表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Savior 《セイヴァー》  作者: 紫苑
悪魔教徒編
167/177

全ての人間が持つ力 10

「リゼ、どうして俺を連れて行こうと思ったんだ?」

 馬車に揺られながら、アルベルトはそう彼女に問いかけた。

 グリフィスの一声のおかげで、アルベルトはリゼ達と共にシェリーヌの工房へ向かっていた。リアムには盛大に睨まれたが、王太子が許可を出したためそれ以上の口出しはしなかったのだ。それについては王太子に感謝しているが……そもそもリゼがアルベルトを連れて行くと言ったのが始まりだ。そのことがアルベルトは引っかかっていた。

 確かに、シリルは以前フロンダリアの王太子の館という、他よりもよほど警護が整っているはずの場所で誘拐されている。リリスは一度“返す”とは言ったが、悪魔教徒が二度と少女を狙わないという保証はない。そんな経緯がある以上、シリルの身を案じるのは当然のことだ。しかし現状として、メリエ・セラス内の悪魔除け細工師の工房に行くのに、護衛の不足の観点から何が何でもアルベルトを連れて行く必要があるとは思えない。何故ならフロンダリアでの反省を踏まえてグリフィスは警護を相当強化しているし、先日のザウンの案件の時、リゼはすでにシリルを王太子に預けているからだ。メリエ・セラス内を移動するだけなのに、そこまで警戒するとは思えない。

「護衛のために俺が必要だ、と言ったが、ゼノや兵士達だけでは対応できないことが起こると考えているのか?」

「えっ、そうなのか?」

 驚いて言ったのはゼノだ。シリルの正式な護衛役である彼は、やはりこういうことは気になるのだろう。真剣な表情でリゼを見つめている。しかしそんなゼノとは裏腹に、リゼはそっけない口調で答えた。

「さあ。起こるかもしれないわね」

 気のない返事に、ゼノは驚いて目を瞬かせる。そんな適当な、と言いたげな顔で、彼はリゼを睨んだ。しかし、リゼは気にした様子もなく、さらりと言う。

「別に理由なんて適当よ。特に思いつかなかったからああ言っただけ」

「適当……だったのか……?」

 ただ、リアム一等兵の言に反対するためだけに?

「ならどうして俺を連れて来たんだ? 適当な理由を言ったのは、本当の理由を言えなかったからだろう?」

 リゼが全く理由もなしにこんなことをするとは思えない。何か懸念があるのだろう。指名されたアルベルトとしても、理由を知っておかなければ一大事になった時に対応できない。しかし問われたリゼは眉間に皺を寄せると、ふいっと視線を逸らした。

「……理由なんてないわ」

「理由がない……?」

 告げられた答えにアルベルトは首を傾げた。なんとなく連れてきた、ということか? ますます不可解なリゼの行動に、アルベルトは頭を悩ませる。すると二人の間に、別の問いが割り込んできた。

「それって、理由はないけど一緒にいて欲しいってことですか?」

 どこか興味深そうに尋ねたのはシリルだった。仏頂面のリゼに見つめられているにも構わず、シリルは返事が来るものと疑わない目で見つめ返している。アルベルトはリゼが手厳しく切って捨てるのではないかとハラハラしていたが、リゼはそっけないながらも柔らかい口調で答えた。

「そうかもね」

 彼女が告げたのは、肯定とも取れる言葉だった。意外過ぎる答えにアルベルトは驚き、言葉もなくリゼを見つめた。後の二人はというと、シリルは目を輝かせ、ゼノは信じられないと言わんばかりの表情で固まっている。そんな三つの反応に囲まれても、リゼはまるで自分とは関係ないことのように平然としている。彼女は何を考えているのだろう。

「リゼ、気になっていることがあるなら、一人で抱え込まずに言ってくれ」

「……別に抱え込んでるわけじゃないわ」

 アルベルトが問うても、リゼはそれだけ言って話は済んだとばかり押し黙る。ゼノとシリルも(方向性は違うが)興味深げに見つめているのもお構いなしだ。お得意の沈黙を盾に取る彼女を見て、アルベルトは呟いた。

「気になっていることがあるのは否定しないんだな」

「…………」

 案の定、返事が来ることはなかった。

9月30日関西コミティア53に参加します。

詳しくは活動報告に記載。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ