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天を掴む手と地を探る手  作者: 結城 哲二
第四章 暴風の巨龍 編(下)
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「なるほどミャ。確かに本人曰く凡人のエルフレッドからすれば頭脳派の我々が協力することで何かが変わることに期待するのは当然の話ミャ♪存分に協力されてやるミャ♪」


「......言い方はあれだが協力は感謝する」


「ふっふーん♪大分煽り耐性下がってきたミャ♪これだからエルフレッド弄りは止められないミャ♪」


「んで、そうこう言ってる内にエルフレッドの部屋に到着ぅ!!ご飯作ってご飯♪」


「お前達双子は中々困ったヤツだな。無論作るが、先ずは話し合いだ。報酬とは労働に支払うものだからな?」


 双子の振る舞いに呆れ果てている彼に対して皆は苦笑を漏らした。


「まあ、お巫山戯はここまでにしてミャ。妾が思うに風の本質から逸脱しているわけではないと考えるミャ!まあ、エルフレッドの傲慢な風は謎だけどニャア」


「それにしても傲慢な風って悪い感じがするよね♪敵役っぽいっていうかさ♪」


「ハッ。そう言うお前は欲望の風とかだろ?欲望の為なら友人にも手を出すものな?」


「うるさい!マジでうるさい!そんな痛いとこついて楽しいの!?気持ちいいの!?」


「......最初にいらん事を言ったのはノノワールだろうに」


 ああん!?と喰ってかかるノノワールにエルフレッドは顔を顰めている。どうやら今日は虫の居所が悪いらしい。とはいえ、普段の彼が大人なだけで普通ならもっと早く怒ってそうだ。


「全く。普段赦されているからと調子に乗るからエルフレッドも怒るのだ。三人とも少しは反省しろ」


 見兼ねたリュシカが一喝するとちょっかいを掛けていた三人は少しバツが悪そうな表情をして謝るのだった。


「まあ、この話はここまでにして。アーニャは何故、風の本質から逸脱してないと考えたのだ?分子を操作するなどは雷属性から逸脱しているように感じるが?」


 リュシカの問いかけに対して得意気な表情を浮かべた彼女は耳をピコピコと動かしながらーー。


「もし直接的に分子を動かしているならば確かに違う属性と言っても過言ではないミャ。だけど、実際は電磁波の振動を利用した操作ミャ。といことはより巧妙に電撃を使いこなしているだけで、属性が変化したという訳ではないのミャ!」


「なるほどな。確かにそう言われれば逸脱していないように思えるな」


 リュシカの行動のお陰で一早く何時も調子を取り戻した彼が腕を組みながら言った。完全に余談だが、ああいった状況の際にもしエルフレッドに気持ちを抑えるように言っていたとするならば彼は内心に大きな不信感を抱いただろう。


 何故怒って然るべきの状況で責められなくてはならないのか?多くの男性はそのように考えるのである。怒鳴りださないだけ我慢しているといった状況なのである。その辺り、良い悪いで判断したリュシカは非常に良い対応をしたと言えた。


 とまあ、余談はさておき彼も納得したように原理自体は実は雷属性の枠をはみ出していないことが解ると話は変わってくる。無論、分子を思いのままに操る電磁波の原理や調整などは神の領域と言っても過言ではないが、それが即ち別属性で無いとなれば風本来の性質からも外れていないのだろう。


「となると、やっぱり大気の精密操作ってところかな?そして、風が起きる原理まで考えると大気圧の操作まではいけると思う。気圧となると範囲が広すぎるから物によっては逸脱しそうだしね」


「そうだねぇ。まあ、結局はそこに戻ったって感じぃ?というか確定した!みたいなぁ?」


 答えが見えてきたと喜んでいる二人を尻目にイムジャンヌは首を傾げた。


「そうなると傲慢な風って結局なんなの?理解した瞬間に強くなっただけ?」


 結局、問題はそこだ。精密な大気の操作だけであるならば風魔法の本質を理解すれば良かっただけだ。しかし、アルドゼイレンは本人の性質を持つ属性に意味があると言っていた。


「解らないが、そこは今からでも解決していくしかないな。あまり期間は無いが致し方あるまい」


 少連休が終わり一ヶ月も経てば残り一ヶ月と少しで夏休みだ。そして、この時期に大きなイベントのないアードヤード王立学園では既に期末考査を残すのみである。


「まあ、みんな出来る限り協力するから頼ってよ!」


「そうそう♪今回はあんまり役に立てなかったけどさ♪同じ風属性として何か出来るかもしれないし♪」


「今回の件はきっと皆にお願いするだろうな。ありがとう。さて、俺はそろそろ料理でもするから皆は各々ゆっくりしてくれ」


 そして、キッチンへと入っていった彼を見送って皆は少し真剣に先の議題について話し始めた。それならばエルフレッドが居る時にすれば良いのだが何だかんだ彼の優しさに甘えてしまっている人物が何人かいるためにこういう形になってしまう仲間達であった。












○●○●













 そして、最後の偽装デートの日。


 いつも通り櫻の間に待ち合わせた二人はライジングサンでの行動を念入りに打ち合わせる。


「エルフレッドが頑張ったお陰でお母様も強行手段に出ることはなかったようミャ。それに徐々にエルフレッドとリュシカの方が仲が良く、妾も少し違うと思い始めた流れに持っていくことが出来ているのニャア。最後までどうなるかは解らないけども国同士の話し合いになるような事態は避けられると思うのミャ」


「そうか。その件に関しては本当に世話になったな。ありがとう」


「良いミャ。それにこれはどちらかと言えばリュシカの為であったミャ。妾はリュシカの親友ミャ。そして、これからもずっとそうしていたいミャ。だから、彼女が心から想っている相手を奪うなんてことは出来なかったのミャア。だから、こちらこそありがとうミャア」


 嫋やかに微笑んだ後、頭を下げてきた彼女に彼は「何だか、申し訳ない気分になる感謝だ」と頬を掻きながらはにかんだ。


「避けられないのは、そなたとお母様の接触ミャ。どうにか巨龍討伐をしてからにして欲しかったけど巨龍討伐について直々に教えると言われているなら、そこはどうしようもないミャ。だから、極力答えを巨龍退治後に引き伸ばして貰って妾と共に謝れる環境を作ることが最優先だろうニャア」


「そこは無理強いは出来ん。本来は俺だけで謝るのが筋だと思っているから無理に来る必要も無いのだぞ?」


 唯でさえ王族との婚約を断ろうと言う話なのだから断られる側が居るとなれば相手も良い気はしないのでは無いだろう。彼はそう考えていたのだがアーニャの考えは違うようだ。


「今回の場合は二人で考えた結果違うとなった訳だから妾の感情も説明する必要があるミャ。そして、妾のためを想って考えてくれた縁談を断るわけだから、妾としても申し訳ない気持ちを謝りたいのミャ。まあ、妾の我儘みたいなものだからエルフレッドが気にする必要もないミャ」


「そうか......わかった。しかし、やはりおかしいと思った時は直ぐに言ってくれ。俺は俺で筋を通さねばと考えているのは事実だからな」


「こっちこそわかったミャ!当日はお互い頑張ろうミャ!」


「ああ。背中を押してくれた件もこうして協力してくれた件も本当に感謝している。本当にありがとう」


 エルフレッドが頭を下げながら言えばアーニャは微笑んでーー。


「気にするミャ。その代わり絶対リュシカを幸せにするミャ。不幸にするような事があれば、その時は覚悟するミャ。リュシカは妾が貰うミャ♪」


 対して彼は微笑みながらも有り有りとした決意を見せてーー。


「ああ、勿論だとも我がバーンシュルツの家名に賭けても幸せにしてみせよう」


「ふふふ。それなら安心ミャ。さてさて、それでは恒例の惚気話を聞かせて貰おうかミャ♪」


 途中まで良い雰囲気だったというのにすっかり霧散してしまった状況に肩透かしを食らった彼はズッコケそうになりながらーー。


「全くまたそれか......前にも言ったが友人の惚気話を聞いて喜ぶ奴がどこにいると言うのだ?」


 ツッコミ半分、呆れ半分の彼にアーニャは得意げな表情を浮かべて答えるのだった。




「愚問ミャ、エルフレッド君♪そんな友人が君の目の前に居るんだミャア♪」

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