグレンは「いやいや!私等はあくまでもwin-winの関係じゃないか!最終的にはギルドや世界政府以外だと七大巨龍全ての何らかの部位のサンプルを持つ唯一の研究所になる訳だからね!冗談抜きで千年は安泰だよ!この研究所!」と御満悦な様子である。


「それなら良かったです。では後程、部位については研究室の方に広げておきますのでよろしくお願いします」


「ああ、任せ給え!最近じゃあ世界政府研究所を蹴ってまでこの研究所に入るような超エリートな新人も居てね!戦力は充実も充実してるからね!君の期待を超えるような大剣に仕上げて見せようじゃないか!」


 出されたお茶を飲んで再度、よろしくお願いしますと頭を下げたエルフレッドへと不敵な笑顔を見せながら頷くグレン所長であった。

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