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天を掴む手と地を探る手  作者: 結城 哲二
第五章 天空の巨龍 編(中)
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「プフフフ〜♪怒られてやんの〜♪だから、言ったじゃん♪学級委員長〜♪」


「......うん。伝え方が悪かったみたい。初めからエルフレッド君みたいにその代りの特権があるってことを詳しく伝えておけばよかったんだろうけど......はぁ。あそこまで怒るとは思わなかった......」


 学園に向かう途中、揶揄うノノワールに纏わり付かれているアルベルトを見つけたエルフレッドは苦笑ながらに「その反応を見るにメルトニアさんの反応はよくなかったみたいだな?」と心配げな表情を見せる。


「そうなんだよ。ちょっと、説明の仕方というか順序が良くなくて、私より学園祭を優先してるって思われちゃったんだ。まあ、ちゃんと説明した上で埋め合わせのデートまで作って何とか許してもらったってところだね」


「ふむ。まあ、仕方ないといえば仕方ないな。自分が蔑ろにされていると思えば良い気はしないからな。私も昨日の時点でエルフレッドがどういう考えか解らなかったら、少し不満を抱いていたかもしれん」


 当然、エルフレッドと一緒に登校しているリュシカが腕を組みながら言う。思いも寄らぬ言葉に内心驚いたエルフレッドだったが、何かをいえば完全に藪蛇なので胸中に仕舞っておくに留めた。


「エルちんってそういうところ上手いよね〜♪普段は冷静過ぎて何考えてるか解らない所あるのに婚約者の前では激甘ベタ甘だし、ちゃんとお前の事を考えてるぞ?感が半端ないっていうかさ♪てか、実際に今では優先順位No.1ってリューちゃんでしょ?なんかそういうのが普段の行動で解るから安心感あるんだよね〜♪」


 確かに以前のように世界最強が優先順位の最上位であることはなくなった。巨龍退治に関しては目標であると同時に義務であるから行なっている部分が強い。特にアルドゼイレンなどは倒すと決めた決意とは裏腹に仲良くなるにつれて納得出来る理由が欲しいという気持ちはより強くなっている。逆に常闇の巨龍などはこう言っては語弊も多少あるがエルフレッド最大の弱点であるリュシカを狙われる可能性が高く、彼女の安全を第一に考えた時にも最優先で倒したい巨龍なのだ。


 要はそこまでの重きは無くなったということだ。勿論、だからといって中途半端に辞めれば後悔する上に自身の夢を諦めた負け犬のような感情が付き纏うであろう事は想像に難くないのだがーー。


「それはそうだろうな。別に自分を蔑む訳ではないが自身には過ぎた存在を嫁に貰うわけだ。恋愛感情も伴っているし、大事にしたいという気持ちは強い。こういうことを言うのは恥ずかしいという気持ちは当然持っているが俺達はなるべく言葉にして伝え合うことで安心するように努めている。どういうやり方が正解かは人それぞれだが、まあ、俺達には合っているのだろうな」


 たまに直球過ぎて羞恥に悶える事があるがそれも別に悪感情からのものではない。お互いを大切に思い、尊重し、それを言語化している。それだけの事であるし、それ以上もないのだ。察することも当然大事ではあるが言葉にしなくては伝わらないものは伝わらないのである。


「うっは〜......こりゃあ、ブラックコーヒー必須だね♪アル、メルトニア様も二人の時は中々だと思ったけどエルちん、リューちゃんは稀にとんでもない甘々な塊をポイッしてくる♪うん、アルも見習ったら良いよ♪」


 その場面を見たことがないので心の中で自称・恋愛経験豊富までランクダウンさせたノノワールが言った。アルベルトは「確かにね。人それぞれってフォローは有難いけど、今回の件で流石に身に沁みたって感じはある」と肩を竦めて溜息を漏らすのであった。


「ニャハハ♪アルベルトが辛気臭い顔してると思ったらメルトニアさんとなんかやらかしたミャ♪御愁傷様ミャア〜♪」


 朝から何だか浮き浮き浮かれているアーニャが追いつき早々に早速、アルベルトに喰いついた。今日は一日弄られそう......と肩を落とすアルベルトの横でノノワールが事情を説明ーーアーニャは「あちゃ〜、まさしく男女のあれミャ」とテンション高めにおでこを打った。


「それは残念だったミャ♪きっと、これから喧嘩する度に学園祭の時だって私のこと考えてなかった‼︎って言われるヤツミャ」


「うーん、やっぱりそうなるかなぁ......一応、説明とデートで納得してもらったし埋め合わせは済んだと思ってるけど......」


 アーニャは「チッチッチッ、甘いニャア♪蜂蜜より♪」と人差し指を振りーー。


「男性の場合は何かをするとチャラになるミャ。でも女性の場合は減点法だから加点されることはないミャ。埋め合わせの評価はそれ以上、マイナスにならないだけでプラスじゃないのニャア。それに女性の中では嫌な部分は特にピックアップされて記憶に残り続けるミャ。男性のように昔の事にはならないのニャア♪まあ、要するにそのマイナスは一生マイナスで言われ続けるから、身に覚えがなくなるくらい忘れても甘んじて受け入れるほかないのミャア♪」


「......なるほどね。そりゃあ世の人々が男女は別の生き物だ。なんてまことしやかに言う訳だ。ありがとう。勉強になったよ」


 そう言って苦笑し再度、肩を竦めたアルベルト。


「そういうことミャ♪まあ、素直な事は点数高いと思うニャア♪」


 と何から目線なのか満面の笑みでアルベルトの肩をバシバシと叩くアーニャだった。


「それにしてもアーニャ。今日は何だか機嫌が良いではないか?寧ろ、浮かれていると言っても過言では無い程だ。何か良いことがあったのか?」


 不思議に思いながらも嬉しそうに訊ねるリュシカに「ニャハハ♪解るミャ♪まだ詳しくは言えないけど婚約式で良いことが有りそうミャ♪最高に楽しみなのミャ♪」と笑うのである。


「婚約式......えっ!?まさかーー」


 頬を赤らめ瞳をキラキラと輝かせる彼女を他所にアーニャはフンスと胸を張った。


「漸く妾の発明が世に公表されるミャ!!いやぁ、本当に長かったミャア♪万感の思いミャア〜♪」


「......なんだ。そういうことか」


 あからさまにガッカリした様子のリュシカを見てアーニャは「んニャ?」と一瞬キョトンとした表情を浮かべたがあ〜、と合点がいった表情になりーー。


「リュシカは本当に恋愛体質系女子ミャ。呆れる程に恋バナ大好きミャア。本来なら妾とは相なれなさそうだけど、逆に遠すぎるからいいのかもしれないミャア」


 呆れながらもしみじみと頷いているアーニャに便乗してノノワールが「あっは〜♪リューちゃんは恋愛体質〜♪」とはや仕立てる。


「違っ!?ーーいや違わないけど!!だって婚約式で良いことって聞いたら、そういう系の話だと思うに決まっているではないか!!絶対に私だけでは無いはずだ!!」


 ムッとした様子でまくし立てるリュシカに「確かにリュシカだけじゃ無いだろうけど、リュシカに準ずるーーもしくはリュシカと話が合う人物には違いないニャア」とアーニャは楽しそうに笑うのである。


「そうだミャア......別に話題提供のつもりは一切無いけどミャア。別に関係が進んでない訳でもないのミャア。レーベン様は妾の何が良いのかは解らないけど......前向きに関係を進めようとしてくれているのニャア。妾もレーベン様に悪感情は一切無いからゆっくり関係を進めていけたら良いとは思っているミャア。どうなるかは解らないけどミャ?.......何だか、言ってて恥ずかしいミャア」


 照れ笑いを浮かべる彼女を見てリュシカは微笑んだ。なんだかんだ言って関係が進んでいるのは見て解るのだった。

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