【クールな勇者とやさしい魔王1】終わらない世界の始め方
友人に短編のが読みやすいと言われ、勢いとノリだけで書いた作品です。
また本作品は会話のみで構成されているため好みに合わない可能性大です。
読まれる前に引き返される事をおすすめします。
それでも読んでやろうという寛大な方はこのまま本編を読んで頂けましたら幸いです。
「フハハハハハハ! 良くぞここまで辿り着いた!!
だがその快進撃もここまでぞ!
ワシの力の前ではその身を包む全身鎧なぞ紙屑もどう……」
「あ、そういうのいいから」
「待てぇい! ここから我輩の見せ場が始まるんじゃぞ!?
それを『そういうの』で片付けんでくれんかな!?
ええい! もうよい! 口上やらせてくれるまで、ワシは戦わんぞ!」
「どうぞどうぞ」
「え? ワシを倒しに来たんじゃないの?
この日にやる口上をどれだけ楽しみにしとったかわかる?」
「興味ない」
「なに? 普通初対面の相手にそんなバッサリいく?
後生じゃからやらせてくれんかのぅ……?」
「頭を抱えないでよ。
それにボクは別に魔王討伐のために来たんじゃないよ?」
「なんじゃと!? なら、何をしに来たというんじゃ?」
「キミと話がしたかったんだ」
「ならば、そのゴツイ鎧は脱いでもいいんじゃないか?
話をしようという相手に失礼じゃろ」
「扉叩くみたいにするのやめてくれないかな?
傷つくわけじゃないけど、衝撃が響くんだよ」
「なら尚更脱いでもよいじゃろ」
「それはそれ、これはこれ」
「ホントなんなの!? ワシはなにも悪くないじゃろ!」
「戦争を始めたのは悪い事だよね?
そのせいでたくさんの人が死んじゃったよ?
それに魔族の被害も相当だよね?」
「それは……。仕方なかったんじゃ!
ワシら魔族の領土では食物があまりとれん」
「外交しなかったの?」
「したさ! 初めはよかった。
じゃが相手が魔族とみると途端に反故にされよる!
その間にも飢えで死ぬ者が後を絶たん。
ならば王としてある者ならば力で奪うしかなかろう!!」
「辛かったね」
「あぁ辛かったさ。
救えたハズの者が目の前で物言わぬ姿になるのを見ている事しかできんかったワシの無念。オヌシにわかるか!?」
「わかるよ」
「嘘をつくでないわ!
オヌシら人族の土地は土壌豊かで作物が多く採れる地じゃ!
なればこそワシらが欲したのだ!!」
「でもそれは、特権階級に搾取される物だよ」
「なに?」
「ボクの育ったのは作物が豊富に採れる土地だった。
けどボクらが口にできるのは極僅かだ。
それこそ、キミ達魔族が食べる分よりも少ないくらいだ」
「馬鹿な!? 民がいなくば国を保てん!
であれば当然治世は民の為に行うべきじゃ!!
オヌシはそんな国の為に命をかけたと言うのか!?」
「国の為ではないかな?」
「ではなんのためじゃ?」
「友達と約束しちゃったからね。
もうずっと前の事なんだけど、いつだったかな?
食べるのに困ってたボクが盗みをして捕まるのは普通の流れだよね?」
「かもしれんな」
「うん。それでまぁ友達も一緒に捕まった。
そんな時にキミが戦争を始めたんだ」
「我ながらナイスタイミングじゃな!
……あいた! 怪我はせんけど、そういうの地味に痛いんじゃよ!」
「…………」
「わかった! ちゃんと話をきくから!
じゃから剣先でつつくのをやめんか!!」
「はぁ……。どこまで話したっけ?
あぁ、そうそう。捕まって戦争が始まった所までか。
その後行った徴兵検査の結果、ボクに勇者の適性があるってわかったんだ。
それで、恩赦の条件としてボクが魔族との戦争に駆り出される事になった」
「友の為に立つとはイイ男じゃな!」
「失礼な」
「なんじゃ? 突然そっぽを向いてどうした?」
「なんでもないよ。
けどまぁ、その友達は処刑されちゃってるんだけどね」
「なんじゃと! オヌシははそれで良いのか!?」
「他に選択肢はないしね」
「かもしれん……
かもしれんがそんな横暴が許されるものか!!」
「よくある事だよ?」
「なんじゃと!?」
「ボクがここに辿り着くまでにも勇者候補はたくさんいたんだ。
彼らの犠牲もあって、今や魔族への対処法が確率されつつある」
「そんな話知らんぞ!? それに、なぜオヌシが知っておる!」
「なぜか王族に気に入られてね。
ボクの番まで時間があったから、ちょっと勉強したんだ」
「じゃが幼馴染みは……」
「うん。殺された後だね」
「ならば何故!」
「他にする事がなかったから?」
「そうか……
さぞや哀しかったじゃろう。無念じゃったろう……」
「哀しいってなに?」
「な!? まさかそこまで……」
「なんでキミが泣いてるの?」
「な、泣いとらんわ! ワシが泣くわけないじゃろ!!」
「ふ〜ん」
「信じとらんじゃろ!?こら!目を逸らすでない!」
「ごめん」
「謝られた!?」
「項垂れないでよ。
それで? キミはこの戦争をどうしたいの?」
「え? なに? 急にシリアスな話?
いやまぁ、それはどちらかが倒れるまで続くじゃろうな」
「滅びるよ? それでも続けるの?」
「それがワシの務めじゃからな
この戦争がどう転ぶか正直ワシにもわからん。
じゃが、オヌシがここまで来たという事は恐らく魔族は負けるじゃろう。
なればそこで最期の責任を果たすのがワシの務めじゃ」
「もし戦争に勝てたらどうするの?」
「それはまぁ、普通に治めるじゃろ」
「でも周辺諸国が黙ってないよ?
それに国内でも人族による反乱があるんじゃない?
それでまた、血を流すの?」
「やむなしじゃな」
「その先に何があるの?
戦争して血を流して、反乱を鎮圧してまた血を流す。
その繰り返しの先にあるのは?」
「ん、む……」
「なにも残らないよ。
力で手に入るものなんて長く続くものじゃない。
欲には際限がないから更に力で奪う。
そんな事を繰り返してく内に、誰も住めない土地になるんじゃないかな?」
「ならば! ならばワシはどうすれぱ良かったんじゃ……!!
何もせねば民が滅ぶ。外交をしても民が滅ぶ。戦争をしても民が滅ぶ。
何をしても民が滅ぶならば少しでも長らえる道を選ぶが道理であろう!!」
「諦めなければよかったんじゃないかな?
国なんて基本的に利害でしか結びつきがないんだ。
キミは何を条件にしてたの?」
「それは……」
「ただ貧しいから食べ物を分けてくれって言ってただけかな?」
「し、仕方なかろう! 人族が何を欲しがるかなぞ、わかるはずがない!」
「確かにキミの言う通り接点がない相手の欲しがるものはわからない。
でも知る努力はできたはずだよ?
けどまぁ、キミが一方的に悪いってわけじゃない。
種族の違いってだけで食糧を分けない相手国も問題なんだけどさ。
でも、よく知りもしない相手にいきなり物をくれって言われたら?」
「そんなもんくれてやるわけなかろう。
……む? つまりはそういう事なのか?
ワシは知る努力と知ってもらう努力。
その双方を怠ったという事なのか……?」
「それで全てが解決するって訳でもないけどね」
「そうか……
ワシは間違えておったのじゃな……」
「ん〜。そうでもないよ?」
「慰めなぞいらん」
「そうも言ってられない程深刻だったんでしょ?」
「そうじゃな。じゃが、だからといって蔑ろにして良い物でもあるまい」
「そういう素直な所好きだよ?」
「な!? なななな、何を言っておるオヌシ!?
冗談など言っておる場合か!!」
「結構本気なんだけどな」
「スマン。聞こえんかったが、なにか言ったか?」
「なんでもないよ〜」
「う、嘘をつくでない!
その反応は絶対なにかあるじゃろ!!」
「あまり詰め寄らないでよ。
キミと違って、ボクには他人と顔を近づける趣味なんてないんだから」
「あれ? ワシの扱い酷くない?」
「気にしない方がいいよ。それに、細かい人はモテないよ?」
「ふん! 十把一絡げに想いを寄せられても嬉しくないわ!
ワシが好いた相手に想ってもらえればそれで充分じゃ!!」
「顔立ちはイイのに勿体ない」
「何を言われようと変わらんぞ」
「いいんじゃない? でさ、ボクと友達にならない?
魔族のキミと人族のボク。お互いに協力できたらいいんじゃないかなって」
「ふん! オヌシがどうしてもと言うならなってやらんでもないぞ」
「じゃあ、どうしても。
人の痛みを自分の痛みにできる。
そんな優しいキミだから、ボクは友達になりたいって思ったんだ」
「な、なんじゃよ。照れるではないか……。
ん゛! ん゛ん゛! であれば仕方ないな!
断ったらオヌシが可愛そうじゃし友達になってやろう!
魔王たるセルディス様の友人となれた事を誇りに思うがいい!!
というかだないい加減、素顔を見せてくれてもいいんじゃないか?」
「あぁ、それもそうだね。…………これでいいかな?」
「…………オヌシ、女じゃったのか?」
「そうだよ?そんなに目を丸くして、なんだと思ってたの?
まぁ、いいや。それじゃ改めてよろしく。やさしい魔王さま。
ボクの名前は………………」
ここまで読んで頂き誠にありがとうございます!!
いかがだったでしょうか?
少しでも面白いと思って頂けたのでしたら幸いです。
前書きにも書いた様に本作品は勢いとノリだけで書いた物ではありますが、私個人としては中々にお気に入りな作品となりました。
本作品を書くきっかけとなった友人T氏にこの場を借りて感謝を!
それでは、また別の作品でお会いできる事を切に願っております。