想って語る第二話《コンフュージョン》
連休のだらしない生活が祟って、眠れなかったんですよねえ……。
今回は短く投稿します。
昔の記憶を掘り返してみると、俺は常に母親に抱かれて泣いていた。
愛美は家が格闘家の家系らしく、親父さんも兄妹の兄二人も腕が立つらしい。だからか、彼女の口癖は『男らしく。』なんなら彼女自身も男性として生まれたかったらしい。
去年くらいまでその願望は顕著で、クラスメイトからは『番長』とあだ名が付けられるくらいだったのだが。
愛美「翔護。米粒付いてるぞ。」
翔護「ぅあ・・・」
愛美「取れた」
最近彼女は、自然と女性らしくなっている気がする。
クラスメイト男子「おーい。番長サッカーしようぜ」
クラスメイト男子B「きょうこそ負けないからな!」
クラスメイト男子C「おれたち武門小最強トリオが番長に挑むぜ!」
愛美「おー!すぐ行くよ。
翔護も行くか?遠足くらい、身体動かした方が良いぞ」
翔護「やだ」
愛美「まったく、仕方ないな。来たくなったら、ちゃんと来るんだぞ。」
翔護「・・・・・・。」
愛美「じゃあ、行ってくる。」
優しく俺の頭を撫でて、彼女は友だちとのサッカーに向かう。
翔護「・・・・・・・・・・・・。」
無理に変わろうとするのでなく、自分らしく。彼女は大人になっていくのだろう。
だからこそ、なおさら。
翔護「オデは、モナカのじゃんまになう・・・・・・。」
森林浴でもしていよう。いずれ彼女がいなくても、俺一人でいなくてはならない時来る。
今のうちに、慣れておこう。
愛美「ボールを相手のゴールに--シュウウウゥゥーート!!」
三馬鹿トリオ「「「超・エキサイティィィング!!!」」」
私の実家の古流武術を駆使した必殺シュートの前にクラスの仲間たちがボーリングのピンのように転がっていく。
亜弓「やってたのってボーリングだっけー?」
愛美「いや、サッカーだろ。足で蹴ってただろ。」
亜弓「あーしの知ってるサッカーって人は蹴飛ばさないんだよね~」
愛美「さ、さて。あたしはそろそろ翔護のところに戻るかな。」
亜弓「はいはい。旦那が心配なのねー。良い嫁だわ。献身的で。」
愛美「……そんなんじゃ無いんだ。あいつが調子をおかしくした原因は、あたしなんだ。」
亜弓「えー?どういうこと??」
愛美「……去年の夏からなんだ。あいつが、言葉を発音出来なくなったの。」
飛天武門高校は、武道に力を入れる武闘派の高校で、校舎裏には生徒が自主練とかで使う小さな裏山がある。
だが、その時は学園が動物との実戦訓練用に飼っていたライオンが逃げ出して来ていて、誰も入れないようになっていたんだ。
去年の、まだ男になる憧れを抱いていたあたしは、そんな危険な山に入れば、男らしく成れるんじゃ無いかと思って、勝手に入っていったんだ。なんならライオンも倒してやろう位の気持ちで。
亜弓「馬鹿じゃん」
愛美「言うなよ。」
亜弓「で、まさか翔護くんが助けに山まで来たの?あんな弱っちぃのが?」
愛美「それは……」
亜弓「愛美ー?」
愛美「…………いっしょに、連れって行ったんだ」
亜弓「は!?連れて行ったって、どういうことなの?」
愛美「あの時のあたしは、翔護のあまりの泣き虫なところを叩き直してやりたいって思っていて、一緒にライオンを捕まえれば、少しは自信が付くだろうって。そう、思って…強引に連れ出したんだ。」
実際、逃げ出したライオンは小さな子どもで、簡単に捕まられた。その時の翔護は、少し嬉しそうな顔で笑ってた。
連れてきて正解だと思った。これで良かったって。
でも、あいつは・・・・・・コワレタ。
翔護『ヒャハハハハ!!壊れろ!!死ね!!お前も、俺も!!命ある物は全部壊れろ!!!ヒャーハッハッハッハ!!!!!!』
愛美「ーーあたしのせいで、あいつは言葉が話せなくなった。
それまで出来ていたことすら、出来なくなった。
だから、あたしはーー翔護を護る責任がある。」
亜弓「…………愛美、なんて言うか。あんまり思い詰めると、あいつもしんどいと思ーー」
間「良い心がけではないか小娘!嗚呼、実に良い!!」
亜弓「わ!?間ちゃん?いきなり割り込むなし!驚くわ」
愛美「間先生?」
間「なぁに許すが良い子ギャルよ。人の後悔や挫折の念は大好物なので、ついつい惹かれてしまうのだ。
何せ我、悪魔であるし!」
愛美「悪…魔?」
間「さよう。そして猿浄愛美よ。鳴海翔護の半覚醒状態の今を嘆くことなど無い。
あの方はいずれ、本来の力を取り戻すだろう。そうだろう。
そうで無くては困る。この世界線に辿り着くのにエラい苦労したのだからな!ハハハハハ!!」
言いたいことだけ言うと、間先生は行ってしまった。
亜弓「間ちゃん、酔っ払ってるのかな??」
愛美「さあ…?悪魔とか覚醒とか、そんなこと言う人じゃ無かったと思ったけどな。」
悪魔。覚醒。翔護の本来の力……。
多田「皆さん。忘れ物などはありませんか?出発しますよー」
結局あたしは遠足中ほとんど翔護といられなかった。
みんなは楽しそうに遠足の思い出を話している。
翔護は何を持ってきてたの分からないが、とにかく先生に取り上げられていた。
あんまり落ち込んでいる感じでは無さそうだけど、とにかく話を聞いてみよう。
愛美「翔護、いったい何を持ってきてたんだ?」
翔護「・・・・・・。」
ふるふる首を横に振るだけで、話そうとしない。
愛美「話せないのか?」
翔護(……言えるわけがない。
隣のクラスの奴に侵略者が来ると言われて、突拍子も無くスリングショットを渡されたなんて。小学生の業界でも痛いヤツだ。)
愛美「・・・・・・虐められたのか?」
口を割らない俺を見て心配そうな顔をする。
翔護「ちあう。もあったの」
愛美「本当か?嘘じゃない?」
翔護『本当だ。』
手話に切り替えて伝える。正直口が回らないから話辛い。
愛美「・・・・・・そっか。信じるよ。」
どうやら安心したらしい。
さて、なら後は……バスに揺られながらの車酔いタイムに耐えるだけだな。
愛美「翔護、膝枕してやろうか?寝てる方が楽だろ。」
翔護『お前は心配しすぎだ。昔はもっとガサツだったろう。死ぬわけじゃないんだから。』
手話でそう伝えると、悲しい目をしながら優しく俺の頭を撫でた。
愛美「もう、誰にもお前を傷つけさせたりしない。
昔のガサツなあたしにもだ。あたしが、翔護を護る。」
翔護「…………。」
俺の首に腕を回し、耳に吐息を感じるほどの距離まで身体を寄せて愛美は俺に、吐き出すように訴えかける。
愛美「だから許して……あたしは、翔護と一緒にいたいんだ……。」
翔護「モナミ……」
愛美「翔護を心配してーー翔護がいなくなるのが怖い、あたしを許して……。
翔護と一緒にいられなくなるのが怖い。翔護があたしから、いなくなるのが怖い。
あたしに出来ることは何でもしたい。何でもあげたい。
だから、翔護。
翔護を護りたいーー愛美を愛して。」
次回、超展開。
多分。




