1.プロローグ
新作になります。
ご拝読いただけると喜びます。
拙い文章ではありますがよろしくお願いします。
──2026年4月の早朝。
「真羅くん! お、おはようございます。実は私、神のアマテラスだったんです。これからあなたを私の神御柱として認め、私はあなたに付き従います。だから一緒に世界を救ってください」
「はあ~!!」
天木真羅はまだ暁天の星が光を放つ明け方に喫驚の声を上げた。
チャイムが鳴り、玄関の扉を開けると、純白の白衣と鮮やかなスカ―レット色の緋袴に身を包んだ会社の同僚、天満照子が理解できない話しをしながら目の前に立っていたからだ。
照子は豊かな双丘を二の腕で挟みながら深々とお辞儀をしている。
これが見ず知らずの誰かであれば、変な女が宗教勧誘にでもやってきたのかと、直ちに追い返すことができるのだが目の前にいるのは、よく見知った顔の照子である。
粗暴に接することができるわけもなく、真羅は面倒だと思いつつも渋々話を聞くことにした。
そしてこの日を境に天木真羅の人生は激変していくのであった。
☆
──すべての理は裏と表でできている。私達の生きる世界もまたその事実と隣り合わせなのだ。
多くの人々は自分が生きる世界がすべてだと信じて疑わない。それは仕方ないことだ。表に居れば裏は見えない。
普通に生きていれば気付くことすらないのだろう。
表があるから裏がある。光があるから影がある。
陰と陽この2つが世界の存亡を賭けて戦っているという現実に──
2024年初頭世界各地で同時に様々な厄災が大量に発生した。
震災や火災、水災などの災害が代表的だったが、世界の人々をより恐怖へと貶めたのは猟奇的な殺人の件数の増加である。
各国は警察のみならず、国をあげて原因の調査に当たったが、どの事件でも犯人は見つからなかった。
この厄災には共通点がある。
すべて原因が分かっていないという点だ。
自然災害にしてもそれまで人類が培ってきた叡智で科学的に分析をしてその原因を解明してきた。だが2024年の災害には自然的に発生したと結論付けれるものは事案に対して圧倒的に少ない。
そしてもう一つ不思議な共通点がある。この厄災が増加した地域は北欧、インド、エジプト、中国、そして日本。この地域を中心として水が広がるように波及していたということだ。
未知なる恐怖が人々を襲い、混乱が生まれ、動乱へと繋がる。そんな時、人々は心の拠り所を求めて神に祈った。それは日本でも例外ではない。国民の半数が無宗教といえるこの国では異様ともいえる事態だったが、みな一様に祈りを捧げ平和を願った。
☆
──2024年10月某日。
世界同時厄災から9カ月後事態は大きく動いた。
赤い絨毯が敷き詰められ、壁面のバロック調の装飾が目を引く厳粛とした政府会議室の場に、似つかわない恰好の一人の老人が招かれた。
麦わら帽子を被り黄色のアロハシャツを着た矍鑠とした様子の老人は見た目に反し日本古来からある名家の出自である。
今は『八咫烏の会』という組織の会長をしており、政府の相談役として活動をしている。
この広がり続ける厄災をどう静めることができるか役人は老人に答えを求めたのだ。
老人は事の顛末を重々しい空気とは裏腹に軽快に語りだした。
厄災の原因は妖魔と呼ばれる別世界から来た者の仕業であること、それには転時の儀(通称 千年戦争)と呼ばれる事柄が関わっていること。
そして妖魔を駆逐するべく神がこの地に舞い降りたことを。
役人は老人の話しを聞くと、ある者は苦笑し呆れたように頭の後ろで手を組んで仰け反り、ある者は失笑しながら手を叩いた。みな一様に思ったことは老人の話が信じられないということだ。いや信じることができなかったというほうが正しいかもしれない。
話を終えた老人が後ろを向き、おもむろに手招きをする。その後誰も居なかった空間に突如として、長い白髭を蓄えた白の着物に身を包んだ老人が現れたのだ。
役人は驚きで目を見開き、互いの顔を見合せる。喧騒となる室内で白の着物姿の老人は一礼して蓄えた白鬚を撫でながら言う。
「どうもわしが神のイザナギじゃ。」
自分をイザナギと名乗る老人は自己紹介を終えると、妖魔に対抗する方法を淡々と述べた。
その中で一番役人を驚かせたのは神御柱と呼ばれる神を纏いし才ある人間の存在だった。彼らは妖魔を倒す鍵であると共に、この世界の希望なのだ。
かくして神と魔、二つの対なる者の戦いが幕を上げたのだ。