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天を掴む手と地を探る手  作者: 結城 哲二
第六章 常闇の巨龍 編(下)
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何時もありがとうございます。

筆者、花粉症で目を痛めているため、更新ペースが落ちてしまい、読者の皆様には大変ご迷惑をおかけしております。

申し訳ありません。

出来る限り書けるよう努力しますのでよろしくおねがい致します。

 様々な手が尽くされている事もあってレーベンの状態は通常の昏睡、植物状態に比べて状態は良い。特に公にはされていないがアーニャの頼みもあってシラユキが文字通り手を打って、出来る限り状態を回復させていることが大きな要因だ。


 しかし、神とは言えどあくまでも半神ーー痩せ細り、衰えていっている部分を完璧に戻せる訳ではない。そして、実際にレーベンがどういう状態であるかなどは本人が起きてからでないと解らないのだ。


「妾はレーベン様が起きてくれればそれで良いミャ。例え、妾を忘れていたとしてもずっと側にいるつもりニャ。でも、レーベン様が王太子として活動出来ないと判断されたら......」


 後遺症を恐れるのはアーニャが不便だからではない。アーニャはレーベンがどんな状態であっても側に居続けるだろう。そして、それを辛いと思うこともない。寧ろ、今までを思えばそれだけで幸せである。


 だが、あまりにも後遺症が酷く王太子としての責務を果たせないと判断されれば、それさえも許されなくなってしまう可能性がある。無論、それを阻止するためにアーニャは倫理的に許されないだろう事に手を染めている訳だが不安が全く無いわけではなかった。


「どう言えば良いのかは難しいが私の両親含む三大公爵家の当主の方々はレーベン王太子殿下が王太子であることを望んでいると聞いている。だから、そう不安に思う必要は無い」


 彼女が何処となく気まずそうな表情を浮かべているのはレーベンが王太子であることを望んでいる。という言葉の前に"良くも悪くも"とつくところにあるのだろう。それは無論、傀儡にしようなどといった直接的な部分ではなく、今の状況で嫡男を王太子として取られることは遠慮したいといった話である。


 アーニャとて当然理解しているし、王妃にも似たようなことを言われた。それにアーニャとしては百%善意だと言われるよりも余程信用出来ると話である。


「三大公爵家の方々は皆、素晴らしい人ばかりミャ。そして、貴族としても優れているのニャア。善意ばかりで家は回らないものミャ。だから、そんな微妙な顔をする必要ないミャ」


 そういうものだろうか、と気難しい表情を浮かべているのリュシカを見て、アーニャはウズウズしている様子で尻尾を動かしーー。


「それにしても大貴族のご令嬢でこんな毒気がない娘が育つものかミャ?妾はそっちの方が不思議ミャ♪どれどれ、妾が確かめてやるニャア♪うりうり〜」


「ちょっと、あ、こらアーニャ‼も、もう‼からかわないでっ‼」


 唐突にわちゃわちゃとし始めたアーニャに狼狽えるリュシカーーそんな二人を見ながら周りは微笑まし気な表情を浮かべた。


「エルフレッド〜」


「ありゃりゃ、未来の旦那様のところに逃げられちゃったミャ。もう少し堪能したかったんだけどミャア」


 全く残念そうには見えない戯けた表情で笑うアーニャ。エルフレッドはリュシカを慰めるようにぽんぽんと優しく頭を撫でながらも「相変わらず仲が良さそうで何よりだ」と微笑んだ。


「ま、妾とリュシカは長い付き合いだからミャ。あまりに仲良しで嫉妬したんじゃないかニャア?」


「そうだな。まあ、安心半分ってだな」


「ーー相変わらず、というか余裕が大分戻ってきたようミャ。妾も安心したミャ」


 温くなり飲みやすくなったココアを楽しみながらアーニャは心底、安心したように表情を緩める。エルフレッドは「未来の奥様のお陰だろうな」と愛おしげにリュシカの肩を抱いた。


 リュシカは少し驚いた表情を浮かべたが嬉しそうにニヘラと笑った。


「ふふ、そちらこそ相変わらず仲良しそうで何よりミャ。さて、妾も未来の旦那様の様子でも見に行こうかニャア」


 晴々とした表情で背伸びをして「妾はお先に失礼するミャ。皆はごゆっくり楽しむのミャア」とアーニャは席を立った。


「あ、今日は妾もアーニャに着いていくぅ‼お母様から頼まれた件があったの忘れてたぁ‼」


 慌てた様子で立ち上がり、ルーミャはアーニャを追って走っていった。そんなルーミャに苦笑しながら皆は顔を見合わせた。


「さて、僕等はどうしようかな?」


 ノノワールと幸せ家族計画について議論を交わしていたアルベルトが飲み終わったコーヒーをおいて皆に訊ねた。


「もう少しゆっくりしてからで良いんじゃないか?アルベルトも家に迎えば研究詰めになるんだろう?」


 コーヒーのお代わりを頼みながらエルフレッドが言えば「そうだね。じゃあ、お言葉に甘えて」と彼もコーヒーのお代りを頼んだ。


「じゃあ、私もいちごパフェお代り」


「......まだ食べるの?イムジャンヌさん、体に闇魔法とか飼ってないよね?」


 冗談半分、本気半分で苦笑するアルベルトを見て「闇魔法飼うて‼闇魔法って何って話じゃん‼」とノノワールが爆笑した。和やかな時間が流れていく中で友人達との穏やかな時間を過ごして行く。


 エルフレッドがリュシカが望んだ光景が目の前に戻ってきつつある。そんな雰囲気を感じながら二人は顔を見合わせて、穏やかな笑みを浮かべるのだった。













○●○●













 SWDの部隊を率いてエドガーは小国列島の再捜索に当たっていた。相手は巨龍ウロボロス、そして、レディキラーである。元来、巨龍などはSWDの管轄外ではあるがギルドとの協力もあって共同捜索という形を取っていた。


「こっちは異常無しです、隊長。ーーって、お偉方は無茶なこと言いますよね?常闇の巨龍なんて万が一遭遇したら俺達じゃあどうしようも無いでしょ?」


 SWDにて参謀を勤める男が肩を竦めながら言った。作戦の立案や他協力機関との交渉などを行う役目を担いながら、実際に作戦開始ともなれば前線にも顔を出す。


 そもそもSWDにて作戦実行時に前線へと向かわない隊員は居ない。慢性的な人不足もあるが戦闘特化の部隊である。一隊員から隊長に至るまで誰一人として無駄な戦力は居ない。


「仕方ねぇわな。人的被害があったとして、巨龍ってのはテリトリーから出ないのが一般的だった。それが小国列島からアードヤードまで出没して、ギルド本部に大打撃を与えたんだ。しかも、配下にレディキラーの存在まであるってなれば俺達が出ねぇ訳には行かねぇ。ーーギルド本部の件は失態の尻拭いでもあるしな」


 方法は解らないがウロボロスがレディキラーを使ってギルド本部内で試験を受けていたヤルギス公爵令嬢を襲った。返り討ちにした上にギルド側は責任を問わないとしていたが、世界政府並びSWDにとっては面子に関わる問題だと捉えられた。


 自分等の尻は自分等で拭わなくてはならないとエドガーが立ち上がったという訳だ。


「それにこうは言っちゃ、なんだけどレディキラーはさておき、ウロボロスと戦うのはエルフレッドだ。あいつに任せないといけねぇのは友人として情けねえ限りだが俺達からしてみりゃあ捜索だけでも命懸けの相手だ。礼を弾むぐらいしか出来ねぇわな」


「竜殺しの英雄様ねぇ。そんな大物と友人だなんて、私しゃあ隊長が羨ましいよ。一回会ってみたいねぇ」


 そう言って笑うのはSWDにて副隊長を勤める三十手前の女性である。女性隊員の息が短いとされるSWDにて初めて副隊長まで上り詰めた彼女は、レディキラーに姉の人生を破壊された被害者でもあった。


 女性の参加はSランクでも危ぶまれるとされるレディキラーの捜索に復讐心から参加している彼女に、エドガーは友人として少々心配していた。

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