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Savior 《セイヴァー》  作者: 紫苑
悪魔教徒編
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全ての人間が持つ力 14

 廊下の奥にあった仮眠室は、先に向かったシェリーヌのおかげで綺麗に整えられていた。新しく敷かれたシーツの上にリゼを下ろすと、一息ついたリゼの手をシェリーヌが握り締めた。

「ありがとう! あなたのおかげで悪魔除けが起動したわ!」

「……そう」

 起動させた当人にも関わらず、リゼの返答はそっけないものだ。けれどシェリーヌは構わず話し続ける。

「これでメリエ・セラスは守られる。悪魔憑きも魔物被害もずっと少なくなるわ。後でお礼をさせて。あなたの功績と比べたら微々たるものだけど、私に出来る限り最大のお礼をさせてもらうわ」

 口調にあふれんばかりの喜びをにじませて感謝するシェリーヌを、リゼはどこか居心地が悪そうに見やる。

「別にいらないわよ」

「そういうわけにはいかないわ。あなたの力にタダ乗りするなんて、私達はそんな図々しい人間じゃないわよ」

 シェリーヌは当然だとばかりの口調で言った。リゼは少し納得のいかない様子だったが、反論はしなかった。

「あなたが魔力供給して動いたってことは、やはり相性の可能性が高いわね。理論は完璧なことがこれで証明された。これを足掛かりに量産できるようになれば悪魔対策がまた進展する……あの悪魔除けに込められたあなたの魔力、調べさせてもらうわ。それと、今後解析のために協力をお願いするかもしれないけど、構わない?」

「……手短にしてくれるなら」

「助かるわ!」

 そう言って、シェリーヌは酷く嬉しそうな様子で立ち上がった。あの悪魔除けと、シリル用の悪魔除けの調整に行く必要がある。彼女は興奮したままそう述べると、仮眠室を出て行った。

 シェリーヌが退室した後、入れ替わるようにやってきたのは悪魔除けの調整のために別室にいたシリルとゼノ、そしてリアムだった。兵士はみな工房の外で待機していたのだが、悪魔除けのことを聞いてやってきたのだろう。シェリーヌに大体の話を聞いてきたらしいシリルは真っ先にリゼの容態を心配し、ゼノは悪魔除けのことにとにかく感動していた。

「オレにはよくわかんねえけど、あの悪魔除けがあれば結界がない村や町の人達がもっと安心して暮らせるようになるのかな。すごいじゃねえか!」

「そうね。よく作ったわ。あんなもの」

「なんだよ。他人事みたいだな。あれを創ったシェリーヌさんもすごいけど、起動させたのはおまえなんだろ?」

 ゼノが不思議そうに言うと、リゼは眉を顰めて言った。

「あれの魔術式は完璧だった。魔力さえ込めれば動くわ。私じゃなくても、魔力の相性さえよければ動く」

 するとゼノは、そういうもんかなぁと首を傾げる。けれど魔術に詳しくない彼は自分が口を挟んでもと思ったのだろうか。納得してなさそうだったが、それ以上追及しようとしなかった。

「あれをやったのは貴女様なのですか?」

 入れ替わるように口を開いたのはリアムだった。兵士の問いにリゼは不承不承といった様子で頷く。すると、リアムは険しかった表情を崩した。

「貴女の勝手な行動は大変目に余りますが、さすが殿下が見込んだお方。メリエ・セラスに結界まで作り上げるとはお見事です」

 説教めいた言葉を口にしつつ、リアムは機嫌よく言った。さすがに眉間の縦皺は消えて、気持ち悪いほど笑みを浮かべている。ミガー王国の兵士としては、自国の街の守りが増えればそれは嬉しいだろう。でも賞賛はいらない。いや、リアムが褒めているのは、どちらかといえばグリフィスの方か? リゼは顔を顰めると、そっけなく言った。

「誉め言葉はいい。それより、用が済んだんだからさっさと迎賓館に帰らせてもらうわ。馬車を用意して」

「……承知いたしました」

 リアムは頭を下げると、部屋から退出した。仮眠室の扉がぱたりと閉まると、リゼはふうと溜息をつく。こめかみを押さえ、苦しそうに表情を歪めるリゼを見て、シリルは心配そうに言った。

「大丈夫ですか……? 馬車は疲れるから、もう少し休んでからの方がいいんじゃないでしょうか」

「長居するとシェリーヌ以外の細工師にも騒がれるでしょう。うるさいのは御免よ」

 リゼはうんざりとした様子で言う。そして、ぐったりと壁に背を預けると、ぽつりと呟いた。

「……それに、もう用は終わったから」

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