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ライラック  作者: 三角四角
第1章  入学初月編
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第1話・・・世界変化/入学式前・・・

 眠い目を擦って書きました。

 どうか読んで下さい。

 とある小学校のとある教室で、一人の男の先生が生徒達に説いてた。


「『改界爆発ロード・ブラスト』って知ってる人はいるかな?」


 先生の言葉に一人の女子生徒が元気よく手を挙げてそのまま答えた。

「はい! すうひゃく年前に世界の色々なところで起きた爆発のことです!」

「正解。大改変爆発とも言うから覚えておこうね」


改界爆発ロード・ブラスト』 

 いつも通りのある日、何の前触れもなく空気中で光が収縮したかと思ったら、突然の爆音と地揺れとフラッシュが世界各地で発生した現象。



 先生は要点を黒板につらつらと文字を書き。

「その大震動爆発は迫力こそ凄かったけど、殺傷能力……つまり、威力はゼロ。誰も傷付かなかったんだ」


 爆炎と火煙の代わりに周囲に飛び散ったのは不思議な光を放つ粒だけ。その粒は手に取ることもできず、保存もできなければ研究することも不可能。

 世界中に降り注いだその光の粒も、一時間弱で雪のように消えた。

 誰もが頭を悩ませたが、地揺れも震度3程で、人っ子一人死ぬことは無かった。


「けど、異変はすぐに起きた」

 先生が指を立ててる。その表情は小学生達が委縮せずとも喉を鳴らす程度の真剣さがあった。


「多くの人々が謎の力を持ち始めたんだ。とある社会人はふざけ半分で友人の頭を叩こうと腕を振り翳した時に弱い風を巻き起こしたり、とある高校生男子は悪い点数の答案用紙を嫌そうに眺めていたらいきなりその答案用紙が燃え出したり、とある女子中学生は寝癖が酷くて頑張って櫛をかけていたらどこからともなく水が湧いて寝癖を直したり、とね」

 小学生にも分かりやすく噛み砕いた例え。

 しっかり伝わったようで、みんなコクコクと頷いている。

 先生は満足気に口を綻ばせ、続けた。

「長年の研究の過程では、『魔法』や『超能力』とも言われたけど、一段落ついた頃には『司力フォース』という呼び名となったんだ」

「私知ってる!『ふぉーす』を持つ人のことを『ふぉーさー』て言うんでしょ!」


 先生は力強く首肯した。

「そう。『フォーサー』の存在によって、この数百年の間に人類の文明は大きな発展を遂げたんだ」

 最後の言葉は小学生には難しい表現が多かったかもしれない。

 先生は少々興奮気味に言いながら思った。勢いに任せて言ったのはまずかったかな、と。

 だが、小学生達の「おおおお」という感心顔にその心配が杞憂であることを悟り、微笑んだ。


 先生は『今』はまだ説くべきではないと、口にしなかったことがある。

 それは、文明が進化するに連れ、犯罪も、より大きな発展を遂げたことだった。


 ◆ ◆ ◆


 春四月。

 桜色の景色が心を躍らせる今日この日。

 東陽学園入学初日。

 クラス分け表の模造紙が張り出されている掲示板前。

 そこには大勢の同じ制服を着た生徒が入り乱れている。

 クラスはA~Gの7組。横幅が非常に長く、探すのが大変そうだ。

 所々で歓喜やら残念な声が聞こえる。友達同士で同じクラスになれたりなれなかったりと、楽しいのだろう。

 ちなみにほとんどの生徒が腰に剣、銃やら背中に斧、弓矢などを携帯しているが、校則違反ではない。

 現代となっては普通とさえ言える。もちろん携帯が認められているだけで許可無しの使用は厳禁だ。


 上司のイジメ的試練を何とか潜り抜けて見事合格したライラックことひいらぎわらびは、ぽつりと佇んでいた。特に遠くでもないのに遠くを眺めるように額に手を当て、掲示板を眺めている。

 そうしてやっと自分の名前を見付け、自分のクラスを呟いた。

「「B組か………!」」

 ちょうど隣りの男子と声が被り、お互いに顔を見合わせた。

 短く切り揃えられた黒髪と、細身の蕨と比較すると尚もがっしりした体格は一流のアスリートのような風格がある。しかもイケメンフェイス。チャラさも軽さも見受けられず、冷静で真面目そうな男だ。

 腰に携える刀も誠実さをより強調している。

 絶対に女子にモテるな、と蕨は思った。

 目が合ったまま、蕨がどうしたものかと口ごもっていると、先に相手の男子がふっと笑い、

「初めまして。龍堂りゅうどう哉瓦さいがって言います。よろしく」

 蕨はあくまで冷静にイケメンで優しいなーと思いながら、特に嫌がることなく、名乗った。

「柊蕨。こっちこそよろしく。龍堂くん」

「哉瓦でいいよ。これから三年間同じ学園で過ごすんだから。俺も蕨って呼んでいい?」

「うん。じゃあ改めてよろしく、哉瓦」


 蕨はさっそく仲良くなったイケメン男子、龍堂哉瓦と共に校舎へ向かって歩いていた。

 友達ができるか。密かに心配していたのだが、その心配は早くも払拭された。

 蕨はせっかくできた友達に変なところを見せないように心掛けたが、

「へ!?」

 早くも変な声を上げてしまった。

「哉瓦、新入生代表なの!?」

「うん……そんな大声で言わないで。ちょっと照れくさい」

 頬を掻く哉瓦に、蕨は目を見開きながら、自主的にコクコクと頷いた。

「ああ、うん。驚いたけどすげー納得だわ。うん。新入生代表って貫録あるよ」

「そう? ありがとう」

 イケメンな笑顔でお礼を言った哉瓦は、少し好奇に満ちた目で蕨に尋ねた。

「ねえ、蕨の〝ジェネリック〟って聞いても良い?」

「ん? いいよ。〝具象系風属性〟。因みに獲物はナイフ。…そっちは?」

「〝放発ほうはつ系火属性〟。見ての通り武器は刀だ」

「ほえー。〝放発〟に〝火〟か……。それで新入生代表……。なんか戦闘スタイルすげーダイナミックそうだな」

 哉瓦は「あはは」と小さく笑い。

「否定はしないけど、変に期待しないでね」

 蕨が「分かってる」と手を振り。

「龍堂って……、名前はなんか凄いけど『御八家』でも名家ってわけでもないよね?」

「まあね」

 言って、失礼な発言をしたと蕨が気まずそう顔を向けた。

「あ、ごめん……。気に障った?」

「してないって。考えすぎ。まあ新入生代表ともなればそれぐらい勘繰りたくもなるよね。この学園の生徒会長も『御八家』らしいし」

「ああ、知ってる知ってる。『消鎮の姫スリーピング・プリンセス』って言って強い上に美人で有名なんだよな」

 蕨はこの数ヵ月間、一応潜入先として色々と調べていたことを述べた。

「強い……か。どれくらいなんだろうな」

「へー、そこだけ抜くんだ」

「?」

 美人、という単語に微塵も興味示した様子がない哉瓦に、蕨は半眼になる。

「いや、ただ哉瓦って色恋沙汰とかとは意外と無縁そうだなって思っただけ」

 蕨は得意げな顔での発言に哉瓦が初めて顔を歪ませた。けど嫌悪とかゆうものではなく、親友への道から悪友への道へと切り替わったような感じだ。

 哉瓦もだんだん蕨という人間が分かってきたらしい。

 初対面ならではの緊張感が哉瓦も抜けたらしく、蕨に負けない小狡そうな笑みを浮かべる。

「痛いところついてくるなぁ。そういう蕨はどうなんだ?」

「さあ。ご想像にお任せします」

「そういうのって経験無しの人間が言う常套句じょうとうくじゃない?」

「哉瓦って強くて勉強もできるけど肝心なところはバカっぽいよね」

「おいっ、肝心なところってなんだ?」

 遠慮のない発言が多発してきたが、二人は口元を綻ばせ、実に楽しそうだ。

 哉瓦はポケットから手の平サイズを取り出し、

「蕨、アドレス交換しない?」

「あ、AD。持って来てたかな……」

「入学日なんだから持って来なきゃだろ」

「あったあった」

 

 アカデミック・デバイス。通称『AD』。

 学園発行の携帯端末だ。一昔前に流行ったスマートフォンの進化版であり、電話、メール、ネット検索も可能。

 ADは他の『フォーサー』育成学校とも特殊ネットワークで繋がっており、一部の情報を逸早く伝え、非常時には簡単なワンタッチ操作で即座に学園側へ救済信号を送る。

 AD自体でも光による目晦ましや大音量の救済ベルを起こすなどのことも可能。

 本来は『フォーサー』の卵達を守る為の物だったのだが、非常に使い心地が良く、ほとんどの生徒が日常生活でも自身の携帯とする場合が多い。

 蕨も哉瓦もその一人だ。


 蕨は哉瓦とアドレスを交換し、一つ気になったことを尋ねた。

「哉瓦、新入生代表ってことは入学式に代表の挨拶みたいなのするの?」

「うん。するよ」

「それって早めに集合とかするべきなんじゃないの?」

「確かに入学式前に生徒会室に集まるよう言われてるけど、まだまだ大丈夫だよ。早めに行っても迷惑かけるだろうしね。十分前行動で行くよ」

「なるほど」

 そんな感じで話している時だった。

 

「そこの貴方ッ、龍堂哉瓦さん、ですね?」


 高く耳に残る綺麗な声。

 蕨と哉瓦の背後からその声がした。フルネームで哉瓦を呼ぶその声音は、決して友好的な音程とは言えなかった。

 哉瓦は明確な敵意に目付きを鋭くして、蕨はなんだろう?と純粋に気になって、振り返った。

 そこには二人の外国人美少女が佇んでいた。

 一人の少女が堂々と立ち、もう一人の少女はその斜め後ろに位置している。


「もう一度聞きます。入試成績主席合格者の新入生代表、龍堂哉瓦さんですね?」


 青みがかった銀色の髪はさらっと柔らかそうなセミロング。体型的にも非の打ちどころがないほどに発達した豊満な肢体。全てを吸い込むような美しい碧眼。

 日本語ペラペラだが、外国人だということは一発で分かる。

 腰には西洋風の豪華な剣。

 一国の姫と言われても納得ができる。

 その少女の輝く瞳に捕えられている哉瓦は、その美貌に動じることなく、こちらも堂々と聞き返した。


「ああ。俺が龍堂哉瓦だが、そちらは?」


 周囲の生徒も足を止めて見守る中、その少女は名乗った。


「ディアーゼス皇国、第三皇女、エクレア=エル=ディアーゼスと申します」


(あれ? マジでお姫様? ていうかそういうの自分で言っちゃうんだ)

 蕨の間の抜けた心の声などいざ知らず、二人は会話を進めた。

「なぜ俺の名を?」

「入試成績次席合格者には主席合格者のことを教えてもらえるんですよ」

(つまりお姫様が次席なんだ)

「なるほど。それで、俺に何か用かな?」


「難しい話しではありません。私と『模擬戦』をして頂きたいのです。この学園には『立会人』一人の元、ADに登録することで幾つかのルールに基づき、敷地内でのみ『模擬戦』を行える仕組みがあります。……どうでしょう?」


(それ『難しい』すっ飛ばしてません?)

 いきなり初対面で入学式前に勝負仕掛けてくるこの行為、明らかに常識の範疇を越えている。周囲の生徒も戸惑うばかりだ。

 哉瓦は一切動じず、

「理由をお聞かせ頂いても?」


「はっきり申しますと、私より上がいるという事実がどうしても信じられないのです。貴方が『御八家』でも他の名家の出でもないことに対しての偏見というわけではありません。ただ、私より上というのが怪しいのです。どうでしょうか?」


 自身満々。自己中心的。自画自賛。

 あらゆる皮肉を向けられても、エクレアというお姫様は受け止めるだろう。

 それが事実だと、自惚れではなく知っているから。

 それが蕨には読み取れた。


「そうか。時間も十分にあることだし、どの道俺に断る理由もない。その勝負、受けよう」

 こちらも絶えず勇ましく受け応える。

 周囲の生徒がざわめいた。

 主席と次席。

 事実上の新入生トップ2のバトル。

 目が離せない。離したくない。

 蕨にもその気持ちがあった。

 そんな蕨に、

「蕨、すまないが『立会人』、引き受けてくれないか?」

「え?」

「やり方は分かる?」

「一応入学概要は読んだけど……」

 ちらっと、エクレアを見ると、

「構いませんよ。『立会人』に勝負決定権はありません。『立会人』の役目は『対戦者』のADを自分のADに登録し、学園全体の監視カメラ、センサーなどと一時的に繋ぐことで違反行為を見逃さない装置のパスのようなものですから。貴方がその人がよろしいのでしたら、どうぞ」

 周囲の生徒の目線が蕨に集まった。

(……マジか………)

 エクレアの後ろに控える侍女やメイド的存在である少女に任せてもいい気がするが、断る理由もない。ていうか断りにくい。

「えっと……じゃあ、はい」

「ありがとう」

「お手間を取らせます」

 エクレアも蕨にお礼と共に一礼する。最低限の礼儀はあるようだ。


 その後、周囲の生徒が丸く広がり、哉瓦とエクレアの為の半径四十メートルほどのフィールドのようなものを作った。

 蕨は二人のADを登録、完了し、離れた位置に移動。

 哉瓦とエクレアが見合う。

 哉瓦は刀を収めたまま柄に手を添えている。まさに侍。

 エクレアは細く、長い剣を抜き取り、哉瓦目掛けて構えている。

 二人とも集中力全開で目の前の相手を見据える。

 距離は十メートルはいかないぐらい。

 周囲の生徒達が何度も息をのむ。


 試合開始の合図は『立会人』のADに設定されたタイマーによるブザーが鳴る仕組みのようだ。

 カウントは登録完了後から六十秒。

『対戦者』はその間に戦闘準備を完了しなければいけない。

 そして今、残り二十秒に達した。

 ……残り十秒になり、ぴっ、ぴっとカウント音が発する。

「「「六」」」

 次第に生徒達が蕨の手元を覗く者を始めとして誘発されるように、口ずさみ始めた。

 本来は五秒前に『立会人』が声に出してカウントする決まりらしいが、今回に限ってはその必要な無さそうだ。

「「「四」」」


「「「三」」」


「「「二」」」


「「「一」」」


 ピーーーーーーーーーーーー!!


 主席と次席の勝負が、今始まった。


(はは、なんか面白いことになったよ)

 蕨は肩を竦めて、二人の戦いを楽しむことにした。


 どうでしょう?

ジェネリックとかその辺の説明は哉瓦とエクレアの戦闘過程で説明していきたいと思っています。

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